贈与税の時効は原則6年|しかし「昔の贈与だから放置して大丈夫」という発想は危険

皆さんは「時効」という言葉を聞いたときにどんなイメージを持つでしょうか。

ニュースなどで耳にすることもある刑事事件の時効(公訴時効)を思い浮かべる方も多いと思います。

実は、税金の世界にも時効が存在します。

贈与税の時効は、原則は6年、故意に申告をしなかった場合は7年と定められています。

それでは、例えば、20年前に財産の贈与を受けたにもかかわらず、贈与税を申告・納付していなかったことが判明した場合、もう税金を課せられることはないのでしょうか。

驚くべきことに、このような場合でも税金を課せられる可能性があります

本稿では、贈与税の時効についてご説明します。

 

1. 贈与税の時効の概要

年間110万円の基礎控除額を超える金額を贈与した場合には、贈与税を申告・納付しなければなりません

納税する義務があるにもかかわらず納税をしない者に対して、税務署は「税金を納付しなさい」と決定することができます。

この決定をすることができる一定の期間を、税務上の時効といいます。

 

1)贈与税の時効

税務上の時効は税金の種類(税目)によって異なりますが、贈与税の時効は以下のように定められています。

  贈与税の時効
原則 6年
故意に申告しなかった場合 7年

原則は6年ですが、故意に申告しなかった場合は1年延長されて7年とされています。

このように2段階で定められていますが、実際には7年とされるケースが多いようです。

そもそも贈与は、贈与者(贈与をする人)と受贈者(贈与を受ける人)の合意があってはじめて成立します。

「贈与に関する合意があるのであれば、申告しなかったのは故意だろう」というのは極めて自然な考え方といえます。

 

2)時効の起算点

時効までの日数は、いつから数え始めるのでしょうか。

数え始めるスタート地点となる日付を、時効の起算点といいます。

贈与税の時効の起算点は、贈与税の申告期限の翌日、つまり、贈与をした翌年の3/16です。

贈与税の起算日は、贈与を行った日ではありませんので注意が必要です。

 

例えば、2021年9月1日に贈与をした場合には、贈与税の申告期限は2022年3月15日、贈与税の時効の起算点は翌日である2022年3月16日です。

贈与があることを認識しており、贈与税を故意に納税していなかった場合の時効は7年ですので、2022年3月16日の7年後である2029年3月15日が贈与税の時効となります。

 

次の章では、贈与税の時効を過ぎているにもかかわらず、税金が発生してしまうケースについて確認していきましょう。

 

2. 贈与税の時効を過ぎても、相続税で課税されるケース

相続税贈与税の時効を過ぎてしまえば、税金を課せられる可能性はないといえるのでしょうか。

答えはNOです。

 

実は、贈与税の時効を過ぎていても、相続税で課税されてしまうケースが存在します。

これは、そもそも「贈与が成立していない」といった場合です。

贈与が成立していなければ、当然、贈与税の時効を過ぎてしまったかどうかは関係ありません。

このような場合、財産の名義だけは移っているが、実質的な所有者は変わっていないという「名義財産」であるという整理がされ、相続人が保有する財産として相続税が課税されてしまいます。

例えば、祖父母が孫に対して資金を贈与したが、口座の通帳や印鑑は祖父母が管理しており、孫は口座の存在すら知らないといった場合には、単に「孫の名義を借りただけの祖父母の財産」(名義財産)とみなされ、祖父母の相続税の課税対象となってしまいます。

 

贈与をこれからする場合に、それが問題なく認められるために注意しなければならない点はいくつかあります。

以下の記事にまとめていますので、併せてご確認ください。

贈与税を計算する 贈与税とは?いつ発生するか、贈与が認められないケースと防衛策

 

3. 申告期限を過ぎていることに気づいた場合の対応とペナルティ

それでは、贈与をしたにもかかわらず、申告期限を超過してしまった気付いた場合にはどうすべきなのでしょうか。

税務上の時効まで頑張って逃げ切る? 納税は国民の義務ですので、それは絶対に許されません

申告期限の超過に気付いた時点で、必ず税務署または税理士等の専門家に相談をしましょう。

本章では申告期限を超過した場合にはどのようなペナルティが発生するか確認していきます。

 

1)原則

1月1日から12月31日までの間に行った贈与について、翌年の2月1日から3月15日の間に申告・納付をすることが必要です。

これが原則的な取り扱いです。

 

