投資の基本!投機とは違う、失敗しないための資産形成術

「投資と投機」「資産形成と資産運用」

これらの言葉の意味・違いを説明できるでしょうか?

また、「株は投資ですか?投機ですか?」と聞かれたら何と答えるでしょうか?
株をFXにしたらどうでしょうか?

実はこれらの言葉には一般的な意味はありますが、2つを明確に分ける定義はありません。

例えば、資産形成と資産運用は一般的に1,000万円が境にされることが多いですが、明確な定義はありません。

そのため、説明が難しいと思ってしまうのは当然かもしれません。

しかし、投資を理解し習得するためには、ある程度の知識と基本的な考え方を知る必要があります。

それは、どのような世界(武術やスポーツ、茶道や華道など)にも専門用語や「基本の型・考え方」があることと似ています。

投資の用語や、投資に付いて回るリスクの捉え方、資産形成の基本の型について考えてみましょう。

1. 投資と投機、資産形成と資産運用

これらの言葉は、意味が混同していたり、意図して使っているのか疑問を抱くような記事も見受けられます。

それは、インターネット上のブログや記事はもちろん、政府の専門家会議や報告書においてもです。

それは、これらの言葉が明確に切り分けられないことに起因していると考えられます。

まずは、言葉の意味を理解しましょう。

1)貯蓄と投資

投資と投機の前に、貯蓄と投資の違いを辞書(デジタル大辞泉)の意味から見てみます。

貯蓄

  1. 財貨をたくわえること。また、その財貨。
  2. 所得のうち、消費されないで残った部分。

投資

  1. 利益を得る目的で、事業・不動産・証券などに資金を投下すること。転じて、その将来を見込んで金銭や力をつぎ込むこと。
  2. 経済学で、一定期間における実物資本の増加分。

分かりやすいイメージは、「貯蓄=銀行預金」で「投資=株・投資信託」です。

 

貯蓄はいつでも引き出すことができる(流動性が高い)ため、日常生活資金やすぐに必要になるお金として持っておく必要があります。

一方で、投資は「利益を得る」ことが目的ですので、株や投資信託などの金融商品の形で保有することになります。

目的である利益を得るために一定期間が必要になるため、貯蓄に比べると流動性が低くなります。

そのため、投資はすぐに換金しなくて済むように、必要な貯蓄を除いた余裕資金の中で行います

2)投資と投機

結論から言うと、投資と投機はどちらも「利益を得ることを目的にした行為」という意味において同じです。

この2つの違いは、お金を投じているのが「投資は資本」「投機は機会」という点です。

その結果、投資と投機は一般的にこのように表現されます。

  • 投資は「リスクが低く、運用は中長期で、手堅いやり方」
  • 投機は「リスクが高く、運用は短期で、一発当てに行くやり方」
少し難しいので解説します。

投機は辞書(デジタル大辞泉)を見ると次にように書かれています。

投機

  1. 利益・幸運を得ようとしてする行為。
  2. 将来の価格の変動を予想して、現在の価格との差額を利得する目的で行われる商品や有価証券などの売買。

パッと見たところ違いが分かりませんが、「幸運を得ようとして」の記述がポイントです。

また、投資は「将来を見込んで金銭や力をつぎ込むこと」で、投機は「将来の価格の変動を予想して、現在の価格との差額を利得する」とあります。

ベンチャー企業の株で考えてみると、次のように考えることができます。

  • 「社会環境や長期的な時流、対象のベンチャー企業を分析し、10年後の成長を見据えて出資をする」のは、投資
  • 「対象のベンチャー企業が、昨日ニュースで取り上げられていたので株が上がるだろうと考えて株を購入する」のは、投機

そのため、「株は投資ですか?投機ですか?」の質問に対する答えは「株という商品をどう取り扱うによって、投資にも投機にもなり得る」となります。

コラム:英語の語源に見る「投資」と「投機」の違い

投資と投機の違いは英語圏でも議論があるようです。
その説明の1つとして語源によるものがあります。

投資:Investment
・投下資本、出資の意味の他、動詞のInvestには(権力・権限を)与える、の意味があります。
・語源は「In(中に)Vestire(服を着せる)」で、ここで服は法服を指しています。
つまり、人に権力を与えるように、お金に権力を与える意味に派生した説が有力とされています。

投機:Speculation
・不確かな情報による推論、投機、思索、の意味があります。
・語源は「Specula(物見やぐら)から遠くを観察すること」です。

先ほどのベンチャー企業に当てはめて見ると、英語の投資は「身近な出資者」の印象ですが、投機は「噂や憶測(2次情報)で株を購入している人」のようなイメージを持つのではないでしょうか。

3)資産形成と資産運用

次に資産形成と資産運用です。

「資産運用」という言葉は聞いたことがあるけど、「資産形成」は聞き覚えのないという人もいるかもしれません。

実際、辞書(デジタル大辞泉)には「資産形成」という言葉は載っていません

この2つの違いは、文字通り「資産をかたち作る(形成)」のか「既にある資産をさらに増やす(運用)」かの違いです。

こちらも明確な定義はありませんが、1,000万円が目安とされていることが多いです。

この場合、1,000万円を作るまでは「資産形成」、1,000万円をさらに増やしていくのは「資産運用」となります。

なぜ、このような言葉の使い分けをしているかというと、お金には「多いほど増えやすい性質」があるからです。

このグラフは、年利3%の投資信託で100万円と1,000万円を運用したときのイメージです。

運用額によるお金の増え方の違い

このように、10年間では運用額が100万円の場合は+30万円、1,000万円の場合は+305万円と、実に275万円の差が生じます。

同じ年利で運用しているので、元金に対する倍率は同じですが、絶対額は大きく変わります

つまり、資産形成の時期は投資で大きく増やすことは難しいため、貯金と投資を組み合わせながら、なるべく早く投資運用のフェーズに持っていくことが大切になります。

ここまでで、言葉の意味・違いはつかめたでしょうか?
次は、投資と投機の違いでも出てきたリスクについて考えてみましょう。

2. リスクとは何か?

投資の話をするときに「リスク」という言葉がよく出てきます。

「リスク」と聞くと、何か危険なこと、損失すること、のようなマイナスのイメージを持つ人もいると思います。

そのような意味合いも含まれていますが、本来のリスクは「挑戦」に近い意味です。

リスク(Risk)の語源はイタリア語のRiscare(リズカーレ)だと言われており、元々は「船乗り」を意味していました。

昔の船乗りは海賊や、荒波・断崖絶壁や岩礁の危険を伴いながら貿易を行なっていました。

そこから、Riscareは「勇気を持って試みる」「挑戦する」という意味を持つようになります。

つまり、投資におけるリスクとは「無闇に恐れる危険」や「想像できない損失」ではなく、「望む結果を得るために、正しく認識すべき可能性」です。

船乗りたちは、危険に対する備えを行なった上で航海をしていたことでしょう。

同じように、投資はリスクを正しく認識して十分な備えを行う必要があります。

一般的に金融商品はローリスク・ローリターン、ハイリスク・ハイリターンです。
特にハイリターンの商品を選択するときには、

  • 起こり得る事態・損失額
  • その事態・損失が許容できる範囲内か
  • 何が要因でその事態が起こり得るか
  • それはどのくらいの発生確率か
  • そのリスクを取ってでも、そのリターンを得たいか

を慎重に検討した上で、最後は船乗りのように覚悟を決めて判断する必要があります。

また、投資にはリスクに対する基本的な考え方があります。

次にその考え方を見てみましょう。

3. 投資の基本

投資の基本は「長期運用、分散投資」だと言われます。

もちろん、絶対に正しい方法というわけではありませんが、基本の考え方として知っておいて損はありません。

ご存知でない方はぜひ読んでみてください。

(1)長期運用

資産形成と資産運用の違いについてのお話で、お金には「多いほど増えやすい性質」があると言いました。

長期運用すると、この効果を得ることができます。

1,000万円を年利3%で、複利(得られた利益をそのまま投資に回す)で30年間運用した場合、お金はこのように増えます。

長期運用によるお金の増え方

最初の10年間で増えるのは344万円ですが、20年後から30年後にかけての10年間では621万円増えます

これが、多くの証券会社やアドバイザーが長期運用を推奨する理由です。

(2)分散投資

投資の基本のもう1つが分散投資です。

分散するのは、「資産」「時間」「通貨」などです。

  • 資産:株、投資信託、債権など特性の異なる商品を組み合わせる
  • 時間:時期を隔てて、複数回に分けて購入する
  • 通貨:日本円、米ドル、ユーロなど複数の通貨に分けて持つ

これらの分散を行うことによって、リスクを減らすことができます。

極端な例ですが、1社の株に全ての資産をつぎ込んでいて、その会社が倒産してしまった場合、全ての資産を失うことになります。

もちろん大きく成長すれば得られるものも大きいですが、これは非常にリスク(上下の振れ幅の可能性)が高い状態です。

このリスクをなるべく小さくするのが分散投資の考え方です。

1つずつ見ていきます。

① 資産(商品)の分散

資産(商品)は日々価格が変動しますが、当然ながら動き方が異なります。

日本経済が伸び悩んでいるときには、日本の株は全体として成長は鈍いですが、その中でも大きく伸びている会社はあります。

また、日本経済の動きとはあまり関係なく、新興国の中には大きく伸びている国もあります。

そのため、投資先を複数に分散することで、リスクを下げることができます

分散投資による安定運用
 
上のイメージは「国内の株式」「国内の債券」「海外の株式」の値動きの例と、この3つを組み合わせて運用した場合のイメージです。

組み合わせず、1つの資産だけで運用した場合、次のようなことが考えられます。

  • △の国内株だけに投資していた場合、5年後はマイナスになっていた可能性があります
  • □の国内債券だけに投資していた場合、安定はしていますが大きなリターンは得られない可能性があります
  • ◯の海外株だけに投資していた場合、5年後まで我慢できれば大きなリターンが得られますが、1-2年後に売ってしまっていたかもしれません

それに対し、この3つの商品に分散投資していた場合、国内株の急落の影響が緩和され、最終的には債券よりも高い結果が得られる可能性があります。

つまり、安定した商品、ハイリスクの商品を組み合わせて資産を持つことで、リスクを下げつつパフォーマンスを向上することができます。

これが、資産を分散することのメリットです。

② 時間の分散

また、株、投資信託、債権、外貨、これらはすべて日々価格が変動します。
これらをあるタイミングで1度に買うのではなく、分割して購入することで、高値買いのリスクを下げることができます

定額購入法、またはドル・コスト平均法と呼ばれる考え方です。

定額購入法を、ある会社の株を売買するケースで考えてみます。

ドル・コスト平均法
 
1月から5月の5ヶ月間に株を購入し、6月に取得した株をすべて売却するとします。

株価が図のように上昇・下降を繰り返し、6月には投資を始めたときと同じ価格だったとします。

これを1月に全額購入したケースと、毎月2万円ずつ購入したケースを考えてみると、以下の結果になります。

  • 一括購入した場合、最初に10株を購入・保有しているので、利益は0円です
  • 5ヶ月間定期購入した場合、同じ10万円で合計13株が購入できたので、3万円の利益が出ます

ドル・コスト平均法で購入した場合、図のように株価が高いときには少なく購入し、株価が低いときには多く購入することができます。

そのため、平均の取得価格を下げることができます。

もちろん、一括購入した方が利益が大きくなることもありますが、リスクを低減することができるドル・コスト平均法は覚えておきたい考え方です。

また、先ほどの株価の変化を見ると、このように思うかもしれません。

  • 10,000円で一括購入して、20,000円になったときに売れば良かったのでは?
  • 4,000円で一括購入して、10,000円になったときに売るのが1番儲かる
  • 定期購入で20,000円のときに買うのは損では?

株価が完全に予測できるのなら、その通りです。

しかし、現実には株価がどう動うかの予測は困難ですし、実際に売買をしていると以下のような心理も働きます。

  • 「10,000円が20,000円になったんだから、もっと上がるかもと思い売らなかった」
  • 「4,000円まで急落していたから、もっと下がるかもと思い買わなかった」

投資・資産運用を仕事や趣味にしている人は良いと思いますが、そうでない人にとって時間的・精神的にそこまではできないと思います。

そのため、リスクを下げて安定的に運用ができる、定額購入法を取り入れてみましょう。

③ 通貨や地域分散

資産・時間の分散以外に、通貨や地域の分散という考え方もあります。

例えば、日本円しか持っていない場合、長期的・継続的な円安になった場合、日本人は全体的に資産が減っていることになります。

一方で、円安になっているときには多くの場合、米ドル・ユーロは貨幣価値が高くなっていることが多いです。

そのため、通貨も分散して保有しているとリスクを下げることができます

また、不動産投資をしている場合は地域分散の考えも必要になります。

仮に1つの地域に集中して不動産投資をしている場合、災害などでそのエリアが甚大な被害を被ると資産価値が大きく下がる可能性があります。

そのため、同時に被害を受けることがないよう、地域を分散することへの配慮も大切になってきます。

このように、商品によってどのようなリスクがあるか、どの程度のリスクがあるかは異なります。

そのため、投資を行う際には購入を検討している金融商品のリスクを把握することが大切です。

4. 自分にあった投資スタイルを見つける

このように、投資にはリスクを下げて安定運用するための基本的な考え方があります

この考え方は誰にでも当てはまりますし、投資をする人ならみんなが知っておくべきことです。

まだ投資を実践していない人は、この考えを元に投資を始めてみましょう。

長期運用でお話しした通り、投資は早くから始めることも重要です。

そして、徐々に投資に慣れてきたら、自分なりの投資スタイルを見つけてみましょう。

投資は1人1人の資産や性格によってスタイルが変わってきます。

  • 資産が減ることに対して精神的に大きくダメージを受ける人は、安定したリスクの低い商品を中心に商品を構成するのが良いでしょう
  • ある程度資産があり積極的に増やしたい人は、安定資産を一定量持ちながら、新興国やベンチャーなど大きく伸びる可能性のある商品への投資も選択肢として考えられます

但し、忘れてはいけないのは、きちんと「投資対象の商品」と「リスク」を把握した上で判断することです。

それを元に考えると、自分が得意な領域に投資するのも1つの考え方です。

  • ITが得意で、IT関連の技術・ベンチャー企業に詳しい人であれば、「自分が伸びると確信している技術分野・企業」に投資をするのは、知らない業界の株を買うよりリスクが低いと考えられます
  • 海外赴任でインドで働いていた人で、インドの成長可能性を身をもって理解している人であれば、インドを中心にした新興国の投資信託に投資をすることも考えられます

ぜひ自分の性格や得意なことを洗い出して、自分に合った投資スタイルを見つけてみてください。

また、「実際に投資をする上で相談したい」「今の資産の組み合わせが適切か確認したい」「自分に合った資産構成を知りたい」という方は1度アドバイザーに相談してみましょう。

相談したからといって、必ずしも金融商品などを購入する必要はありません。
まずは気軽に相談してみましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
この記事では以下のことをお伝えしてきました。

  • 投資と投機、資産形成と資産運用の違い
  • リスクは「無闇に恐れず、望む結果を得るために正しく認識する」
  • 投資の基本は「長期運用」と「分散投資」
  • 基本を抑えたら、自分の投資スタイルを見つける

投資は「あなたらしい人生100年」を手助けしてくれます。
正しく理解し、未来に向けて資産形成・資産運用を行なっていきましょう。


 

銀行と証券会社で資産運用は何が違う?他の投資方法との違いも比較

みなさんは、資産形成・資産運用を行なっているでしょうか?

「人生100年時代」を生きる私たちは、自分の人生を豊かにするために、将来や老後のための資金を蓄える必要があります。

そのために、資産形成・資産運用は欠かせません。

資産形成・資産運用と聞くと、銀行や証券会社を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか?

相談先として銀行・証券会社の営業マン以外にも、自分で投資するやり方や、独立系金融アドバイザーであるIFAに相談する方法もあります。

また、最近ではテクノロジーの発達によりロボアドバイザーも出てきています。

こういった投資の方法と比較しながら、銀行や証券会社の特徴を見ていきましょう。

1. 投資・資産形成の方法

まず、そもそもなぜ投資・資産形成を行う必要があるのでしょうか?

それは、長寿化や少子高齢化を背景に、私たちは「自分の100年人生」を豊かにするために、老後資金を蓄える必要があるためです。

この背景をもっと知りたい方はこちらの記事もどうぞ。

「人生100年時代」に本気で向き合う!人生設計と資産形成

では、投資・資産形成にはどういった方法があるでしょうか?

