【実際の投資相談から学ぶ資産運用】ご相続を経験された富裕層編:30代/公務員/4人家族

アイ・パートナーズフィナンシャル株式会社所属IFAの、亀井岬です。

年収3000万円以上or 金融資産1億円以上の富裕層からのご相談をお受けしております

ブルームバーグという機関投資家含めたプロ投資家が愛用する専用情報端末を用いて、債券分析・ポートフォリオ分析を中心に数十世帯から数十億円のご資産を証券口座にお預けいただき、資産運用アドバイスを行っております。

本日のご相談者様は、セミナーにお申込みをいただきました、公務員として活躍されている田中様(仮名)です。

ぜひ、今後の自身の運用を考える際の参考にしてみてください。

1. お客様のプロフィール概要と金融資産

お客様のプロフィールは下記です。

お客様のプロフィール概要

  • 相談者様 : 田中様(仮名)30代 公務員
  • 家族構成 : 配偶者(会社員)とお子様(2人)の4人家族
  • 年収   : ご夫婦で1,700万円程度

お客様の金融資産は次の通りです。

資産の種類 内容 価格 補足
預金   1億円前後  
投資資産

・ドル建て債券4000万円

・インデックス投信6000万円

1億円前後 積立投資額:毎月100万円から300万円(インデックス投信への追加投資)
合計 2億円前後  

田中様(仮名)は30代の公務員で、家族構成は会社員の配偶者とお子様2人の4人家族で、ご夫婦の年収は約1,700万円です。

資産は貯蓄とご相続により蓄積されました。

お客様の金融資産に関しては、預金が1億円前後、投資資産も1億円前後です。

投資資産の内訳は、ドル建て債券が4000万円、インデックス投信が6000万円となっています。

投資方針は、株式を中心とした分散投資を行っていらっしゃいます。

さらに積立投資として、毎月預金からの取り崩しを中心に100~300万円をインデックス投信への追加投資に充てていらっしゃいます。

 

2. お客様のお悩み

相続相談事例

お客様のお悩みは、次の通りです。

お客様のお悩み

  • ご本人が亡くなった場合のご遺族への思い
  • 債券への追加投資の必要性の判断
 

田中様は、引き継いだ資産を次の代へ減らさずに引き継いでいきたいというご家族への思いをお持ちで、一方でご自身に万が一のことがあった場合に、残されたご遺族がうまく資産管理を行えるのかご不安を抱えていらっしゃいました。

またライフプランとして、50代での早期退職を視野に入れておられ、その後は投資収入と投資元本を切り崩して生活をしていきたいと考えておいでです。

 

3. 私からのご提言

アドバイザーからの提案

私からのご提言

  • つかず離れずの良い距離感のアドバイザーに担当してもらうこと
  • 債券への追加投資は早期退職後に
個別セミナーで投資のお考え、ご家族への思いについて拝聴しました。
その中で私自身が強く感じたことは、ご相談者様が相当投資知識をお持ちでいらっしゃるということです。

つまり年に何回も個別面談を行う必要はなく、何かトラブルが起こった際に駆け付けられるような信頼できるアドバイザーが必要ではないかとお話しました。

また債券運用に関しても現在の金融資産の状況とライフプラン、ご年齢を鑑みますと、まずは株式への分散投資を長期に行うことをおすすめしました。

4. 私を担当アドバイザーとして選んでいただけたポイント

私を担当アドバイザーとして選んでいただけたポイント

  1. 誠実な人柄だと感じていただけたこと(アンケート回答より)
  2. ブルームバーグを含めた債券投資への情報量の多さと知識の深さ
  3. IFAとして一生担当するという私の覚悟に共感いただけたこと

1.誠実な人柄だと感じていただけたこと

私が大切にしていることは「自分が心の底から思っていること」をお伝えすることです。
マーケットの状況が悲観的でもごまかすことはありませんし、わからない事は正直に「わからない」とお伝えします。
他社の商品が良いと思えば良いと申し上げますし、駄目なものはダメと申し上げます。
それがお客様からの信頼に繋がると思っています。
今回ご相談者様には、「田中様がずっと元気でいらっしゃれば、アドバイザーをつける必要はほとんどないと思います。」と申し上げました。
はからずも田中様も、自分に万が一があった際の遺族の資産管理についてのご不安をお持ちでいらっしゃいましたので、私の率直な意見に対して、ご信頼いただけたのかなと思っております。
 

2.ブルームバーグを含めた債券投資への情報量の多さと知識の深さ

一方ですべてを株式インデックス投信に振り向けることには抵抗をお持ちで、4000万円ほどドル建て債券を保有されており、この部分に関しては、個別セミナーにおいて過去の値動きやその要因、並びに個別債券の発行時における契約内容についてお伝えしました。
 

3.IFAとして一生担当するという私の覚悟に共感いただけたこと

債券に関する情報提供の部分でのご信頼をいただけたことに加えて、もうひとつ、私が病気になってしまったり、事故で死んでしまった場合に、残されたお客様に対する私の準備についてもお話させていただきました
 
多くのIFAがそうだと思いますが、担当IFAが働けなくなった場合、残されたお客さまは突然、信頼いただいていた担当がいなくなってしまい、また一から担当者を探すことになります。
当然所属代理店が適切な担当者を紹介するとは思いますが、お客様からすると一から自分の考えを改めてお伝えすることになりますよね。
私はそういったお客様のご負担を出来るだけ最小限に抑えたいという思いから、妻と二人でお客様を担当するという形を一部の証券会社では取っています。
妻も野村證券で働いていた経験を持ち、今でも個別株で運用を行う、投資好きのアドバイザーで、現在は株式会社アイ・パートナーズフィナンシャルに外務員として所属しています。
私自身がお客様の投資方針や家族構成、ライフプランを定期的に妻に伝えることで、私が一時的に病気やケガで離脱した場合、また最悪死んでしまったとしても、いったんは私の次にお客様のことに詳しい妻を担当者としてすぐに付けることが出来ます。

 

その後、お客様が妻をどう判断するかはまた別の次元の話ですが、私はIFAビジネスをやると決めたからには、生涯をこのビジネスにささげたいですし、中途半端な思いではお客様を担当したくはないので、このような準備を行っている旨をお伝えしました。

 

5. 今後私が行うこと

今後私が行うこと

  • ライフプランニング
  • 中長期な視野での債券投資の可能性の模索
これからの私の役目は、田中様と年1,2回のご面談を通じて、現状のご資産状況やご家族への資産承継の進展具合を把握し、一族の未来の資産額のシミュレーションを行うことです。
その中で解決すべき課題をご一緒にお探しし、その解決策をご提示することだと考えております。
またタイミングによっては債券への追加投資も模索していきますが、これは長期的なプランの一部だと考えています。

おわりに

年収3000万円以上あるいは金融資産1億円以上の富裕層の方々は本当に様々なお悩みを抱えていらっしゃいます。

私は16年間金融のプロフェッショナルとして、日本と海外で、富裕層のお客様のお役に立つべく、研鑽を積んで参りました。

どのようなお悩みでも構いません。

よろしければ亀井岬までご相談くださいませ。

この度は長文をお読みいただきまして、誠にありがとうございました。

【プロの本音:金融編Vol.32】富裕層へ債券中心のポートフォリオ運用に私がこだわる理由

「プロの本音:金融編」シリーズでは、IFA(独立系金融アドバイザー)のみなさんに、IFAになったきっかけや想いなどをお聞きしています。

具体的な相談事例や、ライフプラン・資産運用にお悩みの方へのメッセージもいただいていますので、ぜひご自身の資産運用や、ご相談の参考にしてみてください。

亀井 岬さんがIFAになったきっかけ・想い

— 本日はよろしくお願いします。まずは亀井さんの自己紹介をお願いします。

 

アイ・パートナーズフィナンシャル株式会社所属IFAの亀井岬です。

年収3000万円以上or 金融資産1億円以上の富裕層からのご相談をお受けしております

ブルームバーグという機関投資家含めたプロ投資家が愛用する専用情報端末を用いて、債券分析・ポートフォリオ分析を中心に富裕層の方々への資産運用アドバイスを行っております。

 

— これまでのご経歴も教えてください。

 

2007年に神戸大学卒業後、新卒で野村證券に入社し、新規開拓営業などに4年間従事しました。

その後、シンガポール経営大学院に社費留学し、富裕層ビジネスの研究で資産運用の修士号を取得し、富裕層向けプライベートバンキング業務を経験しました。

2013年に三菱UFJメリルリンチPB証券(現:三菱UFJモルガン・スタンレー証券)に入社し、6年間富裕層向けの資産運用業務に従事しました。

2019年IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)として、株式会社アイ・パートナーズフィナンシャルに所属し、富裕層向けの資産運用アドバイスを行っております。

 


–次に、IFAになったきっかけを教えてください。

 

証券会社では、転勤があることや会社が定める目標を頭に置きながら、提案を行う必要があると感じ、どうしても組織のしがらみがあるなぁと感じておりました。

そこで「お客様とマーケットにだけ向き合い、自分の考えを反映させる方法はないか。」と探求した結果、IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)という職種にたどり着きました。

現在はIFA法人と提携していますが、個人事業主のような働き方をしています。

 


アドバイザーの価値— IFAでなければ提供できない価値・サービスとは何でしょうか。

 

最近は証券会社でも様々な取り組みが始まっているため、ここだけはIFAの方が優れていますというポイントは少ないかと思います。

一方で私がIFAという働き方で魅力を感じているのは、複数の契約証券会社のサービス・商品において良いところを組み合わせてお客様にサービスをご提供出来るということです。

例えば、A証券は債券に優れており、B証券はポートフォリオ運用に適しているとします。

その際には全体のポートフォリオの枠組みはB証券で考え、そのポートフォリオ構成において債券部分はA証券の中でご提案するということが可能です。

つまりアドバイザーが情報を取れば取るほど、お客様に様々な価値がご提供出来ます。

一つの証券会社に所属していると、どれだけ情報収集をしても、どうしてもその証券会社のサービスの枠組みでしかご提案が出来ません。

 


— IFAとしてお客さまと接する中で、嬉しかったことを教えてください。

 

まず亀井に聞いてみようと、ファーストコールをいただけることでしょうか。

やはり転勤がございませんので、数十年のお付き合いを前提にお口座を開設頂いております

マーケット、余裕資金の運用先、相続、贈与、お子様、お孫様にまつわるお話、ご本業に関するお悩み、一般的な税務のお話、とにかくわからないことは亀井に聞いてみようとご相談いただけることです。

 

IFAとしての特徴・相談内容

先々の老後資金計画

— IFA相談に向いている人、向いていない人はいるでしょうか。また、どういった相談内容、どういう方々からのご相談が多いでしょうか。

 

相談に向いていない方はいらっしゃらないと思います。

それぞれのご相談者様は必ずお悩みを抱えていらっしゃいますので。

ご相談は年収3000万円以上or金融資産1億円以上の富裕層とそのご家族からお受けしております

年代としては、30歳代から70歳代と幅広い年代の方々からご相談をお受けしております。

ご相談者様は、経営者、開業医、個人事業主、資産承継されたお勤めの方など様々なバックグラウンドをお持ちでいらっしゃいます。

入口のご相談としては、資産運用に関するものが多いです。

私の特徴としてはブルームバーグという機関投資家含めたプロ投資家が愛用する専用情報端末を用いて、債券分析やポートフォリオ分析を行っております

このような専用端末を使用して分析を行うアドバイザーはほとんどいないのではないでしょうか。

 

— 債券分析やポートフォリオ分析とは具体的にはどのようなことを行っているのでしょうか。

 

債券分析に関しては、債券の値動きの見える化とその値動きについての詳細分析を行っています。

IFAの債券の一般的なご提案は、利回りと満期までの年数と発行している会社や国が記載された書類をご提示することだけかと存じます。

私の場合、さらにそれぞれの債券ごとの値動きを分析してお伝えすることや、英文の目論見書(契約書のようなもの)を読み込んだうえでの注意事項をお伝えしております。

ポートフォリオ分析においては、ご相談者様のポートフォリオがどれだけのリスクを取って運用されているのか確認し、リーマンショックなどの大きなショックが起こった際の最大損失シミュレーションなどを分析させて頂いております。

 


— 他のIFAとの違い、特徴、強みを教えてください。

 

