【相談事例】セカンドライフに向けた資産形成のご相談(33歳男性・会社員・既婚)

みなさんは、資産形成・資産運用を行なっていますか?

人生100年時代を生きる私たちは、将来・老後に向けて資産形成・資産運用を行なっていく必要があります。

ただ、将来のために資産形成を行わないと思いながらも、今を楽しみたいという方も多いのではないでしょうか?

今回は、実際にそのような思いで相談に来られた方の事例を紹介したいと思います。

ぜひ、あなたの資産形成・資産運用の参考にしてみてください。

1. ご相談内容

家とライフプランナー

私がご担当したお客様からは、このようなご相談をいただきました。

思い切ってマンションの購入を検討しています。

それと合わせてセカンドライフのために資産形成を行っていきたいと考えています。

今の状況でマンションを購入していいのか、セカンドライフにはどの程度お金が必要なのかイメージができません。

将来の不安と今を楽しみたい気持ちがあるなか、どうしていけばよいのでしょうか…?

お客様のプロフィールや資産状況、収入と支出は次の通りです。

プロフィール

性別:男性

年齢:33歳

職業:会社員

2. ご相談の問題点

保険の選択

(1)ご相談者様が働けなくなった場合のリスク

奥様は自営業をされており、収入が安定しているとは言えません。

このような状況でご相談者様に万が一のことがあった場合、奥様の生活に不安が残ります

ご相談者様のケースですと、遺族厚生年金が概算で年間100万円想定されます。

奥様の収入が50万円だった場合、合わせて13万円/月ほどしかありません。

家賃と光熱費で10万円必要になりますので、引っ越しするなどして家賃を下げたとしても、ゆとりある生活ができるとは考えにくいといえます。

(2)ご相談者様が年金受給開始後に亡くなった場合のリスク

ご相談者様が年金受給開始後に亡くなった場合、夫婦で20万円ほど年金を受給できる予定が、こちらも13万円/月ほどになってしまいます。

ご相談者様が65歳に年金受給をする時点で奥様は72歳になっています。

ご年齢も考えると、医療費がかかるなど預貯金を切り崩しながらの生活になる可能性が高いといえます。

(3)加入の保険が個人年金タイプで運用効率が良いとはいえない

毎月2万円の保険料を支払い、個人年金保険に加入されています。

26歳から加入しており、65歳まで払うと一時金で1053万円、10年間の年金受取にすると1105万円受け取れる内容でした。

一時金受取の場合、払込金額に対して115%でしたので決して良い運用とはいえません。

死亡保障も払った分が保障されるだけですので保障効果も期待できない内容でした。

3. アドバイザーからのご提案

アドバイザーからの提案

この問題点を踏まえて、次のような提案をいたしました。

(1)資産運用のご提案

資産運用のご提案内容

  • 世界株式中心の年率6%想定のファンドを、毎月6万円・25年間積み立て
  • 投資額は、6万円×12か月×25年間でトータル4,178万円

将来に向けての資産形成は世界株を中心とした積立運用を行い、運用経過を見ながら年率6%を目指すことで、ご相談者様が58歳時点で目標金額を達成するようにゴールを設定しました。

目標金額が達成できると、年金受給開始後にご相談者様が亡くなったとしても、奥様は金融資産を取り崩しながら生活することが可能です。

(2)保障のご提案

保障のご提案内容

  • 収入保障(払込期間:65歳、保険期間:65歳、保険料:毎月0.6万円)
    ご相談者様が死亡した場合だけでなく、障害や介護状態になった場合でも毎月15万円の給付金が受け取る内容
  • がん保険(払込期間:終身、保険期間:終身、保険料:毎月0.6万円)
    将来の治療方法にかかわらず診断一時金を受け取れる内容

今後、マンションを購入し団体信用生命保険に加入していれば、ご相談者様に万が一のことがあったとしても家賃やローンの支払いがないため、遺族厚生年金を受け取りながら奥様は生活していけると思います。

それまでは不安が残るので、収入保障にご加入いただくことにしました。

マンション購入前にご相談者様が亡くなる場合や、介護状態になる場合の収入面の負担を軽減するものです。

さらに、医療保険は勤務先で加入されているとのことでしたが、がんへの備えもしたいとのニーズがありましたのでがん保険にご加入いただきました。

10年、20年先は治療方法が変わっている可能性があるため診断一時金が手厚い内容でご提案しました。

毎月の収支を見ると追加の保険料の支払いは負担になりそうですが、加入中の個人年金保険(毎月2万円)を見直すことで、収入保障とがん保険の保険料支払いに充てることができました。

まとめ

健康とお金のバランス

年間のボーナスや奥様の収入は計算に入れていないため、健康に働き続けた場合は想定以上に家計にゆとりができます。

そのため、奥様と一緒に旅行するなど今を楽しめるかと思います。

ゆとりをもったゴール設定をすることで、余裕があればアーリーリタイアも視野に入れることが可能です。

ただし、これで安心というわけでなく、奥様の介護リスクやご両親の介護リスクなど、ライフプランを変更しなければならないことは他にもあります。

今後は、運用状況の確認のみならず、年に1回のペースで面談することにより、問題点があればその都度改善していきます。

また、お話を聞くと、マンション購入を検討しているのも将来の資産形成を検討しているのも「すべては奥様のため」でした。

何のために保障が必要なのか。なぜ運用する必要があるのか。

ご相談者様の「本音」を聞くことができ、マンションを購入するか否かに関わらず、必要な備えをお伝し、資産形成のゴール設定をすることで、奥様が安心して暮らしていける姿をイメージしていただくことができたと考えています。


 

【実際の投資相談から学ぶ資産運用】ポートフォリオ構築編:40代/経営者/4人家族

皆様こんにちは。ペレグリン・ウェルス・サービシズ株式会社、代表取締役の山口です。

本日のお客様は、小さなデザイン事務所を経営しているO様。

個別株式の短期売買で将来の老後資産を作っていこうとしてきましたが、勝敗も安定せず取引に疲れてきてこれではうまくいかないと考え、中長期目線で資産運用をやり直したいとご相談に来られました。

1. 具体的なご相談内容

O様は大阪市内で小さなデザイン事務所を経営しておられます。

 

お客様の属性

  • 相談者様 : O様40歳 経営者(男性)
  • 家族構成 : 奥様とお子様(2人)の4人家族
  • 年収   : ご夫婦で1,000万円

コロナ禍で多少の売り上げダウンはあったものの、これまでの経営は堅実で軌道に乗りつつあるとのことでした。

そしてこのタイミングであらためて10年後、20年後を見据えた資産運用に取り組みたいと考えたそうです。

というのも、それまでは経営に集中する傍ら、結果が早く出る株式の短期売買で手元資産を増やそうとしていましたが、安定的に利益が積みあがっていくわけではなく、利益が出ていてもある時に投資判断を誤ってせっかくの利益が帳消しになることもあり、3年ほどやってみましたが、結果よりも疲労感が大きかったそうです。

そこで今年のコロナ禍となり、先行きの不透明感からやはり資産運用も経営と同様、リスクはあるものの計画が大切だと考えたそうです。

そこでO様と計画について打合せを開始しました。まずはお客様のご意向をしっかり伺います。

するとO様のイメージする資産運用は次のようなものでした。

  • 頻繁に売買する必要のない資産運用
  • 株式中心にある程度リスクを取りたい
  • 実現の可能性はさておき、運用目標は10%ほどにしたい
  • 必要な売買などメンテナンスについてはアドバイスが欲しい

中長期目線の資産運用においては投資先(アセットクラス)と投資割合が重要です。

その意味で頻繁に売買する必要は無く、最初の方針で決める基本的な設計が重要です。

この軸となる大方針が無ければ、投資環境の変化に振り回されて投資判断を誤ったり、知らず知らずのうちに短期売買が増えたりして、当初の運用目標や運用計画どころではなくなってしまいます。

資産運用で失敗する代表的なパターンと言えます

では、どのように投資先と投資割合を考えていけばよいのでしょうか。

2. 投資方針の考え方

今回ご紹介するのは、日本の公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の投資方針です。

GPIFは、世界の金融市場では約170兆円を運用する世界最大規模の機関投資家です。

GPIFは、わたしたちの年金給付の原資を損なわずに増やしていくため、国内の債券と株式、海外の債券と株式にそれぞれどの程度の割合で投資をするのか、その運用比率の目安を決めて公表しています。

2014年10月に資産配分を見直し、グローバル投資が進む中で日本株の比率を12%から25%に引き上げました。

現在は、2019年10月に基本ポートフォリオの見直しがあり、次のような基本配分となっています。


年金積立金管理運用独立行政法人「基本ポートフォリオの変更について(概要)」よりペレグリン・ウェルス・サービシズ株式会社にて作成

 

一見すると国内外の債券と株式に単純に均等配分しているようですが、5年前と10年前の見直しから比較しますと、国内債券の割合が低下する一方で、海外投資の割合が増加してきました。

GPIFによると、国内の金利低下によって国内債券の利回りが低下してきていることに伴い、相対的に金利が高い外国債券の割合を増加させたとあります。

そしてこのGPIFの基本ポートフォリオからは、興味深いヒントが読み取れるのです。

  • 海外投資の割合を高めている
  • 基本ポートフォリオの構成割合にとらわれず、各資産の乖離許容幅を大きめに設定している
  • 基本ポートフォリオの資産構成割合は5年に一度の見直しだが、内容の議論は随時行っている

ちなみにGPIFが公表している運用目標は、「実質的な運用利回り※:1.7%」※名目運用利回りから名目賃金上昇率を差し引いたスプレッド、とあります。

足元では名目賃金上昇率は、日本はほぼゼロ近辺なので、GPIFの運用目標はおおよそ2%弱ということになります。

少し控えめな印象ですが、日本も金利や物価が上昇してくればその分目標値も上昇することになります。

3. 実際の投資方針(ポートフォリオ)

ということで、O様のポートフォリオ案としては、このGPIFの資産運用を参考にして次のような基本配分としました。

O様のご意向に沿ってポイントをまとめますと次のようになります。

  • GPIFの基本配分を出発点として検討
  • 株式、特に海外株式の投資比率を高めにする
  • 国内債券はキャッシュ(現金)として常に投資に余裕を持つ
  • 資産の分散の観点から、債券投資配分を減らした分REIT等へ振り向ける
  • 各資産とも大幅に基本配分からの乖離を想定しておく
  • 投資環境の変化に応じて定期的に構成割合を見直していく

O様が希望する10%のリターンの実現は容易ではありません。

しかし目標とする以上は、株式の比率はある程度高めにしておく必要があります

そして構成割合を変化させるクッション役として、投資をしない部分、すなわちキャッシュで待機させる配分を設けます。

各資産の許容構成割合は、株式を中心にかなり大きくしておきました。

すなわち、リスクが大きく高まる局面では投資を減らし、株価等の上昇が大きく期待できる局面では積極的にリスクを取れるように想定しているのです。

また、頻繁に売買する必要をなくすために、中長期的な投資環境の変化に応じた基本配分割合と実際の構成割合のチェックを定期的にしていくことにします。

こうすることで、無駄かもしれない目的のない売買や無計画な売買を避けることができます

これがメンテナンスに当たり、O様からはサポートを求められる部分になります。

まとめ

このように、中長期的な資産運用を計画する場合、わたしたちにとって非常に身近な年金の運用であるGPIFの運用内容は、とても参考になります。

当然ですが、GPIFでも定期的に見直しを議論しているわけですので、わたしたちの資産運用においてもほったらかしはよくありません

頻繁でなくとも、時々または定期的に見直しについてチェックする、そんな心の余裕を持ったスローな投資が、むしろ資産運用の失敗を減らしてくれるのではないかと思います。

O様はまだ資産運用を再スタートしたばかりで、執筆時点2020年11月ではまだ多くがキャッシュですが、米国株式のインデックスファンドやREIT等で東証上場の某投資法人の組入れを開始し、今後も来年の投資環境の見通しに注意しながら徐々に投資を増やしていく予定です。

この記事の執筆者

 

 

 

 

 

山口 聰

 ペレグリン・ウェルス・サービシズ株式会社

・証券外務員一種
・日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
・国際公認投資アナリスト(CIIA)

大学卒業後、大和証券にてリテール営業、人事部付きインストラクターを経験。その後アメリカン・ライフ・インシュアランスカンパニーにて営業教育本部、英銀バークレイズの富裕層向けサービス部門、スイス金融大手クレディ・スイスのプライベートバンキング本部を経て2017年ペレグリン・ウェルス・サービシズ株式会社設立、現在に至る。

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「人生100年時代」に本気で向き合う!人生設計と資産形成

みなさんは、自分の「人生100年」を考えてみたことがあるでしょうか?

「もう備えを始めているよ」という人もいれば、
「え、人生って80歳くらいじゃないの?」と思った人もいると思います。

人生100年時代は、2017年に出版された「ライフシフト(LIFESHIFT)」で提唱されました。

人生100年時代は遠い未来の話ではありません。

現代を生きる私たちはすでにその時代に突入しています。

私たちの人生が100年続くときに、私たちの生き方は、これまでとどう変わるのでしょうか?

