定年延長で定年は65歳?70歳?人生100年時代の働き方を考える

私たちは何歳で定年を迎えるのでしょうか?

長寿化、少子高齢化による労働人口の減少を背景に、定年は徐々に引き上げられています。
また、それに合わせて年金の受給開始年齢も引き上げられています。

なぜ定年は引き上げられているのでしょうか?

人生100年時代において、私たちの定年・働き方がどのように変化していくかを考えてみましょう。

1. 定年延長とは

定年とは「企業や公務に勤める正規雇用者で、ある一定の年齢に達したら仕事を退職・退官する場合のその年齢のこと」(大辞泉)です。

定年の年齢は企業が個別に定めることができますが、最低年齢は法律で定められています。

そして、定年の最低年齢は徐々に引き上げられています
このことを定年延長と言います。

なぜ、定年延長が起こっているのでしょうか?

2. 定年延長の背景

定年延長の背景には、少子高齢化と長寿化があります。

  1. 少子高齢化による、労働人口の減少

  2. 少子高齢化・長寿化による、年金受給開始年齢の引き上げ

  3. 長寿化および健康寿命の延伸に伴う、高齢者の勤労意欲の増進

(1)労働人口の減少

みなさんご存知の通り、現在日本は人口減少社会です。

日本の総人口は2008年をピークに減少に転じ、労働人口も1995年をピークに減少に転じています

そして、この傾向はどちらもこの先も続くと考えられています。

労働人口の変化2010年までは総務省統計局「国勢調査」、2020年以降は国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)」を元に、Route100編集部作成

長期的・本質的には出生数を増やすことが重要ですが、簡単な問題ではありません。

そのため、定年延長により労働人口の対象を広げ、労働力と年金保険料を確保する狙いがあります。

(2)年金受給開始年齢の引き上げ

少子高齢化社会が進む中、年金制度も影響を受け、年金受給開始年齢が徐々に引き上げられています

日本の年金制度は「今の現役世代が支払っている保険料を、現在の年金受給者に給付する」賦課方式を基本としています。

賦課方式で少子高齢化が進むと、何が起こるでしょうか?

先ほどの労働人口の変化の通り、2020年以降65歳以上の人口があまり変わらないのに対し、労働人口はどんどん減っていきます。

その結果、高齢者1人を支える現役世代の人数が少なくなっていきます。

高齢者1人に対する現役世代人数内閣府「高齢化社会白書(2017年版)」を元に、Route100編集部作成

2020年時点で、すでに約2人で1人の高齢者を支える状況になっています。
これが2040年になると、支える現役世代の人数が1.5人を割り込みます

年金制度を維持するためには、現役世代の負担を増やすか、年金の支給額を減らすか、またはその両方を行わなければなりません。

実際に年金制度を維持するために、徐々に年金受給開始年齢が引き上げています。

また、単に年金受給開始年齢だけを引き上げると、「定年になり無職になったけど、年金がもらえず生活に困る」人たちが出てくる可能性があります。

そのため、政府は年金受給開始年齢と定年延長をセットで推進しています。

年金制度は破綻しない?年金の種類と個人の備えを考える!

(3)健康寿命延伸に伴う高齢者の勤労意欲の増進

定年延長により、これまでより高齢になっても働くことになりますが、長く働くことは現実的なのでしょうか?

高齢になっても働くためには、健康な身体を維持し、かつ働くことに意欲を持っている必要がありますが、この2点については問題がないと言えそうです。

① 健康寿命の長期化

日本人は男女ともに平均寿命とともに健康寿命も延伸しています。

厚生労働省「簡易生命表(令和元年)」などを元に編集部制作

健康寿命とは、日常的に医療・介護に依存しないで、自立した生活ができる期間のことです。

身体面では、長く働くことは可能だと言えそうです。

② 働く意欲

また、精神面・働く意欲についても概ね問題ないと言えそうです。

やや古い調査データにはなりますが、政府が2014年に行なった調査では、約80%の人が65歳を超えて働きたいと考えています。

いつまで働きたいか

また、働けるうちはいつまでも働きたい考えている人も40%を超えます

もちろん、全員というわけではありませんが、元気なうちはなるべく働きたいと考えている人の割合が多いと考えられます。

これらのことから、定年延長は年金制度維持の観点、個人の働ける状態の観点からも現実的な選択肢だと考えられます。

では、実際に私たちの定年は何歳になるのでしょうか?

