【相続相談事例】相続税は意外と高くない?一般的な家庭での相続模様を見てみよう

この記事をご覧になっている皆さんのご家族は、相続対策を行なっていますか?

現在、いわゆる節税本などが数多く出版され、相続に関する情報は巷にあふれています。

ただ、実際に自分で進めようとしたときに、何から手をつけていいかわからないといった場合も多いでしょう。

そもそも自分が相続税の対象になるのか、相続税対策を行った方がいいのか、という点も判断が難しい場合があると思います。

そのようなときには税理士やFPなどのアドバイザーに相談してみるのも一つの手段です。

この記事では、相続対策の一般的な事例を、具体的な数値を入れてご紹介します。

ぜひ、相続について考える際の参考にしてみてください。

1. 相続のご相談内容

下記のようなご相談をいただきました。

ご相談内容

相続に関する情報を雑誌やテレビ、インターネットなどで見かけることが多いが、自分が相続対策をすべきかどうかがわからない。

税理士や金融機関の営業担当者との付き合いもないので、アドバイスが欲しい。

お客様のプロフィールや財産の状況は次の通りです。

プロフィール

・性別:男性

・年齢:75歳

・職業:年金生活者(現役時代は上場メーカーで部長職を務めた)

・居住地:東京都

・家族構成:

 -妻は、5年前に死別。

 -長男は、東京都在住、53歳、既婚。相談者の妻(長男にとっての母)が亡くなってからは相談者(長男にとっての父)と同居している。

 -次男は、大阪府在住、51歳、既婚。

 -長女は、神奈川県在住、49歳、既婚。

・財産の概要:

財産の種類 内容 価格 左記金額の評価方法
土地 自宅の敷地
大田区所在の宅地105㎡(大森駅から徒歩20分、相続税路線価@400千円/㎡)
4,200万円 相続税路線価
建物 自宅
木造1戸建て
500万円 固定資産税評価額
預金   1,000万円 相談日の残高
有価証券 上場有価証券を10銘柄保有 1,500万円 相談日の時価
合計 7,200万円  
※借入金はない。
 

相談者の思い

自宅は、相談者の妻が亡くなってから、寂しくないように同居してくれた長男に残したい。
次男、長女には金銭や有価証券を残したい。

2. 今回の相続相談の特徴

相続相談事例(1)財産額はおおむね『平均的』な水準

今回のケースでは、都内に一戸建てを所有する元サラリーマンのケースを取り上げています。

遺産の額は7,200万円、相続人は3名ですので相続人一人あたりでは2,400万円です。

この金額は民間企業の調査による『平均』におおむね近い水準に設定しています。

三菱UFJ信託銀行が2018年に行った調査「遺言と相続に関する実態調査」によれば、相続に関して以下の結果が分かっています。

  • 相続を経験した相続人の平均相続金額は2,114万円。男女別では、男性は2,885万円、女性は1,301万円(相続人あたり)。

また、三菱UFJフィナンシャルグループのMUFG資産形成研究所が2020年に行った調査「退職前後世代が経験した資産承継に関する実態調査」では、以下のように報告されています。

  • 亡くなった親の遺産総額は、平均値は6,140万円、中央値は3,450万円。

上記の調査結果は、調査対象に「相続を経験した人のうち、金融機関からのアンケートに回答した人」といった偏りがあるため、その点については注意してみることが必要です。

このくらいの財産規模の場合、税理士との付き合いもなく、金融機関からは営業担当者をつけられていないため、相談相手がいないことが多いです。

 

(2)財産のうち半分以上が不動産

金額ベースでみたときには、遺産総額7,200万円に対して自宅(土地・建物)の合計で4,700万円、その割合は58%になります。

このような、不動産中心の財産構成のご家庭は非常に多いです。

相続人は子供が3名ですので、自宅を長男に残そうとすると、財産の半分以上を長男に渡すことになります。

そのため、そのままでは金額ベースでの平等を図ることはできなさそうです。

 

3. 相続に向けた検討事項

アドバイザーからの提案

このケースでは上記のような特徴を踏まえ、次のように検討をしていきましょう。

 

(1)相続税は課税されるか?

何はともあれ、まずは、相続税額を試算してみましょう。

財産構成は、土地、建物、預金、上場有価証券です。

それぞれの財産の評価方法をざっくりと表現すると以下のようになります。

財産の種類 評価方法
土地 路線価がある地域の場合:路線価方式(路線価が基準)
それ以外の場合:倍率方式(固定資産税評価額が基準)
建物 固定資産税評価額
預金 相続発生時の残高
上場有価証券 相続発生時の終値
(または、過去3か月間の終値の月中平均のうちいずれか低い金額)
  • 土地

土地は、所在する場所によって評価方法が変わります。

今回は都内の駅前であり、路線価が設定されていますので、その金額を基礎に評価をします(相続税路線価@400千円/㎡×105㎡=4,200万円)。

現行税制では、「小規模宅地等の評価減の特例」という評価方法の特例がありますので、上記の計算結果にそれを加味することが必要です(詳細は後述します)。

  • 建物

建物については、固定資産税評価額をそのまま使用して大丈夫です。

固定資産税評価額は、固定資産税課税明細書に記載されています。

(固定資産税課税明細書は、自治体によってまちまちですが、一般的には毎年4月~6月くらいに郵送で届きます。)

  • 預金、上場有価証券

預金は相続発生時の残高、上場有価証券は相続発生時の終値を使用します。

上場有価証券のように細かいルールがあるものもありますが、シミュレーションをするだけであれば現時点の時価を使用すれば差し支えないでしょう。

  • 小規模宅地等の評価減の特例

小規模宅地等の評価減の特例とは、被相続人(本ケースの場合は相談者)が亡くなった時に、居住用として使用していた宅地などを、一定の親族が相続した場合等に活用できる評価方法の特例です。

小規模宅地等の評価減の特例は、宅地がどのように利用されていたかに応じて適用形態はさまざまです。

本ケースでは、相談者が所有・居住している宅地を、同居している長男が相続していますので、「特定居住用宅地等」という枠で適用することができます(細かい適用条件は別の記事でまとめたいと思います)。

特定居住用宅地等という枠に当てはまった場合、宅地の評価は80%減となります(上限は330㎡まで)。

勘違いしやすいのが、20%減ではなく、80%減という点です。

ざっくりいえば、自宅の土地は2割で評価することが可能ということです。

相続開始の直前における宅地等の利用区分 要件 限度面積 減額される割合
被相続人等の居住用に供されていた宅地等 特定居住用宅地等 330㎡ 80%
被相続人等の事業の用に供されていた宅地等 貸付事業以外の事業用の宅地等 特定事業用宅地等 400㎡ 80%
貸付事業用
の宅地等
一定の法人に貸し付けられ、その法人の事業用の宅地等(貸付事業以外) 特定同族会社事業用宅地等 400㎡ 80%
貸付事業用宅地等 200㎡ 50%
一定の法人に貸し付けられ、その法人の貸付事業用の宅地等 貸付事業用宅地等 200㎡ 50%
被相続人等の貸付事業用の宅地等 貸付事業用宅地等 200㎡ 50%

(出典:国税庁「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」)

 

  • 相続税評価額のまとめ

上記の評価方法を踏まえて、相続税評価額を計算すると以下のようになります。

財産の種類 相続税評価額 左記金額の評価方法
土地 4,200万円 相続税路線価@400千円/㎡×地積105㎡
小規模宅地の評価減 △3,360万円 土地の評価額4,200万円×減額割合80%
建物 500万円 固定資産税評価額
現預金 1,000万円 相談日の残高
有価証券 1,500万円 相談日の時価
合計 3,840万円  

小規模宅地の評価減の特例のおかげで、かなり評価額が減少していることが分かります。

それではこのケースでは相続税額はいくらになるでしょうか?

相続税の対象となる課税遺産総額は、以下の計算式により求めます。

課税遺産総額 = 課税価格の合計額 - 基礎控除額

上記の計算式の中にある基礎控除額は、以下の計算式で算出します。

基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

本ケースでは相続人が3名(長男、次男、次女)であるため、基礎控除額は4,800万円(3,000万円+600万円×3名)となります。

遺産の相続税評価額の合計額が3,840万円であり、基礎控除額4,800万円を下回っていますので、本ケースでは相続税が課税されないこととなります。

あくまで現行税制の下ではという前提付きではありますが、相続税の面ではとりあえずは安心して良さそうですね。

ただ、税制改正によって大きく税制が変化する可能性はありますので、常に税制改正をウォッチすることは必要だといえます。

 

(2)円滑に分割することはできるか?