大きく分けると3つのやり方があります。

  • 自分で投資・運用する
  • アドバイザーに相談する
  • 運用を委ねる(任せる)

それぞれの特徴を見ていきましょう。

(1)自己投資

自己投資は、一定の時間を資産運用に割くことができ、かつ自分で勉強・情報収集・分析することが好きな人におすすめです。

投資でリターンを得るには、常にリスクが伴います。

そして、そのリスクとリターンは、投資する金融商品・やり方によって大きさが変わってきます。

そのため、自分で運用する場合は、投資対象の金融商品のことを十分に把握する必要があります。

また、金融商品の価値は世の中の動向によって変わってきますので、経済状況や世の中の流れに常にアンテナを張って、投資や売却のタイミングを判断することも重要です。

そうしたことから、自己投資には労力が掛かるため、投資・資産運用に時間を割ける・得意な人におすすめの方法です。

(2)アドバイザーに相談する

アドバイザーに相談して運用する方法は、投資の初心者から上級者まで多くの人におすすめできる運用方法です。

多くの人は仕事や趣味を持ちながら、その傍らで資産運用をすることになると思います。
あまり多くの時間を割けない中で、資産運用を行うことは簡単ではありません。

そうした場合に、専門家のアドバイスを受けることは非常に有効な手段です。

相談先には「銀行」「証券会社」の営業担当の他に、「IFA(独立系金融アドバイザー)」「FP(ファイナンシャルプランナー)」「プライベートバンク」があります。

このうち、IFAと証券会社、プライベートバンクは、資産運用の相談に加えて運用自体を任せることもできます。

(3)運用を委ねる(任せる)

運用を委ねる方法は、資産運用そのものを専門家に任せる運用方法です。

ただし、完全に丸投げしていいという意味ではありません。

資産運用は、将来や老後資金のために行うものです。

そのため、1人1人のライフスタイルや将来の夢・目標、年収や保有資産によって、どのように行なっていくべきかが異なります。

そうしたことから、ライフプランと合わせて、どうやっていつまでにいくらの資産を作るのかを相談し、ファイナンシャルプランを作る必要があります。

そのファイナンシャルプランに沿って、資産運用をある程度任せることができます。

ただし、自分の資産ですので任せっきりはいけません。

定期的にプラン通りに資産が増えているかを確認し、見直しを行う必要があります。


2. 銀行と証券会社

投資や資産形成・資産運用の相談先として、銀行と証券会社があります。

そもそも、銀行と証券会社の違いはご存知でしょうか?

また、証券会社にも店頭証券(対面証券)とネット証券があります。
この2つの違いは何でしょうか?

銀行や証券会社によって違いはありますが、一般的にはこのような違いがあります。

銀行と証券会社の違い
 

証券会社の主な役割は、有価証券売買の「仲介」という点がポイントです。

証券会社が破綻したら、自分のお金がなくなるのでは?

と不安に思っている人もいるかもしれませんが、証券会社が破綻しても私たちのお金は原則全額守られます

一方で、銀行の場合は保護されるのは1,000万円までです。
つまり、保護の観点で安全性が高いのは実は銀行ではなく証券会社です。

その理由は、間接金融・直接金融の違いと、分別管理にあります。

言葉の意味と、銀行・証券会社それぞれの仕組みを見ていきましょう。

(1)銀行の仕組みと特徴

銀行の三大業務は「預金、貸出、為替」で、この3つが銀行法で固有業務として定められています。

銀行は、私たち預金者から預かったお金を、ずっと金庫に保管しているわけではありません。
お金を必要としている企業や個人(住宅ローンなど)に貸し出しています。

貸し出すときの金利と預金金利の差が、銀行の収益になります。

また、私たちは銀行を介して間接的に企業や個人に投資していると見ることもできます。
そのため、銀行は「間接金融」とも呼ばれます。

銀行は間接金融

お金を貸し出した場合、倒産・破産などの理由でお金を回収できないリスクがあります。

このリスクを背負っているのは銀行です。

また、銀行は私たちから預かっているお金を貸し出しているため、回収できなかった場合は私たちのお金が一部失われる可能性があります。

そして、銀行が破綻するほど経営が悪化してしまった場合に、私たちのお金が全額保証できない可能性があるため、預金保険制度で保護の範囲が1,000万円までと定められています。

※1,000万円を超える部分は、銀行の財政状況に応じて一部がカットされる可能性があります。
※当座預金など、全額保護対象となる口座もあります。ここでは分かりやすく伝えるために、割愛・要約しています。

銀行で取り扱う金融商品

また、銀行には固有業務以外にも行うことができる附随業務と周辺業務があります。

この固有業務以外の位置付けで、銀行でも金融商品を取り扱うことができます。

ただし、これら金融商品の販売業務は「固有業務の遂行を妨げない限度において」行うことができると、銀行法で定められています。

そのため、銀行で取り扱う商品は、複雑でなく比較的リスクが低い商品が取り扱われることが多いです。

一般的に取り扱われる商品は以下のようなものです。

  • 投資信託
  • 外貨預金
  • 債券

(2)証券会社の仕組みと特徴

証券会社の固有業務は「有価証券売買の仲介」です。

銀行との大きな違いは、証券会社は投資家とお金を集めたい人(企業や国)の仲介をしている点です。

私たち投資家は、「直接」企業や国に投資をしています。
その取引の仲介をしているのが証券会社です。

そのため、証券会社を使った取引は「直接金融」と呼ばれます。

証券会社の収益は、仲介した取り引きに対する手数料です。

証券会社は直接金融

銀行と異なり、投資家自身が直接投資をしているため、投資した商品の値上がり・値下がりのリスクを背負っているのも、私たち投資家自身です。

投資した商品の価値が下がった場合、投資家には損失が生じます。

一方で、証券会社は手数料をもらうだけなので、通常どおり収益が得られます。

また、証券会社には会社のお金と投資家のお金を分けて管理することが義務付けられています(分別管理)。

そのため、証券会社が倒産した場合でも、私たちのお金には影響がありません。

※証券会社自身も投資を行いますが、それは会社のお金で投資をしているのであって、預かっているお金で投資をすることはありません

このように、証券会社は取引が増えれば増えるほど手数料収入が増えます。

そのため、証券会社は魅力的な商品をたくさん用意し、取引を増やすことを目指します

店頭証券とネット証券の違い

店頭証券とネット証券の違いは、金融商品の売買を証券外務員を通して行うか、自分で行うかです。

店頭証券とネット証券の違い

証券外務員とは、金融商品の販売・勧誘等を行う人のことで、資格の取得が必要です。

店頭証券の場合は、金融商品の売買を行う際に外務員を通して行います。

代表的な店頭証券の会社には、野村證券、大和証券、SMBC日興証券があります。

一方、ネット証券の場合は、自分のパソコンなどからインターネットで売買を行います。

代表的なネット証券の会社には、SBI証券、楽天証券、マネックス証券があります。

ただし、店頭証券もインターネット取引ができるシステムを作っている企業が多く、店頭証券とネット証券の境は曖昧になってきています。

では、外務員がいる店頭証券の特徴をネット証券との比較でみてみましょう。

店頭証券の特徴(ネット証券との比較)

  • 投資・資産運用の相談ができる
  • 口座開設・商品の売買を任せることができる
  • 手数料が高い
  • 商品の数がネット証券と比べると少ない(銀行よりは多い)

実際に、店頭証券の代表である野村證券と、ネット証券の代表であるSBI証券の手数料を比較してみます。

対面証券とネット証券の手数料比較

店頭証券よりも、ネット証券の方が手数料が低いことが分かります。

店頭証券のインターネット口座は手数料が低くなりますが、一般的にネット証券より手数料は高いです。

一方で、店頭証券の場合は投資・資産運用の相談ができますので、手数料だけで判断せず、総合的にどちらが自分に向いているかを判断する必要があります。


3. 銀行・証券会社と他の投資方法との違い

ここまで銀行・証券会社の特徴を見てきました。

ここからは、「1. 投資・資産形成の方法」で取り上げている、他の投資方法との違いを見ていきます。

  • 自己投資
  • IFA(独立系金融アドバイザー)に相談
  • ロボアドバイザー

※ FPは具体的な商品の提案や取引ができません。また、プライベートバンカーは資産運用額が1億円以上、かつ紹介制など富裕層を対象としたサービスになっています。そのため、ここではアドバイザー相談は、代表的な相談先であるIFAとの違いを見ていきます。

(1)自己投資との違い

自己投資は、前の章で見てきたネット証券の口座を開いて自分で取引をする方法です。

自己投資については、冒頭「1. 投資・資産形成の方法」で、勉強・情報収集・分析することが好きな人におすすめと言いました。

店頭証券との違いで見てきた通り、ネット証券または店頭証券のインターネット専用口座では、証券会社の外務員に投資の相談ができません。

そのため、資産運用に掛ける労力と自分でリスクをコントロールできるかが重要になってきます。

一方で、自己投資は店頭証券に比べて手数料が低いというメリットがあります。

自分で勉強しながら、投資に一定の時間を掛けることができる人は自己投資が向いています。

自分で投資をするのは自信がない、誰かに相談したいという人は証券会社を選択肢の1つとして考えてみても良いかもしれません。

(2)IFA(独立系金融アドバイザー)との違い

IFAは独立系の金融アドバイザーのことで、内閣総理大臣の登録を受けた専門家です。

外務員資格を保有しているため、証券会社の外務員と同じく金融商品の販売・勧誘等を行うことができます。

証券会社の外務員と大きく異なる点は、証券会社に所属していないことです。
では、証券会社に所属していないことによる特徴は何でしょうか?

IFAの特徴(店頭証券との比較)

  • 中立的な立場でアドバイスを行うことができる
    • 証券会社の経営方針や、その時売り込みたい商品に左右されない
  • 幅広い金融商品の中から、最適な商品を提案することができる
    • 特定の証券会社に所属していないため、複数の証券会社の金融商品の中から選択することができる
  • 長期の資産運用に伴走することができる
    • 大手証券会社と比べて転勤や異動が少ないため、長期間担当することができる
        ※ 一般的な傾向であり、すべての証券会社・IFAに当てはまるわけではありません

IFAにはこのような特徴があります。

日本ではまだ馴染みが薄いかもしれませんが、イギリスやアメリカでは広く普及した存在になっています。

投資・資産形成を考えている方は、1度相談してみてはいかがでしょうか。

このサイトでは、自分に合ったIFAを探して相談することもできます。

相談したからといって、金融商品を買わないといけないことはありません
気軽に相談してみてください。

IFAについてもっと詳しく知りたい方はこちらもどうぞ。

資産運用の中立的なアドバイスがもらえるIFAとは?他の投資方法との違いも解説

(3)ロボアドバイザーとの違い

最後にロボアドバイザーとの違いです。

結論から言うと、アドバイザーという名称が付いていますが、

ロボアドバイザーは、他の金融商品とのバランスなども含めて、1人1人の状態に合わせてアドバイスをしてくれるサービスではありません。(2020年12月1日時点)

その点が大きな違いです。

まず、ロボアドバイザーは、インターネット上で投資や金融商品を提案してくれたり、運用を代行してくれるサービスのことで、「アドバイス型」と「投資一任型」の2つの種類があります。

1つ目の「アドバイス型」は、いくつかの簡単な質問に答えると、その内容に適した金融商品を提案してくれます。

こちらのタイプは、ネット証券や店頭証券のインターネット取引を中心に、多くの証券会社がサービスを提供しています。

ただし、投資信託の商品選びなどに活用されているのが現状です。
自分の資産状況や保有商品なども含めて、総合的なアドバイスまでは受けられません。

そのため、自己投資を行う上で活用するツールという位置付けになります。

2つ目の「投資一任型」は、金融商品の選択・売買から運用までを代行してくれるサービスです。

ロボアドバイザーと聞いたときに、多くの人がイメージするのは、この投資一任型ではないでしょうか?

投資一任型のメリットは、知識がなくても少額で始められて、手間が掛からないことです。

ただし、ロボアドバイザーに資産を全額投資する場合には手間が掛かりませんが、それ以外にも資産を運用している場合は手間は大きく変わりません。

また、ロボアドバイザーはまだ比較的新しい金融商品ですので、運用成績や安定性など見えていない部分もあります。

そのたため、全額投資することには一定のリスクがあると考えられます。

このようなことから、ロボアドバイザーは簡単に始めることができますが、本当に自分に適しているかを、始める前にきちんと考える必要があります。


まとめ

いかがでしたでしょうか。
この記事では銀行・証券会社のことをお伝えしてきました。

  • 投資のやり方には「自己投資」「相談して運用」「運用を委ねる」の3つがある
  •  銀行・証券会社にはそれぞれ特徴がある
    •  銀行は取り扱っている金融商品が少ない
    • 店頭証券では投資の相談ができるが、その分手数料が掛かる
    • ネット証券は手数料が低いが、自分で投資を行う必要がある
  •  他の運用方法の違い
    •  自己投資には、一定の労力と時間を掛け続ける必要がある
    •  IFAからは、中立的なアドバイスと幅広い商品提案が受けられる
    • ロボアドバイザーは、個別のアドバイスまではできない

投資・資産運用にアドバイザー相談を取り入れて、「あなたらしい人生100年」にしていきましょう。


 

 

債券投資は堅実な投資の手段!国債などの種類と金利の違い

みなさんは債券投資を行なっていますか?

私たちは人生100年時代を生きていく上で、将来や老後に向けて資産形成・資産運用を行っていく必要があります。

一方で、現在は銀行預金の金利が非常に低く、預金で資産を増やすことはできません。

資産を増やすためには投資を行う必要があります。

その投資の手段の1つが債券投資です。

一言で債券と言ってもいくつかの種類があります。

債券投資について学んで、あなたの投資に取り入れてみましょう。

1. 債券投資とは

債券投資とは、国や企業にお金を貸すことによって利子を得る投資です。

株式投資や投資信託の場合、事前に金利は分かりません。

一方で、債券投資の場合、債券自体に金利が定められていますので、1年後にいくらもらえるかの目処が立ちます。

この点が大きく異なります。

では、債券投資はどのくらいの人がやっているのでしょうか?

また、その仕組みはどうなっているのでしょうか?

債券投資の実施状況

全体における、債券の保有率は2018年時点で2.6%(*1)です。

なんらかの投資をしている人の中で、債券投資を実施している人は13.0%(*2)です。
株式投資は約80%、投資信託は約50%の人が取り入れていることを考えると、債券投資の実施率は低いと言えます。

債券の保有者割合

*1 日本証券業協会「平成30年度 証券投資に関する全国調査(個人調査)
*2 日本証券業協会「個人投資家の証券投資に関する意識調査について 2019年

債券投資を実施する人が少ないのはなぜでしょうか?

日本国債の年利が下がっていることが、1つの理由として考えられます。

国債の保有率と金利財務省「国債金利情報」、日本証券業協会「平成30年度 証券投資に関する全国調査(個人調査)」を元に、Route100編集部作成

日本国債の年利は国の政策金利と連動します。

1988年時点では日本国債の年利は6%を超えていました

それが2000年には1.7%まで下がり、2018年には0.05%まで下がっています。

それに合わせて、国債の保有率も徐々に下がって来ています。

ゆうちょ銀行やメガバンクの預金金利よりは高いですが、日本国債は金利の面では魅力が少ない金融商品だと言えます。

一方で、債券投資には安全性が高いというメリットがあります。

債券投資はなぜ安全なのでしょうか?