法律改正の流れから考えてみたいと思います。

3. 定年は何歳?65歳?70歳?

私たちの定年は何歳になるのでしょうか?

2020年時点では、法律で定められている定年は60歳です。

これが、2025年までに定年は段階的に65歳まで引き上げられます。(2013年の法律改正により決定)

また、2021年4月1日には「希望する人に対する70歳までの就業機会確保」が、企業への努力義務となります。

つまり、2020年時点では60歳ですが、2025年には65歳になり、将来的には70歳、もしくは70歳以上になる可能性が十分に考えられます。

この表はこれまでの定年延長と年金受給開始年齢引き上げの推移です。

定年と年金受給開始年齢の変化厚生労働省「高齢者雇用安定法の改正」、日本年金機構「年金改正法」を元に、Route100編集部作成

※定年・年金の受給開始年齢ともに段階的に引き上げられる場合は、移行完了年を記載(途中の年においては状態が異なります)

このように、定年・年金受給開始年齢ともに相互補完する形でどちらも徐々に年齢が引き上げられています。

また、年金の受給開始年齢は2022年からは60歳〜75歳の範囲で選択することが可能になります。
(基本は65歳で、希望により変更することができますが、受給開始を早めると毎月の受給額は減額され、遅くすると受給額が増額されます)

つまり、国としてはまずは定年を65歳にすることを決めているものの、70歳・75歳も見据えていることが分かります。

これまでは定年・年金受給開始年齢ともに、20年〜30年かけて5歳の引き上げが行われています。

2020年時点で30代・40代のみなさんは、定年が70歳〜75歳になることは十分にあり得ることだと考えられます。

こうした形で定年延長が進んでいますが、実際に働き続ける環境はあるのでしょうか。

4. 高齢者の労働環境の整備

定年延長に向けて、国は厚生労働省を中心に高齢者の雇用確保の整備を進めています。

具体的には2021年4月1日施行の高年齢者雇用安定法の改正にて、以下の規制および支援が行われます。

  1. 企業における雇用の確保

  2. 高齢者の活躍を促進するために必要な支援

(1)企業における雇用の確保

まずは企業への要請として、2025年の定年65歳に向けて、すべての企業に以下いずれかの対応が義務付けられます。

  1. 65歳までの定年引き上げ

  2. 65歳までの継続雇用制度の導入

  3. 定年制の廃止

現在の法律では、事業主が労使協定で定める基準により対象者を限定できますが、その仕組みも廃止となり「すべての企業」が「すべての希望者」に対して65歳まで働く環境を提供することが義務になります。

厚生労働省によるアンケートでは、2つ目の継続雇用制度の導入を検討している企業が多い状態となっています。

高齢者雇用確保措置の内訳厚生労働省「高齢者の雇用状況の集計結果」を元に、Route100編集部作成

また、今回の法律改正では65歳までの定年引き上げですが、2021年には定年70歳が企業の努力目標として設定されるため、いずれは70歳まで引き上げられると考えられます。

(2)高齢者の活躍を促進するために必要な支援

また、企業に所属していない人や地方への幅広い対応として、以下の支援が今後具体化されていくことも予定されています

  • 事業主による雇用・就業機会の確保を促進するための支援
  • 高齢者の再就職やキャリア形成に関する支援
  • 地域における多様な雇用・就業機会の確保に関する支援

(厚生労働省「高年齢者雇用安定法の改正~70歳までの就業機会確保~」より抜粋)

寿命とともに定年が延長し、高齢者が働くことのできる環境も整備が進められる中、私たちの働き方にはどのような影響があるでしょうか?

5. 定年延長と働き方の変化

シニアの働き方の変化

ここまでの内容を簡単にまとめると、このようになります。

  • 働く期間が長くなる
  • 高齢になっても働く環境が整ってくる
  • 定年はある程度自分で決める

働く期間が長くなることを、ネガティブに捉える人もいるかもしれません。

しかし、自分の目標や夢を実現するチャンスが増えていると、ポジティブに捉えてみるとどうでしょうか?