前述の通り、金額ベースでみたときには、遺産総額7,200万円に対して自宅(土地・建物)の合計で4,700万円ですので、その割合は半分以上になります。

自宅を長男に残し、その他を次男・長女で均等に分けようとすると以下のような分割のバランスとなります。

財産の種類 遺産金額 相続人
長男 次男 長女
土地 4,200万円 4,200万円    
建物 500万円 500万円    
現預金 1,000万円   500万円 500万円
有価証券 1,500万円   750万円 750万円
合計 7,200万円 4,700万円 1,250万円 1,250万円

金額だけをみると長男ばかりが相続して不平等のようにみえるかもしれませんが、例えば、長男は相談者の世話をよくみてくれたといった個別の事情がある場合には、その限りではありません。

(究極の平等を目指すのであれば、遺産を全て売却・現金化して金銭で均等に分割・・・となりますが、長男の住まいが無くなるという点で現実的ではありませんし、小規模宅地の評価減を適用できないため税金的にも不利になります)

どのような分割方法がベストなのか、については答えはありません。

一番大切なのは、家族ごとによく話し合って、相続によって家族が不仲になってしまうのを避けることです。

まとめ

本稿では、一般的な家庭での相続模様を確認してきました。

そもそも自分が相続税の対象になるのか、相続税対策を行った方がいいのか、という点も判断ができずモヤモヤしている方も多いと思います。

そういった方は、ぜひ一度、税理士や相続対応可能なIFAなどのアドバイザーに相談してみましょう。

【相続失敗事例】夫の相続税の税務調査で妻名義の財産の申告漏れが指摘!?|名義財産には注意が必要

現在、相続税の節税に関する本や雑誌など様々な情報が巷にあふれています。

専門家に相談する前に、とりあえず自分で出来る範囲で相続対策をやってみるケースもあると思います。

しかしながら、相続対策は素人考えで進めると、後から手痛いしっぺ返しを食らう場合もあります。

この記事では、そのような相続の失敗事例をご紹介します。

1. 相続事例内容

相続

 

本事例でのお客様のプロフィールや財産の状況は次の通りです。

プロフィール

・家族構成:

 -夫:被相続人。2019年に享年87歳で死去。現役時代は歯科医として開業医をしていた。

 -妻:83歳、東京都在住。学卒後すぐに夫と結婚、その後ずっと専業主婦であり勤務経験なし。

 -長男:56歳、東京都在住、既婚。

 -長女:54歳、埼玉県在住、既婚。

 

・被相続人(夫)の財産構成(相続発生時):

財産の種類 内容 価格
土地 ・自宅土地(東京都)
・賃貸アパート土地(2棟、兵庫県・千葉県)
3億2000万円
建物 ・自宅建物(東京都)
・賃貸アパート建物(2棟、兵庫県・千葉県)
1億1000万円
現預金 銀行預金のみ 

5000万円

有価証券 上場有価証券を20銘柄保有 7000万円
合計 5億5000万円
 
・相続人(妻)の財産構成(相続発生時):
財産の種類 内容 価格
現預金 銀行預金のみ

5000万円

合計 5000万円

2. 相続税の申告と税務調査での指摘事項

本ケースでは、すでに相続が発生し、その後、当該相続に関する税務調査が行われています。

相続税の申告と相続税の税務調査に関して、下記に整理していきます。

 

(1)相続発生(2019年2月)

2019年2月、ゲートボール中に突然倒れ、救急搬送されるも救命の甲斐なく、搬送先の病院で亡くなりました。

持病はなく、突然のことでした。

生前の相続対策については、知り合いから聞いた知識を元に我流で進めていたようでした。

相続税は、相続発生から10か月以内に申告・納税が必要です。

10か月という時間は、長いようで非常に短いです。

葬儀を終え、バタバタと日々を過ごすうちに、申告期限が到来します。

 

(2)相続税の申告(2019年12月)

相続税の申告期限である2019年12月、なんとか相続税の申告が完了しました。

財産の種類 相続税評価額
土地 3億2000万円
小規模宅地の評価減 △1億円
建物 1億1000万円
現預金 5000万円
有価証券 7000万円
相続税評価額 合計 4億5000万円
上記に対する相続税 合計 5493万円

※配偶者の税額軽減は法定相続分まで活用、その他計算条件等は割愛します。

 

突然の相続発生でしたが、「自宅は妻、兵庫県の賃貸アパートは長男へ、千葉県の賃貸アパートは長女へ、その他の財産は均等に分ける」という遺言を残していたため、相続人同士で問題が発生することはありませんでした。

典型的な「金持ち喧嘩せず」パターンで、問題なく相続手続きが完了、そのようにみえました。

 

(3)税務調査(2021年8月)

相続発生から2年半が経過した頃、税務署から1本の電話がありました。

「税務調査に伺いたいのですが・・・・」

税務調査の事前通知でした。

 

それから1週間後、スーツを着た2名の税務調査員が自宅を訪ねてきました。

税務調査員は、2日にわたって自宅を訪ね、さまざまな質問をしていきました。

 

その中の1つが、下記の質問です。

  • 学卒後、専業主婦である妻の通帳に5000万円もの預金がある。妻の親から相続したものでもないようだが、この預金の出所はどこか?

対応をしていた妻は、ありのままに下記のように答えました。

  • 夫から毎月50万円を生活費として渡され「残った部分はあげる」と言われていたのでそれを貯めていたのが大部分であり、それ以外の一部は妻の親から贈与を受けたもの。

これを受けて、税務調査官は下記のように判断し、相続税の追徴課税を課しました。

  • 妻の預金口座にある預金のうち、生活費の残りの部分を貯めた4000万円は実質的には夫の財産、つまり名義財産(名義預金)であり、夫の相続税の申告漏れである。

この結果、追加で約600万円もの相続税が発生することとなりました。

3. どうすれば名義財産にならなかったのか?

対応策

 

このケースでは、夫から妻に毎月多めの生活費を渡し、夫の財産の圧縮を図っていましたが、残りの貯めていた部分について、実質は夫の財産=名義財産として相続税が課税されてしまいました。

それでは、どのようにすれば名義財産にならなかったのでしょうか?

 

(1)生活費として使いきれば、名義財産にならなかった

夫から生活費としてもらっている金額を、もらう都度使い切ってしまえば、当然財産として残りませんので、名義財産に該当するか否かという議論は出てきません。

また、民法には、直系血族の扶養の義務が規定されており、生活費を負担することは当然の義務とされているため、贈与税が課税されることもありません。

 

(2)贈与契約書を作成していれば、名義財産にならなかった

妻の名義で貯めようとする金額について、渡す都度にしっかりと贈与契約書を作成していれば、その時点で妻の財産となりますので、実質的には夫の財産=名義財産であると判断されるリスクは減少させることができます。

また、毎年の贈与の金額を、贈与税の非課税限度額である110万円以下にすることで、贈与税もかかりません。

 

贈与として認められるためには、「しっかり贈与契約書を作成する」などいくつかのポイントがあります。

下記の記事にまとめていますので、ぜひあわせてご確認ください。

贈与税を計算する 贈与税とは?いつ発生するか、贈与が認められないケースと防衛策

 

まとめ

本稿では、我流で進めていた相続対策が税務調査で認められず、追徴課税を受けてしまったケースを確認してきました。

どのような相続対策をすればいいのか、自分がいま行っている相続対策が正しいのか不安になる方も多いと思います。

そういった方は、ぜひ一度、税理士や相続対応可能なIFAなどのアドバイザーに相談してみましょう。

前年同期比2倍!米国で主流の独立系ファイナンシャル・アドバイザー『IFA』の最新推移

投資の相談先として思い浮かぶ証券会社の営業マン「証券外務員」。

その人数は横ばいですが、ここ数年米国で主流となっているIFAが増えています。

IFAは、Independent Financial Advisor の略で、証券外務員資格を持つ独立系ファイナンシャル・アドバイザーです。

金融商品仲介業者として内閣総理大臣の登録を受けたIFAは、特定の証券会社に所属しない分、商品の縛りや転勤などもなく、楽天証券やSBI証券などと業務委託契約をし、人によっては保険や相続、不動産、M&Aなど多岐に渡る支援をされています。

そして、半年毎に日本証券業協会「協会員の従業員数等」より最新データが確認できますが、増え方が一段と高まっています。

中立の立場からアドバイスがもらえることが特徴のIFAの最新推移を確認してみましょう。

1. 最新のIFA数の推移

金融商品仲介業者の登録外部員数の半年前比較
年月 登録人数 増減数 増加
2020年12月 4,264人 +228 106%
2021年6月 4,738人 +474 111%

日本証券業協会「金融商品仲介業者の登録外務員数の推移」を元にRoute100編集部制作

IFAは、前回発表(20年12月末時点)の4,264人から+474人の4,734人に増えております。

10年前の2011年末時点で、2422人でしたので、約2倍に増えております。

また、前年12月から翌年6月の半年間の前年同期比較をすると、前回19年12月から20年6月に+202人でしたが、直近の20年12月から21年6月には+474人と前年同期比233%増えており、増え方も変わってきております。

金融商品仲介業者の登録外部員数の半年前比較
対象 増減数 増加率 前年同期比
19年12月→20年6月 +202人 105% 115%
20年12月→21年6月 +474人 111% 233%

日本証券業協会「金融商品仲介業者の登録外務員数の推移」を元にRoute100編集部制作

2. 今後もIFAは増えるのか

以前の証券会社の登録外務員の推移や市場環境の変化、IFAの年間推移についてご紹介しておりますのでこちらもどうぞ。

証券会社とIFA:金融商品仲介業の登録外務員数の関係を考える

以下の金融庁の調査では、IFAの前職が証券会社とする方が多いようです。

前職 人数 比率
証券会社 238 65.4%
保険会社 44 12.1%
銀行 28 7.7%
その他 54 14.8%

金融庁「市場ワーキング・グループ(第22回)事務局説明資料」より

また、ネット証券会社の口座開設が資産形成層中心に今後も増えるならば、そのパートナーであるIFAへのニーズも高まってくると思われます。

担い手とIFAへのニーズの双方は相互に作用するため、引き続きIFAの担い手が証券会社から転身してくる可能性があります。

業界問わず働き方の多様化、個人への最適なサービスが増えていることを考えると、商品の縛りがなく、転勤もなく長期に伴走できるIFAという存在は米国と同じように主流となっていくことは十分考えられます。

IFAについて詳しく知りたい方はこちらの記事も合わせてご覧ください。

資産運用の中立的なアドバイスがもらえるIFAとは?他の投資方法との違いも解説

 

最後に

多くのIFAは初回相談を無料で受け付けています。

資産運用やライフプランにお悩みの方、運用しているが上手くいっておらずセカンドオピニオンが欲しい方、老後資金や資産形成が必要だと思いながらもなかなか始められない方は、1度相談してみてはいかがでしょうか。