その仕組みを見てみましょう。

債券投資の仕組み

債券投資の仕組みはシンプルです。

お金を借りたい人(債券発行者)は金利や期間などの条件を提示して、お金を貸してくれる人(投資家)を募集します。

その条件で貸してもいいと思った投資家は、お金を貸す代わりに利子を受け取ることができます。

債券投資の仕組み

債券投資が安全だと言われる理由は2つです。

  • 債券は借金なので、発行者は返済する義務がある
  • 債券発行者が国や地方自治体である場合、破綻のリスクが低い

ただ、このことから分かる通り、すべての債券が安全だという訳ではありません。

「債券発行者が誰か」が重要です。

また、国債の金利が低いことを紹介しましたが、債券によって金利も違うため、実際には金利が高い債券もあります

そのため、リスクと金利のバランスをみて、資産に組み込むことを考えてみましょう。

具体的に、債券の種類を見てみましょう。


2. 債券の種類

債券の種類は、債券発行者によって分類されます。

  • 公債(国や地方自治体などの公的機関が発行)
  • 社債(民間企業が発行)

公社債はこの2つの総称です。

また、海外で発行された債券に投資することも可能で、その場合以下の名称で呼びます。

  • 外貨建て債券(海外の通貨で取引する債券)
  • 円建て外国債券(海外で発行された債券を、円で取引する金融商品)

それぞれの特徴を見ていきましょう。

(1)公債

国、地方自治体、政府関係機関が発行する債券です。

公債の特徴

  • 信用度が高く安全(利子と元本が国によって保証されている)
  • 他の債券に比べて金利が低い

国や地方自治体が利子と元本を保証しているため、信用度が高いことが最大の特徴です。

国の経済が破綻するデフォルト(債務不履行)が起こらない限り、利子や元本が支払われないことはありません。

公債の中で最もメジャーな債券が国債です。

国債には、5万円単位で購入できる「利付国債」と、1万円から購入できる「個人向け国債」があります。

また、国債以外には、地方自治体が発行する公募地方債と、政府関係機関が発行する政府保証債があります。

(2)社債

企業・会社が発行する債券です。

社債の特徴

  • 公債より金利が高い
  • 株と違い、企業が倒産した場合にも返済義務がある
  • 公債に比べるとリスクが高くなるため、企業の信用度を確認する必要がある

国に比べると倒産のリスクが高いため、一般的に金利は公債より高くなります

また、株式投資は企業への出資であるため、企業は投資家に対して支払いをする義務はありません。

企業が利子などを払うことはなく、投資家は株を第3者に売却することで利益を得ます。

一方で、債券は借金であるため、債券を購入した投資家は債権者になります。

そのため、企業が倒産した場合でも借金を返済してもらう権利があります。

ただし、企業が倒産した場合、残りの資産を債権者全体で分ける債務整理が行われるため、全額戻ってくる可能性は低いと考えられます。

そのため、社債を購入する際には、その企業が信用できるか・倒産リスクが低いかを確認する必要があります。

(3)外貨建て債券

外貨建て債券は、海外で発行された債券を現地通貨で保有する金融商品です。

外貨建て債券の特徴

  • 日本の債券よりも高い金利を得られる可能性がある
  • 為替リスクがある

外貨建て債券にも、日本と同じように公債と社債があります。

日本の国債は金利が低いとお伝えしましたが、海外には高金利の国もあります。

各国の政策金利

  • 日本   :-0.1%
  • ヨーロッパ:0%
  • アメリカ :1.75%
  • 中国   :4.35%
  • 南アフリカ:6.25%
  • トルコ  :11.25%

※それぞれ2020年1月時点の政策金利(政策金利とは、国の中央銀行が一般の銀行にお金を貸し出す際の金利のことで、国債や銀行預金の金利は政策金利に連動)

※2020年11月までに、多くの国がコロナによる経済影響を受けて政策金利を引き下げています

このように、新興国の中には非常に高い金利を持つ国もあるため、外貨建て債券を保有することで高い金利を得られる可能性があります。

ただし、外貨建て債券を行う際には2つのリスクを認識しておく必要があります。

  • デフォルト(債務不履行)のリスクがある
  • 為替リスクがある

海外の債券でも、国債であればその国自体が保証をしているため、安全性は比較的高いです。

ただし、デフォルトの可能性が低いとはいえ、ゼロではありません。

実際に、2020年5月にはアルゼンチンがデフォルト(国債に対する利子の支払い遅延)を起こしているので、リスクがあることを認識しておく必要があります。

また、外貨で資産を持つことになるため、購入時と売却時の為替の差が生じます。

例えば、先ほどの政策金利を見るとトルコは11.25%と非常に高い金利になっています。

しかし、トルコの通貨であるトルコリラは2015年1月には約52円でしたが、2020年10月には約13円まで円高トルコ安が進んでいます。

仮に1,000トルコリラ持っていた場合、日本円に換算すると52,000円だったものが、4分の1の13,000円まで下がっていることになります。

この状態では、いくら金利が高くても利益を出すことはできません

逆に円安になっていた場合は為替差益を得ることができますが、為替の動きは予測が難しいためリスクとして認識しておく必要があります。

例えば、株式投資であれば、決算報告により業績の予測が発表されますし、また経済が好況のときには多くの企業の株価が上昇します。

しかし、為替はあくまで通貨同士の相対価格であるため、通貨全体で見ると総和はゼロになります。

経済状況や政治の情勢、資源の開発や長期的な国の成長など、様々な要素が影響してくるため、為替を予測することは難しいと言えます。

(4)円建て外債

円建て外債の特徴

  • 日本の債券よりも高い金利を得られる可能性がある
  • 為替リスクがない

外貨建て債券が為替リスクを持つのに対し、円建て外債は円で取引をするため為替リスクがありません

円建て外債は海外での呼び名から、サムライ債とも呼ばれます。

債券自体は海外で発行されたもので、それを海外の証券会社などが日本で販売している金融商品です。

そのため、デフォルトのリスクは外貨建て債券と同じですが、為替リスクをなくしたい場合の選択肢になります。

ここまで、債券の種類を見てきました。
最後に、実際に債券投資を行う際の注意事項を見てみましょう。


3. 債券投資を行う上で気をつけること

債券投資を行う上で気をつけることは3つです。

  • 債券を満期まで保有する
  • 自分に適した金利の債券を選ぶ
  • リスクを分散する

(1)債券投資は満期まで保有する

債券には元本を返す日が定められています(満期償還日)。

満期の前に債券を売ることはできますが、その場合は市場の取引価格での売買になるため、損失が発生する可能性があります。

債券投資のメリットは、元本を保証して利子がもらえることですので、その期間持ち続けられる資金で運用することが望ましいです。

(2)債券投資は自分に適した金利の債券を選ぶ

債券の種類でご紹介したように、債券には国債のように手堅いが金利は0.05%のものから、金利10%を超えるがリスクも高い外国債まで幅広い金融商品があります。

お金には多ければ多いほど増えやすい性質があります。

例えば、100億円を国債0.05%で運用した場合は、1年間で500万円の利益が得られます。

しかし、100万円を運用した場合に、1年間で得られる利益は500円です。

資産形成に向いた商品とは言えないため、リスクと金利のバランスを考えて商品を選ぶ必要があります。

(3)投資はリスクを分散する

投資の基本は「分散投資」です

外貨建て債券で取り上げたトルコのように、多くの資産をトルコ国債で持つことはリスクが高いです。

しかし、外貨建て債券もヨーロッパ・アメリカ・アジアなどのように多くの国に資産を分けて持つと、為替リスクも小さくなります。

また、自分で複数の資産に分散しなくても、海外の債券を組み込んだ投資信託やETFもあります。

投資信託・初心者にもおすすめ!失敗の少ない資産運用

これらの点に注意して、ぜひ自分に合った金融商品・組み合わせを見つけてみてください。

また、「自分に合った債券投資を知りたい」「おすすめの債券を教えて欲しい」「投資について相談したい」という方は、1度アドバイザーに相談してみましょう。

相談したからといって、必ずしも申し込みなどを行う必要はありません。
まずは気軽に相談してみましょう。


まとめ

いかがでしたでしょうか。
この記事では以下のことをお伝えしてきました。

  • 債券投資は、国や企業にお金を貸すことによって利子を得る安全性の高い投資
  • 債券投資には色んな種類があり、金利が高い金融商品もある
  • 債券投資を行うときは、「リスクを分散して」「自分に適した金利の債券を選び」「満期まで保有」する

債券投資は「あなたらしい人生100年」を手助けしてくれる、有用な資産形成・資産運用の手段です。

ぜひ、あなたの資産形成・資産運用に取り入れてみてください。


 

自己投資の資産運用はリスクコントロールが要、他の投資方法との違いは?

みなさんは、資産形成・資産運用を行なっているでしょうか?

「人生100年時代」を生きる私たちは、自分の人生を豊かにするために、将来や老後のための資金を蓄える必要があります。

そのために、資産形成・資産運用は欠かせません。

資産形成・資産運用と聞くと、インターネットでの取引や証券会社の営業マンをイメージする人が多いかもしれません。

実際に、インターネットの口座数は増えており、自分で投資を行う人は増えています。

また、インターネット上にも、多くの投資に関する情報があり、学ぶ機会も多くあります。

一方で、情報が多すぎて、結局どう資産運用すれば良いのか、迷っている人も多いのではないでしょうか?

そういった方は、アドバイザーへ相談することも1つの手段です。

それぞれの投資方法の特徴を見ていきましょう。

1. 投資・資産形成が必要な背景

 
まず、そもそもなぜ投資・資産形成を行う必要があるのでしょうか?

それは、長寿化や少子高齢化を背景に、私たちは「自分の100年人生」を豊かにするために、老後資金を蓄える必要があるためです。

人生100年時代の背景はこちらの記事もどうぞ。

「人生100年時代」に本気で向き合う!人生設計と資産形成

国も厚生労働省や金融庁を中心に、少子高齢化や人生100年時代を見据えて、政策を打ち出しています。

まず、厚生労働省は1980年頃から徐々に、少子高齢化を見据えて定年年齢と年金制度を改正してきました。

そして、近年では以下のような制度改正が行われています。

  • 定年の引き上げ(高年齢者雇用安定法の改正)
    • 2025年までに、すべての企業に対し定年65歳以上への引き上げ、または継続雇用を義務化
    • 2021年からは、定年年齢70歳を努力目標として設定
  •  年金制度の改正(年金制度の改正)
    • 2020年に、受給開始年齢を60〜75歳の選択制
    • 2020年から、iDeCo(個人型確定拠出年金)の加入対象年齢を60歳から65歳へ引き上げ

また、金融庁は2003年から「貯蓄から投資へ」をスローガンに投資を促す施策を行なっています。

  • 2014年から、一定の投資額に対して税金が掛からないNISA(少額投資非課税制度)をスタート

これら省庁の動きからも、投資・資産形成が必要なことが分かります。

では、実際に投資を行う人は増えているのでしょうか?


2. 自己投資(自分で投資・資産運用を行う)

「投資」「資産運用」と聞くと、インターネットでの取引が頭に浮かぶ人も多いのではないでしょうか?

実際に、いわゆる「ネット証券会社」の口座数は大幅に増加しています。

対面証券の大手である、野村證券と大和証券の口座数は2013年から2020年にかけて、横ばいから微増です。

それに対し、ネット証券の大手であるSBI証券と楽天証券は、同じ期間に口座数が2倍以上に増加しています。

さらに、2020年3月には初めて、ネット証券会社であるSBI証券が証券会社最大手の野村證券の口座数を上回りました。

このことからも、自己投資を行う人は増えていると考えられます。

では、みなさんどのような情報を元に投資を行なっているのでしょうか?

投資を行う際の情報源

ネット証券と同じように、インターネットでの情報収集を行う人が多いようです。

金融商品を選択する際の情報源金融庁「金融リテラシー調査(2019年)」を元に、Route100編集部作成

金融庁の金融リテラシー調査からは、次のことが分かります。

  • 年配層ほど、対面証券やマスメディアの活用が多い
  • 若年層になるほど、インターネットの活用が多くなり、対面証券やマスメディアの活用は減る
  • インターネットの活用は全年代で多い(70代でも一定数の利用がある)

年代差はありますが、やはり多くの人がインターネットを情報源にしていることが分かります。

自己投資を行う際に注意すること

自己投資は、自分で勉強し実際の投資を行うやり方です。

そのため、一定の時間を資産運用に割くことができ、かつ自分で勉強・情報収集することができる人におすすめの投資方法です。

投資は資産形成・資産運用に有効な手段ですが、大切に蓄えた資産が減ってしまう可能性もあります。

正しく商品や企業を理解せず、噂で商品を選択したり、売買のタイミングを判断することは危険です。

インターネットを中心に多くの情報があるため、学ぶ機会や教材は豊富にあります。
一方で、情報の見極めが難しいとも言えます。

例えば、インターネットの情報源の1つであるTwitterやYoutubeには、このように個人から専門家までが混在しています。

  • 個人が発信する情報
  • 企業やメディアが発信する情報
  • 金融の専門家が発信する情報

そのため、どういったメディアで、誰が、何を目的に発信しているかを考えることが重要です。

その上で、その情報をどう捉えるか、最後は自分で判断する必要があります。

また、情報の見極め・判断を行うためには、継続的な勉強と情報収集が欠かせないと考えられます。

このように、自己投資には知識が必要であり、労力が掛かりますが、投資自体を楽しめる人や、勉強することが苦にならない人には、自己投資は資産運用の有効な手段です。

では、投資についての十分な知識がない場合や、十分な時間が取れない場合はどうすればいいでしょうか?

他の投資方法を考えてみたいと思います。


3. 投資の知識がない・時間がない人におすすめの資産運用方法

投資の知識がない・時間がない人には、アドバイスをもらって資産運用することをおすすめします。

アドバイスをもらうには、大きく2つの方法があります。

  • ロボアドバイザー:少額投資、または自己投資と組み合わせたい人向け
  • 投資相談サービス:株・投資信託などを、自分の資産に合わせて運用したい人向け

(1)ロボアドバイザー

自己投資と比べた
ロボアドバイザーの特徴

  • 資産運用に掛かる労力が少ない
    •  運用をほとんど任せることができる(投資一任型)
    • 自己投資の補助として使うことができる(アドバイス型)
  • 手数料が高くなる

ロボアドバイザーには、「投資一任型」と「アドバイス型」の2つの種類があります。

投資一任型

資産運用のほとんどすべてを任せることができるロボアドバイザーです。

いくつかの質問に答えると、運用方針が診断され、その後は資産の組み替えなども含めて自動で資産運用を行なってくれます

ただし、資産運用を任せるため、一定の手数料が掛かります

また、資産の一部だけをロボアドバイザーに投資する場合、資産全体の見直しなどは自分で行う必要があります。

少額投資ですべての資産をロボアドバイザーで運用した場合は、労力を減らすメリットを最大限受けることができますが、ロボアドバイザー以外にも資産がある場合は、本来のメリットは減ってしまいます

アドバイス型

アドバイス型は、いくつかの質問に答えることで、おすすめの投資信託などを教えてくれるサービスです。

ネット証券を中心に、多くの証券会社で提供されています。

例えば、現在日本では5,800を超える投資信託があります。(2020年9月30日時点)

この中から、自分に合った投資信託を見つけるのは、大変な作業です。

そのようなときに、労力を省くために役に立つのがアドバイス型のロボアドバイザーです。

ただし、現状は投資信託を中心にしたアドバイスに限定されており、他の保有資産などを含めたアドバイスまでは受けることができません。

そのため、自己投資の補助として活用することをおすすめします。

(2)投資相談サービス

自己投資と比べた
投資相談サービスの特徴

  • 自分に合った資産運用のアドバイスを受けることができる
  • 資産運用に掛かる労力が少ない
  • 手数料が高くなる可能性がある

投資相談サービスには、IFA(独立系金融アドバイザー)、証券会社、銀行などがあります。

※この他にも、1億円以上の運用額が目安のプライベートバンカー、金融商品の提案はできないFPもありますが、ここでは割愛します

自分に合った資産運用のアドバイスを受けることができる

アドバイザーは、保有している金融資産や家族構成、ライフプランに合わせてアドバイスを行います。

そのため、

  • 既に保有している金融資産を見直した方がいいか
  • そもそも明確なライフプランがないが、いつまでにいくらの資産をどうやって作るべきか
  • 自分が求めるリスクとリターンを実現するには、どういった金融資産の組み合わせがいいか

など、幅広い相談を行うことができます。

資産運用に掛かる労力が少ない

また、アドバイザーには資産運用も委任することができるため、資産運用の労力を減らすこともできます。

最初に資産運用の相談を行うなど、多少の手間はありますが、その分最適なアドバイスを受けることができます。

手数料が高くなる可能性がある

ロボアドバイザー同様、資産運用をある程度任せることになるため、自己投資よりは手数料が高くなる可能性があります。

ただし、アドバイスを元に自分で運用することで手数料を抑えることもできるため、1度相談してみることをおすすめします。

また、投資相談のおすすめはIFA(独立系金融アドバイザー)です。

IFAは、銀行や証券会社と違い、特定の金融機関に所属していない中立的な立場のアドバイザーです。

そのため、投資可能な商品に制限がなく、フラットな商品提案ができるからです。

また、IFAについてもっと知りたい方はこちらもどうぞ。

資産運用の中立的なアドバイスがもらえるIFAとは?他の投資方法との違いも解説

まとめ

いかがでしたでしょうか。
この記事では自己投資のことをお伝えしてきました。

  • 私たちは投資・資産運用を行う必要がある
  • 自己投資を行う人は増えている
  • 自己投資を行う際の情報源はインターネットが多いが、使い方には注意が必要
  • 自己投資を行う場合、継続的な勉強と情報収集が欠かせない
  •  時間がない人におすすめの運用方法は2つ
    •  少額投資、または自己投資と組み合わせたい人は、ロボアドバイザー
    • 自分の資産に合わせて運用したい人はIFA

「自己投資は難しい」、「アドバイザーを受けてみたい」という方は、1度相談してみてはいかがでしょうか。

相談したからといって、金融商品を買わないといけないということはありません
お気軽にご相談ください。


 

金融リテラシーはなぜ必要?投資の失敗を防ぐための知識を身に付ける

「金融知識に自信がありますか?」と聞かれたら、みなさんはどう答えるでしょうか?

金融庁が2019年に行なった調査では、「自信がある」と答えた人は全体の12%でした。

では、金融リテラシー(知識・判断力)の高さは、私たちの家計や金融行動にどのような影響を与えるのでしょうか?

金融リテラシーの現状、具体的な内容、投資・資産形成に失敗しないための方法を考えてみましょう。

1. 金融リテラシーとは?