人生100年時代は既に国家レベルで取り組みが始まっている問題であると同時に、1人1人が考える必要のある問題です。

人生100年時代における生き方を、様々な側面から考えてみましょう。


 

人生100年時代とは?

人生100年への道のり

人生100年時代はリンダ・グラットンさんの著書「ライフシフト(LIFESHIFT)」で提言された考えです。

日本では、この考えを受けて2017年に「100年時代構想会議」が設立され、「新しい経済政策パッケージ」が定められました。

とはいえ、人生100年時代と言われてもピンと来ない人が多いのではないでしょうか?

しかし、

  1. 女性の平均寿命はすでに87歳を超え、毎年延び続けている

  2. 2007年生まれの日本人の半数は、107歳より長く生きる推計がある

  3. 政府も人生100年時代に向けて政策を打ち出している

と聞くと、少し現実味が増すのではないでしょうか?

1つ1つ解説していきます。

(1)2050年には女性の平均寿命は90歳を超える?

1950年からの70年間、日本人の寿命は年々着実に延びています

そして、その傾向はこれからも続くと考えられており、2050年には女性の平均寿命は90歳を超えると推計されています。

2018年時点での日本人の平均寿命は84.1歳です。(女性:87.3歳、男性:81.3歳)

平均寿命の推移

内閣府「高齢化社会白書(令和2年版)」を元に編集部制作

実際に日本人の平均寿命の推移を見てみると、1990年から2010年の20年間で女性は81.9歳から86.3歳へ、男性は75.9歳から79.6歳へとそれぞれ4歳前後寿命が伸びています

寿命の延伸にはいくつかの要因がありますが、主に「医療の発展」「衛生環境の改善」「食事・栄養の改善」によるものだと考えられています。

(2)2007 年生まれの日本人の半数が107歳より長く生きる

人生100年時代を考えるきっかけになった、ライフシフト(LIFE SHIFT)で紹介されている推計です。

原書のタイトルは「The 100-Year Life」、日本語版のサブタイトルには「100年時代の人生戦略」と書かれています。

本のタイトルの通り、人生100年時代における人生・社会の変化を「資産」「健康」「働き方」「人間関係」など様々な側面から考察しています。

著者は心理学・組織論を得意とするリンダ・グラットンさんと、経済学を得意とするアンドリュー・スコットさんで、ともにロンドン・ビジネススクールの教授です。

つまり、ライフシフトは人生100年時代において、個人の経済に何が起こるのか、個人の経済を支える社会の仕組みや会社組織はどう変わっていく必要があるのか、の視点で問題提起・提言された本です。

日本同様に、他の先進諸国(アメリカやヨーロッパ諸国)でも100歳を超えてくる推計になっています。

しかし、みなさんもご存知のように真っ先にその時代を迎えるのは日本です。

著者のリンダ・グラットンさんも日本語版の序文でそのことに触れ、日本に「世界の先頭に立って欲しい」と述べています。

(3)政府も人生100年時代に向けて動き出している

2017年に「人生100年時代構想会議」が発足されました。

議長は当時の内閣総理大臣・安部晋三首相で、ライフシフトの著者リンダ・グラットンさんも会議に招聘されています。

この会議は同年12月に中間報告があり、「生産性革命」と「人づくり革命」を軸とした新しい経済政策パッケージとして閣議決定されています。

つまり、日本は国家として「人生100年時代」に向けて取り組んでいくことを既に決めているのです。

人生100年時代のまとめ

いかがでしょうか?

この記事をお読みのみなさんは、2000年以前に生まれた人が多いと思います。

そのため、107歳までは行かないかもしれません。

しかし、100歳まで生きる可能性は十分にあり得るのではないでしょうか?

ここからは、100年人生は80年人生と何が違うのか?を考えてみましょう。


2. 80年人生と100年人生の違い

人生100年時代における大きな違いは「お金(資産形成)」「仕事(働き方)」「健康」です。

  • お金:人生が長くなると、長く生きる分だけお金が必要になります
  • 仕事:人生が長くなると、働く期間も長くなります(定年延長)
  • 健康:人生が長くなると、健康寿命も伸ばす必要があります

もちろん、他にも「人間関係(家族・仲間)」や「余暇の過ごし方」にも変化が起こってきますが、この記事ではこの3点について考えてみたいと思います。

(1)お金の考え方(資産形成)

お金を育てる

「長く生きる分だけお金が必要になる」

感覚的には理解できることだと思います。

では、具体的に私たちは何歳の時点で、いくらお金を貯めておく必要があるでしょうか?

そのお金を貯めるには、毎年いくらの預金や投資を行い、何%の利回りが必要でしょうか?

この問いに答えられる人は、なかなかいないと思います。

なぜ答えられないかと言うと、これまでの80年人生と比べて、100年人生では確証のない条件が多いからです。

  • 給与・年収が増え続けるか分からない
  • 今の仕事・職業をずっと続けるか分からない
  • 定年が分からない
  • 年金が、いつから、いくらもらえるか分からない
  • 結婚するか、家族が何人になるか分からない
  • そもそも投資をやったことがないから分からない
  • 何歳まで生きるか分からない

典型的な80年人生では「終身雇用」「年功序列」「高金利の銀行預金」「結婚する」「家を持つ」「定年退職」「年金生活」と、いくらお金が必要で、いくらお金をもらえるかの計算が比較的簡単でした。

ところが、現代は結婚することも家を持つことも当たり前ではなくなり、終身雇用を始めとする社会システムも過去のものになりつつあります。

そして、頼みの綱であった年金システムにも徐々に陰りが見えてきています。

決して不安を煽りたいわけではありません。

すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

日本国憲法第二十五条

日本国憲法で定められている通り、国はこれからも最低限度の生活を保障する努力をしてくれると思います

しかし、長くなった人生を最低限度ではなく、自分らしく、自分の理想に近い生き方をしていくには、ある程度、私たち自身でお金を作っていく、資産形成をする必要があります。

そして、資産形成の方法は3つしかありません

  1. 使うお金を減らす(支出を減らす)

  2. たくさん稼ぐ(年収を上げる)

  3. 稼いだお金を増やす(貯金・投資をする)

ここでは、3のお金を増やすことについて触れてみます。

この図は1970年以降の、ゆうちょ銀行の金利の変化を表したグラフです。

銀行の金利推移

ゆうちょ銀行「貯金金利の沿革」などを元に編集部制作

バブル崩壊前の1990年までは、金利が5%を超えている年が多、7%を超えている年もあります。

この金利7%と言う数字は約10年間で預金が約2倍になる利率です。(100万円は200万円に、500万円は1,000万円に)

ところが、2000年以降は金利がほぼ底を突き、0.01%の状態が続いています。(2020年4月3日に0.002%に引き下げられています)

金利が0.01%の場合、100万円を10年間預金しても約800円しかお金は増えません

銀行によって多少の金利差はありますが、銀行預金でお金を増やすことは現実的ではありません

お金の問題については、次の章でもう少し詳しく取り上げてみたいと思います。

(2)仕事の考え方(働き方)

働き方の変化

みなさんは、70歳・80歳になったときにも、今の仕事をしているイメージを持てるでしょうか?

人生100年時代では、複数の職種に就き、複数の職場で働くことが、より一般的になる可能性があります。

人生80年時代では、1つの会社で働くことが、3つの理由から可能であったと考えられます。

  1. お金の考え方で触れた「終身雇用」「年功序列」の企業制度が、多くの会社で機能していた

  2. 働く期間が、高校・大学を卒業してから約40年間と、現在と比較すると短かった

  3. いわゆるIT革命の影響が少なく、失業リスクが低かった(1つの能力・スキルで長く働くことができた)

これらの前提が崩れつつあることが、働き方に影響を与えています。

① 終身雇用・年功序列の衰退

まず、終身雇用・年功序列は日本的雇用慣行とも言われていますが、2019年にトヨタ自動車・豊田社長と経団連・中西会長の発言が話題となりました。

「雇用を続ける企業などへのインセンティブがもう少し出てこないと、なかなか終身雇用を守っていくのは難しい局面に入ってきた。」

2019年5月13日、記者会見での発言(日本自動車工業会・豊田章男会長)

 

「正直言って、経済界は終身雇用なんてもう守れないと思っているんです。」
(中略)
「人生100年時代に、一生一つの会社で働き続けるという考えから企業も学生も変わってきている」

2019年4月19日、記者会見での発言(経団連・中西宏明会長)

日本的雇用慣行という言葉が示す通り、この終身雇用・年功序列はあくまで「慣行」であって法律で定められた制度ではありません。

そのため、日本的雇用慣行を採用している企業数の推移を数値で示すことは難しいですが、先ほどの発言からも衰退していく流れを感じ取ることができます。

② 働く期間の長期化

2つめの働く期間について、2025年4月以降すべての企業に対し定年延長が義務化され、定年が60歳から65歳へ引き上げられます

企業は、「定年引き上げ」「定年の廃止」「再雇用制度の導入」のいずれかの対応を行う必要があります。

また2021年からは、70歳までの就業機会確保も努力目標として設定されます。

定年延長で定年は65歳?70歳?人生100年時代の働き方を考える

定年が70歳になった場合、働く期間は約50年になります。

冒頭の問いかけのように、1つの技能を習得し、1つの仕事・1つの職種だけで50年以上働き続けることは難しいのではないでしょうか?

例えば、日本が第二次世界大戦の終戦を迎えた1945年から高度経済成長期とその崩壊、さらにはITの勃興・バブル崩壊までが55年の年月です。

この間に、仕事や職業が大きく変化してきたことは、想像にかたくないと思います。

③ IT革命による働き方・職業の変化

最後に3つめ、18世紀半ばから19世紀にかけて起こった産業革命では、機械化により多くの失業者が発生しました。

技術革新は産業の大幅な生産性向上とともに、人手がいらなくなることによる失業を招きます。

そして今、自動運転車を代表するように、人工知能(AI)・IoT・ロボット工学などによる第四次産業革命が進行しています。

2013年に英オックスフォード大学が「10〜20年以内にアメリカの労働人口の47%が機械・人工知能(AI)によって代替可能である」との論文を発表し、話題となりました。

この論文では、対象となる職業に銀行の融資担当や保険の審査担当など、ホワイトカラー(管理職・事務職を示す言葉)までが含まれていたことに衝撃が走りました。

このように、社会システムにも変化が起きる人生100年時代では、複数の職種・複数の職場」で「長い期間」働く可能性が高くなります

このことをマイナスに受け取る人もいるかもしれませんが、自分の目標や夢を実現するチャンスが増えていると、プラスに捉えると良いのではないでしょうか?

実際に、様々な仕事を経験して、いくつものスキルを身に付けたり、自分のやりたいことにチャレンジする機会は増えていると考えられます。

Facebook社のCOOシェリル・サンドバーグさんは著書「LEAN IN」の中でこのように述べています。

キャリアとは、梯子のようなものではありません。
そういった時代は終わりました。
ジャングルジムのようなものです。
ただ前と後ろだけを見るのではなく、後ろへ下がったり横に移動したり角に行ってみたり。

このように、はしごを登る=みんなが1つの会社で昇進を目指すのではなく、様々な仕事をしてみたり、多様な価値観で働くことができると考えると、より「自分らしい人生100年」が実現できるかもしれません。

(3)健康の考え方

健康寿命

最後に、もう1つ重要なことが健康です。

長くなった人生を、長期間怪我や病気の状態で過ごしてしまっては元も子もありません。
仕事も健康であればこそ続けることができます。

実際に、男女ともに平均寿命とともに健康寿命も伸びています。

男性の平均寿命と健康寿命女性の平均寿命と健康寿命

厚生労働省「簡易生命表(令和元年)」などを元に編集部制作

一方で、男女ともに平均寿命と健康寿命の差(不健康期間)は、15年間でそれほど変化がありません。

男性と女性の不健康期間

厚生労働省「簡易生命表(令和元年)」などを元に編集部制作

このことは、生涯において健康に過ごせる期間が増えていることを示しています。

ただし、男女ともに生涯における不健康期間が10年前後あるため、改善していくことが望ましい状況です。

また、健康状態は若い頃からの生活習慣の影響もあるため、1人1人が意識して気をつける必要があります。

あなたに合ったバランスを見つけることが大切

ここまでお話ししてきた「お金」「仕事」「健康」の3つは、独立した要素ではなくお互いに影響を及ぼします。

そのため、私たち1人1人が自分に適したバランスを取る必要があります。

お金と健康・仕事のバランス

例えば、老後資金を作って早く引退し、悠々自適の生活を送ることが理想的な人もいれば、働くことが生きがいで仕事があるから健康を維持できる人もいます。

一方で、お金が足りないからずっと仕事を続けなければならない、健康を害してしまいたくさんのお金が必要になる人もいます。

大切なことは、前もって自分がどういう人生にしたいのか、そのためにはどういったバランスにするべきかを考えておくことです。


3. 資産形成に向けて

お金を育てる

仕事と健康は厚生労働省を中心に、「働き方改革」と「2035年、日本は健康先進国へ。」のビジョンを元に、施策が進められています。

お金・資産形成についても、金融庁が2003年から「貯蓄から投資へ」をビジョンに施策を進めてきています。

ただし、20歳以上の日本人で証券を保有している人は18%に留まります。
(日本証券業協会「2018年・証券投資に関する全国調査」より)