特徴としては、手数料体系でしょうか。

一般的なIFA手数料として、売買の都度手数料をいただくような手数料体系も選んでいただくことが可能ですが、一方で私は海外で常識となっている残高手数料体系を中心にアドバイスを行うことも多いです。

これは、顧客のお預かり資産に応じてIFAに報酬(手数料)が発生する仕組みです。

これは、値上がりやご入金によって、顧客のお預かり資産が増えることで IFAの報酬(手数料)が増えるため、お客様とアドバイザーのベクトルを一致させることができると考えています。

無理に何かを販売する必要がないため、現状の日本では一番顧客本位に基づいたアドバイスができる報酬体系だと思っています。

— 先程債券分析やポートフォリオ分析というお話がありましたが、それらも亀井さんの特徴でしょうか。

 

そうですね。

私のご提案は基本的には、債券中心の運用でしっかり利息を取るものです。

資産を守りたいというご要望が多いので、比較的大きな値動きで一喜一憂する個別株ではなく、債券で安定的に運用を目指したうえで継続的に利息が入ってくるポートフォリオをご提案しています。

お客様からは、上下はありながらもご満足いただける内容となっていることを通じて「亀井さんに任せてよかった」と喜んでいただけることが多いですね。

あとは、「よく勉強しているね」と言われることも多くございます。

債券投資は上場株式のように情報を公開していないので、一般の方が取得できる情報は限られています。

ですから私は週に一度海外の公的機関の一次情報を確認したり、個人でブルームバーグ端末を契約したりして、情報収集を欠かしません。

債券投資では過去の値動きもつぶさに見ることも重要だと考えています。

ブルームバーグで確認した過去の値動き、その要因分析、今後の見通しについての予測を全てお客様にお伝えしたうえで、最適と思われる購入タイミングをアドバイスしています。

 

ライフプラン・資産運用にお悩みの方へのメッセージ

アドバイザー握手

— 人生100年時代に向けてのライフプランニングとはどのように行えば良いのでしょうか。

 

実は現在はIFAとしての活動以外に、大阪の私立大学にて非常勤講師として、ライフプランニングを教えています。

講義は年間26コマで、4単位となるものですので、生徒も私も真剣です。

私が口を酸っぱくしてお話していることですが、ライフプランニングの基本はご相談者様が人生の中でどれだけのお金が必要かを把握することから始まると考えています。

そこにはいくらあればご相談者様は幸せなのか?家族にはどれだけ資産を残されたいのかという、ご相談者様の人生観も反映されています。

ご相談者様のそのようなご要望を、ご本業で忙しい傍らに、ご相談者様自身ですべて把握し、管理し、資産運用まで目を配りするということは不可能ではないでしょうか。

ですから人生100年時代に向けライフプランニングを行うためには、本当に信頼できるアドバイザーを見つけることは非常に重要な要素だと考えております。

 


— 最後に、資産運用の見直しを考えている方、資産運用で困っている方にメッセージをお願いします。

 

私は、1世帯1世帯のお客様にしっかりコミットして、生涯伴走できる資産アドバイザーとして活動していきたいと思っています。

しっかりコミットさせていただくため、どうしてもお受けできるご相談数に限りが出てしまいます。

だからこそ出会えたお客様とのご縁を大切にできればと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 


 

今回お話しを伺ったIFA(アイ・パートナーズフィナンシャル株式会社)

亀井岬アドバイザー

亀井 岬
アイ・パートナーズフィナンシャル株式会社

2007年野村證券に入社。2011年シンガポール経営大学院に社費留学し、海外の富裕層ビジネスについて研究。その後東京にて富裕層向けプライベートバンキング業務に従事。2013年に三菱UFJメリルリンチPB証券に入社。富裕層向けの資産運用業務に従事。2019年にファイナンシャルアドバイザーとして独立。株式会社アイ・パートナーズフィナンシャルに所属。

亀井岬アドバイザー

 

実は加入者1名からでも導入できる企業型DC!iDeCoよりもオススメな3つの理由

こんにちは、「老後不安をなくす!信念で資産形成を全力でサポート」を理念としている平賀ファイナンシャルサービシズ株式会社の平賀初恵です。

私共のご案内する「企業型確定拠出年金」(以下企業型DC)は加入者一人からでも、導入できます

つまり、社長の自分1人だけの会社や社員数人の小規模法人でも加入可能ということです。

「1人なら、何も企業型DCじゃなくてもiDeCo(個人型確定拠出年金)でいいんじゃないの。」

そう思われますか。

今日はメリットのある企業型DCについて解説します。

 

1. 企業型DCと個人型iDeCoとは

「確定拠出年金」には、個人が掛け金を拠出する「iDeCo(個人型確定拠出年金)」と、企業が主体となる「企業型DC(企業型確定拠出年金)」の2種類あります。

確定拠出年金とは

(作成)平賀ファイナンシャルサービシズ株式会社

そもそも「確定拠出年金」は、米国の内国歳入法 401Kプランを手本としたもので、民間企業の従業員のために企業が主体となり老後資金を積立てます

「個人型iDeCo」は、米国のIRA(Individual Retirement Account)制度に近いもので、企業年金がない従業員が個人で老後資金を積立てる制度です。

本来の確定拠出年金は「企業型DC」と言えます。

 

2. 企業毎の事情に合わせた制度設計ができる企業型DC

「企業型DC」は主に3つのパターンがあり、企業の事情に合わせた制度設計が可能です。

企業型確定拠出年金の3つのパターン

(作成)平賀ファイナンシャルサービシズ株式会社

どのパターンでも、企業が口座管理費用を負担しますので、従業員にとっても、iDeCoに比べ諸経費の負担分が有利となります。

尚、企業が負担する口座管理費用は経費扱いになります。

では上図とともに、それぞれのパターンを見ていきましょう。

パターン1:給与上乗せ型

退職金制度として全面的に採用する企業もあります。

企業側の目線としては、掛け金が経費扱いになります。

パターン2:選択制

希望者だけが企業型DCに加入する制度です。

企業は福利厚生制度の一環として「確定拠出年金」の器を準備し、口座管理費用を負担しますので、重複しますが従業員にとっても、iDeCoに比べ諸経費の負担分が有利となります。

選択制掛け金は税控除だけでなく、社会保険料算定対象外のため、加入者個人と事業主両者にとっても負担軽減が見込めることもあり、近年多くの企業で採用されている導入形態です。

パターン3:給与上乗せ+選択制

企業掛金に希望する個人が上乗せできるもので、より多くの年金資産を積立てることができます

またこちらも本人上乗せ分は税控除に加え社会保険料算定対象外です。

 

このように制度設計は、既存の退職金制度の有無や、事業主掛金の額、定年年齢、パートタイマー対象者の取り扱い等、それぞれの事情に合わせ「自社独自のDC」を作っていくことができます

では、iDeCoに比べて企業型DCの方が優れているのでしょうか。

どう違うのか詳しく見ていきましょう。

 

3. 「企業型DC」と「個人型のiDeCo」の違い

大きく3つの違いがあります。

・掛金の上限が企業型DCの方が多い

・加入可能期間も企業型DCの方が長い

・制度にかかる費用は、企業型DCは会社が負担する

3つ共に、どの点を見ても個人から見ると企業型DCの方が魅力的です。

  掛金/月額 加入年齢 税控除 社会保険料 諸経費
企業型DC 3,000~55,000 70歳まで **あり 選択制は算定基準外 福利厚生費として経費扱い
個人型iDeCo *5,000~23,000円 65歳まで **あり 個人で負担

*勤務先により異なります

**事業主掛金は経費、個人負担分は所得税・住民税非課税

(作成)平賀ファイナンシャルサービシズ株式会社

このように、70歳まで働くつもりなので、そこまでは確定拠出年金を続けたいという方にも魅力的な制度が企業型DCです。

また、iDeCoより掛金を多くでき、その分所得控除も大きいのが魅力など、1人法人でも、「企業型DC(企業型確定拠出年金)」を採用頂く事業主様も少なくありません。

 

4. 小規模事業者でも入れるSBIベネフィットシステムズ株式会社

私共の最初の導入企業様は、ご夫婦で不動産仲介を営まれる方でした。

元々米国でお仕事をされていましたが、日本で会社を立ち上げ、社会保険適用と同時に401K確定拠出年金を始めようと、銀行に問い合わせをしましたが、銀行では要領を得ず、他の運営管理機関を探したのですが何処も引き受けてくれるところが無かったそうです。

そうしている中で、私共のホームページにたどり着きご連絡を頂きました。

米国では、〝起業と同時に確定拠出年金401Kに入る〟のコンセンサスは、私には驚きでしたが、お客様にとっては日本では、当時小規模事業所は401Kに入れないが驚きだったようです。

ご主人が米国籍で厚生年金加入者でなかったため、結局奥様ひとりの企業型DCとなりましたが、十分ご納得のうえです。

このように小規模事業所(者)なので、「企業型DC」が使えないのではないか・・、と諦めている法人も多いかと思います。

その背景には、企業型DCは50名以上の加入が見込める事業所のみ取り扱いますというのが、大方の運営管理機関です。

そのような中、加入者一人からでも制度導入を取り扱う運営管理機関は、現状SBIベネフィットシステムズ㈱だけです。

実際、私共に連絡をいただくことが増え、私共の導入先としては、1/3の事業所は5人以下の企業様です。

役員と従業員の退職金(老後資金)作りが節税しながら一つの制度で叶うから」が最も多い導入理由です。

 

まとめ

この記事では、企業型DC(企業型拠出年金)についての制度のご紹介とiDeCoとの比較、小規模法人様でも導入ができるということを事例と共にお伝えしてきました。

是非まだ企業型DCを導入されていない経営者の皆様は導入を検討いただけたらと思います。

従業員の方で企業型DCの魅力を感じた方は是非経営陣への相談をしてみることをオススメします。

実際に「企業型DCについて詳しく聞きたい」「iDeCoも含めてフラットに話が聞きたい」「資産運用全般のアドバイスが欲しい」といった方は、1度ファイナンシャルアドバイザーに相談してみてはいかがでしょうか。

もちろん私への相談も大歓迎です。

相談料は無料ですので、実際にどのように投資を行うか、運用資産の見直しを行うかどうかは、アドバイスを聞いた上で判断してみるのが良いと思います。

資産運用の相談ができるアドバイザーは、こちらからお探しください。

【プロの本音:金融編Vol.31】お金を理由に諦めないをモットーにお客様と成長していきたい

「プロの本音:金融編」シリーズでは、IFA(独立系金融アドバイザー)のみなさんに、IFAになったきっかけや想いなどをお聞きしています。

具体的な相談事例や、ライフプラン・資産運用にお悩みの方へのメッセージもいただいていますので、ぜひご自身の資産運用や、ご相談の参考にしてみてください。

佐々木 健さんがIFAになったきっかけ・想い

— 本日はよろしくお願いします。まずは佐々木さんの自己紹介をお願いします。

 

きわみアセットマネジメント株式会社の佐々木 健(ササキケン)と申します。

早稲田大学卒業後、2003年に最初の内定が出てご縁を感じたみずほ銀行に入行しました。

銀行では、20年間で不動産賃貸業を営む個人から中堅・中小企業及び上場企業等の累計500社超の法人融資を対応を致しました。

法人のお客様との取引は、財務・キャッシュフロー分析を通じて、取引先との問題点の共有を図り、創業資金対応から社債発行、海外進出サポート、債権回収迄と幅広く対応させて頂きました。

個人のお客様との取引においても、FP1級の取得を機に、企業オーナーの事業承継ニーズに対して自社株式の評価から株式買取資金の対応に加え、従業員の福利厚生や住宅ローン等の対応もさせて頂きました。

法人・個人及び新規取引から債権回収迄と銀行業務全般について幅広く対応することができました。

その後、2022年7月に弊社に入社しています。

本日はよろしくお願いいたします。

 

— 銀行において事業承継ニーズに対応をしている行員は稀なのではないでしょうか。

 

かなり稀ですね。

銀行では、一つの企業を法人担当と個人担当の両面からアプローチ致します。

法人の営業担当は融資業務がメインあり、財務分析等を実施する立場にありますが、お客さまとしては、担保や保証等の問題もありますので、融資を受けている銀行での承継対応はすべてを丸裸にさせれてしまう感覚があり、メイン銀行等での承継対応を実施する企業は比較的少ない印象です。