金融リテラシーとは「金融に関する知識や情報を正しく理解し、適切に判断することができる能力」を指します。

リテラシーは英語で「Literacy」と表記し、この言葉はラテン語の「Literatus(教育を受けて、読み書きが出来る者)」が語源だとされています。

つまり、元々は読み書き能力のことでしたが、現代では拡張して使われることが多く、一般的に「なんらかの分野で用いられている記述体系を理解・整理し、活用する能力」を指します。

理解することに加えて、「活用する能力」が含まれていることがポイントです。

また、金融リテラシー・金融教育は、ある程度お金を持っている人が学ぶもの・身に付けるものという印象を持つ人もいるかもしれません。

しかし、金融庁は29歳までの若年社会人を「生活面・経済面で自立する時期」として、「ライフプランの実現のためにお金がどの程度必要かを考え、計画的に貯蓄、資産運用を行える」ことが必要だとしています。

金融庁は2013年に「生活スキルとして最低限身に付けるべき金融リテラシー(お金の知識・判断力)」を発表しました。

これに沿って作られた「金融リテラシー・マップ」では、小学生から高齢者まで年齢層別に、知識や実践すべき内容が具体的に記されています。

金融リテラシー・マップでは、一般社会人について次のように記述されています。

(生活設計について)
・環境変化等を踏まえ、必要に応じライフプランや資金計画、保有資産の見直しを検討しつつ、自分の老後を展望したライフプランの実現に向け着実に取り組んでいる
・学校と連携しつつ、家庭内で子の金融教育に取り組む

(資産形成商品について)
・自らの生活設計の中で、どのように資産形成をしていくかを考えている
・リスクとリターンの関係を踏まえ、求めるリターンと許容できるリスクを把握している
分散投資・長期投資のメリットを理解し、活用している
・分散投資を行っていても、定期的に投資対象(投資する国や商品)の見直しが必要であることを理解している

金融庁「金融リテラシー・マップより抜粋

では、実際に金融リテラシーは必要なのでしょうか?

金融リテラシーが、私たちの家計や金融行動にどのような影響を与えているのかを見てみましょう。

2. 金融リテラシーが高い人ほど、家計・資産が健全

2019年に金融庁が行なっている金融リテラシー調査の結果は、金融リテラシーが高い人ほど望ましい金融行動を取る、投資を実践している人が多いことを示しています。

金融リテラシーと金融行動の関係金融庁「金融リテラシー調査(2019年)」を元に、Route100編集部作成

金融リテラシー調査では、金融の知識を問う正誤問題において、正答率が80%以上の人を「高リテラシー」、正答率が20%以下の人を「低リテラシー」としています。

この定義でいくつかの金融行動を見ると、金融リテラシーが高いほど望ましい金融行動をしていることが分かります。

金融リテラシーが高い人には以下の傾向があります。

  • 緊急時に備えた資金を確保している
  • お金について長期計画を立て、達成するよう努力している
  • 老後の生活費について資金計画をたてている
  • 株式を購入したことがある
  • 金融資産額が500万円以上ある

この結果を見る限り、金融庁が提言するように金融リテラシーは生活スキルとして一定レベルが必要だと言えそうです。

次に、金融リテラシーとは何か、具体的な内容を見てみましょう。

3. 金融リテラシーの4分野15項目を知る

先ほども取り上げた、金融庁の「最低限身に付けるべき金融リテラシー」には4つの分野・15の項目があります。

金融庁「最低限身に付けるべき金融リテラシー(4分野・15項目)について」より抜粋

分野別に「何を身に付けるべきか」を見ていきましょう。

※金融庁「金融経済教育研究会(2013年4月発表)」の内容を要約・補足しています
※分野・項目の名称は読みやすさを考慮し、一部「読点の追加」「漢字の仮名変換」を行なっています


分野1:家計管理

項目1:適切な収支管理の習慣化

はじめに、大前提として常に黒字を保ち続けることが重要だとしています。
そのためには、収入と支出をきちんと把握し、計画性のない支出を抑える必要があります。


分野2:生活設計

項目2:ライフプランの明確化、およびライフプランを踏まえた資金の確保の必要性の理解

2つ目は、将来に向けた計画です。

価値観が多様化してきている中で、自らのライフプランを立て、それに対する備えを行うことが必要だとしています。

  • ライフプランと、それに伴って想定される何段階かのライフステージのイメージを明確化する
  • ライフプランを踏まえ「いつ」「何のために」「どれくらい」の資金が必要かを把握する
  • 不測の事態や老後資金確保のために、保険への加入や貯蓄・資産運用を行う姿勢を身に付ける

分野3:金融知識、および金融経済事情の理解と適切な金融商品の利用選択

3つ目は、具体的な金融商品についてです。

金融商品の契約にあたっての基本事項と、保険・ローン・投資商品の3つがあります。

1. 金融取引の基本としての素養

ここでは、取引・契約における基本事項に触れています。
金融に限らず、現代社会における基本事項ですので、すべての人が身に付ける必要がある内容です。

項目3:契約にかかる基本的な姿勢の習慣化

金融取引のトラブル要因として、自分で内容を確認せず取引相手に委ねてしまっている点を取り上げ、以下の2つを求めています。

  • 自分で契約内容を確認し、理解できない契約は締結しない
  • 契約締結後も、定期的に商品の状況を確認する

項目4:情報の入手先や契約の相手方である業者が、信頼できる者であるかどうかの確認の習慣化

金融分野は専門性・複雑性が高いことから、詐欺が発生しやすいとした上で、取引前に信頼できる業者であるかどうかの確認が必要だとしています。

最低限、国の登録業者であること、または自主規制機関に所属していることをウェブサイト等で確認することを求めています。

項目5:インターネット取引は利便性が高い一方、対面取引の場合とは異なる注意点があることの理解

インターネットは利便性が高いとした上で、暗証番号の漏洩・盗難、誤発注のリスクがあることを理解し、対策を行うことが必要だとしています。

2. 金融分野共通

次に、具体的な商品を検討する前段として、金融に関する基礎知識を理解する重要性に触れています。

項目6:金融経済教育において基礎となる重要な事項や、金融経済情勢に応じた金融商品の利用選択についての理解

金融に関する基礎知識と、その要素が商品にどのような影響を与えるのかを理解する必要があるとしています。

  • 金利(単利・複利)、インフレ・デフレ、為替、リスク・リターンといった重要な事項を十分 に理解することが必要である
  • 実際に商品を選択する際には、これらの動向に十分考慮する

項目7:取引の実質的なコスト(価格) について把握することの 重要性の理解

特に金額が大きい長期的な取引について、表面的なコストやリターンだけでなく、付随して発生する費用や手数料などを考慮した実質価格を把握する必要があるとしています。

具体的な事例として以下を取り上げています。

  • 住宅ローンの場合、金利だけではなく、契約に付随する団体信用保険の保険料等も含めて全体の価格だと捉える必要がある
  • 資産形成商品の投資は、長期にわたって安定的に得られるであろう利回りと、手数料率の影響を十分に考える必要がある

3. 保険商品

ここからは具体的な商品についてです。

まず保険については大きく2つの点に触れています。

項目8:自分にとって、保険でカバーすべき事象 (死亡・疾病・火災等)が何かの理解

保険の商品選択にあたっては、「自分が何のリスク(死亡、疾病、火災、 地震、介護等による損失や危険の発生の可能性)に備えるべきかよく整理した上で判断することが重要である」としています。

項目9:カバーすべき事象発現時の、経済的保障の必要額の理解

また、重複した保険への加入や、過剰な保険への加入を避けるために、以下のことを考える必要があるとしています。

  • 保険以外の社会保障や企業福祉、本人の貯蓄等で賄える金額
  • 保険商品でどの程度の金額の備えが必要かをよく整理した上で判断する

4. ローン・クレジット

項目10:住宅ローンを組む際の留意点の理解

借入額が高額になり、返済期間が長期に渡る住宅ローンは、経済状況の変化も想定し計画・対策を講じる必要があるとしています。

  • 無理のない借入限度額を設定し、余裕のある返済計画を立てる
  • 金利上昇、失業による収入減への対策

項目11:無計画・無謀なカードローン等や、クレジットカードの利用を行わないことの習慣化

現金がなくても購入ができるクレジットカードや、金利負担の高いカードローンの利便性に注意し、慎重な利用を促しています。

また、これらのサービス利用による返済遅延がおよぼす社会的信用力の低下にも触れ、将来にわたって重大な影響があることへの理解を求めています。

5. 資産形成商品

項目12:人によってリスク許容度は異なるが、仮により高いリターンを 得ようとする場合には、より高いリスクを伴うことの理解

一般に、リターンとリスクはトレードオフの関係にあり、金融商品からより高いリターンを得ようとする場合には、より高いリスクを伴うことの理解が重要である。

金融庁の「最低限身に付けるべき金融リテラシー

とした上で、リスクを避けてばかりいてもリターンが得られないため、1人1人が許容できるリスクとどの程度のリターンを得たいかのバランスを考える必要があるとしています。

項目13:資産形成における、分散(運用資産の分散・投資時期 の分散)の効果の理解

資産形成を考える上で、リスク分散の考え方について触れ、具体的には以下の分散の理解を促しています。

  • 国内株式・債券など「投資対象の分散」
  • ドルなどの外国通貨を対象とする「通貨の分散」
  • 同一商品であっても購入時期を変える「時期の分散」

投資の考え方はこちらの記事で詳しく紹介しています。

投資の基本!投機とは違う、失敗しないための資産形成術

項目14:資産形成における 長期運用の効果の理解

分散投資に加え、長期投資を行うことへの理解を促しています。

  • 継続的に運用を行うことによる「複利」の恩恵を受けられる
  • いくつかの分散投資を行うことで、金融危機などの際のパニックによる底値売りを避けることができる

分野4:外部の知見の適切な活用

項目15:金融商品を利用するにあたり、外部の知見を適切に活用する必要性の理解

ここまで金融リテラシーの重要性について述べてきた上で、次のように専門家のアドバイスを受けることが望ましいとしています。

金融分野は専門性・複雑性が高く、また、個々人の心理的・感情的な要 素にとらわれることがあることから、一定の金融リテラシーを身に付けていても、自分だけの知識・判断で完全に身を守ることは難しい

金融商品を利用選択するにあたり、事前に適切な情報や相談先にアクセスすることができ、アドバイスを求めることの必要性を理解していることは、 金融リテラシーの重要な要素である。

金融庁の「最低限身に付けるべき金融リテラシー

ここでは、金融リテラシーの具体的な内容について紹介してきました。

では、実際私たちの金融リテラシーのレベルはどの程度なのでしょうか?
海外との比較を見てみましょう。

4. ヨーロッパ諸国に比べると日本は金融リテラシーが低い

金融庁の金融リテラシー調査には、ヨーロッパ諸国やアメリカとの比較があります。

この調査結果によると、少なくともヨーロッパ諸国に比べると日本は金融リテラシーが低いと考えられます。

アメリカとの比較

アメリカとの比較では正誤問題では日本がやや劣る結果であったものの、好ましい行動は日本が高い結果となっているため、一概に日本が金融リテラシーが低いとは言えない結果になっています。

日本とアメリカの金融リテラシー比較金融庁「金融リテラシー調査(2019年)」を元に、Route100編集部作成
  • 正誤問題の正解率は日本が6%低い
  • 行動特性では、アメリカは「借り入れが多い」と感じている人が多く、「金銭的備えがない」人が多い

ヨーロッパとの比較

一方でヨーロッパ各国と比較すると、日本の正誤問題の正解率と好ましい行動は、いずれも低い結果になっています。

国によっての差はありますが、少なくともイギリス・ドイツ・フランスと比べると金融リテラシーが低いと言えます。

日本とヨーロッパの金融リテラシー比較金融庁「金融リテラシー調査(2019年)」を元に、Route100編集部作成
  • 日本は、正誤問題ではいずれの国よりも正答率が低く、フランスとは12%の差がある
  • 行動特性や考え方も、日本は全体的に順位が低く、特に「お金の運用や管理への注意」と「消費より将来の備えを重視」には大きく差がある

この結果も踏まえ、私たちはこれから何をして行くべきでしょうか?

5. 投資・資産形成の失敗を防ぐために必要なこと

1つの答えは、「金融リテラシーを身に付けること」「アドバイスを受けること」です。

これは金融庁の「最低限身に付けるべき金融リテラシー」の提言そのままです。

金融リテラシーを身に付ける

2章でお話しした通り、金融リテラシーが高い人ほど、望ましい金融行動を行なっている人の割合が多く、実際に500万円以上の金融資産を保有している人も多い傾向があります。

金融リテラシーと金融行動の関係金融庁「金融リテラシー調査(2019年)」を元に、Route100編集部作成

日本とヨーロッパの金融リテラシーの比較も、このことを表していました。

そのため、まずは金融リテラシーを身に付けることが大切です。

アドバイザーに相談する

先ほどの金融庁の金融リテラシー調査でも、リテラシーが高い人ほどアドバイスを受ける人の割合が多くなっています

このことからも、アドバイスを受けることの重要性が理解できます。

「ポートフォリオを見直したい」「今の投資のやり方が正しいか相談したい」「ライフプランに合った資産形成の方法を知りたい」という方は1度アドバイザーに相談してみましょう。

相談したからといって、必ずしも申し込みなどを行う必要はありません。
まずは気軽に相談してみましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
この記事では以下のことをお伝えしてきました。

  • 金融リテラシーとは「金融に関する知識や情報を正しく理解し、適切に判断することができる能力」のこと
  • 金融リテラシーが高いほど、家計・資産が健全
  • 金融リテラシーの具体的な内容
  • ヨーロッパと比べると日本人は金融リテラシーが低い
  • 投資・資産形成の失敗を防ぐには、「金融リテラシーを身に付け」て「アドバイスを受ける」ことが必要

金融リテラシーを身に付け、アドバイスを受けて資産形成し、「あなたらしい人生100年」にしていきましょう。


 

投資信託・初心者にもおすすめ!失敗の少ない資産運用

資産形成・資産運用に投資信託を活用していますか?

投資信託は、投資の基本である「長期運用」「分散投資」に向いた金融商品です。
そのため、投資の初心者を含め、多くの人におすすめできます。

ただ、一言で投資信託と言っても様々な種類があり、商品を選ぶ際に気をつけるべきポイントがあります。

また、投資信託はNISAやiDeCoの対象商品にもなっているため、知っておくととても役に立ちます。
投資信託とはどういう金融商品なのか、その特徴やポイントを改めて学んでみましょう。

1. なぜ資産形成・資産運用が必要か

みなさんは資産形成・資産運用を行っているでしょうか?

「なんとなく将来のためにやっている」
「預金ではお金が増えないからやっている」
「年金や老後資金が不安だからやっている」

といった方も多いと思います。

私たちは、少子高齢化・長寿化による年金制度への不安もあり、多かれ少なかれ自分の人生は自分で作っていく必要があります。

実際、2010年代に国も「人生100年時代」に向けて「資産形成・資産運用」を促す政策を打ち出しています。

  • 2016年に「ライフシフト – 100年時代の人生戦略 」が出版され、人生100年時代が話題となる
  • 2017年に当時の安倍晋三・内閣総理大臣を議長として「人生100年時代構想会議」が発足(この会議にはライフシフトの著者リンダ・グラットンさんが招聘されています)
  • 人生100年時代構想会議を受けて、同2017年に「新しい経済政策パッケージ」が閣議決定

資産形成・資産運用を後押しする、NISA・iDeCoがスタートしたのも同じ時期です。

  • 2014年に、税制優遇のある少額投資非課税制度の「NISA」がスタート
    • 一般口座は、年間120万円までの新規金融商品購入について、5年間運用益に対する税金が免除
    • 積立口座は、年間40万円までの新規金融商品購入について、20年間運用益に対する税金が免除
  •  2017年に、個人型確定拠出年金が「iDeCo」の愛称で、ほぼ国民全員に対象が拡大
  • 運用益が非課税、積立金額が所得控除の対象となるなどの税金の優遇

このNISA・iDeCoは対象とする金融商品が投資信託中心になっています。

では、投資信託とはそもそも何でしょうか?


2. 投資信託とは

投資信託は、多くの人から集めたお金をひとつの大きな資金としてまとめ、運用の専門家が様々な商品に分配して投資・運用する金融商品です。

もう少し詳しく、投資信託はどれくらいの人がやっていて、どんな仕組みなのかを見ていきます。

投資信託の保有・資産状況

全体における、投資信託の保有率は2018年時点で9.2%(*1)です。

2000年の同じ調査における保有者率は8.8%ですので、投資信託に投資する人はあまり増えていないと言えます。

ただし、なんらかの投資をしている人の中では53.8%(*2)に登ります。
大半が投資信託を保有していることから、投資をしている人の中では一般的な金融商品だと言うことができます。

投資信託の保有者割合

*1 日本証券業協会「平成30年度 証券投資に関する全国調査(個人調査)」
*2 日本証券業協会「個人投資家の証券投資に関する意識調査について 2019年」

一方で、投資信託の資産残高は2010年から2019年にかけて59兆円増えています

投資信託の資産残高の変化

これは何を意味しているでしょうか?