2013年以降に、NISA・iDeCoの制度が始まりましたが、まだまだ資産形成・資産運用が進んでいる状態とは言えません。

しかし、人生100年時代を生きる私たちは、年金制度の変化や長寿化も背景に、資産形成を行なっていく必要があります。

  1. 年金制度の変化

  2. 年金と長寿化の影響で、老後資金を蓄える必要がある

  3. 投資を正しく理解して資産形成に取り入れる

こちらも、1つ1つ解説していきます。

①年金制度の変化

日本の年金システムは、賦課方式と言う「現役世代が納めた保険料を年金受給者に給付する」仕組みがベースとなっています。

日本の年金制度の仕組み
厚生労働省「簡易生命表(令和元年)」などを元に編集部制作

賦課方式は、現役世代が高齢者を支える構造になっているため、少子高齢化が進むほど現役世代の負担は大きくなります

日本は2020年時点で、すでに約2人で1人の高齢者を支えなければならない状況になっています。

高齢者1人に対する現役世代人数
内閣府「高齢社会白書(2017年版)」を元に編集部制作

この賦課方式と少子高齢化社会であることを背景に、年金制度が破綻するといったことが語られることがありますが、そのようなことはありません。

未来のことを予測することは非常に困難ですが、その中でも日本の人口構造が変わっていくことはある程度はっきりと分かっていることです。

そのため、国は人口構造の変化を見越した年金制度の改正を行っています。

実際に年金制度改正は度々施行され、徐々に受給開始年齢が引き上げられるとともに、1人1人が受給開始年齢を選択できるようになっています。(直近では2020年5月29日に「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」が成立し、同年6月5日に公布されています。)

早く受け取りを開始すると、毎月の受給額は減りますが、受け取る期間は長くなる可能性があります。

一方で、受け取り開始年齢を遅らせると、毎月の受給額を増やすことができます。

個々人の保有資産額や健康状態、何歳まで働くかなどに合わせた選択ができるように変化していると考えられます。

年金制度は破綻しない!年金の種類を理解して資産運用で備えを

②老後資金を蓄える必要がある

そのように年金制度が変化する中、老後資金2,000万円問題が頻繁にニュースで取り上げられた時期がありました。

この問題は、2019年に金融審議会の市場ワーキング・グループが発表した報告書 「高齢社会における資産形成・管理」が発端となっています。

※金融審議会は国内金融関係の重要事項についての調査・審議を目的に設置された、内閣総理大臣・金融庁長官および財務大臣が意見を求める公的な機関です

夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職の世帯では毎月の不足額の平均は約5万円であり、まだ20~30年の人生があるとすれば、不足額の総額は単純計算で 1,300万円~2,000 万円になる。

この金額はあくまで平均の不足額から導きだしたものであり、不足額は各々の収入・支出の状況やライフスタイル等によって大きく異なる。

当然不足しない場合も ありうるが、これまでより長く生きる以上、いずれにせよ今までより多くのお金が必要となり、長く生きることに応じて資産寿命を延ばすことが必要になってくるものと考えられる。

重要なことは、長寿化の進展も踏まえて、年齢別、男女別の平均余命などを参考にしたうえで、老後の生活において公的年金以外で賄わなければいけない金額がどの程度になるか、考えてみることである。

金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」

この報告では、現在の高齢者世帯への調査結果を元に、平均の支出と収入・寿命から計算すると、平均で1世帯あたり2,000万円が不足すると試算し、提言しています。

様々な議論を呼びましたが、この数字自体は前提を決めた上で計算した数字ですので変えようがありません。

必要な老後資金はいくら?人生設計で考える自分の人生100年!

この数字を変えるために、私たちにできることは2つです。

  1. 退職年齢を遅らせる(長く働く)

  2. 退職年齢までに必要なお金を作る

まず、1つは長く働いて、年金を長く納めるとともに、年金の受け取り開始年齢を遅らせることです。

長く働くことは、3つの要素のうち「仕事(スキル・能力を含む)」と「健康」があれば可能ですし、国も雇用長期化の制度を進めていますので、選択肢として考えられそうです。

3は備えがあるほど、2の退職年齢を早められる可能性がありますし、スキルや健康の問題で働けなくなる可能性もあるので、並行で取り組みたい選択肢です。

③資産形成のために投資を取り入れる

資産形成

ここでは、先ほどの問題に対して「退職年齢までに必要なお金を作る」について考えてみたいと思います。

お金を考える際に重要になるのが、貯蓄と投資の話です。

  • 日本は先進諸国に比べて貯蓄(現預金)比率が高く、投資にお金が回っていない
  • お金の考え方でもお伝えした通り、現在日本の銀行預金ではほとんどお金が増えない
  • 仮に年利7%で運用したとすると、約10年でお金は2倍になる

突然ですが、「72の法則」をご存知でしょうか?

資産運用において、元本が2倍になるまでの年数を簡易的に計算するときによく使われる法則です。

72の法則

72 ÷ 年利(%) = 年数

 ※複利(1年間で得られた利益をそのまま運用に回す)での計算

で、計算することができます。

この計算式を使うと、年利7%で運用した場合は約10年で元本が2倍になります。(実際には年利が毎年ピッタリ7%ということはありませんし、あくまで簡易的な計算方法なので参考までに)

72の法則

現実的には年利7%で10年間運用するのは容易なことではありませんが、年利が3%の場合でも約24年で元本は2倍になります。

そして、例えば投資信託の場合、10年間の平均利回りが3%以上の商品は少なくありません。

仮に40歳・500万円で投資信託を始め、年利が3%だった場合、65歳の時点で約1,000万円が作れている状態になります。

このように考えると、一部の預金を投資に回すことも現実味が出てくるのではないでしょうか?

※ 証券会社への手数料が発生し、また運用利益には税金がかかります。1,000万円がそのまま得られるものではありません。

ところが、この章の冒頭でお伝えした通り、日本はイギリス・アメリカと比べて現預金の割合が非常に高くなっています

日本は現預金が52%を占めるのに対して、イギリスは25%、アメリカに至っては13%です。

国によって状況が異なりますし、単純にどちらがいいとは言えませんが、投資を取り入れることで老後資金のための資産形成は可能性が広がります。

保有資産の海外比較
日本銀行「資金循環の日米欧比較(2019年)」を元に編集部制作

投資には様々な商品があり、商品ごとに特徴があります。

投資の基本を知りたい方は、こちらの記事もどうぞ。

投資の基本!投機とは違う、失敗しないための資産形成術

4. 人生設計と資産形成をセットで考える

ライフプランとコーヒー

ここまで人生100年時代で変化することの全体像と、お金の問題にスポットをあてて資産形成のお話しをしてきました。

いかがでしたでしょうか?

ここでお話ししたことは、人生100年時代に向けた変化の一部であり、実際にはもっと大小様々な変化が起こってきます。

ここからは総論ではなく、あなた自身のことを考えるヒントをお伝えしたいと思います。

まず、老後資金2000万円の例をご紹介しましたが、実際に必要な金額はあなたのライフスタイルによって変わってきます

  • どこで暮らすのか?移住を考えるか?
  • 何の仕事を何歳まで続けるのか?転職や独立はするか?
  • 結婚はするか?子供は何人いるか(欲しいか)?
  • 趣味は何か?

そのため、自分のありたい人生100年=ライフプラン(人生設計)を考え、それを元にお金がいくら必要かを算出し、どうやって資産形成をしていくかを考えることをオススメします。

(1)自分のありたい人生100年を考える

漠然と「どうありたいか?」と聞かれても答えるのは難しいと思います。

そこでオススメするのは、人生における自分の役割を分解し、それぞれごとにどうしたいかを考える方法です。

これはアメリカの教育学者ドナルド・E・スーパーが提供した「ライフ・キャリアの虹」をベースにした考えです。

文部科学省が2017年に作成した「高校生のライフプランニング」でも紹介されています。

ライフキャリアの虹
ドナルド・E・スーパー「ライフキャリアの虹」を元に編集部制作

人はみな多くの役割を持って生きています。
そして、それぞれの役割の大きさは年齢によって異なります。

  • 自分の子供に対する親
  • 配偶者
  • 働く人
  • 趣味を楽しむ余暇人
  • 両親に対する子供

働き方が多様化している中、人によっては「働く人」の役割もいくつかに分解されるでしょう。

趣味が多い人は、「余暇人」の役割が複数あると思います。

そういった役割ごとに、どの時期に何をするのかを考えます。

「働く人」の役割を例にすると、こういった目標が考えられます。

  • 大学卒業から40歳まではサラリーマンとしてスキルを磨く
  • 45歳までサラリーマンを続けながら、独立のための起業準備を行う
  • 45歳で独立し、65歳まで社長として働く

当然、起業ではなく「今の会社で部長を目指す」道もあります。

また、趣味がゴルフであれ、「40歳までにスコア100を切ること」を目標にする人もいれば、「月1ゴルフを楽しむ」人もいると思います。

このように、まずは自分の役割を書き出して、それぞれどうしたいかを考えてみましょう。

(2)人生設計=ライフプランを作る

それぞれの役割を考えながら、表にまとめてみましょう。
それが、あなたの人生100年の設計図・ライフプランになります。

複数の役割で考えるライフプラン

この表を作ると、きっと空白の箇所や前後の繋がりで気付くことが出てくると思います。

  • 45歳で独立したいと思っているけど、そのための準備期間が必要
  • 趣味のゴルフはずっとエンジョイでいいのかな?いつかはスコア100を切りたいな
  • 60歳になったら子供も自立するのか。その先は2人でどういう生活をしよう?

このようなことを自問したり、パートナーや子供と話をして、あなたの人生をより深く考えてみてください。

(3)資産形成のための計画を作る

ここまではお金のことを考えずに人生設計を考えてきましたが、老後資金を含めお金の問題は切っても切り離せません。

そこで、それぞれの役割・状態ごとに毎年いくらの支出があるのか、いくらの収入があるのかを考えていきます。

役割ごとの収支計画

労働者・サラリーマンであれば、基本的に支出は0円で、収入=年収になります。

余暇人・ゴルファーであれば、支出が年間ゴルフにかけるお金であり、収入は基本0円です。

趣味が高じて副業になっている人であれば、支出・収入の両方があると思います。

そうして、すべての役割の支出・収入を出すと毎年のお金の流れが見えてきます

その結果、資産が赤字になることがなければ、その人生計画を元に歩んで行けば大丈夫そうです。

一方で、どこかで赤字になるようであれば、計画の見直しが必要です。

見直す方法は、3章の資産形成でもお話しした「支出を減らす」「稼ぎの収入を増やす」「稼いだお金を増やす」の三択です。

(4)ライフプランや資産形成のプロに相談する

あなたの100年人生ですから、まずは自分で人生設計をすることは非常に重要です。

一方で、その人生設計がどれくらい実現性があるのか、本当に資産形成ができるのかは不安も多いと思います。

また、なかなか自分1人では考えられない人もいると思います。

そんなときは、ライフプランや資産形成・資産運用のプロに相談してみることも1つの手段です。


まとめ

この記事では「人生100年時代」の現実味、そこで起こってくるであろう私たちの人生の変化、そのための備えとしての人生設計・資産形成の考え方についてお話ししてきました。

「人生100年時代」は、どの国もまだ経験したことのない未知の世界です。
そのため、どのような変化が起こるのか確実なことは誰にも分かりません。

ただ、そこに向けて私たち1人1人が取り組んでいく必要があることは感じていただけたのではないでしょうか?

Route100では「あなたらしい100年人生を」歩めるお手伝いができるよう、コンテンツや具体的に相談できるサービスを提供していきます。

※ この記事は、投資を推奨することや勧誘を目的にしておりません
※ 選択肢の1つとして、投資の考えや投資信託などの金融商品を取り上げております
※ 投資には一定のリスクを伴いますので、ご自身の資産状況などを考慮の上ご判断ください

Route100では、あなたに合ったアドバイザーを探すことができます。

相談したからといって、必ずしも申し込みなどを行う必要はありません。
まずは気軽に相談してみましょう。

必要な老後資金はいくら?人生設計で考える自分の人生100年!

2019年に「老後資金2,000万円」が話題となり、多くの議論が巻き起こりました。
記憶に残っている人も多いのではないでしょうか?

2,000万円という数字は、金融審議会の報告書で提言された数字です。

当時この報告が呼び水となり「最低3,000万円は必要だ」「平均的な2人以上世帯では5,000万円必要だ」「ゆとりのある生活には1億円必要だ」など、様々な意見が飛び交いました。

実際のところ、老後資金はどう考えたら良いのでしょうか?

そして、老後に向けてどのような備えをしておくべきでしょうか?

この記事では、改めて老後資金と老後の備えについて考えていきます。

老後への備えは早く始めるほど、無理なく余裕を持って準備を行うことができます。
「まだ先のことだから」と先延ばしせず、ぜひ一緒に考えてみましょう!

1. 老後資金とは?

そもそも老後資金とはどういうことでしょうか?

日本には年金制度があります。
年金だけで生活することはできないのでしょうか?