また、運用する余裕資金があれば、融資を受けるお客さまは少ないので、資産運用を積極的には行わず、承継まで辿りつかないイメージです。

一方で、個人担当は、企業オーナーの運用等の対応は致しますが、財務分析は得意ではないので、法人の事業承継を対応することはできません。

ですので、銀行での事業承継対応は法人・個人を総合的に判断した対応には至らず、片手落ちになりやすいといった状況です。

どうして、私が事業承継ニーズの対応を経験できたかというと、個人のお客さまが中心の支店への異動がきっかけでした。

その支店は元々個人中心の支店でしたが、リニアモーターカ-や圏央道ができるタイミングでしたので、急遽法人担当である私が特命として赴任し、個人を軸に、地主や不動賃貸行を営む法人に対して、ひとつの手段として融資取引で対応していく形でしたので、法人・個人の両面からの提案が可能であったことと、自身も個人分野の知識武装のためにFP1級をとったことが大きな原因です。

ちなみにですが、法人を担当している担当者で、FP1級を取得している人は銀行内で大きな組織ですが1%以下しかいないと思います。

 

— 差し支えなければ、お仕事以外についても教えてもらえますでしょうか。

 

相談者の方と同じ目線でいうと、「子育て」においては、双子を含む3児の父として、双子の育児から各種習い事や小・中学校受験を経験しています。

「マイホーム」については、古民家リフォームによる取得後、収用を機に自宅設計にも挑戦し、人生2度目の住宅(注文)を取得しています。

そして「老後資金」の対応は、確定拠出年金等の税優遇を活用した長期分散積立投資を実施し、今般の退職金を活用した短期・一括・個別投資にも挑戦中です。

「相続や介護」についても、現在家族信託及び遺言信託による円滑な承継対策を画策し、相続・介護についても対応中ですので実体験を語れます。

 


–こんなにも自己開示いただきありがとうございます(笑)次に、IFAになったきっかけを教えてください。

 

IFAというよりは、私が本当にしたいことはFP(ファイナンシャルプランナー)に近いと思っています。

ただし、FPというと、IFAより知名度は高いですが、人生の計画や目標をプランニングはできますが、その実現に向かう為の手段を提供できていないというのが印象です。

手段を提供できていないので、計画倒れになりやすく、せっかく計画したのに、もったいないと感じていました。

一方で、IFAは地名度はFPに比べると低いですが、証券を中心に、保険等の金融商品も取り扱っており、手段を提供することができる印象でした。

また、銀行や証券、保険会社等は、それぞれの商品しか対応できず、縦割りの関係で幅広く対応できない印象でした。

私は、銀行での経験に加え、FP1級の知識もあったので、IFAとして多様の金融商品を活用することができれば、お客さまのライフスタイルの実現がより実現に近づくのではないかと考え、IFAを選びました。

銀行では、法人/個人のセグメント別、新規与信から債権回収や海外進出支援等の業務別と銀行業務を網羅的を経験しておりますが、日本は歴史上しかたがないのですが、金融リテラシーが低く、各人のライフスタイルの実現まで手が回っていないという印象がありますので、銀行での経験とFP1級での知識や自身の自己実現へのステップを出来る限り還元することで、ライフスタイルを実現していく人をサポートしたいと考え、銀行からIFAへ転職することを決めました。

もちろん転職のおいては、証券会社や保険会社や不動産会社も検討致しましたが、証券だけや保険だけといった単一的な商品だけでは、今後多用なライフスタイルの実現をすることは難しいと考えたので、ライフプランの実現に重きを置き、IFAとして保険/不動産/証券を提供するというのが一番お客様の課題解決につながる気がしたんです。

この先、唯一まだ足りてない知見としての証券分野については、IFAの市場は証券が中心ですので、社内のネットワークと日々の業務で学んでいこうと思っています。

 

— その上でIFA法人は沢山ある中で、きわみアセットマネジメント株式会社を選ばれたのはどういった理由からでしょうか。

 

FPやIFA業務を通じて、ライフスタイルの実現に向けた計画を策定・実現していく中で、タックスプランニングの存在は実は一番大切と認識していました。

お客さまにとって、ライフスタイル実現に向けて進み初めても、その計画が税務や法務面での検証がなされていなければ、最終的にライフスタイルの実現が難しくなり、遠回りになってしまう可能性すらあると思っています。

その点当社は同一グループ内に税理士・弁護士の組織があるというのが強いと思いました。

というのも銀行時代に、一生懸命提案しても話が税理士との相談で提案がひっくり返ることが嫌でした。

中々税務面まで突っ込んで対応できるFPやIFAは存在しませんから、グループ内でかつ税理士や弁護士の方と定期的に相談が可能ですので、他のIFA等とのアドバンテージはかなり大きいと思いました。

また自身も税務面でのコンサル力が強化できたら、よりオンリーワンな存在なれると思いますので、現在税理士試験の勉強も開始しております。

 


アドバイザーの価値— IFAでなければ提供できない価値・サービスとは何でしょうか。

 

IFAの提供価値やサービスはまだ定まっていないと思っております。

ある意味、お客様にご満足いただくためであれば何でもありとも言えるほど提供価値の余白が大きく、名前がまだ独り歩きしているので自分達でIFAの価値を創るしかないと思っています。

先程もお話しましたが、お客さまの満足いくライフスタイルの実現には、従来の銀行や証券会社等では、商品の提案力で見劣りし、FPだけでは計画立案だけと「帯に長し、襷に短し」のような状況です。

両面で対応できるIFAがいれば、お客様にとっては願ったりなはずです。

又、IFAはお客様と長期間の関係が構築できるのも、ひとつの魅力だと感じています。

よく業界内では、銀行は「農耕型」で、証券は「狩猟型」といった事がありますが、これは銀行は住宅ローン等をはじめ融資業務は最大で30年を超える形で長期的に取引先との関係が継続します。

一方で、証券等の商品の販売は、そのようなスパンでは考えないと思います。

IFAは長期的な関係が一番の武器なので、銀行出身者は、この業界では稀有な存在ですが、非常に親和性はあると思います。

 


— IFAとしてお客さまと接する中で、嬉しかったことを教えてください。

 

IFAになって間もないので銀行時代のお客様との話を3つさせてください。

まず1つ目は、ある中小企業に新規で融資を実施した際に、銀行員は決算書等を持っていっても、どのような判断をして融資しているのかがわからないという質問を受け、運転資金の考え方であったり、銀行の財務分析の方法等を一時間近く説明したことがあります。

銀行の考え方をしっかりと身に着ければ、今後も銀行の担当者から融資を受ける場面が来た時に、その担当者との会話で、銀行員と同じ目線で会話ができますと話したことがあります。

その後、私が転勤・転職した後に、そのお客様に近況報告したら、「銀行担当者がきたら、まず運転資金の考え方をテストをして、説明できなかったら、こっちが新米の担当者に教えているよ。あの時にしっかりと教えてもらったから、以後は、いつも銀行から一番いい金利で借りられるし、銀行員の目線を意識しながら経営をおこなったら、しっかりとした資金管理が出来、一度も赤字にならないようになったよ。」と言われたことが非常に嬉しかったですね。

 

— 佐々木さんのお客さまとの接し方が想像つくエピソードですね。2つ目もお聞かせください。

 

2つ目は、他行から賃貸不動産の融資を受けているお客様がいらっしゃいました。

最近奥様が体調が芳しくなく、通院しているという話を聞き、面談を致しました。

奥様の通院は、他行での借入に、娘様が連帯保証人であったことが原因でした。

借入当初は、娘は結婚していなかったのですが、娘の嫁ぎ先が事業をやっており、嫁ぎ先で娘さんは非常に苦しい立場となってしまい、娘さんが実家に帰省した際に、連帯保証人の件で、喧嘩となってしまいました。

そこで、娘さんの連帯保証人を外した形での借換提案を実施しました。

その結果、奥様は体調不良が嘘のように回復し、今ではお孫様が生まれ、ちゃんと孫の顔も見れるようになりました。

後日、奥様から手紙を頂き、「融資で病気を直してくれた」とのお褒めの言葉を頂戴しました。

 

— ジンとくるお手紙嬉しいですね。3つ目も是非教えてください。

 

3つ目は、ある病院の院長の奥様が未亡人の方で、資産はあるが子供おらず相続をどうするのかという相談でした。

保有資産の数十億の方でしたが、金融機関からの手紙や資料が毎日送られてきて、自分の資産がわからないと嘆いておりました。

奥様も元気であり、静観しておりましたが、骨折を機に再度遺言や相続の話題があがる形となりました。

そこで、奥様に頼んで金融機関から来る資料等を一つの段ボールに入れてもらうよう頼み、2ヶ月分溜まったところで、各金融機関毎にファイルを作成し、お客さまの目の前で、一枚づつ書類をファイルに整理していきました。

半日がかりでしたが、整理した書類を即座に期日を合わせる形で資産一覧にし、遺言書の作成をすることができました。

こちらの提案の途中で、「私は子供がいないから養子に入らいない?」とビックリするようなお言葉を頂戴しましたが、非常に喜んで頂き、最終的に数億円の運用も実施して頂きました。

 

IFAとしての特徴・相談内容

先々の老後資金計画

— IFA相談に向いている人、向いていない人はいるでしょうか。また、どういった相談内容、どういう方々からのご相談が多いでしょうか。

 

自己実現したい目標が明確な人はIFA相談に非常に向いている人です。

目標が明確だけど、何から手を付けていいか分からない人は、自己実現の方法や手段を提示ができれば、より早く自己実現に近づけますし、こちらも目標実現に向けたサポートが具体化し、実現が近づきます。

逆に、できるだけ沢山のお金を増やしたいという相談者は、目標や夢を考える作業が必要ですので、少し時間がかかると思います。

ちなみに私の場合、3人の子供の父親ですので、仮に子供達が医学部行きたい・宇宙飛行士になりたい(現実的にはないと思いますが…)という目標があったとしたら、FPで元銀行員と名乗っていますので、お金を理由にダメとはいえませんのでどうにかその実現に向けて頑張ります(笑)

目標が大きければ大きい程、より自分の力が試されていると思いますし、そういう目標があるから頑張れると思うんです。

逆に目標や目的が曖昧だと不要なリスクを取ることになります。

例えば、資産を1億や2億にしたいと考えても、仮に実現したとしても、次は5億、10億と再現なく続くことになりますので…。

もしかしたら、本当はこれから無理せず十分に資産形成が出来る状況でなのに、リスクを取りすぎた商品を選んでしまうこともありますからね。

そのように実は家計を見直すだけで十分な人もいるので、目的がどうなのかが一番大事で、あくまで金融商品は手段だと思いますので、間違っても目的と手段を逆転してほしくないですね。

 

— これからどういった相談内容であったり、どういう方々からのご相談が増えると考えていますでしょうか。

 

今後ご相談が増えるのは高齢者の方で、遺言と相続のご相談かなと思っています。

私自身がやっていないことを提案したくないので、事前にライフイベントを予想して計画・実行を心がけています。

職業柄ですが、私の父の介護問題や承継に対しても、既に突っ込んで話しています。

親世代は、「お金」の話をするのは、タブー視している世代ですが、事前に対策講じておかなくては、自分のライフプランも変更する可能性もあると考え、親世代ともしっかりと話す機会を設けました。

その中で、実家の底地が親戚と共有持ち分である事が分かったため、対策の一環として「家族信託」での対応が必要なのではないかという結論に至りました。

今後、「家族信託」の必要性が増すと考えましたので、自費で講習を受けて、自分の事として解決を図るべく現在、社内の弁護士の方に相談し、協力を仰ぎがてら対応中です。

また、資産形成層のお客様にも、自身で受験を含めた子育ても行っていますし、マイホームも既に2回手に入れておりますので、実体験に基づいたアドバイスができると思います。

銀行に務めていたから、そのような対策が事前にできたと考える人もいると思いますが、銀行員でも対応できていない人も沢山いますし、結論としては、自分の実現したい目標をどれだけイメージできるかが一番大切だと思います。

 


— 他のIFAとの違い、特徴、強みを教えてください。

 