投資信託を実施する人があまり増えていない中で、投資信託の資産残高が9年間で2倍近く増えています。

つまり、投資信託を実施している人の資産が大きく増えている、ということです。
(この資産残高には企業も含まれているため、個人の資産残高が2倍に増えているわけではありません)

投資信託の仕組み

では、そもそも投資信託とはどのような仕組みなのでしょうか?

投資信託は、「販売会社」「運用会社」「受託会社」の3者によって運営されています。

そのため、預けた資産が安全に保たれ、破綻するリスクが低いという特徴があります。

投資信託の仕組み

私たちが意識することが多いのは、店頭やインターネットを通して直接やり取りする販売会社(銀行や証券会社)です。

しかし、販売会社という名前の通り、銀行や証券会社は直接投資には関わっていません

実際に投資を実施しているのは、その後ろにいる運用会社と信託銀行です。

運用会社は、投資信託の運用方針に従って、金融市場の動向を見ながら信託銀行に運用の指示を行います

運用を信託銀行に委託しているため、「委託会社」と呼ばれます。

信託銀行は、運用会社の指示に基づいて、実際に金融市場への投資・運用を行います

指示を受けて実際の運用を行うため、「受託会社」と呼ばれます。

このように、役割と権限が分かれていることで、投資家の資産が保護される仕組みになっています。

また、投資家から預かった投資信託の資産は、法律で受託会社の資産とは分けて管理することが義務づけられています(分別管理)。

そのため、万が一「販売会社」「運用会社」「受託会社」のどこかが倒産しても投資家の資産は守られます

この「3者による運営」と「分別管理」が、投資信託は預けた資産が安全に保たれ、破綻するリスクが低いと言われる理由です。


3. なぜ投資信託がおすすめか

投資信託をおすすめする理由は、投資の基本である「長期運用」と「分散投資」が少額から実施できるからです。

投資の基本を知りたい方は、こちらの記事もどうぞ。

投資の基本!投機とは違う、失敗しないための資産形成術

長期運用

投資信託の1年間の利回りは年利3〜9%ほどなので、短期的に大きな利益が得られる金融商品ではありません。

例えば、1,000万円投資して年利が3%の場合、1年後に得られる利益は30万円です。

決して少ない額ではありませんが、「1,000万円も投資して、30万円かぁ。。」と思う人もいるかもしれません。

たしかに1年で投資をやめた場合は1,030万円です。

しかし、1,000万円を年利3%・複利で運用した場合、30年後には2,427万円になります

長期運用によるお金の増え方

最初の10年間で増えるのは344万円ですが、20年後から30年後にかけての10年間では621万円増えます

投資信託はプロが運用しているとは言え、あくまで投資なので年によっては損失が出ることもあります。

しかし、長期間運用するほど平均の年利は安定してきます。

そのため、投資信託は長期運用に向いた金融商品と言われています。

分散投資

投資信託は分散投資に向いた商品でもあります。

個人投資の場合、資金に限りがあるのでたくさんの種類の金融商品を持つことは難しいです。

一方で、投資信託は多くの人から資金を募り、集めた多くの資金を運用します。

そのため、多くの資産に分散して投資をすることができます

投資信託の分散投資の仕組み

投資信託を使うことで、個々人の投資家は少額の資金であっても分散投資の効果を得ることができます。

この「長期運用」と「分散投資」ができることが投資信託の最大の特徴であり、多くの個人投資家が投資信託を保有する理由であるとともに、初心者にもおすすめする理由です。


4. 投資信託の種類

次に投資信託の種類を見てみましょう。

一言で投資信託といっても、たくさんの種類があります。

投資信託協会では次のように商品分類を定めています。
(この分類は投資信託の目論見書に必ず記載があります)

  • 単位型・追加型
  • 投資対象地域(国内、海外、国内外)
  • 投資対象の金融商品(株式、債権、不動産など)
  • 独立区分(MMF、MRF、ETF)
  • 補足分類(インデックス型、特殊型)

1つずつ解説します。

単位型・追加型

単位型は募集期間のみに購入が可能な商品、追加型は投資信託が運用されている期間中いつでも購入が可能な商品です。

現在、単位型は少なく、ほとんどが追加型の投資信託です。

投資対象地域

主な投資対象が国内、海外、または両方かの分類。

海外の場合はさらに、先進国や地域(アジア、ヨーロッパなど)、エマージング(地域を限定しない新興国)など投資信託によって対象とする地域が分かれます。

安定性を重視する場合は先進国中心、リスクを取って高収益を目指す場合は新興国中心の投資信託、など対象地域を踏まえて商品を選ぶことができます。

投資対象の金融商品

主に投資対象とする金融商品によって、株式、債券、不動産、その他の資産に分類されます。

また、これらの資産を組み合わせた資産複合(バランス)があります。

地域との掛け合わせも含めて、低リスクを求めるなら債券、高収益を求めるなら株式などの商品を選ぶことができます。

独立区分

MMF(Money Management Fund)とMRF(Money Reserve Fund)は、株式を組み込まない投資信託です。

いずれも、安全性の高い公社債を投資対象としており、毎日決算が行われるため、銀行預金と同じようにいつでも引き出すことができます。

ただし、年利は銀行よりやや高い程度です。

ETF(Exchange Traded Funds)は上場投資信託と呼ばれ、名前の通り上場している投資信託です。

インデックス型の投資信託と非常に似ていますが、以下の特徴があります。

  • 株と同じように、リアルタイムで売買ができる
  • 信託報酬が投資信託より低い

手数料が低い理由は、ETFは公に販売されている商品であるため、一般的な投資信託で発生する販売会社への手数料がないからです。

補足分類

日経平均などの、特定の指標に連動した運用を目指すインデックス型や、独自の銘柄選択や資産分配でインデックスを超える運用成績を目指すアクティブ型などがあります。


5. 失敗の少ない投資信託の選び方

ここまで、投資信託は仕組みそのものが長期運用に向いた、失敗の少ない投資であると説明してきました。

ただ、そういった需要の多い金融商品だということもあり、2020年9月時点で、公募されている投資信託のファンド数は5,800を超えます。

また、投資信託は長期運用をベースに考える商品でもあるため、最初の商品選択が非常に重要です。

では、投資信託を選ぶときに気をつけるべきポイントは何でしょうか?

特に長期運用する際に重要なことは、「投資の運用方針」「実績」「費用の低さ」「分配金がない」の4つです。

(1)投資信託の運用方針

投資信託の種類で解説した通り、投資信託の中でも運用方針によってリスクとリターンの大きさが変わります

国内債権を中心にした投資信託であれば、リスクは低いですが得られるリターンも限定的です。

一方で、海外株式の中でもエマージング(新興国)を中心にした投資信託は、損失のリスクも高いですが得られるリターンも大きくなる可能性があります。

投資は自己責任とよく言われます。

投資信託であっても、自分が理解できないものに投資をすることは危険です。

その投資信託で何を得たいのかを考え、購入を検討している投資信託を理解し、自分に合ったものを選びましょう。

(2)投資信託の実績

投資信託の実力は「基準価額」と「純資産額」の推移で分かります。

「基準価額」は投資信託を売買する際の価格のことで、「純資産額」は投資信託が運用する資産のことです。

投資信託で得られる利益は、基準価額が上がることによる売買益が中心です。

そのため、長期的に見て基準価額が上がっているかどうかを確認しましょう。

また、投資信託は運用できる純資産額が大きければ大きいほど資産が増えやすい、そして分散投資によりリスクも軽減されます。

基準価額と合わせて、純資産額の大きさと長期的に見て増えているかも確認しましょう。

(3)投資信託に掛かる費用の低さ

投資信託に掛かる費用は「販売手数料」「信託報酬」「信託財産留保額」の3つで、このうち最も気をつけるべき費用は「信託報酬」です。

いずれも、信託資産に対する手数料率が費用になります。

1つずつ見ていきましょう。

販売手数料

言葉の通り、投資信託を購入するときに掛かる費用です。

最近はノーロードと言って、販売手数料が掛からない商品も増えています。

販売時のみに掛かる手数料なので、長期間運用することで資産全体としての負担は軽くなります。

信託報酬

投資信託の仕組みでお話しした通り、投資信託は「販売会社」「委託会社」「受託会社」によって運営されています。

この運営に対する手数料を「信託報酬」と言います。

そして信託報酬は、投資信託を保有している間ずっと掛かり続ける手数料になります。

そのため、長期間運用するほど大きく響いてくるため、信託報酬を0.1%でも低く抑えることが重要です。

信託財産留保額

信託財産留保額は、投資信託を解約・換金する際に発生する費用です。

この費用は一部の投資信託でのみ定められています。

長期間の用して増えた資産に対して掛かる手数料であるため、必ず最初にチェックしておきましょう。

(4)投資信託の分配金がないこと

分配金とは投資信託の運営で得られた利益を、定期的に投資家に払い戻すお金のことです。

と聞くと、「えっ?分配金はあった方がいいのでは?」と思われるかもしれません。

なぜ分配金がない方が良いのか。

それは長期運用する投資信託にとって「基準価額」と「純資産額」が重要だからです。

先ほどこのようにお話ししました。

投資信託は運用できる純資産額が大きければ大きいほど資産が増えやすい、そして分散投資によりリスクも軽減されます

それが、定期的に分配をしてしまうと「基準価額」と「純資産額」は下がります

一方で分配しない場合、そのお金を継続して投資に使うことができ、さらに「基準価額」と「純資産額」を伸ばせる可能性が高くなります。

これが分配金がないことのメリットです。

また、分配金がないことは税制面でのメリットもあります。

配当金には税金が掛かりますが、分配しないお金には当然税金が掛かりません。

そのため、最終的に換金するまで税金を払うことなく投資を行うことができます。

ここまで、投資信託の選び方をお伝えしてきましたが、日本国内で購入できる投資信託だけでも、5,800を超えるファンドがあります。

「自分に合った投資信託を知りたい」「おすすめの投資信託を教えて欲しい」「株なども含めて資産運用を相談したい」という方は、1度アドバイザーに相談してみましょう。

相談したからといって、必ずしも申し込みなどを行う必要はありません。
気軽にご相談ください。


まとめ

いかがでしたでしょうか。
この記事では以下のことをお伝えしてきました。

  • 老後資金、自分の人生100年のために資産形成・資産運用が必要
  • 安全性の高い投資信託の仕組み
  • 投資信託は「長期運用」と「分散投資」が少額から実施できる
  • 投資信託の種類
  • 投資信託の長期運用は「投資の運用方針」「実績」「費用の低さ」「分配金がない」がポイント

投資信託を上手に使って「あなたらしい人生100年」にしていきましょう。

「どの投資信託が良いか相談したい」「投資信託を始めたい」といった方は、ぜひ1度アドバイザーまでご相談ください。


 

資産運用の基本:株式投資とは〜失敗を減らすおすすめの運用方法〜

資産形成・資産運用に株式投資を活用していますか?

長寿化や、少子高齢化による年金不安が広がっている中、私たちは自分の人生100年を豊かにするために老後資金を蓄える必要があります。

そして、老後資金・将来に向けた資産形成・資産運用の手段として、代表的な金融商品が投資信託と株式投資です。

投資信託は、投資の基本である「長期運用」「分散投資」をプロが行なってくれる、比較的リスクの低い安定性の高い金融商品です。
(投資信託にも種類があるため、すべての金融商品がリスクが低いわけではありません)

一方で、株式投資はやり方によってリスクを抑えた運用も可能ですが、一歩間違えるとリスクの高い投機的な運用にもなり得ます。

また、投資信託がある程度運用を任せられる金融商品である一方、株式投資は基本的に自分で情報収集や分析を行い、運用する必要があります。

株式投資を正しく理解し、資産形成・資産運用に取り入れてみましょう。

1. 株式投資とは

株式投資とは、言葉の通り「株式会社に投資をすること」です。

株式会社は、投資家からお金を集めて、そのお金を元に事業を行うことで企業の価値を高めています。

投資をした人は、企業の価値が高くなることで上がった株を売却し利益を得たり、配当金を受け取ることができます。

もう少し詳しく、どれくらいの人が株式投資をやっているのか、株式投資とはどのような仕組みなのかを見ていきましょう。

株式投資の実施状況

全体における、株の保有率は2018年時点で12.2%(*1)です。

約8人に1人が株式投資を行なっていることになります。

なんらかの投資をしている人の中で、株式投資を実施している人は80.2%(*2)に登ります。
このため、株式投資は投資をしている人の大半が取り入れている金融商品だと言うことができます。

株式の保有者割合

*1 日本証券業協会「平成30年度 証券投資に関する全国調査(個人調査)
*2 日本証券業協会「個人投資家の証券投資に関する意識調査について 2019年

また、株式投資をやっている人はどのような株を保有しているのでしょうか?

保有株式の種類の変化

※日本証券業協会「個人投資家の証券投資に関する意識調査について(2014年・2019年)」を元に、Route100編集部作成
多くの人は日本の上場株を保有しています。

海外の上場株の保有も高くなってきていますが、大きな差があるのが現状です。

ただ、1992年からの25年間で日本の株価が1.2倍程度しか成長していないのに対し、世界の株価は約7倍に成長しています

そのため、海外への株式投資も考える必要があります。

ただし、世界株は成長は大きいですが、上昇・下降が激しいのも事実です。

このため、海外への株式投資は投資信託を使うことも考えてみましょう。

株式投資の仕組み

株式投資で得られる利益は「株式売却益」と「配当金」の2つです。

(1)株式売却益

株式売却利益は、株を購入したときの株価と売却するときの株価の差額によって得られる利益です。

例えば、ある企業の株を株価1,000円のときに1,000株、100万円分購入したとします。

1年後に株価が1,500円になったタイミングですべて売却した場合、差額の500円 × 1,000株=50万円が利益として得られます。

株式売却利益

一方で、株価は会社の業績や成長する見込みが低いと思われた場合、下がってしまうこともあります。

仮に1年後にまだ伸びるだろうと思って売らずに、2年後に800円まで下がったときにすべて売却したとします。

この場合は、購入したときとの差額200円 × 1,000株=20万円が損失となってしまいます。

そのため、株式投資をする際には、将来成長する可能性が高い会社に投資を行うことが重要です。

(2)配当金

配当金は、会社に利益が出たときに、その一部を投資家(株主)に還元するものです。

配当金を出すかどうか、いくら出すかは会社の方針次第です。

高い配当金を出す会社が良い会社、配当金を出さないのは良くない会社、ということではありません。

配当金を出さない会社の中には、その利益を新しい事業などの更なる成長に使う会社があります。

そういった会社は、株価を上げることで投資家(株主)に利益を還元しようと考えています。

そのため、配当金の有無や金額だけではなく、自分が何で利益を得たいのか、会社の運営方針と照らし合わせて考える必要があります。


2. 株式投資のおすすめ運用方法

最初にお話しした通り、株式投資はやり方によってリスクを抑えた運用も可能ですが、一歩間違えるとリスクの高い投機的な運用にもなりえます。

投資は自己責任とよく言われます。
自分が理解していない金融商品や会社の株を買うことは危険です。

そのため、株式投資を行う際には、投資を考えている会社の情報を収集・分析し、

  • 今の株価が適切か
  • これからさらに伸びる可能性があるか
  • どれくらいの期間で、どれくらい伸びるか

をできるだけ深く分析した上で、投資を判断することが望ましいです。

インターネットや知人の「あの会社はきっと伸びる」などの情報を鵜呑みにすることは、最も危険な株式投資のやり方の1つです。

では、実際にどのような運用をするのが良いでしょうか?