金融庁の機関である金融審議会の報告書は、要約すると『「60代以上の」「2人以上世帯」の平均的な収入と支出から計算すると、「老後30年間」で「2,000万円」が必要になる』と提言しています。

ここで言う収入には、年金も含まれています。

夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職の世帯では毎月の不足額の平均は約5万円であり、まだ20~30年の人生があるとすれば、不足額の総額は単純計算で1,300万円~2,000万円になる。

この金額はあくまで平均の不足額から導きだしたものであり、不足額は各々の収入・支出の状況やライフスタイル等によって大きく異なる

当然不足しない場合もありうるが、これまでより長く生きる以上、いずれにせよ今までより多くのお金が必要となり、長く生きることに応じて資産寿命を延ばすことが必要になってくるものと考えられる。

重要なことは、長寿化の進展も踏まえて、年齢別、男女別の平均余命などを参考にしたうえで、老後の生活において公的年金以外で賄わなければいけない金額がどの程度になるか、考えてみることである。

金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」※Route100編集部にて強調表示を追加

この報告を見ると「やっぱり年金だけでは生活できないんだ。。」と思う人もいると思います。

老後資金の問題を考える上で難しいのはこの点です。

この報告書はあくまで現状の数字から、平均して見たときの推計を示しています。

この平均の中には以下の状態の人たちが混在していて、その割合までは分かりません

  • 年金だけで生活している人
  • 65歳以降も働き続けて、年金+収入を得ながら生活している人
  • いくらかの貯蓄があり、年金+貯蓄を使いながら生活している人
  • 多くの貯蓄があり、豊かな生活をしている人

老後資金の問題が難しいのは、結局1人1人の生活・ライフスタイルによっていくら必要かが変わってくることです。

様々な試算方法で平均値や一般的な数字を算出することはできますが、最後は自分で考える必要があります。

つまり、老後資金とは「老後に使う予定のお金から年金給付額を差し引いた、自分で稼ぐ・蓄える必要のある資金」です。

では、老後資金問題がなぜ今取り上げられているのでしょうか?

2. 老後資金が問題になっている背景

老後資金の問題はこれまでなかったのでしょうか?

先ほどの金融審議会の報告は、現状の年金受給世代への調査報告を元に算出されています

その報告で、年金受給世代の平均的収入より支出が多かったことから、老後資金の問題は以前から存在していた考えられます。

では、なぜいま老後資金が問題になっているのでしょうか?

これには、2つの背景があります。

  1. 国の附属機関である金融審議会から、老後資金2,000万円問題が報告されたこと

  2. 年金制度の崩壊・破綻の不安が広がっていること

それぞれ見ていきます。

 

1. 老後資金2,000万円問題

この提言は、金融審議会の市場ワーキング・グループが2019年6月3日に発表した 「高齢社会における資産形成・管理」の報告書に記述されています。

金融審議会は、内閣総理大臣、金融庁長官および財務大臣の意思決定に際して、専門的な立場から調査・審議する諮問機関です。

意思決定の権限はありませんが、大きな影響力を持っている機関と言えます。

そのような国の重要機関からの提言であったことが、社会的に大きなインパクトを与えたと考えられます。

また、この報告書では老後資金の問題への対応について以下のように提言しています。

今後は年金受給額を含めて自分自身の状況を「見える化」して、自らの望む生活水準に照らして必要となる資産や収入が足りないと思われるのであれば、各々の状況に応じて、就労継続の模索、自らの支出の再点検・削減、そして保有する資産を活用した資産形成・運用といった「自助」の充実を行っていく必要があるといえる

金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」 ※Route100編集部にて強調表示を追加

つまり、自分が「人生100年時代」をどのように過ごしたいのか、そのためにいくらお金が必要になるかを、1人1人が考えて準備する必要があるしています

2. 年金制度の崩壊・破綻の不安

老後資金2,000万円問題は、年金を受け取った上足りない資金を自分で用意することを提言していました。

しかし、その前提となっている年金制度への不安が高まっていることが、もう1つの要因として考えられます。

現行の公的年金制度は、現役世代が納めた保険料をその時々の高齢者の年金給付にあてる「賦課方式」という仕組みを基本としています。

日本の年金制度の仕組み

そして、ご存知の通り日本は少子高齢化が進み、2020年時点では現役世代約2人で1の高齢者を支えなければならない状況となっています。

高齢者1人に対する現役世代人数
内閣府「高齢化社会白書(2017年版)」を元に、Route100編集部作成

年金制度の維持についても様々な意見や、「破綻するのでは?」「自分たちの世代はもらえないのでは?」「保険料が凄く高くなるのでは?」といった不安やあきらめの声をよく耳にします。

しかし、年金制度は少子高齢化社会に向けた改正・制度設計が行われているため、年金制度そのものが崩壊・破綻する可能性は低いと考えられます。

  • 破綻するのでは?
    • 年金制度は少子高齢化を前提に、100年先を見据えて「財政検証」というチェックが5年に1度行われています
  • 自分たちの世代はもらえないのでは?
    • 先ほどの解説の通り、年金は「賦課方式」を採用していますのでもらえなくなることはありません
  • 保険料が凄く高くなるのでは?
    • 積立金や国庫負担の財源確保が行われており、保険料も上限が定められています

ただし、これはあくまで年金制度自体は維持されるという話で、年金で十分な暮らしができるという話ではありません。

年金制度は破綻しない?年金の種類と個人の備えを考える!

先ほどの金融審議会の提言の通り、自分が望む生活に足りない分は自ら用意する必要があるということに変わりはありません。

3. 必要な老後資金は人生100年時代の人生設計から逆算する

100年時代のライフプランニング

では、必要な老後資金は1人1人違うと言いましたが、どう考えたらよいでしょうか?

まず、自分の人生100年を考えてみることです。

若い人にとってはなかなか想像しづらいことですし、これからの人生で変わる可能性は大いにあります。

それでも、大まかで良いので考えてみることが大切です。

例えば、以下のように考えている人がいたとします。

  • Aさん:60歳で早期退職して、その後は大好きな旅行をしたり悠々自適な暮らしがしたい
  • Bさん:65歳で定年退職して、その後は田舎で静かに暮らしたい
  • Cさん:75歳まで元気に働いて、その後も趣味や余暇を思いっきり楽しみたい

AさんとBさんは、比較的退職する年齢が若いので、毎月の年金受給額もそれほど多くありません。

また、Bさんは老後の生活コストが低いので年金だけでも生活できる可能性がありますが、Aさんは60歳までにかなりの貯蓄が必要かもしれません。

Cさんは長く働いて年金保険料も多く納めることになるので、余裕を持って生活ができるかもしれません。

ただし、Cさんの場合、病気や怪我で思ったよりも長く働けなくなるリスクを伴います。
そのため、元気に働けるように、健康寿命を維持する備えも同時に考える必要があります。

こうしたことを考えると、何歳までにいくらの貯蓄・資産が必要か、病気や怪我に対して保険に入っておくべきなのかが見えてきます。

より具体的に考えたい人は次の表を使って考えてみましょう。

リタイア後の家計金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」を元にRoute100編集部作成

1年間の収支がプラスになっていれば問題ありません。

しかし、マイナスになっている場合は、マイナス金額 × 老後の年数(生きる予定の歳 – 退職する歳)が必要な老後資金になります。

では、その老後資金はどうやって用意したらよいでしょうか?


4. 早めの資産形成・運用で実現性を高める

貯蓄や退職金などで準備できれば、問題ありません。

一方で、現役世代は子供の教育費、住宅・車のローンの返済、家族旅行など支出も多くなかなか貯蓄ができない時期でもあります。

また、ある程度の貯蓄はあるけど、老後のことを考えるともっと資産を作っておきたいと考える人もいると思います。

そういった場合は貯蓄の一部を投資に回すなどして、資産形成することを考えてみてはいかがでしょうか。

資産形成は早めに始めることで実現の可能性が高くなります。

投資の基本!投機とは違う、失敗しないための資産形成術

また、「自分がいくら老後資金を準備するべきか知りたい」「このままで老後資金が準備できるか不安」「資産形成について相談したい」という方はプロのアドバイザーに相談してみてはいかがでしょうか。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
この記事では以下のことをお伝えしてきました。

  • 老後資金とは「老後に使う予定のお金から年金を差し引いた、自分で稼ぐ・蓄える必要のある資金
  • 平均的な家庭では老後資金2,000万円が必要になる可能性がある
  • 家庭によって必要な老後資金の額は異なり、自分の人生100年の人生設計から逆算することでおおよその金額が分かる
  • 貯金・退職金に加えて、資産形成・運用を考える

「あなたらしい人生100年」にしていくために、ぜひ老後資金・資産形成を考えてみましょう。


 

【相談事例】10年後リタイアに向けた老後資金のご相談(55歳・男性・独身)

みなさんは、資産形成・資産運用を行なっていますか?

人生100年時代を生きる私たちは、将来・老後に向けて資産形成・資産運用を行なっていく必要があります。

でも、どうやって行なえば良いのか、分からない方も多いのではないでしょうか?

そのようなときは、アドバイザーに相談することも1つの手段です。
アドバイザーは、あなた個人の状況に応じたアドバイスを行なってくれますし、資産運用をお願いすることもできます。

ただ、そうは言っても、アドバイザーにどんな相談をしたらいいかのか、分からない人もいると思います。

この記事では、独立系金融アドバイザーが受けた相談事例をご紹介します。
ぜひ、あなたの資産形成・資産運用を行う際の参考にしてみてください。

1. ご相談内容

私がご担当したお客様からは、このようなご相談をいただきました。

10年後(65歳)にリタイアを想定しているのですが、年金が年120万円しか受け取れないことを知り不安になりました。

独身なので出来る限り不安のないセカンドライフを過ごしたいです。

現在の預金と年金だけでは漠然とした不安があります。
今から収入が増えることは考えにくいですし、運用の必要性を感じています。

また、5年前から糖尿病になり、将来的に治療費が増えることも不安になります。

金融機関に運用や保険の相談をしましたが、知識がないのでどうしてよいかわからず困っています・・・。

お客様のプロフィールや資産状況、収入と支出は次の通りです。

プロフィール

性別:男性

年齢:55歳

職業:会社員

相談者のお金の状況

金融機関等の提案

運用

  • 米国株式を中心とした投資信託4銘柄へ一括投資(300万円 × 4=1,200万円)
    → 10年間運用し、元本が3,100万円になっていることを想定(年率10%)
  • 米ドル建て債券(300万円)
    → 金利1.5%で、10年間の金利を合わせた345万円になっていることを想定

保険

  • 高度障害付き死亡保険

2. ご相談の問題点

このご相談と、金融機関などの提案内容には大きく3つの問題がありました。

(1)キャッシュフローの改善が期待できない

仮に、毎月の収支差額-1.5万円と年間ボーナス60万円を差し引くと年間で42万円貯蓄できる計算になります。

これを10年間貯蓄できた場合、65歳を迎えたタイミングで金融資産が2,220万円となっています。

ご相談者様の場合、現状と同じ生活をしようと思えば、年金分を差し引いても4,000万円以上必要になります。

65歳のリタイアまで10年で収入が増えていくとは考えづらく、支出に関しても無駄使いが多いとも言えません

節約すると精神的な負担が心配です。

(2)金融資産の70%の一括投資を考えている

このような状況であれば運用効率を上げるのが当然です。

金融機関等で提案された内容であれば65歳時点で3,100万円と345万円を合計した3,445万円となり、4,000万円に近付くかもしれません。

しかし、金融資産の80%以上を一括投資するのは良い選択とは言えません。

なぜなら、買付後に相場が大きく下落すると、想定していた運用結果にならないからです。

また、年率10%を想定した提案内容になっていますが、世界株式の半世紀にわたる年率リターンは約6%ですので、非現実的なリターンを想定した運用だと考えられます。

ファンドの直近の5年や10年の運用成果が年率10%以上あったとしても、この先が同じとは限らないことに注意が必要です。

(3)ニーズはあるが医療保険に加入していない

さらに、運用成果が出る以前に糖尿病が悪化し、失明や壊疽、またはその他の病気やけがになった場合は働けなくなるリスクもあります。

医療費や生活費が重なり、運用を中断せざるを得なくなります

そうした場合、セカンドライフはより不安なものとなってしまいます。


3. アドバイザーからのご提案

この問題点を踏まえて、次のような提案をいたしました。

ご提案の変更点

変更のポイント

積立と一括投資をバランスよく行うことで、手元に現金を残しながら金融資産をしっかり運用することができます。

また、リターンを現実的なものに設定することで、10年・20年先をより具体的にイメージしていただくことができます。

① 積立運用について

3年間で総額1,080万円積立、その後7年間継続運用した場合、想定運用結果が1,825万円

② 一括運用に関して

初年度に投資した500万円を10年間運用した場合、想定運用結果が705万円

①積立運用と②一括運用を合わせて、65歳時点で運用額が1,825万円+705万円=2,530万円となっていることを想定。

それ以降は2,530万円をリスクを抑制しながら3.5%運用を行い、90歳までの25年間取り崩しを行うことで年金と合わせて毎月22.75万円支出することが可能となります。