まず第一に銀行出身であることが違いになります。

既存のIFAの方の出身は、証券会社と生命保険出身者が90%を超える世界だと思います。

どの業界でもそうですが、そこで働いている人の考え方が色濃く反映すると思います。

現在業界としても、ゴールベースで営業を指針として対応していますが、銀行員(特に融資担当者)はどの金融業界の人よりも長期的な視野で考えが定着していますし、財務分析はバランスシートの資産と負債の両方の側面から必ず見ますので、その他のIFAとは、長期的な視点と財産診断の幅の面で大きな違いはあると思います。

インサイダー等の規制はありますので、販売という面では劣ると思いますが、その点を含んでも銀行出身者はIFAとの親和性は高いと思います。

先程述べましたが、事業承継等まで取り扱える担当者は1%程度で、そもそも銀行出身者が少ないので、かなり稀有な存在です。

先日も富裕層の方で、賃貸の不動産を保有しているお客さまで、確定申告を拝見して、30年先迄の賃貸事業の収支を作成し、修繕積立が心もとない事を認識し、段階的に準備するといった提案が出来、非常に感謝されました。

 

— 他にもありますでしょうか。

 

もう1つの特徴は、これまでの企業オーナーとの接点です。

法人融資担当でしたので、決算書は1,000社以上は楽に見てきてますし、決算内容等の会話は、企業オーナーと実施しますので、取引の相手方は企業オーナーが中心でした。

基本的に企業として融資や企業成長等が会話の中心ですので、企業オーナーのプライベートのことは、二の次といったスタンスの方が多いという印象ですが、実際は手が回っていないという場合が多かったです。

企業オーナーとの接点があったので、オーナーのプライベートの悩み事の解決が出来る方が良いと考え、独学では説得力に欠けるので、FP1級の知識に基づいた提案が出来るようにしました。

企業オーナーも会社を離れれば、一人の個人ですので、住宅ローンを検討していたり、ご家族の承継等の対応をしなくてはと考えていますが、会社でプライベートのことをやるのは抵抗があるみたいでしたので、企業の融資相談の後に、個人のお悩みにも対応することや他の企業オーナーがどのように資産形成や資産承継対策をしているかなどを説明すると、興味深く聞いて頂き、より信頼関係を構築できるといった形になっていました。

個人も法人も「重要だけど緊急ではないこと」をどうサポートするかやどうやったら資産形成できるかのやり方が確立されていないと感じており、経験を生かしてサポートができると思います。

 

— 「重要だけど緊急ではないこと」となると長期目線での対応もあるかと思います。

 

実際よくある話として、アパートローンであれば30年のスパンで貸し出さなきゃいけないことが多いですが、銀行の担当は全部の期間を最初から最後まで、看取れないんですよね。

転勤があるので…。

過去、現在、将来のお客様の力がどれだけあるかをシュミレーションとして稟議書に書かなきゃいけないんです。

それは自分が担当としていなくなっても将来バトンを受けた担当がやっていけるようにしなきゃいけないからです。

一般の方は、家買う場合でも30年を見越した計画書を作ってきた人はいないのが実情です。

出来て5年程度の将来が限界です。

銀行社内の話になりますが、貸出では運悪く倒産等になることもあります。

ただそのような案件でも、しっかりとした予兆管理が出来ていない場合が多いです。

長期スパンで出来る限り皆が思い通りの結末を迎えたいですし、途中で予兆が発生したら、都度修正していかなければ、好転しないと思います。

それは法人も個人も同じだと思っています。

余談ですが、住宅ローンは資産形成にとって、使い方次第では有用な効果があると思います。

一般的に、資産形成というと証券運用や保険等を思い浮かべると思いますが、住宅ローンも相当な資産形成のツールです。

住宅ローン減税といった制度があるのは当然ですが、証券投資では融資を受けれませんが、住宅ローンは比較的簡単に融資を受ける事で他人の資本を活用し、自分の年収等のレバレッジをかけているので、れっきとしたレバレッジ商品です。

運用の世界でレバレッジというと非常に危ないものと考えますが、住宅ローンへの抵抗は少ないと思います。

住宅ローンは、自分の将来の返済能力や不動産の担保を活用しますが、収入の5~10倍の金額のレバレッジ利かせます。

もちろん、不動産の担保を入れていますので、銀行側も一般的な対応となります。

企業オーナー等で莫大な資産を築いた人は、不動産と融資を上手に活用しながら、資産を増やしています。

私も資産形成には、不動産と住宅ローンを活用しましたが、しっかりした調査と10年程度の時間はかかりますが、資産形成を自動で行うことは可能だと思います。

 

— 実経験を語れるというのは説得力がありますね 。

 

それこそ一般的なライフイベントである子育て、マイホーム、老後資金、介護、相続についても、必要に応じて自身の経験を踏まえた形のアドバイスや提案をこころがけています。

少し長くなりましたが、銀行員として培った財務分析による現状認識力と資金計画力を基礎としつつ、FP1級で習得した個人のライフプラン力を生かして、お客様及びご家族を含めたひとりひとりのライフプランの実現に向けて、証券、保険、不動産、ローンといった多種多様な視点でのアドバイスができればと思っています。

また、プライベートでもライフイベントに対して家族で話し合いながら、お金を理由に諦めないをモットーに、一つ一つ着実に実現してきており、自身の体験をお客様と共有しながら、一緒に成長していきたいと考えています。

 

— 脱線しますが、先日金融教育という言葉がおかしいとおっしゃってましたが、改めてお聞かせください 。

教育って、本来は先輩や知識のある人が、後輩や知識のない人に教えることだと思いますが、日本ではこれまで金融教育を受けてきてきた人がいないので、誰が誰に教えるのかわからず、成功したモデルもないので非常に不思議に聞こえるのです。

最近、ネットや書籍も沢山出てきており、従来と比較にならないぐらいの成功モデルが出てきています。

更に、若者は学校で専門家を招いて、金融のリテラシーを身につけていきます。

又運用の期間も長期化するので、複利効果で、資産も指数的な伸び方をします。

一番取り残されるのは、教育機会を得られず、余裕資金の蓄財もできていない現役のロスジェネ世代だと思います。

自分もロスジェネ世代ですが、早期にそのことに気が付いたので、準備が出来ていますが、手が回らかったり、知識がなかったりですので、自分の経験や知識を還元して、たまには、ロスジェネの人がロストしない状況のサポートをしていきたいです。

今回、何かのご縁で読者の方は私の話を読んで頂いているので、相談していたければ、全力でサポート致します。

 

ライフプラン・資産運用にお悩みの方へのメッセージ

アドバイザー握手

— 人生100年時代に向けてのライフプランニングとはどのように行えば良いのでしょうか。

 

100年時代と合わせて、最近「失われた30年」という言葉がよくいわれています。

具体的に「何を失ったのか」を考えるきっかけがありました。

私は、大きく3つの常識を失ったと考えています。

1つ目は、経済の常識(給与やGDP等)。

2つ目は、会社の常識(終身雇用の崩壊)。

3つ目は、老後の常識(医療技術の発達による健康寿命の延長)

これらの常識を失ったことで、100年時代がなんとなく重苦しいイメージがわいてきてしまっていると思います。

従来の常識が崩壊していますので、しっかりと時代にあった計画を立て、それに向かって進むしかないんです。

誰でも、変化は嫌だと思いますが、今回ばかりはしっかりと対応しないと、更に期間が延びて、「失われた50年」になるだけです。

未来はだれにもわかりませんが、自分がファーストペンギンとして飛び込み、ロールモデルを示せればと思っています。

併せて、「FIRE」等で成功している人の知識を自分達も再現できるように、日々アンテナを高くしていきたいと思います。

 


— 最後に、これから資産形成を始めようと考えている方へメッセージをお願いします。

 

長文を読んでいただき本当にありがとうございます。

自分は銀行出身者として、FPの知識を武器に、IFA業界で「はぐれメタル」か「メタルキング」みたいになりたいと考えています。

※私はドラクエが好きなので、子供には自分は「魔王」ではなく、「はぐれメタル」を目指しているんだよ、と伝えています。みんなからも愛せれるし、非常に高い経験値をもっていて、みんなが必死に探している存在という意味です(笑)

又、肩ひじ張らずに、気楽に会話して頂き、面談後に沢山の経験値がもって帰ってもらい、早くレベルアップしてもらえる面談をできればよいと思っていますので、どんどん倒して経験値を持って帰ってください。(笑)

金融の経験値をささっと積んでレベルアップして、自己実現に最大限の時間と労力を使って、人生の「魔王」を攻略してください。(笑)

全力でサポート致しますので、お気軽に相談してください。

 


 

今回お話しを伺ったIFA(きわみアセットマネジメント株式会社

佐々木様

佐々木 健
きわみアセットマネジメント株式会社

早稲田大学卒業後、みずほ銀行に入行。
不動産賃貸業を営む個人から中堅・中小企業及び国内上場企業等の累計500社超の法人を担当。法人取引は、財務・キャッシュフロー分析を通じて、取引先との問題点の共有を図り、融資・運用等を切口とした総合的なコンサルティング営業に従事。
個人取引においても、FP1級の取得を機に、企業オーナーの承継ニーズに対して自社株式の評価承継等の対応や従業員の福利厚生や住宅ローン等の対応。
法・個人及び運用から貸出・資産承継等の銀行取引全般について対応。
2022年7月に当社入社。

佐々木様

 

【プロの本音:金融編Vol.30】IFAにセカンドオピニオンとして相談をするという選択

「プロの本音:金融編」シリーズでは、IFA(独立系金融アドバイザー)のみなさんに、IFAになったきっかけや想いなどをお聞きしています。

具体的な相談事例や、ライフプラン・資産運用にお悩みの方へのメッセージもいただいていますので、ぜひご自身の資産運用や、ご相談の参考にしてみてください。

川村 哲之さんがIFAになったきっかけ・想い

— 本日はよろしくお願いします。まずは川村さんの自己紹介をお願いします。

 

きわみアセットマネジメント株式会社の川村哲之(カワムラテツユキ)と申します。

大学院卒業後、銀行系証券が今後世の中に求められてくる証券会社であると思い、2014年4月にSMBC日興証券に入社し、8年間勤務しておりました。

その間、虎ノ門支店、神戸支店にて個人・法人双方の営業に従事しておりました。

具体的には、富裕層のお客様や未上場法人、これから運用を始める方など数多くのお客様の運用に携わらさせて頂きました。その後、2022年7月より現きわみアセットマネジメント株式会社に参画しております。

 


–次に、IFAになったきっかけを教えてください。

 

私は短期的ではなく長期的な目線でお客様との関係性を築いていきたいと思い、証券会社からIFAに転職いたしました。

 

— そもそもIFAを知っていたのでしょうか。

 

知らなかったですね。前職の先輩からIFAという存在を教えてもらいました。

 

— その上での決め手は何だったのでしょうか。

 

その中で、IFAになると決めた要因の1番は、お客さまと長期的な目線での関係を築けると思ったからです。

前職の証券会社勤務時代は3~5年での転勤があり、結果的にその期間での提案になってしまうことに葛藤がありました。

お客様自身の本当のニーズは一生涯の資産をどうしたいかであってそのニーズに応えられていないのではないかと感じていました。

IFAであればお客様と長期的な目線で相談しながら目標に向けて資産運用していけると感じました。

それに加え、IFAであれば時間や場所に囚われない働き方というのも、お客様のご期待に合わせやすい営業環境であることが魅力に感じました。

まだ3ヶ月ですが、お客様の目標やニーズをしっかりご相談し、お客様の生涯のパートナーになれるよう、金融のプロフェッショナルとして努めております。

 


アドバイザーの価値— IFAでなければ提供できない価値・サービスとは何でしょうか。

 

最大の特長はお客様の人生の長期的な目線に寄り添えることであると思います。

お客様のニーズは、会社の営業方針に左右されたものではなく、それぞれの運用目的に合わせたものであり、IFAであれば特定の証券会社に属していないため、その目的に寄り添え、本来のニーズに応えられます

お客様とのやり取りに関してもメールやLINEは大手証券会社では審査が厳しく中々できませんし、セミナー等も簡単にはやりにくい環境ですが、IFAであれば可能であり、細やかなフォローができる点もお客様に支持されている点であると思います。

 


— IFAとしてお客さまと接する中で、嬉しかったことを教えてください。

 