株式投資を仕事や趣味にしている人は、企業分析に多くの時間を掛けることができます。

ですが、多くの人は仕事や趣味を持ちながら、その傍らで株式投資を行うことになると思います。

そうなると、企業分析に多くの時間を割くことはなかなかできません。
そう行った人におすすめの運用方法は2つです。

  1. 自己運用による長期投資

  2. アドバイスを受けながらの短中期投資

(1)自己運用による長期投資

1つは分析する企業を絞り、少ない企業を深く分析し、自分が確信を持てる企業に長期投資する運用方法です。

実際に、株式投資をしている人の運用方針や平均保有期間にはそのことが現れています。

株式投資の方針

※日本証券業協会「個人投資家の証券投資に関する意識調査について 2019年」を元に、Route100編集部作成

運用方針を見ると、「長期の値上がりを重視」している人は48.4%に登り、配当金重視も長期運用と捉えると68.1%、約2/3の人が長期運用を方針としています。

明確に「短期の値上がりを重視」している人は全体の15%未満です。

また、実際の平均保有期間を見ても、「10年以上保有している人」が24.4%、「3年以上保有している人」は59%に登ります。

株式の平均保有期間

※日本証券業協会「個人投資家の証券投資に関する意識調査について 2019年」を元に、Route100編集部作成

この中には「塩漬け」と言って、価格が下がって売却できずに持ち続けている人も含まれると考えられるため、一概に長期運用している人の割合とは言えません。

ただ、比較的長期運用している人が多いと言えます。

(2)アドバイスを受けながらの短中期投資

もう1つのやり方は、資産運用のプロのアドバイザーから意見をもらいながら、短中期投資を行うことです。

短中期投資と書きましたが、運用方針によるため長期投資でも構いません。

いずれにせよ、自分で分析することが難しければ選択肢は2つです。

株式投資には手を出さないか、信頼できるアドバイザーの意見を聞きながら投資を行うかです。


3. 株式投資で大損しないために守るべきこと

株式投資で大損しないために、守るべきことは3つです。

  1. 投資対象の企業を理解する(噂で動かない)

  2. 余裕資金で運用する(生活資金を使わない)

  3. 複数の資産、株に分散して投資する(集中投資しない)

(1)投資対象の企業を理解する

これは、前の章「おすすめの運用方法」でお話したことです。

  • 対象としている企業の事業内容
  • 業界の今後の成長性
  • 業界の中における地位、競合優位性
  • 財務の健全性
  • 現在の株価の妥当性
  • 考え得るリスクと発生確率
  • 事業目標の達成状況(決算説明)

当然、想定していないことは起こり得ます。

ですが、こういったことを確認・理解した上で投資を行えば、仮に株価が下がることはあっても、大損する可能性は下げることができます。

そして、この理解は自分でできるに越したことはありませんが、できない場合はプロにアドバイスを求めることもできます。

(2)余裕資金で運用する

これは、株式投資に限らずすべての投資に共通して言える基本事項です。

投資資金と生活資金は分ける必要があります。

冒頭でお話しした通り、私たちが投資を行うのは老後資金や将来のためです。

生活資金が足りないとしたら、資産形成・資産運用の前に労働収入を上げる方が優先だと言えます。

そして、投資資金と生活資金を分けることで、余裕を持って投資を行うことができます。

(3)複数の資産、株に分散して投資す

分散投資は投資の基本です。

「投資の失敗」に関する記事を見ると、1つの会社や1つの金融商品に集中して投資をしているものが見られます。

たしかに、例えば1つのベンチャー企業に全資産を投資し、その会社が大きく成長した場合、大きな利益を得ることができます。

ただし、その会社が倒産してしまった場合、すべての資産を失ってしまいます

そういった状況は、やはりリスクが高く、賭けの要素が強いと考えられます。

例えば、10個の会社や金融商品に分散して投資をしていれば、仮にその中の1つの会社が倒産したとしても単純計算で失う資産は1/10です。

リスクを抑えつつ、資産運用を行うことができます。

そのため、株式投資を行う場合には、複数の企業に分散して投資を行う必要があります。

また、株式だけでなく、投資信託や債券など複数の金融資産に分散して投資することでリスクを減らすことも重要です。

投資の基本!投機とは違う、失敗しないための資産形成術

「自分で調べるのは難しい」「投資を勉強する時間がない」「具体的な企業を知りたい」といった方は、1度アドバイザーに相談してみましょう。

相談したからといって、必ずしも申し込みなどを行う必要はありません。
まずは気軽に相談してみましょう。


まとめ

いかがでしたでしょうか。
この記事では以下のことをお伝えしてきました。

  • 株式投資は、投資をやっている人の大半が行なっている
  • おすすめの株式投資は「自己運用による長期投資」か「アドバイスを受けながらの短中期投資」
  • 株式投資で失敗しないためには、「企業を分析」し「余裕資金で運用」し「分散投資を」をする

株式投資は「あなたらしい人生100年」を手助けしてくれる、有用な資産形成・資産運用の手段です。

正しく理解し、未来に向けて資産形成・資産運用を行なっていきましょう。

投資対象の企業について相談したい人、株式投資を始めたい人は1度アドバイザーに無料相談してみてはいかがでしょうか。


 

【実際の投資相談から学ぶ資産運用】インデックスファンド編:40代/会社員/4人家族

皆様は、資産形成・資産運用を行なっているでしょうか?

人生100年時代を生きる私たちは、将来・老後に向けて資産形成・資産運用を行なっていく必要があります。

ただ、実際には自分で始めたものの、思った通りに行かなかったり、本当にこの運用方法で良いのだろうか?と悩んでいる人もいるのではないでしょうか?

そのようなときにはアドバイザーに相談してみるの1つの手です。

この記事では、IFA(独立系金融アドバイザー)が実際に受けた相談事例をご紹介します。
ぜひ、あなたの資産形成・資産運用を行う際の参考にしてみてください。


1. 具体的なご相談内容

皆様こんにちは。本日のお客様は、ご自分で老後の資産形成を計画し、複数のインデックスファンドを選別してみたものの、果たして正しい方法なのか自信が無くてご相談に来られたS様です。

 

お客様の属性

  • S様42歳 会社員(男性)
  • 奥様とお子様(2人)の4人家族
  • 年収750万円

S様は、以前は大手建設会社に勤めておられ、年収は900万円ほどになっていましたが、ご自身のキャリア選択と生活拠点の固定化から転職し、年収はややダウンしたもののその機会を契機に本格的に長期の資産運用を始めようと計画しました。

といいますのも、それまではネットや書籍にある情報を基に個別企業の株式投資を行っていましたが、やはりそれなりの結果は出ず、定年後の資産形成はもっと計画的にやらなければならないと考え直したそうです。

 

そこでS様が考えたのが、ライフプランのシミュレーションを行い、運用目標を長期で実現していくポートフォリオを自分で作ろうとしたことです。

結果的に年率4%のリターンを狙いたかったそうですが、先進国の資本収益率が平均4%らしいので同等の目線を狙いつつ、安定性を重視して債券運用も3分の1ほど組み入れることを考慮し、全体では3%の目標運用率としたそうです。

 

ポイントとなる商品選択ですが、S様は次のような視点でたくさんある商品から選別してみました。

  • 商品の残高が多い(多くの投資家が買っている)
  • 買付手数料が無い
  • 信託報酬が低い(運用コストが低いとその分リターンに有利)
  • 過去のトータルリターンの実績を平均すると3~4%になるように選択
  • 安定性を重視して先進国のみ対象とする
  • 日経平均株価とドル円為替レートはほぼ連動しており、株安円高を防ぐため為替ヘッジ有を選ぶ

以上の点から候補として上がってきた商品一覧が次の表です。

提案投資信託の候補

オーソドックスな選択方法であり、コストを抑えることと先進国の株式と債券に分散させることを重視したポートフォリオです。

結果的にほとんどがインデックスファンドであり、運用の参考指標となるベンチマークも国内株式であればTOPIX、海外株式であればMSCIコクサイ・インデックスやS&P500指数を選択しており、機関投資家が好む、当該市場全体の動きを反映しやすいものを選択しております。

配分については、債券部分が全体の3分の1、株式部分が3分の2ということで、その中で各商品を均等に買い付けていく方針とのことでした。

さて、このような相談の場合、失敗しないためにはどのような点に気を付けたら良いでしょうか?


2. ご相談内容の良いポイント

まず良いところですが、運用目標を3%とやや控えめに設定しているところが無理のない現実的な数字で、長期的な資産運用における余裕を生みます。

また、低コストのインデックスファンド中心に残高も十分あり、世界の主要指数に連動するものを選択しているため問題ありません。

シンプルなポートフォリオという点では、国内外の先進国株式と先進国債券のみということでとても分かりやすい内容になっています。


3. 失敗しないための見直しポイント

一方で、検討の余地がありそうな点としては例えば以下が考えられます。

  1. 為替リスクをすべて回避している
  2. リターンの計測が6カ月から3年までと短い
  3. 債券投資のシャープレシオが異常に高い
  4. 特に株式投資では日米にやや偏っている

それぞれを見ていきます。

①為替リスクについて

もちろん様々な考え方があります。

ただ、ここでは長期的な資産形成を目的としていますので、その観点からは特に日本の円とアメリカのドルとの関係、さらには日米の将来的な国力や経済成長の見通しを考えていく必要があります。

日本は少子高齢化と人口減少という問題が切実です。

これは労働人口の減少や税収の減収につながり、景気向上や経済成長に向けたエネルギーが減少していくことを意味します。

すると、今日本の金利水準は非常に低いですが、将来的には日本に対する信用力が低下し、円売りにつながる可能性もないとは言えません。

円安が進むと輸入品や原材料費の高騰を通じて物価が上昇し、賃金が上がらない状況では実質的な生活が苦しくなります。

このようなストーリーの可能性を考えるならば、米ドルを資産として持つことはある意味円売りに対する保険になります。

為替リスクを投資のリスクとして考えるのならば、為替ヘッジ有の商品を活用するのも有効ですが、他にドル資産を持つ予定が無ければ、海外株高ドル高・円安シナリオに備えて為替ヘッジ無しの投資部分を持つことも長期的には検討の余地ありです。


②リターンの計測期間が短い

2点目ですが、データは過去のものしかないとはいえ、過去の動きとその時の投資環境や経済情勢をつなげて分析することはとても重要なことですので、リターンを見る時は可能な限り長い期間で見るべきです。

同種の商品であれば運用歴が長い商品で検討することも有効です。

さて、データ取得時の2019年10月といえば、長い世界経済の回復にありながら、米中貿易摩擦など不透明要因を抱えつつ、緩やかな株高と金利低下傾向にあった時期です。

図表から読み取れます通り、リターンの6カ月や1年では海外株式のパフォーマンスが良く、さらに債券では軒並み非常に高い数値となっています。

少し難しいですが、シャープレシオが通常時の一般値である凡そ0.3~0.8程度を大きく超える数値となっています。

これは、短い特定の期間を見てしまうと、長期的な通常値、リスクに対するその投資のリターンを過大にまたは過小に評価してしまう場合があります。

今回のS様は主要なインデックスを選ぶ視点を持っていたのでしっかり商品選択できていますが、もし選択対象がもっと広かった場合は、たまたまその期間のリターンが良かった投資商品に偏ってしまい、気付かないうちに過大なリスクを取ってしまうかもしれません。


③債券投資のシャープレシオが非常に高い

また、③にも当てはまるのですが、当コラム執筆時の2020年11月で言えば、債券の金利水準はさらに低下していますので、これまでのようなリターンが上がることは難しく、逆に金利上昇が来る局面では、思いがけず評価損を抱えてしまう可能性もあるので注意が必要です。

 

シャープレシオの補足説明

リスクを取って運用した結果、安全資産(ノーリスク資産)から得られる収益(リターン)をどの位上回ったのか、客観的に比較できるようにした指標です。

投資信託の運用成績を比較する場合に広く用いられています。単にリターンの数字を比較するのではなく、その裏にあるリスクとの見合いで運用成果を判断しようとするものです。

数字が大きいほど、

  • リスクの割にリターンが大きい
  • 効率よくリターンを上げている
  • 運用成績が優れている

ことを示します。

リターンの水準が同じであれば、取ったリスクが小さいほどシャープレシオは大きくなります。

取ったリスクが同程度であれば、リターンが大きいほどシャープレシオは大きくなります。


④株式投資が日米に偏っている

最後に④についてですが、限りなくシンプルで長期的に保有する点ではメインの指数を抑えていますが、もう少し資産や組入れ商品数を増やしても良いケースであれば、例えば米国株式への投資部分の中でも、成長力の高いIT企業の組入れが多いナスダック指数に連動するような商品を加えることも可能ですし、プラスアルファで興味のあるテーマの投資信託を保有することも有効でしょう。

一般論的には長期であれば新興国への投資も検討する場合が多いですが、初心者として資産運用をスタートする場合ですとS様のように先進国から始めてみて良いでしょう。

 

このように、資産運用で失敗しないためには、無理のない投資目標を立て、長期的視野でできるだけシンプルなポートフォリオを作ってみることから始めてみるのが良いでしょう。

今のような投資環境*では債券投資はあえて控えめにし、債券投資を予定している資金を一部でも現金として当面待機させてもよいかもしれません。

* 2020年12月1日時点(Route100編集部補記)

この記事の執筆者

 

 

 

 

 

山口 聰

 ペレグリン・ウェルス・サービシズ株式会社

・証券外務員一種
・日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
・国際公認投資アナリスト(CIIA)

大学卒業後、大和証券にてリテール営業、人事部付きインストラクターを経験。その後アメリカン・ライフ・インシュアランスカンパニーにて営業教育本部、英銀バークレイズの富裕層向けサービス部門、スイス金融大手クレディ・スイスのプライベートバンキング本部を経て2017年ペレグリン・ウェルス・サービシズ株式会社設立、現在に至る。


 

投資の種類8つ!初心者の資産形成におすすめする理由も解説

「投資」と聞いたときに何を思い浮かべるでしょうか?

株、投資信託、不動産、FXなどを上げる人が多いのではないでしょうか?

または「危ないもの」「損をするのでは?」と思う人もいるかもしれません。

どれも投資の一部を表していますが、投資は「自分でリスクをコントロールしながら、将来のお金を増やしていく」ことです。

そして、投資対象の商品にはリスクの高さや、運用のしやすさなどの特徴があります。

投資を始める、見直すにあたって投資の基本と商品の特徴を考えてみましょう。

※この記事では基本的な投資の種類を紹介しています

1. 投資の基本(資産形成・資産運用)

「長期・分散・積立」と聞いたこと・目にしたことがあるでしょうか?

この言葉が表すように、投資の基本は「長期運用」「分散投資」「積立投資」です。

長期運用

長期運用は、複利の効果を利用して20年・30年という長期的な視点で資産を運用することで、安定的にお金を増やす考え方です。

目先の利益や損失にとらわれず、日々の値動きや株価の一時的な高騰・下落に左右されずに投資を行うことができるため、特に投資の初心者にとって重要です。

 

分散投資

分散投資は、なるべく多くの国・地域・商品・企業に投資先を分散することによって、リスクを減らして安定的に運用する考え方です。

1社の株に全ての資産をつぎ込んでいて、その会社が倒産してしまった場合、全ての資産を失うことになります。

これは極端な例のようですが、「投資によって退職金を全部失ってしまった」などの記事やニュースを目にしたことはありませんか?

詐欺など悪質なものもありますが、そもそもすべてのお金を1つの商品につぎ込まなければ(分散すれば)全部を失うということは起こり得ません

分散投資によってリスクを減らすことは、投資の基本と言えます。

積立投資

積立投資は、定期的に購入することによって購入単価を下げる、1度に購入することによる高値買いのリスクを下げる考え方です。

「定期購入法」「ドル・コスト平均法」と呼ばれる手法です。

正確には分散投資の考え方の1つで、時間を分散して投資することでリスクを下げる基本的な考え方です。

投資の基本やリスクについて、より詳細に知りたい方はこちらの記事もどうぞ。

投資の基本!投機とは違う、失敗しないための資産形成術

 


2. 投資の種類を見る上でおすすめの視点

具体的な投資の種類に入る前に、投資の種類をどのように見たらいいかを考えてみましょう。

先ほどの投資の基本を踏まえて、次の視点で見て自分に合っているか、考えてみることをおすすめします。

  • 安定性    ・・・ リスクが高くないか
  • 長期運用向き ・・・ 長期運用に向いているか
  • 分散しやすさ ・・・ 低単価で分散投資ができるか
  • 簡単さ    ・・・ 実際に投資・運用ができるか
  • 目安の年利  ・・・ どの程度の利益が得られるか

(1)安定性 リスクが高くないか

投資に安定性を求める人は多いのではないでしょうか。

大きな値動きの中で、リスクを取って売買を繰り返すことで、短期的に大きな利益を得たい人もいます。

しかし、多くの人は仕事をしながら資産形成・資産運用をすることになると思います。

そういった日々の値動きに時間を費やすことができない人は、ある程度放置していられる安定性を重視すると良いでしょう。

(2)長期運用向き:長期運用に向いているか

将来や老後資金のために資産形成・資産運用を行いたい人は、長期運用の視点で考えてみましょう。

長期的に運用するためには、「利益が安定している」「複利の効果が得られる」「手数料が安い」「長く運用することができる」といったことが重要になります。

また、長期運用に向いている商品は長く運用してこそ意味があります。

短期的には大きな利益が得られない商品も多いため、途中で解約に迫られることがないよう、しっかりと長期運用のための資産を確保しておく必要があります。

(3)分散しやすさ:低単価で分散投資ができるか

資産の大小に関わらず、資産を分散することは投資の基本です。

不動産など単価が高い商品への投資は、どうしても資産が集中しやすくなりリスクが高くなってしまいます。
そのため、単価が低いことは資産の分散のしやすさに繋がります。

自分の運用資産額と相談して、分散投資によってリスクが減らせるようにしましょう。

(4)簡単さ:実際に投資・運用ができるか

いくら運用したい商品でも、実際に扱うことができなければ投資することはできません。

例えば、海外の株を買う場合、少なくとも英語の読解ができて、その会社の決算資料やその会社に対する現地評価の記事を読めることが望ましいです。

もちろん決算資料などを読まなくても株を買うことはできますが、判断材料の情報が少なくなる分リスクは高くなります。

簡単さの観点では、言語の他に「売買のツールが使えるか」「投資対象や売買のタイミングを判断できるか」も考えましょう。

証券会社や商品によっては、インターネット上でしか売買することができないものもあります。

その場合、そういったサイトやツールを使えることが必須条件になります。

また、株の場合は投資先の企業を、不動産投資の場合は投資先の物件と売買のタイミングを決める必要があります。

企業や物件の分析を自分で行えるか、分析する時間を取ることができるか重要な観点になります。

「自分でやるのは難しいけど投資がしたい」という場合は、アドバイザーへの相談も考えてみましょう。

(5)目安の年間利回り:どの程度の利益が得られるか

投資商品は、基本的にローリスク・ローリターン、ハイリスク・ハイリターンです。

つまり、(1)安定性と利益がある程度連動しています。

最終的には、やはり得られるリターンに対して、そのリスクを取ることができるかどうかが大きな判断材料になります。

そのため、商品ごとの大まかな利率を知っておくことは重要です。

また、あくまで目安ですが、年利が110%を超える商品は「なぜそんなに利率が高いのか?」「何か大きなリスクがあるのではないか?」と疑って調べてみる必要があるかもしれません。