副業の赤字で、本業である給与の源泉所得税の還付を受けられるか?|所得区分を整理

近年、多様な働き方が認められ、副業も珍しい存在ではなくなってきました。

厚生労働省の調査では、副業をしている人の割合は全体の9.7%に上ります(出典:厚生労働省「令和2年8月19日 副業・兼業に係る実態把握の内容等について」)。

副業によって、収入増加や自己実現を果たす人がいる一方で、こんな話が聞こえてくることもあります。

「副業で大きな赤字が出たことにして、本業の給与の黒字と相殺することで、源泉徴収されていた所得税が還付された」。

また、巷には、上記のスキームを用いて「所得税をゼロにしよう」という論調の本も出ています。

実際に事業を行っており、それにより赤字が出てしまった場合には、給与所得と相殺(損益通算)することができます

しかし、架空の経費を計上することは脱税ですので、絶対に行ってはいけません

実際に過去、顧客の会社員に対して、副業の事業損失が出たという虚偽の確定申告を作成させ、報酬を収受していた経営コンサルティング会社(東京都新宿区)代表者の男性が、所得税法違反の容疑で逮捕されています。

本稿では、所得区分の考え方を整理して、どのような場合には副業の赤字と本業の給与を相殺することができるのかを考えてみましょう。

1. 所得税の課税方法

所得税の課税方法まず、所得税の課税方法の基本的な事項について確認していきましょう。

ほとんどの人に身近な存在といえる所得税ですが、その仕組みはとても複雑です。

給与所得、不動産所得、譲渡所得、事業所得、雑所得・・・所得はその性質に応じて10種類に区分されています。

どんな場合にどの所得が発生するかをしっかり理解している人はごく少数で、金融機関に勤めるお金のプロであっても細かい分類までは分かっていないというケースも多いです。

本章では、多くの人の基本となる給与所得と、副業の場面で登場する事業所得と雑所得に的を絞って整理していきます。

 

1)給与所得:多くの人の基本となる所得

給与所得とは、勤務先との雇用契約等のもとに提供される労働の対価として受け取る給与、賞与、手当、現物給与などが対象となります。

 

給与所得の金額は、次の式により計算します。

給与所得の金額 = 収入金額(源泉徴収前の金額)- 給与所得控除額
  • 給与所得控除額

給与所得は、事業所得のように経費を控除することができません。

理由は、給与所得は個別的に必要経費を認定することが困難であるとされているから、とされています。

必要経費を控除できない代わりに、給与収入をもとに計算した一定の金額を概算経費として、給与収入から差し引くものが、給与所得控除です。

給与所得控除は、以下の計算式によって算出します。

給与等の収入金額
(給与所得の源泉徴収票の支払金額)
給与所得控除額
1,625,000円まで 550,000円
1,625,001円から1,800,000円まで 収入金額×40%-100,000円
1,800,001円から3,600,000円まで 収入金額×30%+80,000円
3,600,001円から6,600,000円まで 収入金額×20%+440,000円
6,600,001円から8,500,000円まで 収入金額×10%+1,100,000円
8,500,001円以上 1,950,000円(上限)

上記の図によれば、給与収入が8,500,001円以上である場合には、1,950,000円の給与所得控除額がひかれることなります。

概算経費ですので、実際に1,950,000円を支出していなくても、給与所得の計算上当然に引かれることになります。

なお、給与所得2,000万円以下で他の所得がない場合には、給与から所得税が源泉徴収により徴収され、年末調整により調整されて最終的な税額が確定し、確定申告は不要となります。

一定の金額以下の給与所得者は、控除額は自動的に概算で決定され、確定申告の手続きは基本的に不要ということから、手続きの容易さという点では優遇されていることが分かります。

 

2)事業所得:該当すると税制上のメリットが多数

副業による収入は、事業所得と雑所得のいずれかに該当する場合が多いといえます。

まず、事業所得から確認していきましょう。

事業所得とは、製造業、卸売業、小売業などの各種の事業から生じる所得とされています。

 

事業所得の金額は、次の式により計算します。

事業所得の金額 = 総収入金額 - 必要経費(-青色申告特別控除額)
  • 必要経費

必要経費とは、収入を得るために直接必要な売上原価や給与・賃金などの販管費などの費用のことをいいます。

具体的には、売上原価(商品の仕入れ代金)、販売費用、給与、減価償却費、広告宣伝費、支払家賃、水道光熱費、固定資産税、事業税などが算入されます。

ポイントは、直接必要な経費のみを必要経費に算入することができるという点です。

いわゆる家事費(≒生活費)等は含まれませんので注意が必要です。

 

 

事業所得に該当した場合のメリットのうち一部をご紹介すると、以下のようなものがあります。

  • 青色申告特別控除額を控除することができる
  • 損益通算ができる

これらのメリットは、次に説明する雑所得では享受することができないものです。

ひとつずつ内容を説明していきましょう。

 

  • 青色申告特別控除額を控除することができる

青色申告特別控除額は、上記の計算式の通り、事業所得を計算する上で控除することができるものです。

適用要件には、「青色申告を行う」「複式簿記により記帳する」「電子申告等を行う」などといったものがあります。

控除できる金額は、上記の要件をどの程度満たしているかに応じて、「10万円」「55万円」「65万円」から、いずれかの金額が適用されます。

 

  • 損益通算ができる

本稿で紹介している給与所得、事業所得、雑所得の3つの所得区分は、いずれも、複数の所得をまとめて課税する総合課税に該当します(このほか、不動産所得、一時所得なども総合課税に含まれますが、別の記事で整理します)。

複数の所得の金額をまとめるときに、ある所得区分では所得(黒字)が出ており、他のある所得区分では損失(赤字)が出ているといった場合に、通算(相殺)する仕組みのことを損益通算といいます。

赤字がでていれば、なにがなんでも損益通算することができるというわけではありません。

損益通算することができるのは、不動産所得、事業所得、山林所得、譲渡所得の4区分に限られています(余談ですがこの4区分を、ファイナンシャル・プランナーの試験などでは「フ・ジ・サン・ジョウ(富士山上)」と覚えます)。

つまり、事業所得に該当しそれが赤字であれば、給与所得と損益通算することができます。

そして、それによって給与から源泉徴収されている所得税を還付することが出来る場合があります。

 

3)雑所得:「その他」の所得区分

次に、副業収入が該当する可能性が高いもう一つの選択肢である雑所得についてご説明します。

雑所得とは、簡単に言ってしまえば、その他の所得を示します。

つまり、別に規定されている「利子所得」「配当所得」「不動産所得」「事業所得」「給与所得」「退職所得」「山林所得」「譲渡所得」「一時所得」のいずれにも該当しない所得です。

例えば、国税庁のホームページでは、公的年金の収入、原稿料、シェアリングエコノミーに係る所得が列挙されています。

シェアリングエコノミーとは、インターネット上のプラットフォームを介して、個人間で遊休状態の物品・場所・スキルなどを貸し借りする仕組みを指します。

そして、これにはいわゆるギグエコノミー(インターネットを介して単発の仕事の受注、発注を行う市場)の概念を含まれるものとされています。

そのため、シェアリングエコノミーに係る所得とは、民泊、単発の業務委託に係る報酬などが該当すると解されています。

国税庁は「副業」と示していますが、「副業とはなにか?」「どこまでが副業で、どこからが本業なのか?」といった具体的な判断基準についてはについては示されていません。

この点については、次章で検討してみましょう。

 

 

雑所得の金額は、次の式により計算します。

雑所得の金額(公的年金以外) = 総収入金額 - 必要経費

事業所得の項で確認した通り、ここでのポイントは「雑所得の場合には、損益通算と青色申告特別控除額の適用ができない」ということです。

 

本章では、多くの人の基本となる給与所得と、副業の場面で登場する事業所得と雑所得について確認してきました。

事業所得と雑所得にはどのような線引きがあるのかについて、次章で確認していきましょう。

 

2. 実例から見る事業所得と雑所得の境界線

先々の老後資金計画

何をもって事業所得とするかについては、困ったことに税法上明確な線引きはされておらず、過去、多くの争いとなりました。

事業所得の該当性、つまり事業性については、下記の要素が判定の基準となると、判例において示されています。

  • 自己の計算、危険において独立して営まれること
  • 営利性、有償性の有無
  • 継続性、反復性の有無
  • 事業としての社会的客観性

それでは、上記を参考にして、実際の事件を確認してみましょう。

 

1)会社役員が個人で画廊を経営、赤字を役員報酬と損益通算しようとした事例【事業所得には認められず雑所得に】

  • 概要

会社役員が、個人で画廊を経営し、その赤字を事業所得のマイナスとして、給与所得(役員報酬)と損益通算をしようとしたが、課税庁に認められなかったという事例です。

この事例では、課税庁からの指摘の対象となった4年間の間に50点~60点の絵画の売買があり、毎年、約60百万円もの金額を事業損失として計上していました。

  • 問題視された点

この事例で問題視されたのは、以下のような点です。

① 画廊の機能を持つ店舗を有しておらず、役員として勤務している会社の一角に応接セットを置いているだけだった。

② 購入する絵画の選定と売却先の探索は、他人(雇用関係等なし)に任せてしまっており、本人は精神的、肉体的労力を費やしていない。

③ 絵画は、購入から売却までの期間が10日前後のものが大部分であり、購入から売却の日が同一のものもあった。

④ 広告宣伝などは行っていなかった。

⑤ 赤字の要因は、業務の開始当初に高額な絵画を購入するために借り入れた資金の支払利息。その資金で購入した絵画のほとんどは在庫になった。

⑥ それ以降は、在庫を有さず、若干の鞘を抜くだけの取引ばかりを行うようになった。

  • 上記の要件への当てはめ

上記の要件に当てはめて考えてみましょう。

このケースでは、毎年、数十件の絵画を売買しており、若干の「継続性・反復性」は認められるところでした。

しかし、他人に業務のほとんどを任せてしまっており、開始当初以外は若干の鞘を抜くだけの取引が多かったことから、「自己の計算、危険において独立して営まれている」とは認められませんでした。
また、毎期赤字であり、「営利性、有償性」はないと言わざるを得ません。
そして、広告宣伝等を実施しておらず、画廊としての設備もないことから、「事業としての社会的客観性」もないと判断されました。

結果として、事業所得ではなく、雑所得に該当するとして、損益通算は認められませんでした。

 

2)参考:脱税指南コンサルタントのケース

最後に、前文で触れた脱税を指南した事件の概要を再度確認してみましょう。

脱税指南のスキームは、「副業の赤字を、本業の給与と相殺して、給与から源泉徴収されている所得税の還付を受ける」というもので非常にシンプルでした。

ここで問題だったのは、副業が実際には存在しなかったという点です。

つまり、架空の収入、経費をでっちあげ、赤字の事業所得がある状態にして、給与所得と通算をしたというものです。

この事件は、完全な脱税であり問題外といえます。しかし、所得税の節税に関しては、対策手法が限られていることもあり、このような危険な手法の話が聞こえてくることもあります。

もし給与所得者のあなたにこのような話があっても、まずは、「美味しい話はない」ということを思い出して、判断をしてもらえればと思います。

 

まとめ

本稿では、副業の赤字で本業である給与の源泉所得税の還付を受けられるか?を確認してきました。

結論は、副業が事業所得に該当すればそれが可能な場合もある、というものでした。

副業からの所得が、事業所得に該当するか否か、という点は明確に線引きされておらず、判断が困難であるところですが、安易に考えて損益通算をするということはお勧めはしません。

副業をしている場合の税務処理などに不安がある方や相談したい方は、ぜひ一度、税理士等の専門家にご相談ください。

介護が必要となった原因の第1位は認知症。老後に向けた準備「任意後見契約」とは?