ずっと担当者として長期的な目線で相談できるのでうれしい」と言われたことです。

証券会社ですと転勤があるため担当者が変わるたびに相場観や提案内容が違うとご不満のお客様が多くいらっしゃいました。

そのような状況で生涯のパートナーとしてお客様と関係性を構築していけるのでお客様には喜んでいただいております。

私自身もお客様の目標に沿った形での提案を心掛けており、定期的な状況報告するなどお客様の不安を取り除けるよう努めております。

 

IFAとしての特徴・相談内容

取り組むメリット

— IFA相談に向いている人、向いていない人はいるでしょうか。また、どういった相談内容、どういう方々からのご相談が多いでしょうか。

 

ご自身に運用方針が確立されており、利益がしっかり出ている方はIFAに相談しなくても良いと思います。

ただ、ご自身での運用にご不安がある方はIFAに相談すべきだと思います。

資産運用をこれからはじめられる方はもちろんのこと、すでに証券会社等で運用していらっしゃる方で運用がうまくいっていない方や保有資産にご不安がある方が、中立的な立場であるIFAをセカンドオピニオンとして相談していただくのも良いと思います。

 


— 他のIFAとの違い、特徴、強みを教えてください。

 

私自身、証券会社に勤務していた時は会社の意向に沿った営業スタイルであり、自分自身が納得できていない点があったからこそ、IFAになりお客様のニーズに沿った提案を意識していきます。

結果として、お客様一人ひとりのニーズに合ったご提案ができております。

具体的には、お客様がお持ちの資産を今後どうしていきたいかを一緒に相談し、長期目線でゴールベースでの提案を心掛けております

また、私の得意分野は、米国の株式投資です。

前職時代から米国の株式に関してご提案しており、喜んでいただける提案ができると思っています。

これまでのご提案経験と知見を生かしてよりご満足いただけるように精進していきます。

他社のIFA法人会社と比較しても、弊社はきわみグループとして弁護士法人・税理士法人・社労士法人があり、資産運用以外のお客様のニーズにもワンストップで応えられる点は魅力だと思います。

 

ライフプラン・資産運用にお悩みの方へのメッセージ

アドバイザー握手

— 人生100年時代に向けてのライフプランニングとはどのように行えば良いのでしょうか。

 

まず老後2,000万円問題というのを聞いたことがあるかもしれませんが、年金だけでは足りない中で不足金をどうしていくかが問題となっております。

また、100歳まで生きていくことが当たり前の可能性が高まってきているので、更に資産運用の必要性は高まってきております。

その上で、人生100年時代を踏まえたライフプランニングに向けて一番重要だと思うことは、お客様が何のために運用するのかということです。

もちろん短期的な利益という方もいらっしゃると思いますが、私のお客様には今後のご自身の人生のためや残された家族のためという方が多いです。

そのような皆様には、ご自身はもちろん、しっかりご家族や身内の方と一緒に考え、資産運用の目的を整理していくことをおすすめしております。

 


— 最後に、これから資産形成を始めようと考えている方へメッセージをお願いします。

 

投資に対して怖いというイメージを皆様お持ちだと思います。

それは日本株での運用自体にあまりご利益がでていないからだと思います。

それを表すように個人家計の資産構成比率では、アメリカでは家計の資産構成のうち株・出資金・投資信託・債券の比率が約55%であるのに、日本での比率は約15%となっております。

これは日本株よりも米国株のパフォーマンスのほうが圧倒的に良いからであると思います。

知らないから踏み込めていないという人もいるかと思いますが、そこをしっかりご説明し、一人おひとりのお客様の目標やニーズに沿ったご提案をさせていただきます。

 


 

今回お話しを伺ったIFA(きわみアセットマネジメント株式会社)

川村様

川村 哲之
きわみアセットマネジメント株式会社

大学院卒業後、大手証券会社に入社。富裕層のお客様や未上場法人、これから運用を始める方など延べ1,000人以上のお客様の運用のご相談に従事。社内コンクール入賞。その後、短期的ではなく長期的な目線でのお客様との関係性を築いていくことの必要性を感じ、2022年にきわみアセットマネジメント株式会社に入社。

川村様

 

22年10月法令改正のシン・iDeCo!新たに加入できる方は?結局iDeCoと企業型DCとどちらが有利?

こんにちは、「老後不安をなくす!信念で資産形成を全力でサポート」を理念としている平賀ファイナンシャルサービシズ株式会社の平賀初恵です。

今まで、勤め先に「企業型DC(企業型確定拠出年金)」があるために、「iDeCo(個人型確定拠出年金)」に加入したくてもできない人がいました。

そのような方も、来月の2022年10月からは「iDeCo加入の要件緩和」で加入できるようになります。

* 企業が規約変更をしなくても原則 iDeCoに加入できる、という法改正

1. まずは勤務先の年金制度の確認から始めよう

22年10月の改正で新たに加入対象となる方は、「待ってました。非課税枠が増える!早速、iDeCo始めよう。」でしょうか。

その前に、お勤め先の年金制度を確認する必要があります。

会社の年金制度(退職金制度)ご存知ない方、案外多いですよ。

 

そもそも、「企業型DC(企業型確定拠出年金)」には、

①事業主が掛け金を全額負担する《給与上乗せ型》

②給与上乗せ型に、従業員も企業の拠出範囲内で積立可能な《マッチング型》

③希望者のみが「企業型DC」に加入する《選択制》

と3つの型があります。

 

まずは、ご自身の「企業型DC」がどのタイプなのかを確認して下さい。

それでは、次にシン・iDeCoの注意点を確認しましょう。

2. シン・iDeCoの注意点とは

《マッチング型》で、既に掛け金を拠出している方は、iDeCoは使えません

どうしてもiDeCoやりたい、という方はマッチング掛け金を止めなければなりません。

《マッチング型》を継続するか、iDeCoにするかは選択できます。

 

もう一つの注意点は、

企業型DCの掛金は、法律で上限が55,000円と決められています。

iDeCoの掛金は、最低5,000円からなので、企業型DCを50,000円以上積み立てていると、上限を超えてしまい、iDeCoは使えなくなります。

*確定給付型がある方は、22,500円以上積立ているとiDeCoはできません。

 

iDeCoの掛金は、月額20,000円(確定給付型に加入している場合は月額12,000円)、かつ事業主の拠出額と合算して月額55,000円(同27,500円)の範囲内とすることが決まりです。

 

企業型DC掛金が35,000円以上になると、20,000円はかけられません。

*55,000円-(企業型DC掛金40,000円)では、iDeCoの掛金上限は15,000円。

 

図にまとめましたので整理してみて下さい。

企業型DCとiDeCo併用時の掛け金上限額

(作成)平賀ファイナンシャルサービシズ株式会社

次に、「企業型DC」と「iDeCo」併用はどのようなケースが有効か見ていきましょう。

3. 「企業型DC」と「iDeCo」併用はどのようなケースが有効か

・マッチング型加入者

会社に「企業型DC」がある方でも、入社間もなく事業主の掛金が5,000円とすると、自身の積立額上限も5,000円となります。

今までは、もう少し確定拠出年金増やしたい、と思ってもできませんでした。

 

このケースでは、マッチング積立を止めて、iDeCoの口座を開き上限の20,000円まで積立ができます。(確定給付型は12,000円)

将来会社の掛金がアップすると、iDeCoの掛金見直しが必要になります。

 

《マッチング型》でなくても、事業主掛金が毎月50,000円以内なら、iDeCoの積立て枠はあります。

iDeCoを1年でも早く、積立可能な範囲の金額で開始する意義は大きいですよ。

 

・会社のDCには、望む運用商品がない

「企業型DC」の運用商品は、企業により品揃えはさまざまです。

「うちの会社には、自分が望む投資信託がない。」「インデックス型なのに会社の投資信託は信託報酬が高い。」、早くから「企業型DC」を導入している会社の方から、こんな声が聴こえます。

このケースでは、ご自分の希望するファンド、信託報酬の安い投資信託がある金融機関で、

iDeCo口座を開設し、所得控除のメリットを享受するもありです。

4. 「企業型DC」を優先した方が良いケース

「企業型DC」と「個人型iDeCo」の大きな違いは2点です。

ひとつは、掛金の上限が企業型DCは月額55,000円と大きいことです。

もう一つは、企業型DCは、運営にかかる費用は会社が負担するので、iDeCoのように個人でコスト負担がない分有利です。

企業型DCとiDeCoの違い

(作成)平賀ファイナンシャルサービシズ株式会社

確定拠出年金は米国の401K制度を手本としたもので「企業型DC」のことです。

本来の「確定拠出年金」制度は職場を通じての老後資金作りの場と言えます。

一方、iDeCoは米国のIRA(個人退職勘定)に近い制度です。

*401Kは雇用主が運営管理します。IRA(Individual Retirement Account)は 企業年金制度がない企業の従業員のための制度。401Kの方が拠出限度が大きいです。

 

「企業型DC」の対象とならない、自営業等の国民年金加入者は「個人型iDeCo」に自ら手続きをして加入しなければなりません。

老後資金は、公的年金と確定拠出年金の二刀流で備えるのが、スタンダードです。

 

公的年金の加入者総数約6700万人に対し、確定拠出年金加入者は企業型で約750万人、個人型は約230万人と、加入可能者からみると普及率は約14%とまだまだ利用されていないのが残念です。

まとめ

この記事では、2022年10月からのシン・iDeCoの注意点、iDeCoと企業型DCを双方確認しながらどちらを活用していくべきかを整理しました。

今回紹介した確定拠出年金を含め、NISAなどの制度も活用して資産運用を行っていきましょう。

実際に「iDeCoを使って年金の運用を始めたい」「企業型DCについて詳しく聞きたい」「iDeCo以外の資産運用も含めて相談したい」「資産運用全般のアドバイスが欲しい」といった方は、1度アドバイザーに相談してみてはいかがでしょうか。

もちろん私への相談も大歓迎です。

相談料は無料ですので、実際にどのように投資を行うか、運用資産の見直しを行うかどうかは、アドバイスを聞いた上で判断してみるのが良いと思います。

資産運用の相談ができるアドバイザーは、こちらからお探しください。

※この記事は、一般的な確定拠出年金の制度を紹介することを目的としています。
※個別の制度の利用や、投資の実行を推奨するものではありません。
※実際の投資にはリスクを伴い、思わぬ損害を被る場合もあります。個別商品のリスクや手数料については、ご自身でご確認ください。

医療保険の不要論者である筆者が医療保険に加入した理由|医療保険の再整理

『公的医療保険制度があるのだから民間の医療保険なんて入るだけ損』

『健康でいれば大丈夫』『医療保険なんていらない』

私は上記のように考えている、いわゆる「医療保険不要論者」でした。

ですが、年齢も30代中盤を迎え、先々のことを考えたら医療保険も悪くないと考え、民間の医療保険に加入をしました。

 

当記事では、世間で良く言われる医療保険不要論を取り上げ、メリット・デメリットを整理したいと思います。

あなたにとって医療保険が必要か不要かを考えるきっかけになれば幸いです。

1. そもそも医療保険とは?