3.8種類の投資商品の比較

それでは、ここからは具体的に8種類の投資商品の特徴を見ていきましょう。

まずは、先ほどの5つの観点「安定性」「長期運用向き」「分散しやすさ」「簡単さ」「目安の年利」の点数と簡単な説明で、大まかな特徴を捉えてみましょう。

表を見る上での注意

  • 点数は分かりやすく理解するためのイメージです
  •  実際には、個別商品や運用方法で変わってきます。
  • 購入の際にはご自身で情報を確かめるとともに、アドバイザーからの助言を受けることをおすすめします。

投資の種類

 

(※)目安の年利について

・国内株は、日本取引所グループ「統計情報」より、2019年・第一部の単純平均利回り

・国債は、2020/11/16発行・固定5年(第115回)の利率

・投資信託(インデックス)は、2020年9月時点、TOPIX トピックス (配当込み)の5年平均利率

・投資信託(ETF)は、日本取引所グループ「分配金に着目したETF投資のご紹介 2019年6月版」より、有配ETFの平均利回り

・投資信託(REIT)は、日本取引所グループ「月刊REIT(リート)レポート(2020年9月版)」より、予想年間分配金利回り

・不動産投資は、日本不動産研究所「第39回 不動産投資家調査(2018年10月現在)」より、東京・城南地区の賃貸住宅一棟(ワンルームタイプ)の期待利回り

 

ご自身に合う商品はあったでしょうか?

投資初心者へのおすすめは、投資信託と株式投資です。

気になった商品、初心者へのおすすめ理由について詳しく見ていきましょう。


4. 投資商品の説明

(1)株式投資

投資という言葉を聞いたときに、真っ先に思い浮かんだのが「株式投資」という人も多いのではないでしょうか?

毎日のニュースでも日経平均株価やニューヨーク・ダウ平均株価は、よく取り上げられているので馴染みもあると思います。

実際に、金融商品の中で株は最も保有率が高く、全体では12.6%(*1)、個人投資家の中での保有率は80%(*2)を超えています。

株式の保有者割合
*1 日本証券業協会「平成30年度 証券投資に関する全国調査(個人調査)」
*2 日本証券業協会「人投資家の証券投資に関する意識調査について 2019年」
株式投資で利益をあげる仕組

株式投資では2つの方法で利益を得ることができます。

  • 売買益(キャピタル・ゲイン)
  • 配当金(インカム・ゲイン)

多くの人がイメージしているのが売買益ではないでしょうか?

1,000円で買った会社の株が2,000円まで上がり、その時点で売却すると1,000円の利益が得られます。

逆に500円に値下がりした時点で売却すると500円の損失が生じます。

配当金は、会社の年度内に利益が出た場合に、その一部が株主に還元されることで得られる利益です。

配当を行うかどうかは会社の方針なので、配当がない会社もありますし、配当金の額も会社によって異なります。

株に対して危険な印象を持っている人もいるかもしれませんが、株式投資はやり方次第です。

長期的に見て成長する可能性が高い企業を見つけることで長期運用を行うことも十分可能です。

株式投資のメリット

  • 自由度が高く、短期投資・長期投資ともに可能
  • 株式投資は投資であると同時に企業への出資でもあるため、自分の好きな企業を応援することができる(企業によっては株主優待として優遇を受けることができる)

株式投資のデメリット

  • 日本経済・世界経済の景気の影響を受けるため、不況の際には全体的に株価が下落する
  • 購入できる最低価格が投資信託などと比べると高額になるため、分散投資をするにはある程度の資金が必要
 
初心者におすすめする理由

株をおすすめする最大の理由は「投資を身をもって知ることができる」という点です。

企業の選定や売買のタイミングは決して簡単ではありませんが、その経験を通して投資のやり方や心理を学ぶことができます。

10万円以下で購入できる株もたくさんあるので、その中からまずは自分が好きな企業・伸びると思う企業を調べてみてはいかがでしょうか。

最終的に株はあなたの資産形成・資産運用を行う上で重要な資産になる可能性があります。

資産運用の基本:株式投資とは〜失敗を減らすおすすめの運用方法〜

(2)国債

国債は国の借金です。

国債を買うということは、国にお金を貸してあげて、一定の期間が経ったら利子を付けて返してもらうということになります。

借金をしているのが国なので、債務不履行(返してもらえない)になる可能性は極めて低く非常に安定性の高い資産です。(2009年のギリシャ危機のように、国によってリスクの高さは異なります)

ただし、日本の国債は低金利で、2020年11月16日発行の固定5年(第115回)の利率は0.05%です。

銀行預金よりは高いですが、どんぐりの背比べのレベルで、特に資産形成にはおすすめできません。

一方で、海外には年利が数%の国もあります。

国債で利益をあげる仕組み

国債は銀行預金と同じように、購入した金額に年利を掛け合わせた金額が利子として支払われます。

例えば、日本の個人向け国債の固定5年・年利0.05%で100万円購入した場合、毎年500円の利子を得ることができ、3年後に100万円が返却されます。

利率は固定の他に変動もあり、変動の場合は市況によって利率が上下します。

国債のメリット

  • 国債のメリットは、確実に利子を得ることができる安定性

国債のデメリット

  • 年利が低いため、大きな利益を得ることが難しい
  • 銀行預金よりは高いですが、一方で個人向け国債は銀行預金と違っていつでも引き出すことができないため、流動性が下がる

少なくとも、現状の日本の国債は資産形成・資産運用として組み込むメリットはあまりありません。

債券には国際以外にも社債や外国債もあります。

債券投資は堅実な投資の手段!国債などの種類と金利の違い

(3)投資信託

投資信託は、多くの人から集めたお金をひとつの大きな資金としてまとめ、運用の専門家が様々な商品に分配して投資・運用する商品です。

個人としては少額で始められますが、投資信託全体としては大きな金額を分散投資をしているため、安定性が高く運用を任せられるのが大きな特徴です。

非常にバランスが取れている点が投資初心者におすすめする理由です。

株の次に保有率が高く、全体では9.2%(*1)、個人投資家の中でも保有率は50%(*2)を超えています。

投資信託の保有者割合
投資信託で利益をあげる仕組み

投資信託は、みんなから集めたお金をファンドが運用することによって得られた利益が分配されます。

この利益の分配が定期的にあるかないかは、投資信託の商品によって異なりますが、長期投資をする場合は分配なしの投資信託にすることをおすすめします。

それは分配なしの場合は、その利益がそのまま投資に回されるため、複利の効果が得られるためです。

複利については、こちらの記事で詳しく解説しています。

投資の基本!投機とは違う、失敗しないための資産形成術

また、投資信託は投資対象として何をどう組み合わせるかで結果が変わってきます。

投資信託の分散投資の仕組み

そのため、投資信託にはインデックス、アクティブ、ETF、REITなどのタイプがあります。

このタイプについては、後ほど学んでみましょう。

1点注意が必要ことは、投資信託は専門家が運用しているとはいえ、運用成績がマイナスになることがあり得るということです。

そのため、投資信託は元本の補償はありませんし、短期的には元本割れする可能性は十分にあります。

あくまで投資であり、預金とは違うことを理解しておく必要があります。

投資信託のメリット

  • 少額、かつ分散投資ができるためリスクを抑えられる
  • 最初に投資信託の商品を選択すれば、その後の運用を任せることができるため手間が掛からない
  • 投資対象は国も含まれるため、個人では難易度が高くなる海外を含めた分散投資も可能

投資信託のデメリット

  • 運用を任せるため、毎年一定の手数料が掛かる(預けている資産に対する手数料のため、仮に運用成績がマイナスでも手数料は発生する)
  • 運用が海外ファンドで日本の証券会社が販売会社の場合、2重に手数料が掛かり割高になることがある
初心者におすすめする理由

手数料のデメリットはありますが、少額から分散投資ができるという意味において、投資の基本を抑えた投資信託は非常にバランスの取れた商品です。

株や他の商品と組み合わせながら、一定の資産を投資信託として持つことをおすすめします。

先ほども少し触れましたが、投資信託には非常に多くの種類があり、何を中心に投資するかによってタイプが分かれます。

すべてではありませんが、投資信託のタイプに少し触れてみたいと思います。

①インデックス型

特定の指標(インデックス)と同じような動きを目指した投資信託です。

特定の指標とは、日本の場合は「日経平均株価」や「TOPIX(東証株価指数)」、アメリカでは「ダウ平均株価」などのことを指します。

例えばTOPIXをインデックスにした投資信託であれば、TOPIXの銘柄を中心に様々な投資先に分散投資されます。

インデックスの分類には以下のようなものがあります。

  • 投資対象(株、債権、不動産など)
  • 投資先の国・地域(日本、ヨーロッパ、アジア、新興国、グローバルなど)
  • 通貨の分散
  • 対象とする指標(TOPIX、ダウ平均株価など)

②アクティブ型

独自の銘柄選択や資産配分により、インデックス(株価指数等)の動きを上回る投資成果を目標とする投資信託のことを指します。

③ETF

ETFはExchange Traded Fundの略で、上場投資信託のことです。

投資信託会社が上場しているため、株と同じように売買を行うことができます。

ETFの最大の特徴は、一般的な投資信託に比べて手数料が低いことです。

投資信託のより詳細な仕組みや、ETFの手数料が低い理由はこちらの記事で解説しています。

投資信託・初心者にもおすすめ!失敗の少ない資産運用

④REIT

 

REITは簡単に言うと、不動産に特化した投資信託です。

REITはアメリカで生まれた仕組みで、Real Estate Investment Trust(不動産投資信託)の略です。
アメリカでは1960年に導入されましたが、日本では2001年にスタートしています。

個人で不動産投資を行うのはリスクが大きいため、そのリスク分散を行う仕組みと言えます。

(4)不動産投資

不動産投資は、不動産物件を購入して第三者に貸し出すことで、その家賃を収入として受け取る投資です。

簡単に言うと「大家さん」です。

不動産投資で利益をあげる仕組み

不動産投資で得られる利益は「売却益」と「運用益」の2つです。

例えば、5,000万円でアパートを購入し、5年後に6,000万円で売却できた場合、1,000万円の「売却益」が得られます。

売却益を得たい場合は、地価が上がる可能性のあるエリアを調査し、なるべく安価で購入することが重要です。

「運用益」は家賃収入です。

月額5万円で10部屋を貸し出し、すべての部屋が埋まっている場合、月額50万円、年間600万円が家賃収入として得られます。

ここから運用費を差し引いた額が「運用益」になります。

運用において重要なのは入居率です。
1部屋空室がある場合、この場合10%、年間60万円収入が減ることになります。

また、建物は経年劣化するため、売却益を得るためには地価の上昇が必要です。

そのため、不動産投資は「運用益」で利益を得ることが基本になります。

不動産投資のメリット

  • 長期的に収益を得ることができ、老後の安定収入になる可能性がある
  • 不動産購入時に銀行融資を受けることで、自己資金以上の投資を行うことができる(レバレッジ効果がある)
  • 所得税・相続税を軽減することができる

不動産投資のデメリット

  • ある程度まとまった資金が必要であり、総資産に占める不動産の割合が高くなる可能性がある(他への投資ができない可能性)
  • リスクを下げるために、購入の際に不動産に対する知識が必要(価格下落、空室、災害などのリスク)
  • 建物・入居者管理の手間、または管理を委託することによる運用費が掛かる
  • 確定申告の手間が増える
 

運用資産額が多い人は、不動産を資産に組み込むことを考えてみても良いかもしれません。

(5)外国為替(FX)

外国為替は、海外通貨との交換によって利益を得ることを目的とした取引です。

そもそも、為替とは「現金の代わりに、手形・小切手・証書などで決済をすませる方法」です。

海外との為替が行われる場合は、通貨の交換を伴い「外国為替」と呼ばれます。

外国為替の主な取引は「外貨預金」と「FX」で、それぞれ特徴が異なります。

外貨預金は、海外の銀行にお金を預けることで、日本よりも高い金利を得ることを目的としています。

ここでは「FX」について詳細に見ていきます。

外国為替(FX)で利益をあげる仕組み

FXとはForeign eXchangeの略で、正式名称は「外国為替証拠金取引」です。

難しい名前ですが、実際に名前の通り「お金(証拠金)を預けて、外国為替の取引」を行う投資です。

自分が預けたお金そのものを海外の通貨に直接交換しない点がポイントで、このため自分が預けたお金以上の金額の取引を行うことができます(レバレッジ効果)。

FXで得られる利益は2つです。

  • 為替差益(キャピタルゲイン)
  • スワップポイント(インカムゲイン)

「為替差益」は、買うときと売るときの金額差で得られる利益です。

1ドル=100円のときに1ドルを買って、1ドル110円になったときに1ドルを売った場合、10円の利益を得ることができます。

1万ドルの取引を行なっていた場合の利益は10万円です。

「スワップポイント」は2つの国の金利差によって得られる利益です。

2020年10月時点で日本の政策金利-0.1%に対し、アメリカの政策金利は1.5%であるため、米ドルでお金を持っていた方が高い金利がもらえます。

この金利差によって得られる利益がスワップポイントです。

2020年10月時点で、ある証券会社における日本円に対する米ドルのスワップポイントは1万ドルあたり1日8円です。

仮に1万ドルをスワップポイント8円で持ち続けた場合、1年間で2,920円の利益が得られれます。

ただし、逆のポジションを持っている場合、損失が発生するので注意が必要です。
(ここでは、米ドルを売って日本円を持っている場合)

また、FXはレバレッジを最大で25倍までかけることができます。

但し、レバレッジを高くするほど、少しの値動きで損失が出る可能性も大きくなるため十分な注意が必要です。

逆の言い方をすると、レバレッジを低く抑えればリスクも小さくなるため、FX=リスクが高いと捉えることには語弊があります。

外国為替(FX)のメリット

  • 為替差益だけでなく、スワップポイントによる利益が得られる
  • 少ない自己資金で、大きな取引を行うことができる(レバレッジ効果がある)

外国為替(FX)のデメリット

  • レバレッジを上げることでリスクが高くなる(証拠金が足りなくなる可能性が大きくなると、強制的に取引が終了するロスカットと呼ばれるシステムがあります)
  • 為替レートは様々な要素で変動するため、予測が難しく急激に変化することもある

高いレバレッジでの運用は投機の要素が強くなるため危険ですが、レバレッジを低く抑えることで外貨預金に近い取引を行うこともできます。

(6)仮想通貨

仮想通貨は国や銀行が介在しない電子データの通貨のことで、暗号通貨・デジタル通貨とも呼ばれます。

2020年10月時点で、仮想通貨は世界で3,000種類以上が存在しますが、日本で購入できるのは13種類です。

最も取引高が多いのはビットコインです。

外国為替(FX)で利益をあげる仕組み

仮想通貨の大きな特徴は、日本銀行のような中央機関が存在しないことです。

中央機関がいないことにより何が変わるかと言うと、発行枚数上限が決まっていることで、仮想通貨の価格がユーザーの需要と供給によって変動する点です。

例えば、日本銀行は景気が悪い際に、新しく通貨を発行することがありますが、仮想通貨の場合そのようなことはありません。

そのため、ある通貨の需要が高ければ価格は上がり、需要が低ければ価格は下がります

この価格変動を利用した売買益が、仮想通貨で利益をあげる方法になります。

仮想通貨のメリット

  • 価格変動が大きいため、大きな利益が得られる可能性がある
  • 少額から投資ができる(1,000円程度から売買が可能)

仮想通貨のデメリット

  • 価格変動が大きいため、資産が大幅に減る可能性がある
  • 需給バランスで価格が変動するため、予測が難しい
  • 法規制の整備が十分でなく、今後の規制強化などで価格が下落する可能性がある