人生をHAPPYにプロデュース!あなただけのマネープランを届ける、ファイナンシャル・アドバイザーの戸松優子です。

ある程度年齢を重ねると、もしも自分が認知症になったとしたら、などとふと考えてしまう人もいるのではないでしょうか。

実は、2019(令和元)年厚生労働省 国民生活基礎調査で、現在の要介護度別にみた介護が必要となった主な原因の第1位は認知症(17.6%)でして、認知症になると困る事への対策を知っておくことはとても大事です。

現在の要介護度別にみた介護が必要となった主な原因(上位3位)※単位:%
要介護度  第1位 第2位 第3位
総数 認知症 17.6 脳血管疾患 16.1 高齢による衰弱 12.8
要支援者 関節疾患 18.9 高齢による衰弱 16.1 骨折・転倒 14.2
要支援1 関節疾患 20.3 高齢による衰弱 17.9 骨折・転倒 13.5
要支援2 関節疾患 17.5 骨折・転倒 14.9 高齢による衰弱 14.4
要介護者 認知症 24.3 脳血管疾患 19.2 骨折・転倒 12.0
要介護1 認知症 29.8 脳血管疾患 14.5 高齢による衰弱 13.7
要介護2 認知症 18.7 脳血管疾患 17.8 骨折・転倒 13.5
要介護3 認知症 27.0 脳血管疾患 24.1 骨折・転倒 12.1
要介護4 脳血管疾患 23.6 認知症 20.2 骨折・転倒 15.1
要介護5 脳血管疾患 24.7 認知症 24.0 高齢による衰弱 8.9

※参照:2019(令和元)年厚生労働省 国民生活基礎調査

 注:「現在の要介護度」とは、2019(令和元)年6月の要介護度をいう

 注:脳血管疾患(脳卒中)

というのも、私の父は71歳で要介護2と認定されました。

長生きをしていれば全ての方が認知症になるわけではないですが、人生100年時代の今だからこそ、認知症になる前に考えるべきことをファイナンシャル・アドバイザーの視点で伝えていきたいと思います。

今日は、ご自身のこれから、もしくは自身の両親や身近な人のために知っておいてもらいたい内容は、「任意後見契約」です。

1.2025年には5人に1人が認知症?そして突然やってくる

お釈迦様の教えに「生老病死」という言葉があります。

人は生まれ、老いて、病気になり死ぬ。

これが人として免れない4つの苦しみ(四苦)と言われています。

しかし、現代では「生老病死」ではなく、「生老病死」と言われています。

「介」とは、介護のことです。

私にはまだ関係がないと思ってましたが、私の父は5年前に介護認定を受けました。

当時、高校入学を控える娘と自分の業務環境を考え、同居を始めた直後のことでした。

あまりに急な出来事に驚き頭が真っ白になりました。

まさか私の父がなるわけがない!間違いだ!だって昼間はプール、ゴルフも月に何回もという生活をしていたをしていたのに冗談でしょうと。

それから、週2回父はデイケアに通い、月に1回のショートステイを利用しています。

それ以外の日は、母が父の介護をしています。

高校を卒業した娘は、東京で一人暮らしを始め、私も勤務地である仙台に住んでいるため、中々会いに行けず、心配なることも多いです。

厚生労働省の発表によると、日本人の認知症患者数は2012年時点で約462万人で、65歳以上の高齢者の約7人に1人(有病率15.0%)であったが、2025年には約5人に1人になるとの推計もあります

少子高齢化が進む日本では、認知症は身近な病気になってきています。

そして、突然その日はやってきます。

人生100年時代、認知症のリスクは避けて通れませんね。

2.認知症で困る2つのこと

ファイナンシャル・アドバイザーの視点から、認知症になることで困ることは主に2つあります。

①自分の財産が使えない

認知症になると、自身の預金口座の暗証番号が思い出せず、引き出しが出来なくなるなど自分のお金が使えない場合があります。

また、家族であっても預金を引き出せなくなるケースがあります。

認知症によって自身の口座からお金を引き出せないと、介護サービスを利用時の介護費用や家賃、生活費などの支払いが出来なくなってしまいかねません。

②不動産の管理ができない

認知症で介護施設に入居する場合、住んでいた家が不要になるという方もいますよね。

例えば持ち家で売却をしたい場合、ご本人が認知症だと契約行為が出来なくなるため、本人だけでは売ることができません

持っていても自身で管理ができないし、売れないし、と困る方が多いのが不動産です。

3.認知症になる前にやっておくべき対策が「任意後見契約」

取り組むメリットそもそも成年後見制度には、「任意後見」と「法定後見」の2つの制度があります。

いったん認知症や高次脳機能障害などにより判断能力が低下すると、財産管理や支援内容に本人の意志を反映させることが難しくなります。

例えば、訪問販売などにより、自分に不利益な契約を結んでしまう恐れもあります。

このような判断能力が不十分な方を保護・支援する制度が成年後見制度です。

ここでいう支援とは、「介護を受けるための手続き」や「預貯金やお住まいの管理」など、生活を維持して療養看護を受けるための手続きをしながら、財産管理を代わって行うことです。

任意後見も法定後見も、認知症などで本人の判断能力が不十分になった場合に、後見人にお金の管理を任せるという点は同じですが、「法定後見契約」はいくつか問題点があります

そして認知症になってしまった後は、法定後見契約しか使えません

また、必要になった際にいざ任意後見契約を活用しようと思っても、すぐに支援が開始されるとも限りません。

前もって「誰に何の支援して欲しいのか」「どんな対応をお願いしたいのか」を詳細に決めて任意後見契約を結んでおくことによって、体調が悪くなり、身の回りの管理が不自由になったとしても対応ができます。

つまり、ご本人に十分な判断能力があるうちに、判断能力が低下した場合に備えて、あらかじめご本人自らが選んだ人(任意後見人)に、代わりにしてもらいたいことを契約(任意後見契約)で決めておくのが任意後見制度でして、私はこちらをオススメします。

任意後見契約のメリット

以降でも紹介するように、支援者や支援の内容について本人の意志を最大限反映できる点が、任意後見契約の最大の特徴です。

将来、認知症になってしまうかもしれないという不安を感じている方が、将来を見越して事前に結ぶ契約です。

メリット①契約後も自由に自分のお金を使える

契約は、認知症などで判断能力がなくなった場合に備えて、あらかじめ結ばれたものです。

お金の管理を任せるのは、判断能力がなくなった時からであるため、契約を結んだ後でも、本人が認知症でなければ今まで同様、自分自身で財産管理を行うことができます。

つまり、認知症などになることなく、一生涯を終える場合、任意後見契約をしても全く関係ありません。

メリット②後見人を自分が信頼ができる人(家族)に指定できる

皆さんは自分の財産管理を任せるとしたら、誰が頭に浮かびますか。

多くの方が家族にお願いしたいと思うはずです。

任意後見契約であれば、自分が信頼できる人を指定できます

そして、契約内容も自由に決めることができます。

財産管理だけでなく、介護や生活面の支援までお願いできます。

後見人を第三者に依頼する場合は、報酬を支払うのが一般的ですが、身内である家族が後見人を引き受けた場合は、無報酬となる場合が多く費用があまりかからないという利点もあります

ただし、認知症などにより裁判所に申立て後、任意後見契約が発動すると同時に、任意後見監督人が選任され、監督人報酬が月々発生することはご留意ください。

 

法定後見制度のデメリット

先程も述べましたが、認知症になってしまったら、法定後見制度しか使えません。

法定後見の場合、後見人の候補者を申請はできますが、後見人は裁判所が選定します

選定される後見人の傾向ですが、財産の状況にもよるものの、司法書士や弁護士などの専門家が選任される場合が多いです。

つまり、任意後見だと家族に無報酬で契約することができますが、身内の方でない場合、報酬費用が高くなる場合があります

保有されている財産にもよりますが、およそ40~70万(年間)と言われています。

介護サービスを利用する場合、介護費用と後見人に支払う報酬費用の両方が発生するため、大きな負担になりえます。

また、お金の管理は後見人のため、子供や親族にとって、非常に不自由で、意思が反映されにくい制度でという懸念もあります

4.認知症になる前に

国民生活基礎調査の概況によると、2019年(令和元年)の要介護者等のいる世帯構成は、「核家族世帯」が 40.3%で最も多く、次いで「単独世帯」が 28.3%、「その他の世帯」が 18.6%となっています。