2)申告すること自体を失念していたパターン → 無申告加算税

それでは贈与税の申告をすること自体を失念していた場合には、どのような取り扱いをされるのでしょうか。

このような場合には、本来納めるべき贈与税に、無申告加算税が加算されます。

無申告加算税の計算は以下のように定められています。

無申告加算税 = 贈与税の税額 × 無申告加算税の税率

計算式中の無申告加算税の税率は以下の通りです。

贈与税額のうち 税務調査の通知前に自主的に申告書を提出した場合 税務調査の通知を受けた後、実際に税務調査を受ける前に申告書を提出した場合 税務調査を受けてから申告書を提出した場合
 50万円以下の部分 5% 10% 15%
 50万円を超える部分 15% 20%

自主的に申告書を提出した場合には税率が低く、税務調査で指摘されてから申告書を提出した場合には税率が高くなり、その差は15%にもなります

例えば、贈与税額が5,000万円だった場合には、正直に早く申告するだけで15%である不納付加算税750万円を節約することができます。

「正直者は救われる」ということですね。

もし、申告すべき贈与税について、申告していないということが判明したら、できるだけすぐ申告・納付をするようにしましょう。

 

3)申告はしていたが、申告した金額が過少だった場合 → 過少申告加算税

贈与税の申告はしていたが、財産の評価方法を誤っており、贈与税額を過少に申告してしまっていた場合には、どのような取り扱いをされるのでしょうか。

 

このような場合には、追加で納めることとなった贈与税の金額に、過少申告加算税が加算されます。

過少申告加算税の計算は以下のように定められています。

過少申告加算税 = 贈与税の税額 × 過少申告加算税の税率

計算式中の過少申告加算税の税率は以下の通りです。

贈与税額のうち 税務調査の通知前に自主的に修正申告書を提出した場合 税務調査の通知を受けた後、実際に税務調査を受ける前に修正申告書を提出した場合 税務調査を受けてから修正申告書を提出した場合
 50万円以下の部分 なし 5% 10%
 50万円を超える部分 10% 15%

この場合、提出する申告書は「修正申告書」といいます。これは当初提出している贈与税の申告書を、自ら修正する申告書です。

 

自主的に申告書を提出した場合には、過少申告加算税が発生しないというのは特徴的です。

早く正直に言い出せばペナルティが少ないというのは、無申告加算税の場合と同様ですね。

 

4)税金から逃れるために意図的に申告をしなかった場合 → 重加算税

贈与税の納税義務があることを認識していたにもかかわらず、税金から逃れるために意図的に申告をしなかった場合にはどうなってしまうのでしょうか。

この場合、最も重いペナルティである重加算税が課されます

重加算税の計算は以下のように定められています。

重加算税 = 贈与税の税額 × 重加算税の税率

計算式中の重加算税の税率は以下の通りです。

  原則 無申告または期限後申告の場合
重加算税の税率 35% 40%

上記の他の加算税と比べても、非常に重い税率となっていることが分かると思います。

なお、無申告加算税または重加算税を課された者が、5年以内に再び無申告加算税または重加算税が課された場合には、更なるペナルティとしてそれぞれの加算税に10%が上乗せされます。

 

5)贈与税の納付が遅れた場合 → 延滞税

これまでお伝えしてきた加算税に加えて、納付が遅れた期間に対する利子に相当する延滞税というものが課されます

延滞税の税率は、納付までの期間に応じて決定されます。

期間 申告書提出の翌日から2か月以内の日まで 申告書提出の翌日から2か月を超える日
令和3年1月1日~令和3年12月31日 2.5% 8.8%

延滞税の税率は、市中金利などに応じて暦年ごとに見直しがされます

一般的な定期預金や住宅ローンなどの金利と比べても、非常に高い利率になっていることが分かります。

 

まとめ

この記事では、贈与税の時効と、贈与税の申告や納付が遅れてしまった場合などのペナルティについてみてきました。

税務上の時効の期間を超過しているからといって、絶対に税金が課されないとは言い切れません。

また、贈与税の申告を失念し申告期限を超えてしまった場合などに、そのまま放置してしまうと、将来的に大きなペナルティを課せられる可能性があります。

このようなお困りごとがある場合には、ぜひ一度贈与に対応しているIFAや税理士等の専門家にご相談ください。

※本ページに記載されている内容は2021年8月27日時点のものです
※記載内容に誤りがある場合、ご意見がある方はこちらからお問い合わせください

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