仮想通貨はまだ安定した投資ではないがゆえに、大きな利益が得られる可能性があります。
ただし、それだけリスクが高いことを理解し、余裕のある資産で投資を行う必要があります。


5. 投資を始めるにあたって知っておきたい優遇制度

これから投資を行う人に、ぜひ知っておいて欲しい制度があります。

それは、「NISA(ニーサ)」と「iDeCo(イデコ)」です。

どちらも税制優遇のメリットがあります。

NISA(ニーサ)

NISAは「少額投資非課税制度」の愛称で、イギリスの個人貯蓄口座であるISA(Individual Savings Account)がモデルとなっています。

言葉の通り、NISA口座で購入した金融商品によって得られた利益に税金がかからない制度です。

NISAには一般口座と積立口座があり、どちらかを選択することができます。

  • 一般口座は、非課税枠が年間120万円までで、非課税の期間は5年間
  • 積立口座は、非課税枠が年間40万円までで、非課税の期間は20年間

2020年10月時点で、金融商品の利益に掛かる税率は約20%です。

対象となる金融商品は以下になりますので、これらの商品を購入する場合は、NISA口座で始めることで節税効果が得られます。(新規購入に限られるため、既に保有している商品をNISA口座に移管することはできません)

  • 株式投資信託
  • 国内・海外上場株式
  • 国内・海外ETF
  • ETF(上場投資証券)
  • 国内・海外REIT
  • 新株予約権付社債(ワラント債)

ただし、積立口座の場合、対象となる金融商品が限られているため、購入したい商品が含まれているか確認が必要です。

iDeCo(イデコ)

iDeCoは「個人型確定拠出年金」の愛称で、アメリカのIRA(Individual Retirement Account)がモデルとなっています。

漢字の名称は一見難しいですが、自分で作る年金制度のことです。

愛称の由来は、個人型確定拠出年金(Individual-type Defined Contribution pension plan)です。

日本には公的年金制度がありますが、少子高齢化と長寿化の影響で将来十分な年金が受け取れない可能性があります。

そのため、現役時代から自助努力により自分で年金を作ることを促すために始まった制度です。

年金制度ですので、60歳以降にならないと受け取りができない点に注意が必要です。

また、iDeCoで優遇される税制は以下の3つです。

  • 積立金額すべてが「所得控除」の対象で、所得税・住民税が節税できる
  • 運用で得られた利益が「非課税」になる
  • 受け取るときに「公的年金等控除」「退職所得控除」の対象となる

iDeCoには「元本確保型」の他に、この記事でも説明した様々な「投資信託」商品があります。

税制優遇のメリットもあるため、「投資信託で老後資金を作りたい」と考えている人は利用するべき制度です

年金制度の詳細は、こちらの記事で詳しく解説しています。

年金制度は破綻しない?年金の種類と個人の備えを考える!

 

まとめ

いかがでしたでしょうか。
この記事では以下のことをお伝えしてきました。

  • 投資の基本
  • 投資は「安定性」「長期運用向き」「分散しやすさ」「簡単さ」「目安の年利」で考える
  • 投資の種類と特徴
  • 各投資のメリット・デメリット
  • 税が優遇されるNISAとiDeCo

投資は「あなたらしい人生100年」を手助けしてくれます。
金融商品を正しく理解し、未来に向けて資産形成・資産運用を行なっていきましょう。

また、資産形成・資産運用について相談してみたい、自分でやるのは難しい方は、1度アドバイザーに相談してみましょう。

相談したからといって、必ずしも申し込みなどを行う必要はありません。
まずは気軽に相談してみましょう。


 

生命保険とは?生命保険の種類と特徴・入らないリスクを解説!

あなたは、あなた自身に万が一のことがあったときのことを、真剣に考えてみたことはありますか?

忙しい日々の中で、そんなことを考える余裕はないかもしれません。

しかし、これからくる「人生100年時代」に備えて、万が一のことを考えておくことはとても大切です。

例えば、あなたが、病気になってしまって、働けなくなってしまったとき。
その先の人生、働けなくなったあなたは生活していけるでしょうか。

例えば、あなたが、交通事故にあって亡くなってしまったとき。
残された家族は、生活していけるでしょうか。

そのような、万が一の病気や怪我になったときのための仕組みが「生命保険」です。
あなたと、あなたの家族のために、一緒にしっかりと考えてみましょう。

1. 生命保険とは?

生命保険とは、被保険者に万が一のこと(死亡や高度障害など)があった場合に、保険受取人がまとまったお金を受け取ることができる仕組みです。

保険がかけられている対象の人を「被保険者」、保険金を受け取ることができる人を「保険受取人」といいます。

生命保険は、大きく3つ「死亡保険」「生存保険」「生死混合保険」に分けられます。

(1)死亡保険

死亡保険とは、保険期間中に被保険者が死亡したとき、または、高度障害状態になったときに保険金が支払われるものです。

死亡保険には、定期保険や終身保険などがあります。

(2)生存保険

生存保険とは、保険期間の満了後に被保険者が生存していたときに、保険金が支払われるものです。

生存保険には、学資保険や個人年金保険などがあります。

(3)生死混合保険

生死混合保険とは、死亡保険と生存保険を組み合わせた性質をもつ保険です。

つまり、保険期間中に被保険者が死亡したとき、または、高度障害状態になったときに保険金が支払われ、保険期間の満了後に被保険者が生存していたときにも、保険金が支払われます。

代表的な生死混合保険には、養老保険があります。

(4)生命保険の種類まとめ

分類

基本保障

該当する保険

死亡保険

保険期間中に被保険者が死亡したとき、または、高度障害状態になったときに保険金が支払われる

定期保険

終身保険

生存保険

保険期間の満了後に被保険者が生存していたときに、保険金が支払われる

学資保険

個人年金保険

生死混合保険

死亡保険と生存保険を組み合わせた性質をもつ

養老保険

2.特約とは?

保険に入ろうとする人の「年齢」「家族構成」「ライフプラン」は、人それぞれです。

そんな個別の事情にあわせて、基本契約に対してオーダーメイドでトッピングをすることができます。それが「特約」です。

特約にはさまざまな種類がありますが、ここでは「ファミリー特約」、「介護特約」、「リビング・ニーズ特約」の3つをご紹介します。

(1)ファミリー特約

ファミリー特約とは、保険期間中に主契約の被保険者の「家族」が死亡したとき、または、高度障害状態になったときにも保険金が受け取ることができる特約です。

(2)介護特約

介護特約とは、事故や入院などで寝たきりなど介護が必要な状態になってしまったときに、保険金を受け取ることができる特約です。

(3)リビング・ニーズ特約

リビング・ニーズ特約とは、被保険者が余命6ヶ月以内と診断されたときに、保険金の全部または一部を生前給付金として受け取ることができる特約です。

リビング・ニーズ特約を付加するときには、追加の保険料はかかりません。

3. 生命保険を検討するときのポイント5つ

保険の設計はとても自由度が高いため、どのような保険が自分に向いているのか判断するのは難しいかもしれません。

生命保険を検討するときのポイントは5つあります。

それは、保険期間(いつまで保障するか?)、保険金(いくらの保障額か?)、保険料(保険料負担はいくらか?)、払込期間(いつまで払うか?)、満期・解約返戻金(満期時または解約時にいくら戻ってくるのか?)です。

ポイント

説明

観点

1.保険期間

いつまで保障するか?

遺族の生活を補償する

2.保険金

いくらの保障額か?

3.保険料

保険料負担はいくらか?

いくら支払余力があり、
いくら貯蓄したいか

4.払込期間

いつまで払うか?

5.満期・解約返戻金

満期時または解約時にいくら戻ってくるのか?

保険期間と保険金

生命保険の最も基本的な枠組みは、(1)保険期間と(2)保険金の2つの要素で決まります。

必要となる保証額は、遺族の生活を補償するという観点から、「遺族の支出」から「遺族の収入」を差し引いて求めます。

このとき、必要補償額はライフステージに応じて変化していきますので、ライフステージが変化するごとに必要補償額と保険契約を見直すことがとても重要です。

①遺族の支出

 配偶者・子どもの生活費、家賃、学費など

②遺族の収入

 年金を含む配偶者の収入、遺族年金、貯蓄など

③必要補償額

 ①遺族の支出 - ②遺族の収入

保険料、払込期間、満期・解約返戻金

次に、(3)保険料、(4)払込期間、(5)満期・解約返戻金の3つの要素について、現在から将来のキャッシュ・フロー(いくら支払余力があり、いくら貯蓄したいか)をもとに検討します。

もし、万が一、キャッシュ・フローがうまく回らず、保険料が家計を圧迫してしまうということであれば、(1)保険期間と(2)保険金を見直す必要があるかもしれません。

4.生命保険に加入するメリット・デメリット

ここで、生命保険に加入するメリットとデメリットについて整理したいと思います。

メリット

デメリット

必要補償額が多額になっても準備することができる

インフレのリスクがある

所得控除を受けられる

保険料が発生する

相続税対策ができる

貯蓄性商品の場合、短期間で解約すると損することがある

1つずつ見ていきましょう。

(1)生命保険に加入するメリット

① 必要補償額が多額になっても準備することができる

1つ目のメリットは、なんといっても万が一の事故や病気にかかった場合に、補償を受けられることです。

そして、必要補償額が、個人で負担できないような大きな額となっても、生命保険の仕組みを活用すれば準備することができます。

② 所得控除を受けられる

2つ目のメリットは、所得税・ 住民税の優遇措置として「所得控除」を受けられることです。

生命保険料、介護医療保険料及び個人年金保険料を支払ったときには、一定の金額を所得税・住民税の計算上の所得金額から控除することができます。

給与所得者が、所得税・住民税を節税できる数少ない方法のひとつですので、ぜひ活用したいですね。

所得控除の金額の計算式は少し複雑です。

以下に、ご参考として所得税の生命保険料の所得控除の計算式をご説明します。

ポイントは、新契約(平成24年1月1日以後締結)と旧契約(平成23年12月31日以前締結)を合わせて、最高12万円の所得控除を受けることができるという点です。

年間の支払保険料等

控除額

20,000円以下

支払保険料等の全額

20,000円超 40,000円以下

支払保険料等×1/2+10,000円

40,000円超 80,000円以下

支払保険料等×1/4+20,000円

80,000円超

一律40,000円

<新契約(平成24年1月1日以後締結)に基づく新生命保険料、介護医療保険料、新個人年金保険料の控除額>

年間の支払保険料等

控除額

25,000円以下

支払保険料等の全額

25,000円超 50,000円以下

支払保険料等×1/2+12,500円

50,000円超 100,000円以下

支払保険料等×1/4+25,000円

100,000円超

一律50,000円

<旧契約(平成23年12月31日以前締結)に基づく旧生命保険料と旧個人年金保険料の控除額>

国税庁・タックスアンサー「生命保険料控除」より抜粋

③ 相続税対策ができる

3つ目のメリットは、相続税対策ができるということです。

相続人が取得した生命保険金で、その保険料の全部または一部を被相続人(亡くなった人)が負担していた場合、相続税を計算する際に、下記計算式で求めた金額が非課税とされます

<生命保険の非課税限度額>

 非課税限度額 = 500万円 × 法定相続人の数

また、相続が発生した時には、亡くなった方の遺産の分割方法を協議することとなりますが、これがたびたび問題となります。

この遺産分割協議において、生命保険金は受取人の固有財産とされ、遺産分割の対象外となります。

つまり、生前に資金を残したいと思った人に、直接、資金を残すことができます。

相続が発生した場合は、被相続人の銀行預金は、原則、遺産分割協議がまとまるまで自由に動かすことはできなくなりますが、生命保険金はすぐに現金化することができます

これも生命保険のメリットの一つだと言えます。

(2)生命保険に加入するデメリット

① インフレのリスクに対応できない

1つ目のデメリットは、インフレのリスクに対応することが出来ないということです。

インフレ(インフレーション)とは、物価が上昇し、貨幣価値が低下する現象のことです。

一般的な保険契約では保険金額は固定されているため、インフレ状況下において保険金の支払いが発生した場合、実質的には目減りした金額を受け取ることとなります。

その結果、受け取る保険金額が、必要補償額に対して不足してしまうことも考えられます。

なお、インフレのリスクに対応するためには、保険金額が変動する保険契約を利用するという選択肢もあります。

② 保険料の支払いが発生する

デメリットと言うと少し語弊がありますが、2つ目は保険料の支払いが発生してしまうことが挙げられます

万が一の事故や病気に対する安心を手に入れられる一方、保険契約で定めた保険料を毎月支払う必要があります。

もし、保険契約で定めた保険料が収入に対して過大だったときや、契約後に収入が減少してしまったときには、保険契約の見直しが必要となります。

③ 貯蓄性商品の場合、短期間で解約すると損することがある

3つ目のデメリットは、貯蓄性商品の場合、保険契約から短期間で解約すると、解約返戻金が払込保険料を大きく下回る場合があるということです。

それを防ぐためにも、キャッシュ・フローを慎重に検討して、保険契約を設計することが重要です。

5. 「人生100年時代」における保険の選び方

今後、平均寿命が延びていくとともに100歳以上人口の増加が進み、2049年には100歳以上人口が「50万人」を突破すると予想されています。

<「平均寿命」と「100歳以上人口」の推移・将来推計>

(生命保険協会「人生100年時代における生命保険業界の役割について」より抜粋)

また、平均寿命が延びていくとともに、認知症の有病率も急増することが想定されています。

なんと、2060年には、65歳以上人口において「3人に1人」が認知症になると予想されています。

<認知症の人の将来推計>

このような「人生100年時代」において、私たちはどのような生命保険を検討する必要があるのでしょうか?

従来の生命保険は、主として「死亡リスク」に主に焦点を当てていました。

つまり、万が一のことがあったときに遺族の生活を保障するということが、生命保険の主たる目的でした。

それに対して、これからの「人生100年時代」では、「長生きをするリスク」や「認知症になってしまうリスク」に対応することが求められます。

ここでは「終身年金(個人年金保険)」と「認知症保険(認知症特約)」をご紹介します。

(1)終身年金(個人年金保険)

終身年金とは、個人年金保険の受取方法の一つであり、被保険者が生存している限り終身にわたって年金を受け取ることができるものです。

現在、個人年金保険の受取方法としては「確定年金」が主流であり、「終身年金」はあまり選択されていません。

個人年金保険の受取方法

割合

確定年金

97%

終身年金

3%

(出典:生命保険協会)

終身年金があまり選択されていない理由は、「死亡時に遺族に残すことが出来ないから」といった合理的要因の他に、「将来の利益よりも現在の利益を重視する」といった非合理的要因(精神的要因)もあると指摘されています。

しかし、これからの「人生100年時代」においては、金融リテラシーの向上に伴って、終身年金での個人年金保険の受取も増加することが予想されます。

終身年金のメリットは、なんといっても被保険者が生存している限り、終身にわたって年金を受け取ることができることです。

長生きした場合の生活資金が枯渇してしまうリスクを回避する方法として、公的年金の上乗せとして活用を検討することをおススメします。

(2)認知症保険(認知症特約)

認知症保険(認知症特約)とは、被保険者が認知症や軽度認知障害の診断を受けたときに、保険金を受け取ることができるものです。

認知症を発症した場合、そうでない場合に比べて、介護費用を含めた介護負担は増加することになります。

2060年には、65歳以上人口において「3人に1人」が認知症になることが予想されていますが、認知症保険(認知症特約)は「認知症リスク」を金銭面でサポートするものとして期待されています。

しかしながら、認知症保険(認知症特約)は、「本人に軽度認知障害の自覚がなく請求がされない」「認知能力低下により請求ができない」といったケースも想定されます。

そのようなケースを防ぐため、指定代理請求人を家族に指定するなどして、認知症を発症した場合にも保険金の請求まで問題なくできるように体制を整備することが必要です。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

人生100年時代に向けて、あなたに合った生命保険やライフプランを考えてみましょう。

このサイトでは、保険やライフプラン、資産形成を相談できるアドバイザーを探すことができます。

「ライフプランを考えたい」「加入している生命保険が適切か相談したい」「ライフプランに沿った生命保険を知りたい」という方は1度アドバイザーに相談してみましょう。

相談したからといって、必ずしも保険に加入する必要はありません。
お気軽にご相談ください。


この記事の執筆者

大桑 克博
大桑中小企業診断士事務所

・経済産業省認定経営革新等支援機関
・中小企業診断士 
・経営管理修士(MBA)
・1級ファイナンシャル・プランニング技能士

銀行、コンサルティングファーム、税理士法人を経て現職。
企業の資金繰り支援(財務・補助金・融資コンサルティング)、事業承継・相続コンサルティング、創業支援を中心に活動。
人生において「お金」を理由として困難に直面する人や、チャレンジを諦めざるを得なくなってしまう人をゼロに。