年次推移をみると、「核家族世帯」の割合は上昇傾向であり、「三世代世帯」の割合が低下しており、一昔前とは介護環境も大きく変わっています

人生100年時代となった今、認知症問題は避けて通れません。

報酬面だけではなく、判断能力が落ちた場合にも、希望する暮らしがしたいなら、事前に任意後見契約を結んでおくことをオススメします。

認知症になる前だからこそできる対策が任意後見契約です。

短期の資産運用だけでなく、人生100年時代に向けたライフプランニング含め私たちファイナンシャル・アドバイザーがお手伝いします。

お気軽にご相談ください。

S&P500への投資は最適?20年以上の長期運用なら損失したことはないという事実

こんにちは、私たちIFA法人バリューアドバイザーズは「安心と豊かさをお届けする」生涯の資産運用パートナーです。

米国株への投資に興味がある方であれば、「S&P500米国の代表的な株価指数のこと)」は、ニュースや新聞で1度は聞いたことがあるのではないでしょうか。

最近S&P500での運用について、弊社にも問い合わせが増えています。

そこで、S&Pでの資産運用が本当にオススメできるのか検証してみたいと思います。

結論としては、年代別に見ますと、「20年以上の長期運用なら損失したことはない」という事実のみです。

つまり、これだけでは資産運用が成功するとは断言できないということです。

詳しく見てみましょう。

1.S&P500とは

先々の老後資金計画S&P500とは、S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスLLCが公表している米国の代表的な株価指数の1つです。

※S&Pは 、「Standard & Poor’s」の略称で、S&P500を算出している会社の旧社名、「スタンダード&プアーズ・レーティング・サービシズ」にちなんでいます。

ニューヨーク証券取引所やNASDAQ等に上場している企業から代表的な500銘柄を時価総額で加重平均し、指数化しています。

そのため、S&P500に連動するファンドに投資すれば、アメリカの主要企業500社へ投資しているのと同じ効果が期待できると言われています。

S&P500指数は米国株式市場の時価総額の約80%を網羅しているため、米国の相場全体の動向を知る上でも役立つ指標です。

S&Pのなりたち

S&P500の起源は1923年で、スタンダード&プアーズ社の前身となる企業が26業種・233の企業を含む複数の指数を開発したのが始まりでした。

今の形になったのは、1957年です。

つまり、60年以上にわたり銘柄を組み組み替えながら市場を反映してきた指数が、S&P500になります。

S&P500の銘柄選定のやり方

S&P500の組入銘柄は、様々な条件によって選定されます。

選考条件には、時価総額や流動性、浮動株の比率や、業績などが含まれており、条件を満たす企業の中からセクターのバランスを加味したうえで決定されます。

S&P500 構成上位10銘柄

順位 銘柄名 ティッカー
1 アップル AAPL
2 マイクロソフト MSFT
3 アマゾン・ドット・コム AMZN
4 フェイスブック FB
5 アルファベット C GOOG
6 アルファベット A GOOGL
7 バークシャー・ハサウェイ BRK
8 JPモルガン・チェース・アンド・カンパニー JPM
9 テスラ TSLA
10 ジョンソン・エンド・ジョンソン JNJ

※2021年5月末時点

このようにS&P500は、時価総額順に組入比率が決まるため、現在勢いのあるIT企業が上位を占めているのが分かります。

2.S&P500の年代別トータルリターン

まず、S&P500を年代別にトータルリターンを見ていきたいと思います。

※毎月の平均終値をベースにトータルリターンを算出

S&P500
(作成)https://www.multpl.com/inflation-adjusted-s-p-500

  トータルリターン 備考
1900年代 +58.28% 1900年~1909年の年間騰落率を合計
1910年代 -5.53% 1910年~1919年の年間騰落率を合計
1920年代 +134.76% 1920年~1929年の年間騰落率を合計
1930年代 -13.94% 1930年~1939年の年間騰落率を合計
1940年代 +32.15 1940年~1949年の年間騰落率を合計
1950年代 +147.59% 1950年~1959年の年間騰落率を合計
1960年代 +65.97% 1960年~1969年の年間騰落率を合計
1970年代 +11.92% 1970年~1979年の年間騰落率を合計
1980年代 +117.81% 1980年~1989年の年間騰落率を合計
1990年代 +166.46% 1990年~1999年の年間騰落率を合計
2000年代 -18.27% 2000年~2009年の年間騰落率を合計
2010年代 +122.87% 2010年~2019年の年間騰落率を合計

確かに1920年代、1950年代、1980年代、1990年代、2010年代は10年間でのトータルリターンは+100%を超えています。

しかし、年代によって予想以上にトータルリターンが大きく異なることがわかります。

3.S&P500での資産運用は本当にオススメなのか

では、S&P500での運用は誰にとっても最適なのでしょうか。

考えてもらいたいのは、ご自身のライフプランです。

学費:10年後に子供の学費(大学進学)を工面したい
老後資金:20年後の豊かな老後生活のために運用をしたい
事業資金:経営がうまくいかない時があれば一部資金を取り崩せるようにしたい

このように、資産運用の目的は人によって様々です。

それぞれの目的を実現するために資産運用を行うことは、資産運用を成功させる上で大切です。

一方で、選んだ商品や銘柄がどのくらい変動するのか、このブレ幅のことを金融の世界では「リスク」と呼びます。

1900年から2019年までで一年間の最大上昇率は+48.34%で、一年間の最大下落率は-48.06%です。

ちなみに、リーマンショックが起こった2009年の年間騰落率は-37.22%、ITバブル崩壊後(2001年~2003年)の合計騰落率は-42.37%、、世界恐慌後(1930年~1932年)の合計騰落率は-87.12%でした。

昨年はコロナウィルス感染拡大で短期的に大きな下落局面がありました。

運用が上手くいっている時は問題ないですが、下がり始めると不安になるものです。

20~30年の長期投資前提の方にとっては、これまでの傾向からして向いている運用方法だと考えられます。

違う方にとっては、自身のリスク許容度に合わせて判断していくか、1人1人にあったサポートしてくれるファイナンシャル・アドバイザーに相談をしてみるのも良いかと思います。

是非気軽にご相談ください。

2023年末でジュニアNISA廃止!今からでもやるべき理由とは?

こんにちは、私たちIFA法人バリューアドバイザーズは「安心と豊かさをお届けする」生涯の資産運用パートナーです。

2016年1月からスタートしたジュニアNISA(ニーサ)、皆さんご存知でしょうか?

1年間に投資で得た利益のうち最大で80万円が非課税になるお得な制度ですが、実は2023年末で廃止になることが決まりました。

しかしながら、これまでは高校3年の12月末(正確には3月31日時点で18歳である年の前年12月31日)までであった払い出し制限が2024年以降は解除されるとあって、「使いやすくなるのでは」と注目を浴びています。

今からでもやるべき理由を踏まえ、検討してみてはいかがでしょうか。

制度について、廃止の背景、今からでもやるべき理由についてそれぞれお伝えしていきます。

1. ジュニアNISA(未成年者少額投資非課税制度)とは

ジュニアNISA(ニーサ)は、2016年に始まった、子どもの将来に向けた資産形成をサポートするために導入された非課税制度です。

配当や売却益が非課税になるNISA(少額投資非課税制度)の「子供版」の位置づけです。

利用できる方 日本にお住まいの20歳未満の人(口座を開設する年の1月1日現在)
非課税対象 株式・投資信託等への投資から得られる配当金・分配金や譲渡益
口座開設可能数 1人1口座
非課税投資枠 年間80万円(*1)
非課税期間 最長5年間(*2)
投資可能期間 2023年まで(*3)
運用管理者 口座開設者本人(未成年者)の二親等以内の親族(両親・祖父母等)(*4)
払出し 18歳までは払出し制限あり。(*5)

*1 …使用しなかった分があっても翌年以降へ繰り越しできない
*2 …期間終了後、新たな非課税投資枠への移管(ロールオーバー)による継続保有ができる
*3 …廃止によって、2023年12月末以降、当初の非課税期間(5年間)の満了を迎えても、一定の金額までは20歳になるまで引き続き非課税で保有できる
*4 …金融機関によって異なる場合があり。詳しくは、口座開設をする金融機関に確認を。
*5 …3月31日時点で18歳である年の前年12月31日までの間は、原則払出しができない。ただし、災害等やむを得ない場合には、非課税での払出しが可能。

(作成)金融庁作成物を元に作成

2.ジュニアNISAの注意点

注意点口座開設について

・複数の金融機関で開設することはできません。

 また、口座を廃止しなければ金融機関の変更もできません。

 尚、口座を廃止すると、過去の利益に課税がされます。

・ジュニアNISA口座で運用することができる資金は、口座開設者本人(未成年者)に帰属する資金に限定されます。

口座間移動/損益通算について

・本口座内で保有している金融商品が値下がりした後に売却するなどによって損失が出た場合でも、他の口座で保有している金融商品の配当金や売却によって得た利益との相殺(損益通算)はできません。

※課税未成年者口座内で生じた損失の損益通算は可能

・現在、ジュニアNISA口座以外の口座で保有している金融商品をジュニアNISA口座に移すことはできません。

非課税の対象となる配当金/分配金

・国内上場株式の配当金、ETFやREITの分配金は、証券会社を通じて受け取る場合(株式数比例配分方式を選択している場合)のみ非課税となります。

特別分配金の取扱い

・投資信託の分配金のうち、元本払戻金(特別分配金)は元本の払い戻しに相当し、利益として受け取るものではないことから、課税口座(特定口座、一般口座)においても、そもそも非課税であり、ジュニアNISAの非課税のメリットを享受できません。

3. ジュニアNISA廃止の理由とは

実は、令和2年度の税制改正でジュニアNISAの廃止が決定しました。

その要因は利用者数が少なく伸び悩んだからです。

NISA(一般・つみたて)・ジュニアNISA口座数及び買付額(2019年6月末時点)

 

口座数

買付額

N

I

S

A

一般NISA

(うち積立投資分)

1,161万8,539口座

(36万4,397口座)

16兆8,812億3,542万円

(6,566億8,815万円)