③ 保険に関して

ご相談の際に、金融機関等から提案されていた保険は、死亡保障が付いているタイプでした。

相談者様にお尋ねすると、「親も子供いないし死亡保障は必要ないです。」とのこと。

そのため選択肢から死亡保障付きの保険は除外し、糖尿病による失明や壊疽、その他の病気やけがに備えることができる医療保険をご紹介しました。

保険料は1.2万円で、持病があっても加入できる、病気やけがに備える医療保険に加入いただくことで、目先の支出は増えますが、「支出が増えても安心感を得たい」という相談者様のご意向に沿ったご提案を心がけました。


まとめ

相談者様のように、キャッシュフローの改善を図ることが難しく、リタイアメントまでの運用期間が充分にない場合は、運用効率を上げながらも現金比率は維持していくなど、全体のバランスが非常に重要となります。

短い期間で大きなリターンを得ようと思うと失敗してしまうことが多いので、そこを中立にお伝えすることで精神的にも落ち着いて運用を始めていただくことができました。

お客様からすると目の前の金融のプロが10%といえば、実現可能なのだと思ってしまいます。

いくら想定のリターンが高いからといって、安易に運用を始めてしまうと、
想定以上のリスクがあったことに、後から気づくことも少なくありません。

このように「運用」と「保障」のバランスが非常に重要だと思います。

この記事の執筆者

 

 

 

 

 

牧元 拓也 

 株式会社バリューアドバイザーズ

・証券外務員一種
・相続診断士
・日本FP協会認定 AFP
・プライマリープライベートバンカー

私たちは商品販売のプロではありません。お客様のライフプランに合わせた資産運用のプロとして価値をお届けしております。

お客様ひとりひとりに合った運用方法があります。
自分だけで悩まずぜひご相談ください。

 


 

平均の貯金額はいくら?人生100年時代の資産形成・投資術

2019年に「老後資金2000万円が必要」というニュースが話題となりました。

実際に必要な老後資金は、1人1人のライフスタイルによって変わってきます

ただ、いずれにしても自分の人生100年をより良いものにするために、一定の蓄えは持っておきたいものです。

では、一般的にどれくらい貯金をしていて、どうやって貯めていくのが良いのでしょうか。

海外との違いも見ながら考えてみましょう。

1. 30代・40代の貯金額は平均500〜700万円、中央値は?

まずは、年代別の平均貯金額を見てみます。

1世帯あたりの平均貯蓄額厚生労働省「国民生活基礎調査(2019年)」を元に、Route100編集部作成

  • 全年齢の平均貯蓄額は1,077万円
  • 平均を押し上げているのは60歳以上の高齢層
  • 出費の多い30代・40代では貯蓄額の伸びが小さい
    (20代 → 30代で伸びが大きいのは結婚による貯蓄の合算があるため)
平均貯蓄額を見てどう思われたでしょうか?

「思ったより高いな」「なんとなく感覚より高い気がする」と思った人もいると思います。

それは、平均値と中央値の違いによるものかもしれません。

中央値とは「データを小さい順番に並べた時に、真ん中に位置する値のこと」です。

平均貯蓄額は、一部の高額保有者によって引き上げられる影響がありますが、中央値はちょうど真ん中の人の貯蓄額になるため、多くの人にとってより感覚値に近くなることがあります。

こちらは、世帯の分類別に見たときの貯蓄額の平均値と中央値です。

貯蓄額の平均値と中央値厚生労働省「国民生活基礎調査(2019年)」を元に、Route100編集部作成

世帯によってバラつきがありますが、いずれの世帯でも中央値の方が低いことが分かります。

これは、先ほどお話したとおり、平均貯蓄額が一部の人によって引き上げられていることを意味しています。

また、30代・40代の平均貯蓄額に近い「児童のいる世帯」では平均値と中央値には300〜400万円の開きがあります。

分類の軸が違うため、確実なことは言えませんが、同じ傾向があるのだとすると、30代・40代の貯蓄額の中央値は200〜400万円の可能性があります。

次に、その貯蓄の内訳を見てみましょう。

2. 金融資産の割合は現預金が約52%

貯蓄における金融資産の構成を見ると、現預金の比率が高いことが分かります。

現預金と保険などで、金融資産の1/4以上を占めています。

日本銀行「資金循環の日米欧比較(2019年)」を元に、Route100編集部作成

株式・投資信託などを合わせた有価証券、いわゆる投資に回っている金融資産は18%に留まります

また、証券投資に関する全国調査からも、投資を行なっている人は全体の15%ほどであることが分かります。

保有している金融資産日本証券業協会「証券投資に関する全国調査(2018年)」を元に、Route100編集部作成

現預金比率が高いことには、何か問題があるのでしょうか?

3. 銀行預金は超低金利でお金が増えない

現預金比率が高いことによる問題は、「現在の日本の預金金利ではお金がほとんど増えない」ことです。

このグラフは、ゆうちょ銀行の定期預金の金利です。

銀行の金利推移ゆうちょ銀行「貯金金利の沿革」などを元に編集部制作

ゆうちょ銀行(郵便貯金)のピークは1974年の7.5%で、バブル崩壊前の1992年までは金利3%以上が維持されていました。

この7%と3%が、どれくらいの金利かというと、

  • 年利7%は、10年間でお金が約2倍に増える金利
  • 年利3%でも、24年間でお金が約2倍に増える金利
    ※いずれも複利で運用した場合

一方で、バブル崩壊以降金利は下がり続け、2000年以降はずっと1%未満の状態が続いています。

さらに、2016年以降は定期預金1年以上の金利は0.01%となっています。

この金利では100万円を預金していても、10年間で増えるのは約800円です。

金利7%は10年間で約2倍ですので、約100万円増えます。

金利によってこれだけの違いが出てきます。

もちろん、貯蓄を持つことは必要ですし、すぐに使うことのできる現預金は必要です。

ただし、貯蓄と投資の比率は考え直してみる必要があるかもしれません。

次に、金利と合わせてインフレの問題を考えてみましょう。

4. インフレを考えると預金の価値は下がっている

先ほどの超低金利とインフレを考えると、私たちの預金の価値は下がっている可能性があります

まずインフレとは、インフレーションの略語で、私たちが普段買っている日用品やサービスの値段(物価)が上がることを指します。

そして、物価の上昇はお金の価値の低下を同時に意味します。

例えば、100円の果物は100円の価値があることを意味していますが、この果物が150円になると元の100円玉では買うことができません。

これは「果物の値段・価値が上がった」と同時に「100円玉の価値が下がった」ことを意味しています。

では日本のインフレ率は、どのように変化しているのでしょうか?

下のグラフと数字は、IMF(国際通貨基金)が発表している1980年からの日本のインフレ率です。

インフレ率の変化IMF(国際通貨基金)「World Economic Outlook」を元に、Route100編集部制作

1990年頃までは、一時的な景気の悪化はありながらも、経済成長とともに比較的高いインフレ率が維持されています。

その後、「失われた20年(一般的に1990年初め〜2010年初め)」を経て、2010年から2019年までの10年間は平均0.52%のインフレ率となっています。

また、2013年に日本銀行と政府は共同声明で「インフレ率2%」を目標とすることを発表しています。

日本銀行は、今後、日本経済の競争力と成長力の強化に向けた幅広い主体の取組の進展に伴い持続可能な物価の安定と整合的な物価上昇率が高まっていくと認識している。
この認識に立って、日本銀行は、物価安定の目標を消費者物価の前年比上昇率で2%とする

内閣府・財務省・日本銀行の共同声明「デフレ脱却と持続的な経済成長の実現のための政府・日本銀行の政策連携について

実際の2013年以降のインフレ率を見ると、2%が達成できているのは2014年だけですが、2019年までの7年間の平均は0.88%となっています。

さて、この章の冒頭で「インフレはお金の価値の低下」という話をしました。

仮にインフレ率2%が実現したとすると、100万円の物は10年後には約122万円になります。

インフレ率1%だとすると、100万円の物は10年後には約110万円になります。

一方で、3章でお話しした預金金利0.001%が続いた場合、10年後にも100万円はほぼ100万円のままです。

つまり、インフレ率が1〜2%の世界では、銀行預金100万円の価値は80〜90万円ほどに減っている感覚になります。

これが、この章の冒頭で「私たちの預金の価値は下がっている可能性があります」と言っていることの意味です。

では、私たちはどうするべきでしょうか?

次に海外との金融資産の違いを見てみましょう。

5. 日本は欧米に比べて投資が少ない

日本は現預金比率が高いとお伝えしましたが、それは欧米との違いを見ると明らかです。

このグラフは、日本銀行が発表している日本・アメリカ・ヨーロッパ諸国、それぞれの金融資産の割合を示したグラフです。

保有資産の海外比較日本銀行「資金循環の日米欧比較(2019年)」を元に、Route100編集部作成
  • 現預金比率は日本の53%に対し、アメリカは13%、ヨーロッパ諸国は34%
  • 投資資産比率は日本の15%に対し、アメリカは53%、ヨーロッパ諸国は30%

国・地域によって大きく構成が異なることが分かります。

国によって状況や環境が異なりますので、一概にどの国・地域が正しいと断定することはできません。

しかし、日本は現預金比率が高く、将来に向けた投資に資産が回っていないと言えそうです。

最後に投資を行うメリットと早く始めるべき理由について考えてみましょう。

6. 老後資金のために投資を行うべき理由

3章で金利による預金の増え方の変化に触れました。

現在は超低金利時代ですので、預貯金による貯蓄の増加はほとんど見込めません
そのため、私たちは他の手段で資産を増やす必要があります。

その手段の1つが「投資」です。

金融庁は2000年から「貯蓄から投資へ」をスローガンに証券市場の構造改革に取り組んでいます。

金融庁の「人生100年時代における資産形成」では、日本とアメリカそれぞれの20年間での金融資産の変化を取り上げています。

日本とアメリカの金融資産の推移金融庁「人生100年時代における資産形成」を元に、Route100編集部作成

年代に違いはありますが、20年間で日本人の金融資産が約2倍の伸びに対し、アメリカは約8倍伸びているとされています。

このグラフには以下のコメントが添えられています。

・米国では、退職口座(IRA、401(k)等)、投資信託を中心として、現役時代から資産形成を継続した結果、金融資産は20年間で8倍強に増加。

・日本は貯蓄率が低下傾向にあり、かつ、預貯金の割合が高いため、20年間で2倍程度にしか増加しておらず、効果的な資産形成が行えていない。

金融庁「人生100年時代における資産形成」より抜粋

このグラフを見る際に、1点注意すべきことがあります。

それは、この20年間における日本とアメリカの経済成長の格差です。

日本とアメリカ、それぞれの国の1993年末の株価を100としたときに、2014年末に日本の平均株価がほぼ横ばいなのに対し、アメリカは約4.5倍に伸びています
(日本は日経平均株価、アメリカはダウ平均株価の数値)

そのため、先ほどのグラフからは以下のことが言えそうです。

  • アメリカは経済成長の影響もあり、資産運用される有価証券(株や投資信託)、年金口座、保険すべてが大きく伸びている
  • アメリカは預貯金も着実に増えているが、常に預貯金の比率は低い
  • 日本は預貯金は堅実に増えているが、投資の割合が少なく資産の伸びも少ない

これは、日本はアメリカに比べて経済成長が乏しかったのだから仕方がない、という話ではありません。

仮に20年前にアメリカ株に投資をしていたら、同じような恩恵を受けることができた可能性があります。

投資の基本!投機とは違う、失敗しないための資産形成術

では、投資はいつから始めるのが良いでしょうか?

7. 資産形成・資産運用は20代から始めよう

「複利」という言葉をご存知でしょうか?

複利とは「得られた利益をそのまま運用して、さらに利益を大きくする」考え方です。

例えば100万円を年利10%で運用できたとします。

  1. 1年後には110万円になり、この時点での利益は10万円
  2. 次の年は110万円を運用することになるため、2年後には121万円になり、前年との利益さは11万円
  3. 同様に3年目は121万円を運用することになるため、3年後には133万円になり、前年との利益差は12万円

このように、複利で運用すると雪だるま式に資産が大きくなって行きます。

実際には年利10%は極端な例ですが、このグラフのように長期間運用することで最終的に得られる利益には大きな差が出てきます。

毎月1万円投資の資産推移

このグラフは毎月1万円を30年間運用した場合のシミュレーションです。

これなら20代からでも始められると思いませんか?

「実際に投資を始めたい」「自分に合った商品・プランを知りたい」「定年までそれほど時間がないので相談したい」という方は1度アドバイザーに相談してみましょう。

相談したからといって、必ずしも申し込みなどを行う必要はありません。
まずは気軽に相談してみましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
この記事では以下のことをお伝えしてきました。

  • 30代・40代の貯金額は平均500〜700万円、中央値は200〜400万円と推測
  • 日本人の金融資産は現預金が約53%と高い
  • 銀行預金は超低金利でほとんどお金が増えない
  • インフレを考えると預金の価値は下がっている
  • 日本は欧米に比べて投資が少ない
  • 老後資金のために投資を行うべき理由
  • 20代から始めよう

「あなたらしい人生100年」にしていくために、老後資金・資産形成を考えて金融資産の割合を考え直してみましょう。


 

長い健康寿命で老後の不安を解消!定年延長の人生100年時代に備える

「健康寿命」という言葉を聞いたことがありますか?

