相続が発生したらまず確認!民法が定める相続人と相続分

相続は人が死亡することをきっかけに発生します。

その時、誰が相続人になるのか、相続分はどうなるのか、しっかりと把握していますか?

この記事では、相続とは何か、法定相続人・法定相続分の考え方について確認していきます。

1.相続とは何か?

相続とは、被相続人(死亡した人)の持っていた財産を、相続人である配偶者や子などが引き継ぐことをいいます。

財産の中には、被相続人の資産はもちろん、借入金などの負債も含まれます。

 

相続は人の死亡により開始します。

相続は、死亡によって開始する。

民法「第八百八十二条(相続開始の原因)」より抜粋

民法においては、死亡が唯一の相続開始の原因となっています。

しかし、実際には失踪宣告により死亡したものとみなされるケースも、死亡と同様に相続開始の原因となります。

不在者の生死が七年間明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求により、失踪の宣告をすることができる。

民法「第三十条(失踪の宣告)」より抜粋、一部筆者強調

前条第一項の規定により失踪の宣告を受けた者は同項の期間が満了した時に、(中略)死亡したものとみなす

民法「第三十一条(失踪の宣告の効力)」より抜粋

2. 法定相続人の対象

民法上、被相続人の財産を相続する権利がある人を法定相続人といいます。

法定相続人は、以下のように定められています。

死亡した人の配偶者常に相続人となり、配偶者以外の人は、次の順序で配偶者と一緒に相続人になります。

第1順位
死亡した人の子供
その子供が既に死亡しているときは、その子供の直系卑属(子供や孫など)が相続人となります。子供も孫もいるときは、死亡した人により近い世代である子供の方を優先します。

第2順位
死亡した人の直系尊属(父母や祖父母など)
父母も祖父母もいるときは、死亡した人により近い世代である父母の方を優先します。
第2順位の人は、第1順位の人がいないとき相続人になります。

第3順位
死亡した人の兄弟姉妹
その兄弟姉妹が既に死亡しているときは、その人の子供が相続人となります。
第3順位の人は、第1順位の人も第2順位の人もいないとき相続人になります。

国税庁・タックスアンサー「No.4132 相続人の範囲と法定相続分

まず、配偶者がいる場合には、常に配偶者は相続人になります。

次に、子など第1順位の人がいる場合には、その人が相続人になります。

そして、第1順位の者がいない場合には、父母など第2順位の人が相続人になります。

最後に、父母がいない場合には、兄弟姉妹など第3順位の人が相続人になります。

 

他の順位の人が同時に相続人になりことはありません。

例えば、子(第1順位)と父母(第2順位)が同時に相続人にはなりません。

 

なお、相続人となる子・兄弟姉妹がすでに死亡している場合には、その子である孫・甥姪に相続権が移ります。

これを代襲相続といいます。

また、孫がすでに亡くなっている場合には、その子であるひ孫が相続権を得ることになります。これを再代襲といいます。再代襲は、兄弟姉妹には認められません。

 

法定相続人について、ポイントは以下の通りです。

  1. 養子・胎児は相続人になる
  2. 婚外子は認知によって相続人になる
  3. 相続放棄によって相続人でなくなる

それぞれ確認してみます。


1) 養子は相続人

養子縁組とは、自然的な親子関係がない者との間に、法律上の親子関係を作り出す制度です。

養子縁組には、普通養子縁組と特別養子縁組の2種類があります。

 

普通養子縁組は、もともとの父母との親子関係が維持されたまま、養親との親子関係を作り出すものです。

普通養子縁組の場合には、養子は、もともとの父母と養親の相続人となります。

 

特別養子縁組は、もともとの父母との親子関係が終了して、養親との親子関係を作り出すものです。

特別養子縁組の場合には、養子は養親の相続人になり、もともとの父母の相続人にはなりません。

 

なお、養子の法定相続分は、実子と同等になります。


2)胎児は相続人になる

胎児については以下のように定められています。

胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。

 前項の規定は、胎児が死体で生まれたときは、適用しない。

民法「第八百八十六条(相続に関する胎児の権利能力)」より抜粋

相続開始時に胎児であった者は、生存して出生した場合には相続人となります。

しかし、残念ながら死産だった場合には、相続人になりません。


3)婚外子は認知によって相続人になる

婚外子、つまり婚姻関係にない男女間に生まれた子は、父から認知されることで父の相続人になります。

母に関しては、分娩の事実によって親子関係が証明されますので、認知は必要ありません。

なお、認知された婚外子の法定相続分は、実子と同等になります。


4)相続放棄によって相続人でなくなる

相続を放棄した人は、初めから相続人でなかったものとされます。

3. 法定相続分の割合

孫に財産を引き継ぐ

法定相続分とは、相続人の間で、遺産分割の合意ができなかったときの遺産の取り分をいいます。

法定相続分は、相続人がどの続柄の者で構成されているかのパターンに応じて、下記のように定められています。

相続人の構成パターンと相続分

  1. 相続人が配偶者と子供である場合:配偶者1/2 子供1/2

  2. 相続人が配偶者と父母である場合:配偶者2/3 父母1/3

  3. 相続人が配偶者と兄弟姉妹である場合:配偶者3/4 兄弟姉妹1/4

 