つみたてNISA

147万872口座

1,780億8,925万円

ジュニアNISA

(うち積立投資分)

32万8,982口座

(3万1,487口座)

1,405億8,345万円

(41億241万円)

NISA制度全体

1,341万8,393口座

17兆1,999億812万円

(注)一般NISA口座数は、基準日時点で、金融機関に対してマイナンバーの告知がされておらず、2019年の投資利用枠が設定されていない口座数を含む。一般NISA・ジュニアNISAの積立投資分は、証券会社において積立投資契約を行っている口座数及び積立投資契約での買付額。
(作成)日本証券業協会作成物を元に作成

上記表のとおり、ジュニアNISAの利用者は少ない状況でした。

何故非課税のメリットがある中で利用が進まなかったのでしょうか。

筆者が考える要因は、現行制度の使いにくさだと思います。

気になる点は、以下の3点です。

1.年間投資額は80万円までであること

まず、何故80万円なのか、という点です。

率直に少なく、贈与税の基礎控除の範囲内で運用するのであれば、80万円ではなく、110万円でも良いのではないでしょうか。

2.18歳までは払い出し制限があること

ジュニアNISAの払い出しに18歳という年齢要件が設けられていたのは、子供が進学・就職の時期を迎える年齢だからです。

将来の学費のために運用するという目的だから制限をかけるのはわかりますが、若年層は様々なライフイベントによって変則的に支出が発生します。

払い出し制限があることは、融通がきかず、踏み出せない方もいるのではないでしょうか。

3.非課税期間は5年間のみであること

18歳まで払い出し制限があるにもかかわらず、非課税期間が5年間しかないため、短すぎるのではないでしょうか。

取り組めていない方の中には、残りの期間はどうしたら良いのか、と悩まれた方もいるのではないでしょうか。

これらの他にも、開設するための書類が通常のNISAよりも手間がかかることも要因かもしれません。

例えば楽天証券の場合、
・登録する未成年口座名義人が満20歳未満かつ未婚であること
・お申込みについて、親権者全員の同意を得られていること
・親権者又は未成年後見人の方の1名が、楽天証券の総合取引口座を開設していて、登録親権者として登録を行うこと
・登録親権者は、未成年口座の取引状況などを常に管理・把握いただけること
・未成年口座名義人、登録親権者ともに国内居住であること
という5点が必要になります。

さらに住民票もしくは戸籍謄本等の所定の書類を徴収することが必要になります。

メリットがあるものの、懸念や手間を感じてしまう方が多かったのだと考えられます。

4. ジュニアNISAを今からでも始めた方が良い理由とは

取り組むメリットそのような中、ジュニアNISAが2023年末で廃止になることが決定し、使いやすくなったと言われています。

理由は主に以下2点になります。

①18歳までの払い出し制限が撤廃

2024年1月~18歳までの払い出し制限が撤廃されることが決定しました。

すぐに引き出してもいいし、子どもが20歳になるまで運用し続けてもいいということです。

これにより、次世代のための資産運用が積極的に行えるようになります。

②非課税期間が20歳まで

今まではいつ始めても5年間しか非課税期間はなかったのですが、20歳まで非課税期間で運用できることになりました。

20歳まで運用を続ける場合は、非課税メリットを享受できます。

仮に0歳でジュニアNISA口座で運用すると20年間非課税で運用できるため非常に有効な手段となりそうです。

これは大きい変更点ですね。

2023年末ということは、あと2年強です。

つまり、今からでも80万円×2年=160万円については子供名義(孫名義)で運用できることになります。

これを機会に、ご自身の運用だけではなく、お子様のための運用もご検討されてはいかがでしょうか?

主な、ジュニアNISAの活用の仕方も紹介します。

積極的に活用を検討してみて頂けたらと思います。

教育資金準備

ジュニアNISAで蓄えた資金の用途は、特に制限はありませんが、大学進学や就職の準備金を貯めるために活用する人も多いものと思われます。

2024年以降は払い出しの年齢制限がなくなるので、前述のように中学や高校進学に備える教育資金としての利用が考えられます。

相続対策

子供の投資資金を親が贈与した場合、その資金は贈与税の対象となりますが、ジュニアNISAの場合は年間の投資上限が80万円なので、贈与税の1年あたりの基礎控除額である110万円以下です。

つまり、NISAの投資資金を贈与しても、両親に贈与税は課されません。

このように、生前贈与とジュニアNISA口座を組み合わせ、相続対策をすることが可能です。

金融教育

自分自身の口座を持つことによって、子どもが早くから資産運用(投資)に興味を持ち、仕組みを学ぶきっかけにもなります。

また、投資にはリスクがあることを知り、社会に出る前に金融や投資への理解や判断力といった、いわゆる「金融リテラシー」を身につける機会にもなります。

 

実際に取り組んでみたいけど口座開設のやり方がわからない、証券会社や商品は何を選んだら良いのか分からない、どう運用していったらいいのか分からない、などお困りな点が出てくるかもしれません。

その際は気軽にご相談ください。

相続対策のプロの考え方、3原則とは?|円滑な遺産分割、納税資金の確保、相続税の軽減

相続対策という言葉を聞くと、どのようなイメージがありますか?

生前贈与でどんどん子供世代にお金を渡すことや、不動産を買うことが相続対策になる・・・というイメージを持っている方もいるかもしれません。

確かに、そういった対策で、相続税を減少させることができる場合もあります。

しかしながら、”木を見て森を見ない”相続対策を繰り返していった結果、実際に相続が発生したタイミングで、皮肉にも相続対策が裏目に出て、相続人が困ってしまうケースもあります。

そのようなことにならないために、相続対策を始める前にしっかりと相続対策の方向性を確認し、定期的に見直すことが大切です。

本稿では、相続対策を行う前にしっかりと押さえるべき「相続対策の3原則」をご説明していきます。

 

1. 相続対策の3原則|円滑な遺産分割、納税資金の確保、相続税の軽減

相続相続対策を行う上でしっかりと押さえなければならない3つの原則についてご説明していきます。

前述の通り、相続対策を始める前にこの3つの視点を押さえなければ、効果的な相続対策はできません。

相続対策のために・・・と実施したことで自らや相続人の首を絞めてしまうといったケースも散見されます。

そのようなことにならないために、一つ一つ確認していきましょう。

 

1)円滑な遺産分割

まず一つ目は、円滑な遺産分割です。

これは「相続人間で揉めないように遺産を分割することができるか」という視点です。

良くある勘違いとして、「遺産の総額が少なく、相続税がかからない範囲であれば、相続対策は必要ない」というものがあります。

これは全くの間違いです。

むしろ、分割可能な財産が少ない場合の方が、相続人の間で揉め、”争族(あらそいぞく、そうぞく)”に発展してしまうことが多いといえます。

 

例えば、父一人が亡くなり、相続人が子2名(長男・長女)だったときに、相続財産が4,000万円のマイホーム(土地・建物)と現預金200万円の合計4,200万円だった場合で考えてみましょう。

相続税の基礎控除額の計算式は「3,000万円+法定相続人の数×600万円」ですので、このケースでは基礎控除額は4,200万円となります。

この場合、相続財産の合計額(4,200万円)が、相続税の基礎控除の金額以内(4,200万円)ですので、相続税額はゼロです。

相続税額がゼロですので、相続税をこれ以上引き下げる必要はありませんし、納税資金の工面について検討する必要もありません。

 

これらの遺産を、相続人である子2名(長男・長女)に分割しようとしたとき、どのようにしたら良いのでしょうか。

「4,000万円のマイホーム(土地・建物)を長男に、現預金200万円を長女に」と分割すると、金額的に乖離が大きく、不公平ですよね。

それでは、「長男・長女のそれぞれに、マイホーム(土地・建物)の持分1/2と現預金100万円を」という分割にするとどうでしょうか。

一見、公平は保てているように見えます。

しかし、「相続したマイホームに住む長男はいいけど、住まない長女は相続しても意味がない」、「将来、長男・長女に相続が発生した場合、さらにその下の世代(孫世代)に持分が分散されてしまって収集がつかなくなってしまう」といった問題が発生してしまいます。

 

「円滑な遺産分割」を目指すためには、財産の流動性を高めること、つまり、分割ができない財産を分割可能な財産にしておくことが必要です。

例えば、財産に占める不動産の割合が多いのであれば、現金や有価証券という形に変えておくことが、円滑な遺産分割に近づくための対策となります。

 

相続税の計算方法については、以下の記事で詳しく説明していますので、ぜひ参考になさってください。

家計を計算して守る 相続税は必ず発生する?相続税の計算方法をチェック! | IFA無料相談はRoute100

 

2)納税資金の確保

二つ目の原則は、「納税資金の確保」です。

これは、「想定される相続税額を金銭で納付することができるか」という視点です。

相続税は、原則として、相続が発生してから10か月以内に現金で一括納付しなければなりません

そのため、相続財産のうち一部は現預金や死亡保険金で準備をしておく必要があります。

被相続人が亡くなったときに相続人が受け取る死亡保険金は「相続人の固有の財産」とされ、遺産分割の対象外となります。そのため、相続が発生した直後に現金化することができます。(みなし相続財産として相続税は課税されます

それに対して、不動産などは現金化に長い時間がかかります。

不動産などの財産を多く相続した場合、納税に充当するための現金は別途準備しなければなりません。

また、現預金などを相続させる場合であっても、現預金の金額が相続税額に満たない場合には、相続人が元々持っている固有の現預金から支払う必要があります。

そのため、相続財産の中での現金比率には注意する必要があります。

もし納税資金が不足してしまうときには、相続税を分割払いにする「延納」や不動産などの財産で納付する「物納」といった制度も検討できますが、認められるかどうかの判断が厳しく、利子税も支払わなければいけないといった点からも、あまり気軽に適用できる制度にはなっていないのが現状です。