健康寿命とは、生涯のうち健康に暮らせる期間のことです。

定年と、年金受給開始年齢が引き上げられることもあり、長く健康であることが「人生100年時代」において重要になってきます。

では、実際に寿命と健康寿命にはどれくらいの差があるのでしょうか?
健康寿命の実態を知り、「人生100年時代」における健康について考えてみましょう。

1. 健康寿命とは

健康寿命とはWHO(世界保健機関)が2000年に提唱した指標で、平均寿命から、寝たきりや認知症など介護状態の期間を差し引いた期間のことです。

私たちが普段目にする平均寿命には、寝たきりや認知症などの介護期間、病気などによる医療が必要な期間も含まれています。

一方で、健康寿命は日常的に医療・介護に依存することなく、自立した生活ができる期間を表しています。

そのため、平均寿命と健康寿命の差(以降、厚生労働省表現にならい「不健康な期間」とします)が小さいほど人生の質が高いことになります。

私たちの人生において健康寿命の維持は重要です。

また、国としても健康寿命が長いことは、医療費や介護費の削減に結び付きます。

そのため、WHOをはじめ世界各国の政府や保健機関も、健康寿命を高め、生涯に対する健康寿命の割合を高めることを重要な政策目標にしています

日本では、厚生労働省が「健康日本21」で「健康寿命の延伸」を目標に、様々な施策を検討・実行しています。

平均寿命と健康寿命の差(不健康な期間)

では、実際に平均寿命と健康寿命にはどれくらいの乖離があるのでしょうか?

厚生労働省の発表値では、男女ともに不健康な期間が10年前後あります。

平均寿命と健康寿命の差厚生労働省「簡易生命表(2018年)」を元に、Route100編集部作成
  • 男性は平均寿命81.0歳に対して、健康寿命は72.1歳、不健康な期間は8.9年
  • 女性は平均寿命87.1歳に対して、健康寿命は74.8歳、不健康な期間は12.3年

男女ともに平均寿命・健康寿命は伸びています。

厚生労働省「簡易生命表(2018年)」を元に、Route100編集部作成

しかし、2001年から2016年までの寿命と不健康な期間を見てみると、あまり変化していないことが分かります。

男女の不健康期間厚生労働省「簡易生命表(2018年)」を元に、Route100編集部作成

また、不健康期間は男性で約9年、女性は約12.5歳と非常に長いように感じます。

世界と比較するとどうでしょうか?

先進諸国は多くの国が不健康期間の問題を抱えている

WHOの集計データによると、2016年に日本は世界の中で平均寿命は1位、健康寿命は2位になっています。

しかし、不健康期間は145位です。

この表は、WHOの同じデータから、健康寿命が1位〜5位の国のデータを抽出・編集したものです。

ここから、健康寿命が長い国は先進国が多いことが分かります。

そして、不健康な期間はシンガポールを除く国では、いずれも9年を超えています

つまり、先進諸国と比べて、日本の不健康期間が突出して高いわけではありません。

しかし、平均して10年近くも医療・介護に依存した生活を送っている現状は改善する必要がありそうです。

ちなみに、シンガポールが不健康な期間が短い理由は、国と国民の健康意識の高さが要因ではないかと言われています。
(一部定性的な情報であるため、参考程度にご理解ください)

  • アルコール・タバコの摂取量が少ない
    • 高い税金が掛けられており、公共の場での摂取も制限されている
  • 富裕層が多く、健康への意識が高い
  • 国民皆保険制度がなく、病気や怪我になると高い医療費が掛かる
    • そのため健康への意識が高い

ここまで、日本は世界でも平均寿命・健康寿命ともに最も長い分類に入る国であることを見てきました。

ここからは、老後に対する不安について見ていきましょう。

2. 老後の不安トップは「お金」と「健康」

内閣府の「国民生活に関する世論調査2019年」によると、老後に対して多くの人が「お金」と「健康」に不安を感じていることが分かります。

現在上位になっている不安と、1992年から2019年にかけての増加率は以下のようになっています。

  1. 老後の生活設計(+17.8%)

  2. 自分の健康(+12.3%)

  3. 家族の健康(+5.9%)

  4. 今後の収入や資産の見通し(+18.6%)

健康面の不安とともに、将来の生活・資産への不安が広がっていることが分かります。

生活の中で感じている悩みや不安内閣府「国民生活に関する世論調査(2019年)」、Route100編集部作成

「お金」と「健康」は互いに影響する要素であるため、合わせて考える必要があります

  • 老後の医療・介護費を計算して、定年(何歳までを働くか)を考え、資産形成・資産運用を行っておく
  • 定年を考えて、その歳まで健康を維持できるよう生活習慣を見直す

もちろん、定年後も長く健康を維持することは人生において大切なことです。

しかし、まず元気に定年まで働き、お金の面でも安心して老後を過ごせる状態を作っておくことが重要です。

「老後資金がいくら必要か知りたい」「資産形成・保険の相談をしたい」「定年と老後資金について相談したい」という方は、プロのアドバイザーに相談してみてましょう。

相談したからといって、必ず申し込みなどを行う必要はありません。

まずは気軽に相談してみましょう。

次に、定年と健康寿命の関係を見ていきましょう。

3. 定年延長と健康寿命の関係

当然ながら、健康でなければ働くことはできません

日本は長寿化と少子高齢化の影響により、定年年齢と年金受給開始年齢が引き上げられています。

日本人の健康寿命は2016年時点で75歳でした。

では、定年年齢は何歳でしょうか?

定年年齢は2020年時点では60歳です。
これが、2025年までに65歳に引き上げられます。

また、2021年には企業に対し定年年齢70歳が努力目標になります。

定年延長で定年は65歳?70歳?人生100年時代の働き方を考える

2020年時点では定年と健康寿命には15年の差があります。

しかし、定年が70歳になると健康寿命との差は5年にまで縮まります
(健康寿命も伸びていくと思われるため、実際にはもう少し長くなると考えられます)

定年70歳はすぐに義務化されるわけではありませんが、より健康寿命が大切になってくることは間違いなさそうです。

では、私たちが健康を維持するためには何が大切でしょうか?

4. 健康寿命を伸ばすためにできること

では、健康寿命を伸ばすためには何ができるでしょうか?

そのためには、まず病気になる要因を知る必要があります。

病気は以下の要因が複合的に積み重なることで発症すると考えられています。

  • 外部環境要因:病原体、有害物質、事故、ストレスなど
  • 遺伝要因:遺伝子異常、加齢など
  • 生活習慣要因:食生活、運動、喫煙、飲酒、急用など

厚生労働省・人口動態統計2019によると、日本人の死亡要因は老衰を除くと、①がん(悪性新生物)27.3%、②心疾患15.0%、③脳血管疾患7.7%となっています。

これらの病気は、40歳前後から死亡率が高くなることから、以前は「成人病」と呼ばれていました。

その後の研究で、成人病は突然発症するものではなく、上記の要因が積み重なることで発症する可能性が高いことが分かってきました。

その結果、1996年の公衆衛生審議会において「食習慣、運動習慣、休養、 喫煙、飲酒等の生活習慣が、その発症・進行に関与する疾患群」が「生活習慣病」として定義されました。

現在、日本では厚生労働省が掲げる「健康日本21」が健康施策の基本方針になっており、その冒頭で生活習慣の改善が次のように取り上げられています。

この理念に基づいて、疾病による死亡、罹患、生活習慣上の危険因子などの健康に関わる具体的な目標を設定し、十分な情報提供を行い、自己選択に基づいた生活習慣の改善および健康づくりに必要な環境整備を進めることにより、一人ひとりが稔り豊かで満足できる人生を全うできるようにし、併せて持続可能な社会の実現を図るものである。

厚生労働省「健康日本21(総論)はじめに」より抜粋

やや古い調査データになりますが、リスク要因と死亡者数の関連を見ると、生活習慣に関する要因が上位に来ています。

リスク要因別の関連死亡者数厚生労働省「健康日本21(総論)はじめに、Route100編集部作成

つまり、健康寿命を伸ばすためには「1人1人が生活習慣を改善し、維持することが大切」だと考えられます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
この記事では以下のことをお伝えしてきました。

  • 日本は健康寿命が長い国だが、それでも不健康期間が10年近くある
  • 老後に向けて、お金と健康のことを考えておく必要がある
  • 日本は定年延長が進んでいて、定年と健康寿命の歳が近づいている
  • 健康寿命を維持するには生活習慣を改善し、維持する必要がある

「あなたらしい人生100年」にしていくために、ぜひ定年年齢・老後資金・健康寿命について考えてみましょう。


 

ポートフォリオ、資産運用に失敗しないための分散投資術

「ポートフォリオ」という言葉をご存知でしょうか?

ポートフォリオは幅広い意味を持つ言葉ですが、一般的には、資産形成・資産運用を行う際の投資商品の構成やその割合のことを指します。

人生100年時代を生きる私たちにとって、資産形成・資産運用を行うことは必要不可欠になってきています。

そして、ポートフォリオを考えることは、投資の上級者に限らず、投資初心者にとっても重要なことです。

まだ、資産形成・資産運用を初めていない人にとっても、気づきがあると思います。

ぜひ一緒に投資の基本やポートフォリオを学んでみましょう。

1. 投資の基本

投資の基本は「長期投資」「分散投資」だと言われています。

どちらも、言葉の通り「長期に渡って投資を行う・考える」「投資先を分散する」ことです。

もう少し詳しく、それぞれ見てみましょう。

長期投資

長期投資・長期運用は、複利の効果を利用して20年・30年という長期的な視点で資産を運用することで、安定的にお金を増やす考え方です。

目先の利益や損失にとらわれず、日々の値動きや株価の一時的な高騰・下落に左右されずに投資を行うことができるため、個人投資家、特に初心者にとって重要な考え方です。

分散投資

分散投資は、複数の国・地域・商品・企業に投資先を分散することによって、リスクを減らして安定的に運用する考え方です。

1社の株に全ての資産をつぎ込んでいて、その会社が倒産してしまった場合、全ての資産を失うことになります。

これは極端な例のようですが、「投資によって退職金を全部失ってしまった」などの記事やニュースを目にしたことはありませんか?

詐欺など悪質なものもありますが、そもそもすべてのお金を1つの商品につぎ込まなければ(分散すれば)、全部を失うということは起こりません

分散投資によってリスクを減らすことは、投資の基本と言えます。

投資の基本やリスクについて、より詳細に知りたい人はこちらもどうぞ。

投資の基本!投機とは違う、失敗しないための資産形成術

2. ポートフォリオとは

ポートフォリオとは、資産形成・資産運用を行う際の投資商品の構成とその割合のことです。

投資商品には、株式や債券、投資信託などがあります。

そして、それぞれ日本国内株や外国株があり、投資先の国や地域にも多くの違いがあります。

投資商品の種類によって、得られるリターンとリスクの大きさには違いがあります。

そのため、これら投資商品を組み合わせることによって、自分の理想とするリターンとリスクのバランスを取る必要があります。

具体的な例を見ながら考えてみましょう。

① 投資に偏りすぎているポートフォリオ

株式投資、かつ1社に資産の80%を投資しているケースです。

株式中心のポートフォリオ

いかがでしょうか?

「危ないなぁ」と思われた人もいるのではないでしょうか?

もちろん、このA社がどういった会社かにも依ります。

この会社が大きく成長すれば、大きな利益を得られるかもしれません。

しかし、どんな会社であっても想定外の事態が起こり、業績が急激に悪化したり、最悪の場合は倒産にいたる可能性があります。

株式に限らず、1つの投資商品や企業に、自分の資産の大部分を投資することは、リスクが高いと言えます。

② 投資を行なっていない人のポートフォリオ

次は投資を行なっていない人のポートフォリオです。

現預金のみのポートフォリオ

これは、一見極端な例のように思うかもしれません。

しかし、20歳以上の日本人で証券を保有している人は18%に留まります。
(日本証券業協会「2018年・証券投資に関する全国調査」より)

つまり、82%の人のポートフォリオは実際にこのようになっていると考えることができます。
(調査対象の保有証券は「株式」「投資信託」「債券」のみであるため、不動産投資など、その他の投資は含まれません)

また、ゆうちょ銀行・メインバンクの通常預金の金利は0.001%です。(2020年12月1日時点)

一方で、日本のインフレ率は、2013年から2019年の7年間の平均で0.88%です。

つまり、預金だけを行なっている人は、実質保有資産の価値が減っていることになります。

預貯金とインフレの関係はこちらの記事でも詳しく解説しています。

平均の貯金額はいくら?人生100年時代の資産形成・投資術

③ 比較的バランスが取れているポートフォリオ

最後に、比較的バランスが取れているポートフォリオです。

バランスの取れたポートフォリオ

こちらはいかがでしょうか?