実際に、様々な仕事を経験して、いくつものスキルを身に付けたり、自分のやりたいことにチャレンジする機会は増えていると考えられます。

内閣府は2018年の年次経済財政報告「人生100年時代の人材と働き方」の中で、「平均寿命が延伸する中で、長く自分にあった仕事を続けていくためには」として次のように述べています。

  1. 希望する人が、能力を十分に発揮して働ける環境を整備する

  2. 技術進歩に合わせてスキルアップを図ることが必要

(1)希望する人が、能力を 十分に発揮して働ける環境を整備する

報告書では「女性・高齢者の活躍に向けて必要な制度」の整備に加えて、「フリーランサーに関する制度上の整備」についても言及しています。

また「日本的雇用慣行はどこまで変わったか」として、日本は雇用の流動性が高まっている可能性があるとしています。

一方で先進国と比較するとまだ流動性が低いとし、今後より多様な働き方を推進していくと述べています

(2)技術進歩に合わせてスキルアップを図ることが必要

また、同じ報告書の中で、長く働く中で「人生 100年時代・技術革新に対応したスキルの育成が重要」としています

企業のIT活用が進む中、就労の機会を得るためにはITスキルが必要になっています。

また、ITスキルに限らず、就労と学び直しを繰り返すことによってスキルを身に付けることが求められています。

このように働き方は変化していきますが、最終的に定年を決める上では老後資金の確保が欠かせません。

6. 定年年齢を決めるための老後資金の確保

定年の年齢、年金の受給開始年齢、老後のライススタイル、老後資金の確保、これらは相互に関係しています。

そのため、自分の定年年齢は総合的に考えて決める必要があります。

例えば、以下のように考えている場合に、それぞれどのような備えが必要でしょうか?

  • Aさん:60歳で早期退職して、その後は大好きな旅行をしたり悠々自適な暮らしがしたい
  • Bさん:65歳で定年退職して、その後は田舎で静かに暮らしたい
  • Cさん:75歳まで元気に働いて、その後も趣味や余暇を思いっきり楽しみたい

Aさんは早期退職するので、年金の月額支給額が減額されます。

その上である程度お金を使う暮らしがしたいと考えていますので、まとまった老後資金を蓄えておく必要があります。

Bさんは定年後の生活コストが抑えられるので、ある程度の老後資金があれば生活に困ることはないかもしれません。

Cさんは長く働きたいと考えていますので、まずは長く働くためのキャリアプランを考え、スキルの研鑽を行っていく必要がありそうです。

また、病気や怪我で長く働くことができなくなるリスクがありますので、老後資金についても考えておくことが大切です。

まだ先のことだと考えている人も多いと思いますが、備えは早く行うに越したことはありません。

「人生100年時代」における働き方と定年年齢・老後資金についても考えておきましょう。

必要な老後資金はいくら?人生設計で考える自分の人生100年!

また、「定年までにいくら老後資金が必要か知りたい」「定年と年金受給をどう考えたらいいか分からない」「定年と老後資金について相談したい」という方は、プロのアドバイザーに相談してみてはいかがでしょうか。

相談したからといって、必ずしも申し込みなどを行う必要はありません。
まずは気軽に相談してみましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
この記事では以下のことをお伝えしてきました。

  • 定年の最低年齢は国が法律で定めており、その年齢は引き上げられている
  • 年金制度維持のために、定年年齢と年金受給開始年齢が揃って引き上げられている
  • 今後、定年が一般に70歳以上になる可能性がある
  • 高齢者が働ける環境は整備が進んでいる
  • 「人生100年時代」における自分の定年年齢と働き方を考える必要がある
  • 定年年齢は老後資金や老後のライフスタイルとセットが考える必要がある

「あなたらしい人生100年」にしていくために、ぜひ働き方や定年年齢・老後資金について考えてみましょう。


 

※本ページに記載されている内容は2020年12月1日時点のものです
※記載内容に誤りがある場合、ご意見がある方はこちらからお問い合わせください

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