国税庁・タックスアンサー「No.4132 相続人の範囲と法定相続分」を元に筆者作成

なお、子供、父母、兄弟姉妹がそれぞれ2名以上いるときは、原則としてその人数で均等に分けることになります。

例えば、配偶者がいて、子供が3名いる場合には次のようになります。

  • 配偶者:1/2
  • 子供:1人あたり1/6(1/2 ÷ 子供3人)

また、配偶者がすでにいない場合には、その分を含めてその他の相続人で均等に分けることになります。

上記のケースで配偶者がいない場合は、子供1人あたり1/3という法定相続分になります。

4. 相続人の構成別・法定相続分

実際にいくつかの事例を元に、法定相続分を見てみましょう。

以下、すべて相続財産が3,000万円だった場合を例に、法定相続分の金額を見ていきます。

1)配偶者のみ

被相続人に配偶者がおり、その他に子供や父母・祖父母、兄弟姉妹がいない場合には、配偶者のみが法定相続人になります。

この場合は、遺産のすべてが配偶者の法定相続分になります。

続柄 法定相続分(割合) 法定相続分(金額)
配偶者 100%(すべて) 3,000万円

2)配偶者と子供

次に、被相続人に配偶者と子供がいるケースです。

子供は2名いるものとします。

父母・祖父母、兄弟姉妹がいない場合は、配偶者と子供2名(例えば長男と次男)が法定相続人になります。

この場合、配偶者の法定相続分が1/2、子供の法定相続分が1/2となります。

そして、子供が2名いるため、法定相続分を人数で均等に割り、長男・次男ともに1/4が法定相続分になります。

続柄 法定相続分(割合) 法定相続分(金額)
配偶者 50%(1/2) 1,500万円
長男 25%(1/4) 750万円
次男 25%(1/4) 750万円

3)子供のみ

次に、先ほどのケースで配偶者がすでに死亡している場合、つまり子供のみがいる場合を考えてみます。同様に、子供は2人いるものとします。(長男と次男)

この場合、財産のすべてを子供で均等に割ることになり、長男・次男ともに1/2が法定相続分になります。

続柄 法定相続分(割合) 法定相続分(金額)
長男 50%(1/2) 1,500万円
次男 50%(1/2) 1,500万円

4)配偶者と子供2人(1人死亡)

さらに、2と同じケースで、子供2人のうち1人が死亡している場合を考えます。(次男が死亡していたとします。)

死亡した子供には2人の子供、つまり被相続人からすると孫が2人いたとします。

この場合、死亡している次男の子供には代襲相続と言い、相続権が引き継がれます。

法定相続分の考え方は基本的に2と同じで、次のようになります。

  1. 配偶者の法定相続分が1/2、子供の法定相続分が1/2となります。
  2. 子供は2名いるため、法定相続分を人数で均等に割り、長男・次男ともに1/4が法定相続分になります。
  3. そして、次男に相続が発生しているため、相続権が孫に移り、次男の長女、次女は1/8が法定相続分となります
続柄 法定相続分(割合) 法定相続分(金額)
配偶者 50%(1/2) 1,500万円
長男 25%(1/4) 750万円
孫(次男の長女) 12.5%(1/8) 375万円
孫(次男の次女) 12.5%(1/8) 375万円

 


5)配偶者と両親

次は被相続人に子供はおらず、配偶者と両親がいるケースです。(子供がいる場合は、親には相続権がありません。)

この場合、配偶者と父・母が法定相続人になり、次のように割り当てられます。

  1. 配偶者の法定相続分が2/3、両親の法定相続分が1/3となります。
  2. 父母は2名いるため、法定相続分を人数で均等に割り、父・母ともに1/6が法定相続分になります。
続柄 法定相続分(割合) 法定相続分(金額)
配偶者 66.7%(2/3) 2,000万円
16.7%(1/6) 500万円
16.7%(1/6) 500万円

※小数点第2位で四捨五入しているため、表示上は割合の合計は100%になりません


6)配偶者と兄弟姉妹

最後に、配偶者と兄弟姉妹のみがいるケースです。(子供、または親がいる場合は兄弟姉妹には相続権がありません。)

同様に、兄と妹の2人の兄弟姉妹がいた場合を考えてみます。

この場合の法定相続分は、次のように考えます。

  1. 配偶者の法定相続分が3/4、両親の法定相続分が1/4となります。
  2. 兄弟姉妹は兄・妹の2名がいるため、法定相続分を人数で均等に割り、兄・妹ともに1/8が法定相続分になります。
続柄 法定相続分(割合) 法定相続分(金額)
配偶者 75%(3/4) 2,250万円
12.5%(1/8) 375万円
12.5%(1/8) 375万円
いかがでしょうか?

すべてのケースを網羅することはできませんが、ある程度は相続人の範囲と相続分の割合がご理解いただけたのではないでしょうか?

実際の相続の際は、家族構成のケースによって相続人と相続分が大きく変わります。

相続人の範囲と相続分の確認は慎重に行いましょう。

まとめ

この記事では、相続人の範囲について取り上げてきました。

相続人の確定は、相続対策においても、相続税申告においても、スタート地点になります。

相続人の確定を誤った場合、その後の全てが間違ったものになってしまいます。

相続に関してお困りの場合には、相続・贈与に詳しいIFAや税理士等の専門家にご相談ください。


 

※本ページに記載されている内容は2021年4月19日時点のものです
※記載内容に誤りがある場合、ご意見がある方はこちらからお問い合わせください

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