分散投資が十分にできているとは言えませんが、先ほどの例に比べると金融商品の種類も多く、株式も2社に分散投資しています。

また、現預金をある程度持ちながら、投資もできているため、バランス良く資産形成・資産運用ができていると言えます。

このように、自分の保有資産や目標に合わせて、ポートフォリオを考える必要があります。


3. 資産運用に失敗しないためのポートフォリオ

では、資産運用に失敗しないためには、どのようなポートフォリオにすれば良いでしょうか。

ここでは、資産運用に失敗しないためのポートフォリオを、「良いポートフォリオ」と仮称します。

良いポートフォリオとは、次の条件を満たしているものだと考えられます。

  • 分散投資によりリスクを抑えられている
  • 必要な資産を築くための利回りを、得られる構成になっている
  • 当面の生活と、将来への備えのバランスが取れている

そもそも、資産運用における失敗とは、どういうことでしょうか?

何をもって失敗と呼ぶのでしょうか?

明確な定義はありませんが、多くの方が考える1番分かりやすい失敗は「資産が減った(損をした)」ではないでしょうか。

資産運用の目的はお金を増やすことですので、これは明らかに失敗と言えるかもしれません。

しかし、資産形成・資産運用の目的は、将来や老後に自分が望む暮らしをするために、必要なお金を準備することです。

そのため、運用利回りが低く、必要なお金を準備できない場合、このケースも失敗に当てはまるのではないでしょうか。

失敗は言いすぎだとしても、少なくとも成功したとは言えません。

また、短期的に資産が減ったとしても、目標としている年齢までに資産を貯めることができた場合は、成功と言えます。

そのため、ある年齢までに、自分に必要なお金を準備することを成功と考えると、先ほどの3つの要素が必要だと考えられます。

では、実際にポートフォリオはどのように考えたら良いでしょうか?

ここでは2つのポイントで考えてみたいと思います。

  1. 投資比率の目安

  2. 投資商品のポートフォリオの目安

(1)投資比率の目安

投資と現預金のバランスは、どのように考えるのが良いでしょうか?

あくまで1つの目安ですが、年齢=現預金比率とする考えがあります。

この考えを元にすると、年齢別の投資比率はこのようになります。

投資・現預金比率の目安

これは、若年期ほど取れるリスクが大きく、かつ早めに資産形成を行うことを推奨した考え方です。

リスクが大きく取れる理由は大きく2つです。

  • 若年期は、単身世帯も含め家族の人数が少ない
  • 老後までの期間が長いため、景気が低迷しても取り返せるチャンスがある
    (定年ギリギリで投資に失敗すると、挽回できる期間が短く難しい)

また、お金には多いほど増えやすい性質があります。

例えば、年利3%で10年間資産運用した場合を考えてみます。

運用額によるお金の増え方

100万円を運用した場合、10年後の資産は134万円になります。

一方で、1,000万円を運用した場合、10年後の資産は1,344万円になります。

年利が一緒なので、どちらも増加率は約34%で変わりませんが、金額では310万円もの開きがあります

そのため、若年期に資産形成し、人生の後半に掛けては投資比率を下げながら、ある程度まとまったお金を資産運用する考え方です。

(2)投資商品のポートフォリオの目安

では、次にポートフォリオを考えてみましょう。

こちらも、あくまで目安の1つですが、国内の株式と債券、外国株式と債券の4つをバランス良く持つ考えがあります。

ポートフォリオの目安

このポートフォリオの考え方のポイントは3つです。

  • 国内と外国をバランス良く保有することで、国や地域、為替のリスクを分散する
  • リスクの高い商品と低い商品を組み合わせることで、全体のリスクを抑えつつ一定のリターンが期待できる
  • 株式と債券には相関関係があるため、損失リスクを抑えることができる
    (一般的には、株式市場が低迷しているときには、債券市場に資金が流入するため)

このように、投資商品にはそれぞれの性質があるため、それらを組み合わせることで、リスクとリターンをある程度コントロールすることができます。

これがポートフォリオの考え方になります。

いかがでしょうか?

ここでご紹介した、「投資比率」と「投資商品のポートフォリオ」は、あくまで1つの目安になります。

年齢、年収、保有資産、家族の構成などにより取れるリスクの大きさ、目指しているリターンなど個別の状況で、最適な割合は変わってきます

自分に合った投資比率、ポートフォリオを見つけることは簡単ではありません。

そのようなときは、アドバイザーに相談してみるのも1つの手段です。

相談したからといって、必ずしも投資を始める必要はありません
資産運用やポートフォリオについて、お気軽にご相談ください。


まとめ

この記事では以下のことをお伝えしてきました。

  • 投資の基本は長期投資と分散投資
  • ポートフォリオは、分散投資における投資商品の構成とその割合のこと
  • 良いポートフォリオは、リスクとリターンのバランスが取れている

投資は「あなたらしい人生100年」を手助けしてくれます。
正しく理解し、未来に向けて資産形成・資産運用を行なっていきましょう。


 

年金制度は破綻しない!年金の種類を理解して資産運用で備えを

「年金制度が破綻する」といった話を耳にしたことがありますか?

結論から言うと、年金制度が破綻する可能性は低いです。

年金制度を管轄する厚生労働省も「年金が給付されなくなることはありません!」「公的年金がなくなることはなくなることはありません」と明言しています。

そもそも、年金はなぜ必要なのでしょうか?

年金制度が始まった経緯や改正の歴史を読み解き、年金制度が破綻しない理由と1人1人が取るべき備えを考えてみましょう。

1. 公的年金とは

公的年金は国が提供する保険です。

公的年金という名の保険は、高齢・病気・怪我などにより、生活するために必要な収入が得られない人や家庭を守るために、3つのリスクに対する補償を備えています。

  • 老後の生活を補償する「老齢年金」
  • 重度の怪我や病気になった際の、生活を補償する「傷害年金」
  • 事故や病気で、働き手を失った家族の生活を補償する「遺族年金」

保険ですので、補償を受けるには保険料を支払う必要があります。

そして、民間の保険と違い公的年金は法律で加入が義務づけられています

民間の保険は任意加入なのに、公的年金はなぜ加入が義務づけられているのでしょうか?

それは、国の社会保障として医療や介護と同じ位置づけで「国民全員が同じように安心して暮らしていける」ことを目指しているためです。

では、長寿化と少子高齢化が進む中でその制度を維持することはできるのでしょうか?

2. 年金制度が破綻する可能性は低い

年金制度は定期的に改正を行うことで、制度が維持されています。

少子高齢化を想定して改正・制度設計が行われているため、厚生労働省が明言している通り破綻の可能性は低いと考えられます。

公的年金がなくなることはなくなることはありません

年金が給付されなくなることはありません!

厚生労働省「一緒に検証!公的年金」より

制度設計に加え、現在は「財政検証」と言って、5年に1度長期的にみて年金制度が健全かを診断するチェックが行われています。

財政検証では100年先を見通したチェックを行っています。

また「年金制度が破綻しなくても、保険料が凄く高くなるのでは?」という声もあります。

これは年金の仕組みから来る不安です。

年金制度は「賦課方式」と言って、「今現役世代が支払っている保険料を、現在の年金受給者に給付する」方式を基本にしています。

そのため、少子高齢化が進んでいくと現役世代の負担がどんどん大きくなるのではないか?という不安が広がっているのです。

日本の年金制度の仕組み

私たちが不安に思っていること、つまり長寿化・少子高齢化は当然国も想定していることですので、この点についても対策が打たれており、保険料が一定額以上にはならないように設計されています。

具体的には、現行の年金制度には以下の内容が盛り込まれています。

年金制度の少子高齢化対策

  • 上限を固定した上での保険料の引き上げ
  • 基礎年金のうち、1/2は国が負担
    • 2014年に行われた消費税増税の一部を財源として確保
  • 積立金の活用
    • 将来の現役世代の負担を抑えるために、保険料の一部を積立金として確保
    • 積立金はGPIF:年金積立金管理運用独立行政法人が運用しており、2001年以降の平均利回りは約3%
  • マクロ経済スライドの導入
    • 現役世代の人口減少、平均余命の伸びに合わせて年金の給付金額を自動的に引き下げる仕組み

また、「オプション試算」と言って、財政検証の際に制度変更によって財政がより安全になるかの検証が行われ、効果が認められる場合には制度への反映が行われています。

実際に、オプション試算では以下のような検証が行われています。

年金のオプション試算の例

  • 厚生年金に加入できる範囲の拡大
    • パートなど労働時間による加入制限の緩和、対象事業所の拡大
  • マクロ経済スライドの見直し
    • インフレ率(物価・賃金の上昇)が低い場合でも、給付金額が引き下げられるにした場合の試算
  • 加入期間の延長と受給開始年齢の選択制
    • 保険料を支払う期間が長く、年金を受け取る年齢が高いほど、毎月の受取額が増える制度

「国民全員が同じように安心して暮らしていける」ための社会保障ですので、様々な想定をした上で制度が維持できるよう設計と改正が行われています。

そのため、様々な意見や憶測がありますが、年金制度が破綻する可能性は低いと考えるのが妥当だと考えられます。

ただし、これはあくまで年金制度自体は維持されるという話であり、年金で十分な暮らしができるということではありません

「老後資金として2,000万円が必要」という話を耳にしたことがある人も多いと思います。

必要な老後資金はいくら?人生設計で考える自分の人生100年!

では、ここから先は年金の種類とどのような制度改正が行われているか、その流れを見ていきましょう。

3. 年金の種類

年金制度は「2階建て」「3階建て」と説明されることが多く、これは制度の仕組みに由来しています。

年金制度は3階建て

まず、年金には大きく公的年金と私的年金があります。

公的年金には1階と2階があり、このうち1階の国民年金は20歳〜65歳のすべての人に加入が義務づけられています。(現在、年金の受給開始は60歳〜75歳の範囲での選択制になっているため、加入期間は人によって異なります)

これは「国民全員が同じように安心して暮らしていける」ことを目的とした制度であるためです。

2階部分は働いている状態によって加入状況が異なります。

年金制度の2階部分

  • 自営業者や学生は、「任意で」国民年金基金に加入することができます
  • 会社員・公務員は、必ず厚生年金に加入する必要があります(50%は会社負担)
  • 専業主婦・夫には、2階にあたる制度はありません

そして、3階部分は私的年金と呼ばれ、誰でも任意で加入することができます。

個人型/企業型の確定拠出年金など、いくつかの制度があり、加入条件は制度によって異なります。iDeCoもこの3階の制度の1つです。

こうすることで、1階部分で国民全員に対して最低限の保障を行いつつ(セーフティーネット)、より余裕がある人には2階・3階と備えを増やすことを推奨した制度設計になっています。

4. 年金制度改正の歴史

次に、年金制度はいつ始まり・どのように変化して来たのか、その歴史と流れを見てみましょう。

日本で最初に年金制度ができたのは1939年で、船員のための保険でした(船員保険法)。

それから少し遡り、日本では1920年頃から重化学工業の発展に伴い、労働者の健康と安定をもとめる運動が活発化しました。

それを受けて、1922年に健康保険法、1938年には国民健康保険法が成立しています。

その流れから、1961年に「国民皆保険」制度がスタートします。

それ以前は社会的な年金制度はなく、「私的扶養」によって社会が成り立っていました

「私的扶養」とは家族や親族によって支えられている社会で、昔は病気や怪我・老齢、一家の大黒柱が亡くなった場合は、家族や親族が金銭面・生活面を助けていました。

しかし、ライフスタイルの変化(都市化、核家族化、長寿化)が進むにつれて、私的扶養は社会制度として成り立たなくなってきました。

そうして、社会的扶養の必要性が増し、年金制度が拡充されてきました。

年金制度の改革概要
厚生労働省「年金制度改正のあらまし」を元に、Route100編集部作成

年金制度の変化のカラーの箇所を中心に見ると、時代の変化に合わせて次の流れがあることが分かります。

年金制度変化の流れ

  • 年金の受給開始年齢が徐々に引き上げられている
    • 高齢化社会への対応として、長く働ける人には働いてもらい長い期間保険料を払ってもらう
  • 保険の加入対象者が拡充されている
    • なるべく多くの人が保険料を支払い、主に老後の補償を受けられるようになっている
  • 制度維持のための制度変更と、私的年金の拡充が推奨されている
    • 最低限の補償を維持しつつ、自助努力による保全を推奨している

このように少子高齢化社会に向けて、最低限の補償を維持しながらも自助努力(定年延長、老後資金の確保)を促しているのが長期的な傾向です。

では、国はなぜ自助努力を促しているのでしょうか?

そして私たちは何をするべきでしょうか?

5. 1人1人が考えるべき老後の備え

国はなぜ自助努力を促しているのでしょうか?

以下のことが考えられます。

  • 年金制度が破綻する可能性は低いが、決して余裕がある訳ではない
  • 病気や怪我など、想定していない事態が起きた場合に、状況が悪くなる可能性がある
  • 必要な老後資金は1人1人異なるため、各自が考える必要がある

国がサポートするのは最低限の補償です。

余暇を楽しんだり、少し贅沢をしようと思ったら、そのお金は自分で用意する必要があります。

必要な老後資金、老後資金2,000万円問題についてはこちらの記事もどうぞ。

必要な老後資金はいくら?人生設計で考える自分の人生100年!