延納と物納の制度については、それぞれの記事にまとめていますので、ご確認ください。

延納は相続税の納付が延長できるが、条件が厳しく利子も発生 | IFA無料相談はRoute100
お金の教育は子供から 物納は相続税を不動産や証券で納めることが可能な制度だが、不利になるケースも | IFA無料相談はRoute100

それぞれの相続人が納税資金不足に陥ってしまうことがないように、事前に財産構成を組み替え、余裕を持って相続税を払うことができるだけの現預金を準備しておくことが大切です。

 

3)相続税の軽減(合法的に可能な範囲で)

最後に、3つ目の原則に「相続税の軽減」があります。

相続対策といえば、相続”税”対策というイメージが強い方が多いと思います。

ここで重要なのは、前述の「円滑な遺産分割」と「納税資金の確保」の原則を守りながら、その範囲の中で合法的に相続税の軽減ができるかを検討していくということです。

 

例えば、相続税の軽減のための対策の一つに、タワーマンションなどの賃貸用不動産の購入があります。

これは、タワーマンションの購入価額と比べて、相続税計算上の評価額が大きく下回ることを利用して、相続税を減少させるものです。

タワーマンション節税では、一般的には評価額の2/3程度を圧縮できるとされています。

単純な数字を置けば、タワーマンションを1億円で購入すると、相続税の計算上は3,000万円~4,000万円で評価することができるというものです。

相続税の圧縮効果は非常に魅力的に見えますが、相続財産が現金1億円しかない場合に、タワーマンション1億円を購入してしまったらどうなるか・・・「円滑な遺産分割」、「納税資金の確保」の視点から考えてもらえれば、将来困ってしまう可能性があるのは自明です。

ここまで極端な例であれば「危険である」と感じられますが、実際にはこれに類似するような対策であっても実行してしまっているケースは散見されます。

 

なお、当然ですが、ここで検討すべき対策は合法的で安全・確実なものに限られます。

上記のタワーマンション節税のような、(合法ではありますが)ある意味ドラスティックな節税は、税務当局から否認されてしまう可能性もあります。また、税制改正により節税の効果がなくなってしまうということもあります。

そういった意味からも、バランスを欠いた相続対策は危険であり、税制改正の影響を考慮しながら定期的にプランを見直すことが重要だと考えます。

 

タワーマンション節税に関しては、こちらの記事にまとめてありますので、ぜひご参考になさってください。

タワーマンション節税は相続税の減少には有効だが注意が必要! | IFA無料相談はRoute100

 

比較的、安全な相続対策の一つに、生命保険の活用があります。

被相続人が保険料を負担して、被保険者が被相続人、保険金受取人が相続人という契約とした場合、死亡保険金は相続財産(みなし相続財産)となり、相続税が課税されることとなります。

このとき、死亡保険金のうち、一定の金額(相続人の数×500万円)が非課税とされるという特典が設けられています。

生命保険は、相続対策の初手で検討されることの多いメジャーな対策といえます。

しかしながら、当然ですが、いくら生命保険が安全な施策といっても、現金保有率が低い状態で多額の生命保険を契約してしまっては、円満な遺産分割ができなくなってしまう可能性もあります。

相続財産、相続人の関係などの現状分析をしっかりと行い、相続のグランドデザインを描いた上で、相続対策を行っていくことが重要です。

 

2.まとめ

この記事では、相続対策の3原則「円滑な遺産分割」「納税資金の確保」「相続税の軽減」についてみてきました。

木を見て森を見ない相続対策で、将来相続人の世代を困らせてしまわないように、相続対策をスタート段階でしっかりと方向性を確認することが大切です。

相続対策や相続後の資産の運用について相談したい方は、ぜひ一度相続・贈与に対応しているIFAや税理士等の専門家にご相談ください。

贈与税の時効は原則6年|しかし「昔の贈与だから放置して大丈夫」という発想は危険

皆さんは「時効」という言葉を聞いたときにどんなイメージを持つでしょうか。

ニュースなどで耳にすることもある刑事事件の時効(公訴時効)を思い浮かべる方も多いと思います。

実は、税金の世界にも時効が存在します。

贈与税の時効は、原則は6年、故意に申告をしなかった場合は7年と定められています。

それでは、例えば、20年前に財産の贈与を受けたにもかかわらず、贈与税を申告・納付していなかったことが判明した場合、もう税金を課せられることはないのでしょうか。

驚くべきことに、このような場合でも税金を課せられる可能性があります

本稿では、贈与税の時効についてご説明します。

 

1. 贈与税の時効の概要

年間110万円の基礎控除額を超える金額を贈与した場合には、贈与税を申告・納付しなければなりません

納税する義務があるにもかかわらず納税をしない者に対して、税務署は「税金を納付しなさい」と決定することができます。

この決定をすることができる一定の期間を、税務上の時効といいます。

 

1)贈与税の時効

税務上の時効は税金の種類(税目)によって異なりますが、贈与税の時効は以下のように定められています。

  贈与税の時効
原則 6年
故意に申告しなかった場合 7年

原則は6年ですが、故意に申告しなかった場合は1年延長されて7年とされています。

このように2段階で定められていますが、実際には7年とされるケースが多いようです。

そもそも贈与は、贈与者(贈与をする人)と受贈者(贈与を受ける人)の合意があってはじめて成立します。

「贈与に関する合意があるのであれば、申告しなかったのは故意だろう」というのは極めて自然な考え方といえます。

 

2)時効の起算点

時効までの日数は、いつから数え始めるのでしょうか。

数え始めるスタート地点となる日付を、時効の起算点といいます。

贈与税の時効の起算点は、贈与税の申告期限の翌日、つまり、贈与をした翌年の3/16です。

贈与税の起算日は、贈与を行った日ではありませんので注意が必要です。

 

例えば、2021年9月1日に贈与をした場合には、贈与税の申告期限は2022年3月15日、贈与税の時効の起算点は翌日である2022年3月16日です。

贈与があることを認識しており、贈与税を故意に納税していなかった場合の時効は7年ですので、2022年3月16日の7年後である2029年3月15日が贈与税の時効となります。

 

次の章では、贈与税の時効を過ぎているにもかかわらず、税金が発生してしまうケースについて確認していきましょう。

 

2. 贈与税の時効を過ぎても、相続税で課税されるケース

相続税贈与税の時効を過ぎてしまえば、税金を課せられる可能性はないといえるのでしょうか。

答えはNOです。

 

実は、贈与税の時効を過ぎていても、相続税で課税されてしまうケースが存在します。

これは、そもそも「贈与が成立していない」といった場合です。

贈与が成立していなければ、当然、贈与税の時効を過ぎてしまったかどうかは関係ありません。

このような場合、財産の名義だけは移っているが、実質的な所有者は変わっていないという「名義財産」であるという整理がされ、相続人が保有する財産として相続税が課税されてしまいます。

例えば、祖父母が孫に対して資金を贈与したが、口座の通帳や印鑑は祖父母が管理しており、孫は口座の存在すら知らないといった場合には、単に「孫の名義を借りただけの祖父母の財産」(名義財産)とみなされ、祖父母の相続税の課税対象となってしまいます。

 

贈与をこれからする場合に、それが問題なく認められるために注意しなければならない点はいくつかあります。

以下の記事にまとめていますので、併せてご確認ください。

贈与税を計算する 贈与税とは?いつ発生するか、贈与が認められないケースと防衛策

 

3. 申告期限を過ぎていることに気づいた場合の対応とペナルティ

それでは、贈与をしたにもかかわらず、申告期限を超過してしまった気付いた場合にはどうすべきなのでしょうか。

税務上の時効まで頑張って逃げ切る? 納税は国民の義務ですので、それは絶対に許されません

申告期限の超過に気付いた時点で、必ず税務署または税理士等の専門家に相談をしましょう。

本章では申告期限を超過した場合にはどのようなペナルティが発生するか確認していきます。

 

1)原則

1月1日から12月31日までの間に行った贈与について、翌年の2月1日から3月15日の間に申告・納付をすることが必要です。

これが原則的な取り扱いです。

 

2)申告すること自体を失念していたパターン → 無申告加算税

それでは贈与税の申告をすること自体を失念していた場合には、どのような取り扱いをされるのでしょうか。

このような場合には、本来納めるべき贈与税に、無申告加算税が加算されます。

無申告加算税の計算は以下のように定められています。

無申告加算税 = 贈与税の税額 × 無申告加算税の税率

計算式中の無申告加算税の税率は以下の通りです。

贈与税額のうち 税務調査の通知前に自主的に申告書を提出した場合 税務調査の通知を受けた後、実際に税務調査を受ける前に申告書を提出した場合 税務調査を受けてから申告書を提出した場合
 50万円以下の部分 5% 10% 15%
 50万円を超える部分 15% 20%

自主的に申告書を提出した場合には税率が低く、税務調査で指摘されてから申告書を提出した場合には税率が高くなり、その差は15%にもなります

例えば、贈与税額が5,000万円だった場合には、正直に早く申告するだけで15%である不納付加算税750万円を節約することができます。

「正直者は救われる」ということですね。

もし、申告すべき贈与税について、申告していないということが判明したら、できるだけすぐ申告・納付をするようにしましょう。

 

3)申告はしていたが、申告した金額が過少だった場合 → 過少申告加算税

贈与税の申告はしていたが、財産の評価方法を誤っており、贈与税額を過少に申告してしまっていた場合には、どのような取り扱いをされるのでしょうか。

 

このような場合には、追加で納めることとなった贈与税の金額に、過少申告加算税が加算されます。

過少申告加算税の計算は以下のように定められています。

過少申告加算税 = 贈与税の税額 × 過少申告加算税の税率

計算式中の過少申告加算税の税率は以下の通りです。

贈与税額のうち 税務調査の通知前に自主的に修正申告書を提出した場合 税務調査の通知を受けた後、実際に税務調査を受ける前に修正申告書を提出した場合 税務調査を受けてから修正申告書を提出した場合
 50万円以下の部分 なし 5% 10%
 50万円を超える部分 10% 15%