まずは、医療保険とはどのようなものかを整理したいと思います。

医療保険とは、病気や怪我の治療のために入院や通院をする際に、医療費負担を軽減してくれる制度をいいます。

広義の医療保険には、「国の制度である公的医療保険」と「民間医療保険」があります。

 

(1)公的医療保険

日本は「国民皆保険制度」を採用しています。

国民皆保険制度とは、国民の全員がなんらかの公的保険制度に必ず加入する制度をいいます。

下記の図を見てもらえれば分かりますが、サラリーマン、公務員、自営業者、無職の方などがすべての年齢帯でなんらかの公的保険制度にカバーされています。

(出典:日本医師会「日本の医療保険制度の仕組み」

 

他国ではどうかというと、ドイツやフランスといった国においては上記と同様の方式が採用されています。

日本においてはこの国民皆保険制度のおかげで、原則は医療に係った費用のうち7割が保険によりカバーされますので、自分の貯蓄から支払わなければならないのは3割部分のみとなります。

これは「民間の医療保険が不要」という主張の根拠のうち、代表的なものの一つといえます。

 

余談ですが、アメリカにおいては「国民皆保険制度」は採用されていません。

公的医療サービスでカバーされる範囲は低所得者や障害者などに絞られており、その他の国民は民間の医療保険に自由意志で加入しリスクに備えなればいけません。

一方、アメリカの医療費は世界一高額であることが問題となっています。これは、製薬会社の薬代が高額であることやシステムが複雑であることが原因とされています。

上記の「高額な医療費」「最小限の公的保険制度」を背景として、アメリカでは破産者のうち6割超の破産原因が医療費であるとされています。

この話を思い起こすたび、国民皆保険制度のある日本に生まれて良かったという念に駆られずにはいられません。

 

(2)民間医療保険

次に、民間の保険会社等が提供する医療保険について説明していきます。

カカクコム・インシュアランスによる終身医療保険ランキング(2022/3/1~2022/5/31)で1位の医療保険「オリックス生命 医療保険 CURE Next」をサンプルとして確認していきましょう。

 

下記の条件で試算した場合の月払保険料は1,735円/月となります。

試算条件と月払保険料

年齢:35歳 性別:男性 入院給付金:5,000円 → 月払保険料1,735円

この医療保険に入った場合、保障される内容は以下の通りです。

シーン 項目 保障内容等
病気で入院したとき 疾病入院給付金 1日につき5,000

病気で入院したとき(通算支払限度日数:1,000日)

1入院の支払限度日数(約款所定の七大生活習慣病以外の場合) 1入院につき60
1入院の支払限度日数(約款所定の七大生活習慣病の場合) 1入院につき120

約款所定の七大生活習慣病とは、①がん(悪性新生物・上皮内新生物)、②心疾患、③脳血管疾患、④糖尿病、⑤高血圧性疾患、⑥肝硬変、⑦慢性腎臓病。そのうち④~⑦のうちいずれかで入院した場合。

1入院の支払限度日数(約款所定の三大疾病の場合) 無制限

約款所定の三大疾病とは、①がん(悪性新生物・上皮内新生物)、②心疾患 ③脳血管疾患

怪我で入院したとき 災害入院給付金 1日につき5,000

怪我で入院したとき(通算支払限度日数:1,000日)

1入院の支払限度日数 1入院60
約款所定の手術をするとき 手術給付金(入院中の場合)

1回につき10万円

約款所定の手術を受けたときに支払い(1回につき主契約の入院給付金日額の20倍)

手術給付金(外来の場合)

1回につき2.5万円

約款所定の手術を受けたときに支払い。(1回につき主契約の入院給付金日額の5倍)

先進医療を受けたとき 先進医療による療養を受けたとき

先進医療にかかる技術料と同額(通算2,000万円限度

先進医療給付金が支払われる療養を受けたとき

先進医療給付金の10%相当額(1回の療養につき50万円限度)

 

保障の対象には、「病気・怪我での入院時」「手術を受けた時」「先進医療を受けた時」となっています。

これだけを見ても、いまいち判断が付きづらいところですね。

それでは次章から、一般的な「民間の医療保険が不要」という主張の内容を確認しながら検討を進めていきましょう。

 
 

2. 民間の医療保険が不要とされる理由

先々の老後資金計画

本章では「民間医療保険の不要論」の最大の論拠について、確認をしていきましょう。

 

民間医療保険の不要論の最大の論拠は以下の通りです。

『公的医療保険により「原則3割負担」、さらに「高額療養費制度」があるため高額にならない。そのため、貯蓄で対応が十分可能』

本当にそうでしょうか?以下、詳しくチェックしていきましょう。

 

-公的医療保険制度と高額療養費制度

前述の通り、公的医療保険制度では7割が保険制度により負担されるため、自己負担は3割になります。

しかし、いくら自己負担は3割のみといっても、治療が長期にわたった場合、医療費負担が家計を圧迫することが想定されます。

そのような事態を防ぐための制度として、「高額療養費制度」があります。

 

高額療養費制度とは、簡単にいうと「医療費が高額になった場合、月の上限額を超えて払った部分が返ってくる」というものです。

月の医療費の上限額は、年齢や所得によって異なります。69歳以下の場合、上限額は以下の表の通りです。

摘要区分 ひと月の上限額(世帯ごと)
年収約1,160万円~
 健保:標準報酬月額83万円以上
 国保:旧ただし書き所得901万円超

252,600円+(医療費-842,000)×1%

※4回目以降は、140,100円

年収約770~約1,160万円
 健保:標準報酬月額53万~79万円
 国保:旧ただし書き所得600万~901万円

167,400円+(医療費-558,000)×1%

※4回目以降は、93,000円

年収約370~約770万円
 健保:標準報酬月額28万~50万円
 国保:旧ただし書き所得210万~600万円

80,100円+(医療費-267,000)×1%

※4回目以降は、44,400円

~年収約370万円
 健保:標準報酬月額26万円以下
 国保:旧ただし書き所得210万円以下

57,600円

※4回目以降は、44,400円

住民税非課税者

35,400円

※4回目以降は、24,600円

(出典:厚生労働省保険局「高額療養費制度を利用される皆さまへ」

 

どんなに医療費がかかっても1ヶ月あたり数万円~数十万円に収まるということは、かなり安心感が強そうです。

しかし、あくまで1ヶ月の負担額ですので、入院や治療が数か月~数年にわたった場合には、数万円~数十万円の出費が数か月~数年続くことになりますので、長期化すればするほど非常に厳しい負担になりそうです。

 

-医療費の平均額

そもそも医療費はどれくらいかかるのか、2019年のデータで確認してみましょう。

年齢階級 人口一人当たり国民医療費/年
全体平均 351,800円
 うち、  0~14歳 164,300円
 うち、15~44歳 126,000円
 うち、45~64歳 285,800円
 うち、65歳以上 754,200円

(出典:厚生労働省「令和元(2019)年度 国民医療費の概況」

 

年間の平均の医療費は上記の通りです。

上記の医療費のうち、原則は3割が自己負担になりますので、年間で十万円前後の負担額になります(全体平均)。

統計の範囲内に収まるのであれば、ある程度の貯蓄があれば負担感は高くないかもしれません。

 

上記が、民間医療保険の不要論の最大の論拠でした。一定の説得力はあるように感じますね。

それでは、なぜ私は医療保険に入ったのか、次の章でご説明していきたいと思います。

3. 私が医療保険に入った理由

お金と健康

本章では私が医療保険に加入した理由についてご説明します。

 

(1)差額ベッド代や食事代については公的医療保険の対象にならない

入院をする場合には、差額ベッド代(平均6,188円/日)食事代(平均460円/食)入院中の生活費(給料の50%以上)といった、医療行為の対価以外の費用が発生しますが、これらは公的医療保険の対象にはならないため、入院する場合の費用については1回あたり自己負担金額が平均20万円となる調査結果もあります。

(出典:厚生労働省「主な選定療養に係る報告状況」厚生労働省「入院時の食費の負担額」生命保険文化センター「令和元年度 生活保障に関する調査」

私は事業主ですので、入院状態となってしまった場合であっても、可能であれば個室の病室で仕事をしたいと思いそうです(もちろん、病気や怪我の状態にもよりますが)。また、仕事中心の不摂生な生活をしているので、入院リスク自体も同世代の一般的な人よりは高いような気はしています。

そのため差額ベッド代等の費用についてもカバーすることができる民間医療保険にはメリットを感じました。

ですが、これだけでは医療保険に加入する理由には足りません。次の理由を確認してみましょう。

 

(2)「高額療養費制度」の行く先は不透明

財務省は2022年7月26日に「令和4年度 予算執行調査」の結果を発表しました。

その中で、注目を集めているのが「国民健康保険の高額医療費負担金の国から都道府県への移管」です。

高額医療費負担、財務省「廃止を」 省庁の無駄、予算執行調査

財務省は26日、各省庁の事業の無駄を調べる予算執行調査の結果を発表した。75歳未満の自営業者や無職の人が加入する国民健康保険で、1カ月当たり80万円を超える高額な医療費が発生した場合に超過部分の一部を国が負担する制度について「廃止に向けた道筋を工程化すべきだ」とした。

 この制度は、全国の市区町村が国保の運営主体だった時、高額医療が発生すると規模の小さな自治体では大きな財政負担が生じる恐れがあったため、影響を緩和させる目的があった。

(毎日新聞『高額医療費負担、財務省「廃止を」省庁の無駄、予算執行調査』)

財務省は、1件あたり80万円以上の高額な医療費が発生した場合に、超過した部分の一部をが負担する制度を廃止し、今後は都道府県に移管するべきとしています。

高額療養費制度を廃止せよ」ということではなく、「高額療養費への国庫負担を廃止せよ」という主張であることには注意が必要です。

この動きには、国保の運営状況の悪化が根底にあると想定されますが、高齢化が進む日本においては今後劇的に改善する見通しは立っていません。

今後、保険料負担の引き上げや、公的保障の引き下げが続けば、「3割負担や高額療養費制度自体が見直される」といった未来も遠くはないように感じます。

万が一、そのような状況になってしまった場合、公的医療制度のみを頼りにするのは心もとなく感じます。

 

一方、公的制度が改悪されそうになったら、その時に医療保険に入ればいいという考えもあります。

しかし、仮に10年後・20年後の未来において高額療養費制度が廃止されるとしたら、そのとき私は40代~50代です。

そのときには、私は健康上の理由で、民間医療保険には入ることができないかもしれません。

それならば、今の時点で医療保険に加入するのも悪くはないんじゃないか、と考えました。

 

(3)筆者の意思決定の仕方のまとめ

私が医療保険に加入した理由をまとめると、以下のようになります。

筆者自身の環境要因

筆者が事業主であり、病気や怪我の状態となっても収入を確保する必要がある。仕事中心の生活で不摂生気味であり、健康リスクは高いような気がしている。

入院・手術の際に保険金が支払われ、仕事ができる個室入院時の差額ベッド代もカバー可能である医療保険にメリットを感じた。

公的保険制度の改悪リスク

国保の運営状況の悪化等を背景として、高額療養費制度を含めた公的保険制度の改悪リスクがあると感じている。

10年後・20年後の未来において高額療養費制度が廃止されるとした場合、私は健康上の理由で民間医療保険には入ることができない可能性もあるため、現時点で民間医療保険に加入するメリットを感じた。

 

まとめ

私は『公的医療保険制度があるのだから民間の医療保険なんて入るだけ損』と考えていた、いわゆる「医療保険不要論者」でした。

本稿では、そんな私が医療保険に入った理由を整理してみました。

医療保険についてお困りの方は、ぜひ一度、FPや保険対応可能なIFAなどのアドバイザーに相談してみましょう。

【事業承継事例】中小企業の自社株式承継に役員退職金を活用する方法とは?

2022年現在、日本全国の社長の平均年齢は62.7歳となっており(出所:株式会社東京商工リサーチ)、「事業承継」の課題に直面する経営者は多くなっています。

「事業承継」と聞いて皆様はどんなイメージがありますでしょうか?

「先代の社長が引退して、次の社長が新たに就任する」・・・・事業承継という言葉を額面通りに捉えればそれだけですが、実際に中小企業が事業承継する際には、非常に多様な問題に直面することになります。

今回は、父である現社長が、子である次期社長に経営を引き継ぐ、「親族内承継」を前提として、どのような問題が発生するかを確認していきたいと思います。

 

1. ご相談内容

ご相談内容は以下の通りです。

ご相談内容

事業承継についての情報を、書籍やセミナー等などで見かけることが多いが、具体的にどのような事業承継対策を行えばいいのか分からない。

税理士や金融機関の営業担当者との付き合いもないので、アドバイスが欲しい。

お客様のプロフィールや企業の状況は次の通りです。

プロフィール

・性別:男性

・年齢:76歳

・職業:オーナー経営者

・企業概要:

項目 内容
業種 製造業(ベアリング製造)
資本金 1,000万円
売上高 20億円
経常利益 2億円
純資産額 15億円
従業員数 70名
備考

・1982年に現在の経営者が創業し、一代で従業員70名まで拡大。

・自社株式は現経営者が100%所有。

・創業当初は経営が厳しく、役員報酬を取れなかった時期も長く続いた。現在は、経営も安定してきたので、2,040万円/年(170万円/月)の役員報酬を取れている。

お客様の思いは次の通りです。
 

相談者の思い

事業承継について
・長男(50歳)が専務取締役として入社しており、後継者として色々頑張ってくれている。
・業務や取引先の引継ぎは進めているが、自社株式の引継ぎについては何もできていない。
 
退職金について
・創業当初は報酬を取れなかった時期もあるため、可能であれば役員退職金を多くもらいたい。
 

2. 事業承継で発生する問題

上記のケースでは、後継者として専務取締役の長男(50歳)がおり、業務や取引先の引継ぎは進んでいるようです。

経営面での承継は進んでいるようですが、どのような問題が発生するのでしょうか?