現行の年金制度では、私たちは自分が「何歳から年金を受給するのか」を自分で決める必要があります。

それは、そのまま「自分は何歳まで働くのか?」ということに直結しています。

そして、老後はどのような暮らしをしたいのか、そのためにいくら老後資金を準備する必要があるのかを逆算して考える必要があります。

また、「自分がいくら年金がもらえるのか知りたい」「自分でライフプランを作るのは難しい」「老後資金の相談したい」という方はプロのアドバイザーに相談してみてはいかがでしょうか。

Route100では、あなたに合ったアドバイザーを探すことができます。

相談したからといって、必ずしも申し込みを行う必要はありません。
まずは気軽に相談してみましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
この記事では以下のことをお伝えしてきました。

  • 年金制度は「みんなが同じように安心して暮らしていける」ための保険
  • 少子高齢化が進むことを前提にした制度設計・改正・チェックが行われているので、年金制度が破綻する可能性は低い
  • 年金は3階建てになっていて、2階・3階と備えを増やすことが推奨されている
  • 年金制度は人生100年時代を見据えて、「より多くの人」が「より長く働く」環境に適応する方向で改正が進んでいる
  • 最終的には私たち自身が、人生設計を考えて1人1人の老後資金を準備する必要がある

「あなたらしい人生100年」にしていくために、ぜひ年金・老後資金のことを考えてみましょう。


 

定年延長で定年は65歳?70歳?人生100年時代の働き方を考える

私たちは何歳で定年を迎えるのでしょうか?

長寿化、少子高齢化による労働人口の減少を背景に、定年は徐々に引き上げられています。
また、それに合わせて年金の受給開始年齢も引き上げられています。

なぜ定年は引き上げられているのでしょうか?

人生100年時代において、私たちの定年・働き方がどのように変化していくかを考えてみましょう。

1. 定年延長とは

定年とは「企業や公務に勤める正規雇用者で、ある一定の年齢に達したら仕事を退職・退官する場合のその年齢のこと」(大辞泉)です。

定年の年齢は企業が個別に定めることができますが、最低年齢は法律で定められています。

そして、定年の最低年齢は徐々に引き上げられています
このことを定年延長と言います。

なぜ、定年延長が起こっているのでしょうか?

2. 定年延長の背景

定年延長の背景には、少子高齢化と長寿化があります。

  1. 少子高齢化による、労働人口の減少

  2. 少子高齢化・長寿化による、年金受給開始年齢の引き上げ

  3. 長寿化および健康寿命の延伸に伴う、高齢者の勤労意欲の増進

(1)労働人口の減少

みなさんご存知の通り、現在日本は人口減少社会です。

日本の総人口は2008年をピークに減少に転じ、労働人口も1995年をピークに減少に転じています

そして、この傾向はどちらもこの先も続くと考えられています。

労働人口の変化2010年までは総務省統計局「国勢調査」、2020年以降は国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)」を元に、Route100編集部作成

長期的・本質的には出生数を増やすことが重要ですが、簡単な問題ではありません。

そのため、定年延長により労働人口の対象を広げ、労働力と年金保険料を確保する狙いがあります。

(2)年金受給開始年齢の引き上げ

少子高齢化社会が進む中、年金制度も影響を受け、年金受給開始年齢が徐々に引き上げられています

日本の年金制度は「今の現役世代が支払っている保険料を、現在の年金受給者に給付する」賦課方式を基本としています。

賦課方式で少子高齢化が進むと、何が起こるでしょうか?

先ほどの労働人口の変化の通り、2020年以降65歳以上の人口があまり変わらないのに対し、労働人口はどんどん減っていきます。

その結果、高齢者1人を支える現役世代の人数が少なくなっていきます。

高齢者1人に対する現役世代人数内閣府「高齢化社会白書(2017年版)」を元に、Route100編集部作成

2020年時点で、すでに約2人で1人の高齢者を支える状況になっています。
これが2040年になると、支える現役世代の人数が1.5人を割り込みます

年金制度を維持するためには、現役世代の負担を増やすか、年金の支給額を減らすか、またはその両方を行わなければなりません。

実際に年金制度を維持するために、徐々に年金受給開始年齢が引き上げています。

また、単に年金受給開始年齢だけを引き上げると、「定年になり無職になったけど、年金がもらえず生活に困る」人たちが出てくる可能性があります。

そのため、政府は年金受給開始年齢と定年延長をセットで推進しています。

年金制度は破綻しない?年金の種類と個人の備えを考える!

(3)健康寿命延伸に伴う高齢者の勤労意欲の増進

定年延長により、これまでより高齢になっても働くことになりますが、長く働くことは現実的なのでしょうか?

高齢になっても働くためには、健康な身体を維持し、かつ働くことに意欲を持っている必要がありますが、この2点については問題がないと言えそうです。

① 健康寿命の長期化

日本人は男女ともに平均寿命とともに健康寿命も延伸しています。

厚生労働省「簡易生命表(令和元年)」などを元に編集部制作

健康寿命とは、日常的に医療・介護に依存しないで、自立した生活ができる期間のことです。

身体面では、長く働くことは可能だと言えそうです。

② 働く意欲

また、精神面・働く意欲についても概ね問題ないと言えそうです。

やや古い調査データにはなりますが、政府が2014年に行なった調査では、約80%の人が65歳を超えて働きたいと考えています。

いつまで働きたいか

また、働けるうちはいつまでも働きたい考えている人も40%を超えます

もちろん、全員というわけではありませんが、元気なうちはなるべく働きたいと考えている人の割合が多いと考えられます。

これらのことから、定年延長は年金制度維持の観点、個人の働ける状態の観点からも現実的な選択肢だと考えられます。

では、実際に私たちの定年は何歳になるのでしょうか?

法律改正の流れから考えてみたいと思います。

3. 定年は何歳?65歳?70歳?

私たちの定年は何歳になるのでしょうか?

2020年時点では、法律で定められている定年は60歳です。

これが、2025年までに定年は段階的に65歳まで引き上げられます。(2013年の法律改正により決定)

また、2021年4月1日には「希望する人に対する70歳までの就業機会確保」が、企業への努力義務となります。

つまり、2020年時点では60歳ですが、2025年には65歳になり、将来的には70歳、もしくは70歳以上になる可能性が十分に考えられます。

この表はこれまでの定年延長と年金受給開始年齢引き上げの推移です。

定年と年金受給開始年齢の変化厚生労働省「高齢者雇用安定法の改正」、日本年金機構「年金改正法」を元に、Route100編集部作成

※定年・年金の受給開始年齢ともに段階的に引き上げられる場合は、移行完了年を記載(途中の年においては状態が異なります)

このように、定年・年金受給開始年齢ともに相互補完する形でどちらも徐々に年齢が引き上げられています。

また、年金の受給開始年齢は2022年からは60歳〜75歳の範囲で選択することが可能になります。
(基本は65歳で、希望により変更することができますが、受給開始を早めると毎月の受給額は減額され、遅くすると受給額が増額されます)

つまり、国としてはまずは定年を65歳にすることを決めているものの、70歳・75歳も見据えていることが分かります。

これまでは定年・年金受給開始年齢ともに、20年〜30年かけて5歳の引き上げが行われています。

2020年時点で30代・40代のみなさんは、定年が70歳〜75歳になることは十分にあり得ることだと考えられます。

こうした形で定年延長が進んでいますが、実際に働き続ける環境はあるのでしょうか。

4. 高齢者の労働環境の整備

定年延長に向けて、国は厚生労働省を中心に高齢者の雇用確保の整備を進めています。

具体的には2021年4月1日施行の高年齢者雇用安定法の改正にて、以下の規制および支援が行われます。

  1. 企業における雇用の確保

  2. 高齢者の活躍を促進するために必要な支援

(1)企業における雇用の確保

まずは企業への要請として、2025年の定年65歳に向けて、すべての企業に以下いずれかの対応が義務付けられます。

  1. 65歳までの定年引き上げ

  2. 65歳までの継続雇用制度の導入

  3. 定年制の廃止

現在の法律では、事業主が労使協定で定める基準により対象者を限定できますが、その仕組みも廃止となり「すべての企業」が「すべての希望者」に対して65歳まで働く環境を提供することが義務になります。

厚生労働省によるアンケートでは、2つ目の継続雇用制度の導入を検討している企業が多い状態となっています。

高齢者雇用確保措置の内訳厚生労働省「高齢者の雇用状況の集計結果」を元に、Route100編集部作成

また、今回の法律改正では65歳までの定年引き上げですが、2021年には定年70歳が企業の努力目標として設定されるため、いずれは70歳まで引き上げられると考えられます。

(2)高齢者の活躍を促進するために必要な支援

また、企業に所属していない人や地方への幅広い対応として、以下の支援が今後具体化されていくことも予定されています

  • 事業主による雇用・就業機会の確保を促進するための支援
  • 高齢者の再就職やキャリア形成に関する支援
  • 地域における多様な雇用・就業機会の確保に関する支援

(厚生労働省「高年齢者雇用安定法の改正~70歳までの就業機会確保~」より抜粋)

寿命とともに定年が延長し、高齢者が働くことのできる環境も整備が進められる中、私たちの働き方にはどのような影響があるでしょうか?

5. 定年延長と働き方の変化

シニアの働き方の変化

ここまでの内容を簡単にまとめると、このようになります。

  • 働く期間が長くなる
  • 高齢になっても働く環境が整ってくる
  • 定年はある程度自分で決める

働く期間が長くなることを、ネガティブに捉える人もいるかもしれません。

しかし、自分の目標や夢を実現するチャンスが増えていると、ポジティブに捉えてみるとどうでしょうか?

実際に、様々な仕事を経験して、いくつものスキルを身に付けたり、自分のやりたいことにチャレンジする機会は増えていると考えられます。

内閣府は2018年の年次経済財政報告「人生100年時代の人材と働き方」の中で、「平均寿命が延伸する中で、長く自分にあった仕事を続けていくためには」として次のように述べています。

  1. 希望する人が、能力を十分に発揮して働ける環境を整備する

  2. 技術進歩に合わせてスキルアップを図ることが必要

(1)希望する人が、能力を 十分に発揮して働ける環境を整備する

報告書では「女性・高齢者の活躍に向けて必要な制度」の整備に加えて、「フリーランサーに関する制度上の整備」についても言及しています。

また「日本的雇用慣行はどこまで変わったか」として、日本は雇用の流動性が高まっている可能性があるとしています。

一方で先進国と比較するとまだ流動性が低いとし、今後より多様な働き方を推進していくと述べています

(2)技術進歩に合わせてスキルアップを図ることが必要

また、同じ報告書の中で、長く働く中で「人生 100年時代・技術革新に対応したスキルの育成が重要」としています

企業のIT活用が進む中、就労の機会を得るためにはITスキルが必要になっています。

また、ITスキルに限らず、就労と学び直しを繰り返すことによってスキルを身に付けることが求められています。

このように働き方は変化していきますが、最終的に定年を決める上では老後資金の確保が欠かせません。

6. 定年年齢を決めるための老後資金の確保

定年の年齢、年金の受給開始年齢、老後のライススタイル、老後資金の確保、これらは相互に関係しています。

そのため、自分の定年年齢は総合的に考えて決める必要があります。

例えば、以下のように考えている場合に、それぞれどのような備えが必要でしょうか?

  • Aさん:60歳で早期退職して、その後は大好きな旅行をしたり悠々自適な暮らしがしたい
  • Bさん:65歳で定年退職して、その後は田舎で静かに暮らしたい
  • Cさん:75歳まで元気に働いて、その後も趣味や余暇を思いっきり楽しみたい

Aさんは早期退職するので、年金の月額支給額が減額されます。

その上である程度お金を使う暮らしがしたいと考えていますので、まとまった老後資金を蓄えておく必要があります。

Bさんは定年後の生活コストが抑えられるので、ある程度の老後資金があれば生活に困ることはないかもしれません。

Cさんは長く働きたいと考えていますので、まずは長く働くためのキャリアプランを考え、スキルの研鑽を行っていく必要がありそうです。

また、病気や怪我で長く働くことができなくなるリスクがありますので、老後資金についても考えておくことが大切です。

まだ先のことだと考えている人も多いと思いますが、備えは早く行うに越したことはありません。

「人生100年時代」における働き方と定年年齢・老後資金についても考えておきましょう。

必要な老後資金はいくら?人生設計で考える自分の人生100年!

また、「定年までにいくら老後資金が必要か知りたい」「定年と年金受給をどう考えたらいいか分からない」「定年と老後資金について相談したい」という方は、プロのアドバイザーに相談してみてはいかがでしょうか。

相談したからといって、必ずしも申し込みなどを行う必要はありません。
まずは気軽に相談してみましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
この記事では以下のことをお伝えしてきました。

  • 定年の最低年齢は国が法律で定めており、その年齢は引き上げられている
  • 年金制度維持のために、定年年齢と年金受給開始年齢が揃って引き上げられている
  • 今後、定年が一般に70歳以上になる可能性がある
  • 高齢者が働ける環境は整備が進んでいる
  • 「人生100年時代」における自分の定年年齢と働き方を考える必要がある
  • 定年年齢は老後資金や老後のライフスタイルとセットが考える必要がある

「あなたらしい人生100年」にしていくために、ぜひ働き方や定年年齢・老後資金について考えてみましょう。