この場合、提出する申告書は「修正申告書」といいます。これは当初提出している贈与税の申告書を、自ら修正する申告書です。

 

自主的に申告書を提出した場合には、過少申告加算税が発生しないというのは特徴的です。

早く正直に言い出せばペナルティが少ないというのは、無申告加算税の場合と同様ですね。

 

4)税金から逃れるために意図的に申告をしなかった場合 → 重加算税

贈与税の納税義務があることを認識していたにもかかわらず、税金から逃れるために意図的に申告をしなかった場合にはどうなってしまうのでしょうか。

この場合、最も重いペナルティである重加算税が課されます

重加算税の計算は以下のように定められています。

重加算税 = 贈与税の税額 × 重加算税の税率

計算式中の重加算税の税率は以下の通りです。

  原則 無申告または期限後申告の場合
重加算税の税率 35% 40%

上記の他の加算税と比べても、非常に重い税率となっていることが分かると思います。

なお、無申告加算税または重加算税を課された者が、5年以内に再び無申告加算税または重加算税が課された場合には、更なるペナルティとしてそれぞれの加算税に10%が上乗せされます。

 

5)贈与税の納付が遅れた場合 → 延滞税

これまでお伝えしてきた加算税に加えて、納付が遅れた期間に対する利子に相当する延滞税というものが課されます

延滞税の税率は、納付までの期間に応じて決定されます。

期間 申告書提出の翌日から2か月以内の日まで 申告書提出の翌日から2か月を超える日
令和3年1月1日~令和3年12月31日 2.5% 8.8%

延滞税の税率は、市中金利などに応じて暦年ごとに見直しがされます

一般的な定期預金や住宅ローンなどの金利と比べても、非常に高い利率になっていることが分かります。

 

まとめ

この記事では、贈与税の時効と、贈与税の申告や納付が遅れてしまった場合などのペナルティについてみてきました。

税務上の時効の期間を超過しているからといって、絶対に税金が課されないとは言い切れません。

また、贈与税の申告を失念し申告期限を超えてしまった場合などに、そのまま放置してしまうと、将来的に大きなペナルティを課せられる可能性があります。

このようなお困りごとがある場合には、ぜひ一度贈与に対応しているIFAや税理士等の専門家にご相談ください。

離婚による財産分与の種類と課税|税金的にはどのような財産を分与するべきなのか?

現在、日本においては、結婚した夫婦の2.5組に1組が離婚してしまうといわれています。

夫婦が二人で資金を貯めて買った家や車、毎月貯めてきた預貯金などについて、結婚生活中は「夫婦の共有の財産」という認識でいたとしても、問題が発生することは少ないかもしれません。

しかし、不幸にも離婚することになってしまった場合には、結婚生活中に二人で作り上げた財産をしっかりと分割しなければなりません。これが財産分与です。

財産分与をするときには、税金の問題が発生することがあります。税金についても、感情的にならずしっかりと確認することが大切です。

本稿では、離婚による財産分与の種類と課税関係、どのような財産を分与すれば税金の問題が発生しないのかについてご説明します。

 

1. 財産分与の性質と種類

離婚とは、夫婦の両方が生存中に、婚姻を解消することをいいます。

そして、財産分与は、「相手方に対して財産の分与を請求することができる」と定められている法律上の権利です。

財産分与と一口でいいますが、財産分与にはいくつかの種類がありますのでそれぞれを説明していきます。

 

1)共有財産の清算としての財産分与(清算的財産分与)

夫婦が結婚生活中に力を合わせて蓄積した財産を清算するという意味合いの財産分与であり、清算的財産分与といいます。

結婚生活中では、夫婦が二人で資金を貯めて購入した家や車などについて、夫婦の認識の上では「夫婦の共有」であるとことも多くあるでしょう。

しかし、例えば、資金は夫の口座から支払ったからという理由で、名義上は夫が単独で所有しているというケースもあります。

また、夫婦のどちらかの口座に、将来の子育て資金や老後資金を貯めていくこともあるでしょう。

これらのケースでは、「誰の名義になっているか」と「実体は誰のものか」にズレがある状態となっています。このようなズレを清算するという点から、清算的と呼称されています。

 

上記の性質から、清算的財産分与では離婚の原因を作った責任があるといった事情は一切関係がありません

例えば、不倫によって離婚の原因を作った側であったとしても、清算的財産分与の請求権は有することになります。

不倫により離婚を招いてしまった責任は、後述する慰謝料的財産分与などによって解決します。

 

なお、原則的には50%ずつ分配することが基準となります。たとえ、夫婦の一方が専業主婦(夫)であったとしても、家事労働の対価や専業主婦(夫)をしている期間のキャリア損失を考慮して、結果的には50%ずつの分配となることが多いようです。

その他の特殊な事情がなければ、清算的財産分与のみを行い、離婚をした後にはお互いの財産について侵害や請求をしないことになります。

 

2)扶養としての財産分与(扶養的財産分与)

扶養としての財産分与とは、夫婦の一方が経済的に苦しい状況となってしまう場合に、その支援を目的として、経済的に余裕のある側から分与されるものです。

例えば、病気のため働くことができないケースや、長年にわたって専業主婦(夫)をしていたためすぐに就職することが難しいケースが該当します。

扶養的財産分与の期間は、個別の事情によって様々ですが、6か月~3年くらいが相場とされています。

 

3)慰謝料としての財産分与(慰謝料的財産分与)

慰謝料としての財産分与とは、慰謝料の性質を持つ財産分与をいいます。

例えば、不倫やDVなどにより離婚の原因を作った側が、被害者側の苦痛を和らげることを目的として、財産を分与するものです。

 

 

財産分与の種類については、確認することができましたか?

次の章では、どのような資産が財産分与の対象となるかを説明していきます。

 

2. 財産分与の対象となる財産とは?

財産分与の種類財産分与について検討をするときには、まずどの財産が分与の対象になるのかを明らかにしなければなりません。

どのような財産が、財産分与の対象になるかを確認していきましょう。

 

1)財産分与の対象となる「共有財産」

夫婦の共有財産は、財産分与の対象となります。

前述の通り、実質的には夫婦二人の協働により作り上げてきた資産でも、名義上はどちらか一方の所有となっているケースがあります。

共有財産については、実質的にはどうかという観点で判断がなされます。

そのため、結婚期間中に夫婦が協力をして作り上げてきた財産といえるもの、例えば、家、預貯金、保険解約返戻金、有価証券などは、(夫婦のどちらか片方の名義になっていたとしても)共有財産に該当する余地があるといえます。

なお、夫婦のどちらが所有しているか明らかでない財産についても、夫婦の共有に属しているとみなされます

 

2)財産分与の対象とならない「特有財産」

上記に対して、特有財産は財産分与の対象にはなりません

特有財産とは、「夫婦のそれぞれが結婚する前から所有していた財産」と「結婚中であっても夫婦生活とは全く関係のないところで得た財産」をいいます。

後者については、例えば、夫の父が亡くなり、財産を相続したようなケースがあります。

この場合の相続財産は、夫婦生活とは関係ない特有財産であることから、財産分与の対象外となります。

 

3. 財産分与を受けた場合の税金

それでは財産分与を受けた場合にはどのような課税がなされるのでしょうか?

財産分与による財産の取得は、夫婦の一方から他方に対する財産分与請求権に基づいて、共有財産を分割して取得するものです。

贈与により一方から取得するものではないため、原則として贈与税は課税されません

 

1)財産分与を受ける側の税金

財産分与により財産を取得した側においては、原則として贈与税は課税されません。

しかし、財産分与により取得した財産の金額が、お互いの財産額や収入額などの一切の事情を考慮しても多すぎる場合には、その多すぎる部分についてた贈与税が課税されます

また、離婚による財産分与が原則として贈与税がかからないということを悪用して、贈与税や相続税を回避しようとした場合には、財産分与の全額に贈与税がかかります

区分 贈与税
財産分与請求権に基づく財産分与 共有財産の清算としての財産分与 なし
扶養としての財産分与
慰謝料としての財産分与
不当に多額である部分 贈与税の課税あり
財産分与を悪用して贈与税・相続税を回避しようとした場合

 

2)財産分与をする側の税金

財産分与により財産を渡す側においては、分与する財産によっては、課税が発生する可能性があります

現金や預貯金である場合には、税務上の問題が発生することはありません。

土地や建物など、時価と取得価額に乖離がある財産を分与する場合には、その財産を分与する際に時価で売却したとみなされて譲渡所得税が発生します。

なお、マイホームの土地・建物を財産分与することで譲渡所得税が発生する場合には、「居住用財産の3,000万円の特別控除の特例」を活用することができます。

居住用財産の3,000万円の特別控除の特例については、下記の記事でも触れていますので、併せてご確認ください。

贈与税を計算する 婚姻20年以上で活用できる贈与税の配偶者控除で賢く相続対策
分与する財産の種類 譲渡所得税等
金銭 なし
不動産 居住用 分与する人が居住している

時価で譲渡したものとして課税

(3,000万円控除の適用あり

分与する人が居住しなくなってから3年を経過する年の年末までの分与
上記以外

時価で譲渡したものとして課税

(3,000万円控除の適用なし

非居住用
上記以外の財産(譲渡所得の起因となるもの) 時価で譲渡したものとして課税

 

上記のような課税関係であるため、次のような財産を有している場合には、優先的に分与を検討することが望ましいと考えられます。

  • 現金や預金など時価と取得価額に乖離がない財産
  • 居住用財産(一定の要件を満たすことで居住用財産の3,000万円特別控除の特例の適用が可能です)

 

まとめ

この記事では、離婚による財産分与の種類、それぞれの課税関係、どのような財産を分与すれば良いのかについて確認してきました。

離婚は珍しいものではありません。人生における一大事ですが、感情的にならずに、一つ一つ冷静に対処していくことが必要です。

離婚に関するお困りごとがある場合には、ぜひ一度、税務に強いIFAや弁護士・税理士等の専門家にご相談ください。