(1)「経営の承継」と「株式の承継」

事業承継には大きく分けて2つの要素があります。「経営の承継」「株式の承継」です。

 

経営の承継

経営の承継とは、経営そのものの引継ぎのことを指します。後継者を決定し教育する、社長としての役割を明確化して引き継ぎをする、社内外の関係者に対して周知するということが経営の承継に該当します。

いわば「人」の面の承継(人的承継)であるといえます。

 

株式の承継

株式の承継とは、自社株式の承継のことを指します。自社株式には2つの側面があります。

会社を財産として所有する権利である財産権と、会社の経営決定をすることができる権利である経営権です。

財産権には、会社からの配当金を受け取る権利(利益配当請求権)や、会社を解散する際に財産の分配を受ける権利(残余財産分配請求権)が該当します。

経営権とは、株主総会の決議において意思決定を行い、会社の経営判断を実施することができる権利(議決権)をいいます。

例えば、企業オーナーが総議決権の50%超を有している場合には、取締役の選任・解任・報酬の決定株主への配当等の事項を、単独で決定することができます。さらに、総議決権の2/3以上を有している場合には、定款の変更会社の合併資本金の減少解散等の会社の重大事項を単独で決定することができてしまいます。

オーナー系の中小企業の強みは、経営権が代表取締役に集中していることから(経営者=株主)、経営に関する意思決定をスピーディーに実施することができるという点です。経営権が後継者になくては、経営に関する意思決定はいちいち株主にお伺いを立てなければならず、迅速な企業運営をすることは叶いません。

これらの性質を持つ自社株式を、しっかり後継者に承継していくのが、株式の承継です。

いわば「物」の面の承継(物的承継)といえます。

 

本ケースでは・・・

本ケースにおいては、「長男(50歳)が専務取締役として入社しており、後継者として頑張っている」「業務や取引先の引継ぎは進めている」という状況ですので、経営の承継については一定程度進んでいるようです。

一方、株式の承継については全く手を付けられていないということですので、どのような問題が発生する可能性があるのかを次節で確認していきましょう。

 

(2)高額な自社株式の評価額

株式承継をする際の大きな障壁として、自社株式の評価額が高額になってしまうということがあります。

 

ここで疑問が浮かびます。上場していないオーナー企業の自社株式は、どのように評価したらいいのでしょうか?

創業時の元手の金額である「資本金」の金額かと思う方も多いですが、そうではありません。

自社株式を贈与する際の評価方法は、国税庁が定める「財産評価基本通達」に定められています。

株式の評価方法はいくつかありますが、評価対象企業の企業規模によって評価方法が異なります。

本件の事例企業では類似業種比準価額という評価方法によって評価額が計算されることになります。

計算方法を簡単に説明すると、評価対象の会社と同業種の上場企業の株価を基準として、評価対象の会社と同業種の上場企業の配当利益純資産の比率により調整を加えて計算します。ポイントは、配当、利益、純資産それぞれの多寡によって評価額が増減するという点です。

計算式を示すと以下の通りです(理解促進のため単純化しています)。

 

上記の計算式に当てはめて、上記企業の前提条件(製造業、配当0円、経常利益2億円/年、純資産15億円)で計算をすると、なんと評価額は8億9千万円になります。

利益」と「純資産」が非常に高額であることから、もともと1千万円の資本金で創業した会社にもかかわらず、8億9千万円もの非常に高額な株価がついてしまいます。

 

もし、この8億9千万円の自社株式を何も考えずに後継者に暦年贈与で一年で渡してしまった場合には、4億8千万円もの贈与税が発生してしまいます。とてもじゃないですが、払いきれるような税金ではありません。

それでは、「代表者が自社株式を持ったまま代表者の相続まで待って、贈与税よりは累進税率の度合いがゆるい相続税の課税で後継者に渡す」という案はどうでしょうか?税金は安くなりますが、後継者に経営権が移らないのでいつまで経っても後継者は代表者の顔色を窺って経営をしなければなりません。また、社長が将来的に認知症にかかってしまったら会社はどうなってしまうでしょうか。

これが自社株式の承継にまつわる問題点です。

自社株式の承継は経営を継続するために必須であるにもかかわらず、評価額があまりに高額になってしまうために承継ができない・・・これが日本中さまざまな中小企業でみられる株式承継の問題です。

 

3. 役員退職金を活用した株価引き下げの検討

注意点

本ケースでは、高額な株価の引き下げのために役員退職金の利用を検討してみましょう。

 

(1)役員退職金とは?

役員退職金とは、代表取締役などの役員が退任することを契機として支払われる退職金をいいます。

役員退職金は、中小企業にとっては30年に1回の大型節税策といわれ、税的な非常にメリットが非常に大きい制度となっています。

 

法人税法上、役員退職金がいくらまで認められるかについて明記はされておらず、不相当に高額では認められないとされているのみです。

ですが、実務上は以下の計算式であれば問題がないとされています。

役員退職金 = 役員報酬月額 × 役員在任年数 × 功績倍率

計算式の中の功績倍率とは、役職に応じて以下のように設定することが多いとされます。

役職 功績倍率
社長 3.0
専務 2.4
常務 2.2
平取締役 1.8
監査役 1.6

 

上記の計算式に当てはめて、ケース企業の前提条件で計算をすると役員退職金の金額は以下のようになります。

役員報酬月額1.7百万円/月 × 勤続年数40年 × 功績倍率3.0倍 = 役員退職金2億4百万円

法人としては(本ケースでは)2億円もの大きな金額を一度に経費に計上することができ、また、退職金を受け取る側においては退職所得となるので通常の役員報酬と比べて所得税の税負担も約50%となることから、とてもメリットが多いといえます。

 

(2)役員退職金を株価引き下げに利用する理由

株価の引き下げに役員退職金を利用する理由はシンプルで、非常に多額の費用を一度に計上することが可能だからです。

先ほど確認した類似業種比準価額の計算式をもう一度見てみましょう。

先ほど確認した通り、配当・利益・純資産の3要素がポイントでした。

役員退職金で多額の損失を計上した場合、上記のうち、利益・純資産の2要素について大きく減少させることが可能となります。

役員退職金2億円を支払った場合の自社株式の評価額の変化を見てみましょう。

項目 現状 退職金支払後
配当 0 0
利益 2億円 0
純資産 15億円 13億円
株式評価 8.9億円 3.1億円

役員退職金の支払いをすることにより、株式評価額を8.9億円から3.1億円まで圧縮することができました(△5.8億円の減少)。

株価を引き下げた後には、相続時精算課税制度という制度を利用した贈与を利用して、引き下げた株価を適用しつつ生前に後継者世代に株式を移すという手法が一般的です。

かなり乱暴ですが、「現状の株価で暦年贈与で全てを渡したパターン」と「退職金支払いと相続時精算課税贈与を組み合わせたパターン」を比較してみます。

項目

現状+暦年贈与

退職金支払+相続時精算課税贈与
株式評価 8.9億円 3.1億円
贈与税

4.8億円

<4.8億円×55%-640万円>

5,700万円

<(3.1億円-2500万円)×20%>

相続税※ 0

5,600万円

<(3.1億円×50%-4,200万円)-5,700万円>

贈与税+相続税 4.8億円

1.1億円

※相続人は1名、相続財産は自社株式のみと仮定

 

相続時精算課税制度については、下記の記事で詳細していますので、ぜひ確認してみてください。

家計を計算して守る 相続時精算課税制度による贈与を確認してみよう | IFA無料相談はRoute100

まとめ

本稿では、中小企業の自社株式承継に役員退職金を活用する方法を確認してきました。

事業承継についてお困りの方は、ぜひ一度、税理士や相続対応可能なIFAなどのアドバイザーに相談してみましょう。

まだ間に合う!ジュニアNISAで名義預金リスクを回避しながら贈与をする方法とは?

相続対策のために、親から子へ、または、祖父母から孫へ、コツコツと現預金を生前贈与する光景はいたるところに見られます。

その際に気を付けなければならないのが「名義預金」の問題です。

 

いざ相続が発生したときに、贈与を受けていた子や孫の預金が名義預金であると税務署から認定されてしまった場合、その預金は子や孫の名義ではあるが、実質は相続財産であるとみなされ、相続税が課税されてしまいます。

せっかく長年をかけて行ってきた贈与が無意味になってしまい、想定よりも多額の相続税が発生してしまうことになります。

 

それでは名義預金に認定されないためには、どうすればよいのでしょうか。

名義預金に認定されることを回避するためには、通帳と印鑑を子や孫に渡し、預金口座を子や孫の本人が実質的に管理しているということが重要です。

しかし、例えば10歳の子供に多額の現金の管理をさせるのは現実的ではないという問題がここで発生してしまいます。

 

贈与した預金を、祖父母や親が管理すれば名義預金とされてしまうリスクがあるが、子や孫自身に管理させるのは教育上よくないので避けたい…、このようなジレンマを打破する方法の一つに「ジュニアNISA」があります。

 

本稿では、名義預金対策としてのジュニアNISAについてご説明していきます。

1. 名義預金とは

 

まず、相続対策の局面で問題となる場合が多い名義預金について確認していきましょう。

相続対策のうち、未成年の子や孫に対して生前贈与をする場合などにしばしば問題となります。

相続税の税務調査において名義預金は最も指摘されやすい項目とされています。

本章では、名義預金とはどのようなものかを確認していきましょう。

 

(1)名義預金とは

名義預金とは、その名の通り、子や孫の名義であるにもかかわらず、実質的には親や祖父母が所有しているとみなされてしまう財産を指します。

コツコツと生前贈与を続けていたようなケースにおいて、相続が発生したときに、贈与を受けていた子や孫の預金が名義預金であると税務署から認定されてしまった場合、その預金は実質は相続人が所有していた相続財産であるとみなされて、相続税が課税されてしまうことになります。

 

(2)名義預金はどのようなときに問題になるのか?

名義預金が問題になるのは、実際に相続が発生して相続税申告をした後、1~2年後に税務署の税務調査が入ったときです。

相続税の税務調査は全ての相続に入るわけではなく、相続全体の約2割に入るとされています。

その税務調査において、税務署により子や孫の預金が名義預金であると認定された場合、子や孫に贈与した財産は、実質的な所有者である親や祖父母の財産として相続税が課税されてしまいます。

 

(3)名義預金と認定されるポイント

名義預金について実質的に誰が所有しているかという判断は非常に難しいところです。

一般的には「通帳や印鑑を管理しているのは誰か」という点がポイントとされます。

つまり、通帳と印鑑をしっかりと受贈者(贈与を受ける者)に渡しているか、預金口座を受贈者(贈与を受ける者)が実質的に管理しており自由に引き出すことができるか、ということが重要です。

しかし、子供に多額の現金の管理をさせるのは教育上悪影響があるため現実的ではないという問題がここで発生してしまいます。

 

次章では、その対策の一つとしての「ジュニアNISA」をご説明したいと思います。

2. ジュニアNISAとは?

NISA

(1)ジュニアNISAとは?

ジュニアNISAとは、子供の資産形成を支援するために創設された、子供版のNISA制度です。

NISAとは、小額投資非課税制度のことをいい、簡単に言えば、NISA制度を活用すれば、金融商品から得られる利益が非課税となります。

NISA制度とジュニアNISA制度を比較して整理してみると以下の通りです。

 

  NISA ジュニアNISA
対象者 20歳以上の人 0歳~19歳の人
非課税対象 株式・投資信託等への投資から得られる配当金・分配金や譲渡益 同左

利用限度額

(非課税枠)

120万円/年 80万円/年
非課税期間 投資をした年から最長5年間

投資をした年から最長5年間だが、20歳までは非課税で保有可能

投資が可能な期間 2028年12月末まで 2023年12月末まで
運用管理者 本人 原則として、本人の二親等以内の親族が代理して運用
払出し制限 なし

原則として18歳までは払出しが制限されるが、2024年1月からは払出し制限は撤廃

※成年年齢引き下げにより、2023年1月1日以降は、「20歳」の記載は「18歳」に、「19歳」の記載は「17歳」となります。

 

注意が必要な点として、投資が可能な期間は2023年12月末までという点があげられます。

金額としては年間80万円が上限ですので、2022年から開始すれば、80万円×2年=160万円までは活用することができます。

 

(2)ジュニアNISAで名義預金対策をするには?

名義預金対策には、実質的に誰が所有しているかという視点が非常に重要です。

ですが、現金や預貯金を子や孫が自由に使える状態にしてしまうと、無駄遣いをされてしまうというリスクがあります。

このジレンマを解決するためには、贈与した現金や預貯金を、子供だけで払出したり解約したりすることができない金融商品に変換してしまえば大丈夫です。

そのために利用できる金融商品の一つが「ジュニアNISA」です。

実施方法は簡単で、子・孫の名義でジュニアNISA口座を開設し、親・祖父母から入金をすれば大丈夫です。

ジュニアNISA口座は、親権者が子・孫の代理で運用を行うため、上記の無駄遣い防止という目的には持ってこいであると考えられます。

 

(3)ジュニアNISAの注意点

ジュニアNISAの注意点は、投資が可能な期間は2023年12月末までという点です。

2022年から開始した場合には、80万円×2年=160万円までしか使うことができませんが、口座開設が2023年になれば当然1年分の80万円しか利用することができません。

ジュニアNISA口座を新規に作成しようとする場合には、だいたい1ヶ月くらいの期間が必要ですので、実施する場合には早めの対応が必要です。

また、従来のジュニアNISAでは18歳までは払出しが制限されるという点が注意点としてありましたが、2024年以降は払出し制限が撤廃されますのでこの点は使い勝手が非常に改善したといえます。

 

まとめ

本稿では、ジュニアNISAを活用した名義預金対策を検討してきました。

どのような相続税対策を行った方がいいのか、という点を自分で判断することが難しい場合には、税理士や相続対応可能なIFAなどのアドバイザーに相談してみましょう。

【相続対策事例】生命保険金を活用した相続財産圧縮の検討(静岡市在住 女性 78歳)

この記事を読んでいる皆さんは、相続対策と聞いてどのようなイメージがありますか?

銀行、証券会社、保険会社、不動産会社・・・様々な業種の企業が相続対策をキーワードに営業活動を行っています。

どのような対策をすればいいのか迷ってしまうケースも多いと思います。

本記事では、相続対策として『生命保険』を検討したケースをご紹介していきます。

ぜひ、将来の相続についての検討する際のご参考になさってください。

1. ご相談内容

家とライフプランナー

下記のようなご相談をいただきました。

ご相談内容

定期預金の預け入れをしようと金融機関の窓口に行った際に、窓口担当者から下記のようなセールスを受けた。

「定期預金に入るのであれば、相続対策にもなる生命保険に入っておいたほうがいいですよ。」

言う通りに生命保険に入ったほうがいいのか、アドバイスが欲しい

お客様のプロフィールや財産の状況は次の通りです。

プロフィール

・性別:女性

・年齢:78歳

・職業:年金生活者(学卒後、不動産仲介業の中小企業の営業事務として勤務、その後夫と結婚して専業主婦となった)

・居住地:静岡県静岡市(東静岡駅 徒歩15分)

・家族構成:

 -夫は、10年前に死別。現役時代は自動車メーカーに勤務。

 -長女は、静岡県静岡市に在住、47歳、既婚。静岡駅近くの賃貸マンションに夫婦で住んでおり、たまに様子を見に来てくれる。

 -次女は、静岡県浜松市に在住、44歳、既婚。浜松市郊外の一戸建てを購入し夫婦で住んでいる。

・財産の概要:

財産の種類 内容 価格 左記金額の評価方法
土地

宅地(自宅所在地)

静岡市所在の宅地300㎡(東静岡駅から徒歩15分、相続税路線価@150千円/㎡)

4,500万円 相続税路線価
建物

居宅(自宅)

木造1戸建て、延べ床面積160㎡、築年数15年

1,800万円

固定資産税評価額

預金

夫の相続時に相続した預貯金(退職金や夫が勤務していた自動車メーカーの株式の売却代金)が主な財源

3,500万円 相談日の残高
生命保険

保険契約は、入院時に保険金が支払われる医療保険のみであり、死亡時に保険金が支払われるものは加入していない

なし  
合計 9,800万円  
※ご相談者名義の借入金はなし。
 

相談者の思い

大きな分け方としては、以下のようなイメージを持っている。
 ・ 自宅(土地、建物)は築15年でまだまだ住めるので、賃貸暮らしをしている長女に残したい。
 ・ 上記の代わりに、金銭は次女に残したい。
 ・ 相続税が発生することは覚悟しているが、可能であればできるだけ引き下げたい(安全な方法があれば)。

2. ご相談の特徴

相続相談事例

(1)財産のうち不動産が半分以上を占める

今回の財産内容を評価額でみたときには、遺産総額9,800万円に対して、自宅の土地が4,500万円、建物が1,800万円と不動産の合計で6,300万円、遺産総額に占める不動産の割合は64.3%となっています。

それに対して預貯金は、割合としては35.7%ですが、金額ベースでは3,500万円と、まとまった金額を保有しているといえます。

静岡市のベッドタウンに大きめのお家を持っているため、不動産中心の財産構成になっていますね。

 

(2)預貯金は3,500万円、ご相談者の生活費から考えれば十分

調査結果によれば、単身高齢者の生活費の平均は144,687円/月、それに対して年金などの社会保障給付による収入の平均は121,942円/月とされています(出典:総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2020年(令和2年)」)。差額である2~3万円が毎月不足する額です。

ご相談者は78歳であり、平均余命は13.82年(出典:厚生労働省「令和2年 簡易生命表」)ですが、余裕を持って20年分の不足額を計算すると、480万円~720万円が必要額となりますので、預貯金的には余裕があります。

これはあくまで総務省の家計収支による平均の数値ですので、余裕のある生活をしようとすればより多くの金額が必要となります。

 

3. 相続対策における検討事項

アドバイザーからの提案

本ケースでは上記のご相談の特徴を踏まえて、以下のように検討をします。

 

(1)相続税の金額は?

まずは、今相続が発生した場合に相続税額を計算してみましょう。

財産構成は、土地、建物、預金です。

それぞれの財産の評価方法を簡記すると以下の通りです。

財産の種類 評価方法
土地 路線価がある地域の場合:路線価方式(路線価が基準)
それ以外の場合:倍率方式(固定資産税評価額が基準)
建物 固定資産税評価額
預金 相続発生時の残高
  • 土地

土地については、路線価方式と倍率方式という方法があります。

今回のケースでは静岡市のベッドタウンの駅前であり、相続税路線価が設定されています。そのため、その金額を基礎に評価をする路線価方式という方法によります。(相続税路線価@150千円/㎡×300㎡=4,500万円)。

なお、路線価が設定されていない土地の場合には、固定資産税評価額を基準とする倍率方式という方法となります。

現行の税制においては、「小規模宅地等の評価減の特例」という評価方法の特例がありますので、上記の計算結果にそれを考慮することが必要です。

  • 建物

建物については、自治体から郵送される固定資産税課税明細書に記載されている固定資産税評価額をそのまま使用します。

  • 預金、上場有価証券

預金は相続発生時の残高を使用します。

  • 小規模宅地等の評価減の特例

小規模宅地等の評価減の特例とは、被相続人が亡くなった時に、居住用として住んでいた宅地などを、親族等が相続した場合等に活用することができる評価方法の特例です。

本ケースでは、相談者が所有し、かつ、居住している宅地を、別居しており賃貸マンション暮らしの長女が相続していますので、「特定居住用宅地等」(家なき子特例)という枠で適用することができます。

本ケースの場合には特定居住用宅地等に該当していますので、宅地の評価は80%減となります(上限は330㎡まで)。

相続開始の直前における宅地等の利用区分 要件 限度面積 減額される割合
被相続人等の居住用に供されていた宅地等 特定居住用宅地等 330㎡ 80%
被相続人等の事業の用に供されていた宅地等 貸付事業以外の事業用の宅地等 特定事業用宅地等 400㎡ 80%
貸付事業用
の宅地等
一定の法人に貸し付けられ、その法人の事業用の宅地等(貸付事業以外) 特定同族会社事業用宅地等 400㎡ 80%
貸付事業用宅地等 200㎡ 50%
一定の法人に貸し付けられ、その法人の貸付事業用の宅地等 貸付事業用宅地等 200㎡ 50%
被相続人等の貸付事業用の宅地等 貸付事業用宅地等 200㎡ 50%

(出典:国税庁「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」)

 

  • 相続税評価額のまとめ

上記の評価方法を踏まえて、相続税評価額を概算すると以下の通りです。

財産の種類 相続税評価額 左記金額の評価方法
土地 4,500万円 相続税路線価@150千円/㎡×地積300㎡
小規模宅地の評価減 △3,600万円 土地の評価額4,500万円×減額割合80%
建物 1,800万円 固定資産税評価額
現預金 3,500万円 相談日の残高
合計 6,200万円  

小規模宅地の評価減の特例のおかげで、大きく評価額が減少していることが分かります。

それではこのケースでの相続税額を計算してみましょう。

相続税が課税される遺産総額の計算式は下記の通りです。

課税遺産総額 = 課税価格の合計額 - 基礎控除額

上記の計算式の中にある基礎控除額は、以下の計算式で算出します。

基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

本ケースでは相続人が2名(長女、次女)であるため、基礎控除額は4,200万円(3,000万円+600万円×2名)となります。

遺産の相続税評価額の合計額が6,200万円であり、基礎控除額が4,200万円ですので、本ケースでは課税遺産総額は2,000万円となります。

 

そして上記で求めた課税遺産総額を、法定相続分で分けたものとした場合の各相続人ごとの取得額と相続税額を算出します。

長女と次女が1/2の1,000万円ずつ相続することとなります。下記の表から10%をかけると100万円ずつとなり、相続税額の合計は200万円(100万円+100万円)となります。

国税庁「相続税の申告の仕方」より抜粋

 

現在は預貯金が3,500万円あるため、想定相続税額の200万円は問題なく支払うことが可能であると考えられます。

 

(2)相続税額をより引き下げることはできるか?

相談者から相続税額の引き下げについて相談を受けていますので、その点について検討をしてみましょう。

本ケースでは預貯金が潤沢にあるため、「一時払終身保険」を検討します。

一時払終身保険とは、生命保険の一種であり、契約する時点で保険料を一括で支払う終身保険のことをいいます。

相談者が被保険者・保険料負担者、長女と次女を保険金受取人とした場合、死亡保険金は「みなし相続財産」として相続税の課税対象となりますが、法定相続人1人あたり500万円が非課税財産となります。

本ケースにおいて法定相続人は2名ですので、500万円×2名=1,000万円の生命保険契約を行った場合、遺産明細と相続税額は以下の通りになります。

財産の種類 相続税評価額 備考
土地 4,500万円 相続税路線価@150千円/㎡×地積300㎡
小規模宅地の評価減 △3,600万円 土地の評価額4,500万円×減額割合80%
建物 1,800万円  
現預金 2,500万円  
生命保険 1,000万円  
生命保険の非課税枠 △1,000万円  
合計 5,200万円  
相続税額 100万円  

対策前の相続税額が200万円であったのに対して、生命保険契約を実施した場合には相続税額が100万円に減少しています。

ただし、本ケースにおいては、生活費で少しずつ預貯金は取り崩されますので、自然体でも相続税額は減少していきます。そのため、本ケースでは相続税の節税のためだけに生命保険を契約することはお勧めしません

今回あまり大きな効果が出なかったのは財産額が大きくなく、適用される相続税率が低かったことが要因です。そのため、財産がより多額にあるケースではより大きい節税効果が発生すると考えられます

本ケースでは、長生きすることが一番の相続対策といえます。

まとめ

本稿では、相続のケースを検討してきました。

どのような相続税対策を行った方がいいのか、という点を自分で判断することが難しいというケースも多いと思います。

そういった場合には、税理士や相続対応可能なIFAなどのアドバイザーに相談してみましょう。