【相続相談事例】相続税は意外と高くない?一般的な家庭での相続模様を見てみよう

この記事をご覧になっている皆さんのご家族は、相続対策を行なっていますか?

現在、いわゆる節税本などが数多く出版され、相続に関する情報は巷にあふれています。

ただ、実際に自分で進めようとしたときに、何から手をつけていいかわからないといった場合も多いでしょう。

そもそも自分が相続税の対象になるのか、相続税対策を行った方がいいのか、という点も判断が難しい場合があると思います。

そのようなときには税理士やFPなどのアドバイザーに相談してみるのも一つの手段です。

この記事では、相続対策の一般的な事例を、具体的な数値を入れてご紹介します。

ぜひ、相続について考える際の参考にしてみてください。

1. 相続のご相談内容

下記のようなご相談をいただきました。

ご相談内容

相続に関する情報を雑誌やテレビ、インターネットなどで見かけることが多いが、自分が相続対策をすべきかどうかがわからない。

税理士や金融機関の営業担当者との付き合いもないので、アドバイスが欲しい。

お客様のプロフィールや財産の状況は次の通りです。

プロフィール

・性別:男性

・年齢:75歳

・職業:年金生活者(現役時代は上場メーカーで部長職を務めた)

・居住地:東京都

・家族構成:

 -妻は、5年前に死別。

 -長男は、東京都在住、53歳、既婚。相談者の妻(長男にとっての母)が亡くなってからは相談者(長男にとっての父)と同居している。

 -次男は、大阪府在住、51歳、既婚。

 -長女は、神奈川県在住、49歳、既婚。

・財産の概要:

財産の種類 内容 価格 左記金額の評価方法
土地 自宅の敷地
大田区所在の宅地105㎡(大森駅から徒歩20分、相続税路線価@400千円/㎡)
4,200万円 相続税路線価
建物 自宅
木造1戸建て
500万円 固定資産税評価額
預金   1,000万円 相談日の残高
有価証券 上場有価証券を10銘柄保有 1,500万円 相談日の時価
合計 7,200万円  
※借入金はない。
 

相談者の思い

自宅は、相談者の妻が亡くなってから、寂しくないように同居してくれた長男に残したい。
次男、長女には金銭や有価証券を残したい。

2. 今回の相続相談の特徴

相続相談事例(1)財産額はおおむね『平均的』な水準

今回のケースでは、都内に一戸建てを所有する元サラリーマンのケースを取り上げています。

遺産の額は7,200万円、相続人は3名ですので相続人一人あたりでは2,400万円です。

この金額は民間企業の調査による『平均』におおむね近い水準に設定しています。

三菱UFJ信託銀行が2018年に行った調査「遺言と相続に関する実態調査」によれば、相続に関して以下の結果が分かっています。

  • 相続を経験した相続人の平均相続金額は2,114万円。男女別では、男性は2,885万円、女性は1,301万円(相続人あたり)。

また、三菱UFJフィナンシャルグループのMUFG資産形成研究所が2020年に行った調査「退職前後世代が経験した資産承継に関する実態調査」では、以下のように報告されています。

  • 亡くなった親の遺産総額は、平均値は6,140万円、中央値は3,450万円。

上記の調査結果は、調査対象に「相続を経験した人のうち、金融機関からのアンケートに回答した人」といった偏りがあるため、その点については注意してみることが必要です。

このくらいの財産規模の場合、税理士との付き合いもなく、金融機関からは営業担当者をつけられていないため、相談相手がいないことが多いです。

 

(2)財産のうち半分以上が不動産

金額ベースでみたときには、遺産総額7,200万円に対して自宅(土地・建物)の合計で4,700万円、その割合は58%になります。

このような、不動産中心の財産構成のご家庭は非常に多いです。

相続人は子供が3名ですので、自宅を長男に残そうとすると、財産の半分以上を長男に渡すことになります。

そのため、そのままでは金額ベースでの平等を図ることはできなさそうです。

 

3. 相続に向けた検討事項

アドバイザーからの提案

このケースでは上記のような特徴を踏まえ、次のように検討をしていきましょう。

 

(1)相続税は課税されるか?

何はともあれ、まずは、相続税額を試算してみましょう。

財産構成は、土地、建物、預金、上場有価証券です。

それぞれの財産の評価方法をざっくりと表現すると以下のようになります。

財産の種類 評価方法
土地 路線価がある地域の場合:路線価方式(路線価が基準)
それ以外の場合:倍率方式(固定資産税評価額が基準)
建物 固定資産税評価額
預金 相続発生時の残高
上場有価証券 相続発生時の終値
(または、過去3か月間の終値の月中平均のうちいずれか低い金額)
  • 土地

土地は、所在する場所によって評価方法が変わります。

今回は都内の駅前であり、路線価が設定されていますので、その金額を基礎に評価をします(相続税路線価@400千円/㎡×105㎡=4,200万円)。

現行税制では、「小規模宅地等の評価減の特例」という評価方法の特例がありますので、上記の計算結果にそれを加味することが必要です(詳細は後述します)。

  • 建物

建物については、固定資産税評価額をそのまま使用して大丈夫です。

固定資産税評価額は、固定資産税課税明細書に記載されています。

(固定資産税課税明細書は、自治体によってまちまちですが、一般的には毎年4月~6月くらいに郵送で届きます。)

  • 預金、上場有価証券

預金は相続発生時の残高、上場有価証券は相続発生時の終値を使用します。

上場有価証券のように細かいルールがあるものもありますが、シミュレーションをするだけであれば現時点の時価を使用すれば差し支えないでしょう。

  • 小規模宅地等の評価減の特例

小規模宅地等の評価減の特例とは、被相続人(本ケースの場合は相談者)が亡くなった時に、居住用として使用していた宅地などを、一定の親族が相続した場合等に活用できる評価方法の特例です。

小規模宅地等の評価減の特例は、宅地がどのように利用されていたかに応じて適用形態はさまざまです。

本ケースでは、相談者が所有・居住している宅地を、同居している長男が相続していますので、「特定居住用宅地等」という枠で適用することができます(細かい適用条件は別の記事でまとめたいと思います)。

特定居住用宅地等という枠に当てはまった場合、宅地の評価は80%減となります(上限は330㎡まで)。

勘違いしやすいのが、20%減ではなく、80%減という点です。

ざっくりいえば、自宅の土地は2割で評価することが可能ということです。

相続開始の直前における宅地等の利用区分 要件 限度面積 減額される割合
被相続人等の居住用に供されていた宅地等 特定居住用宅地等 330㎡ 80%
被相続人等の事業の用に供されていた宅地等 貸付事業以外の事業用の宅地等 特定事業用宅地等 400㎡ 80%
貸付事業用
の宅地等
一定の法人に貸し付けられ、その法人の事業用の宅地等(貸付事業以外) 特定同族会社事業用宅地等 400㎡ 80%
貸付事業用宅地等 200㎡ 50%
一定の法人に貸し付けられ、その法人の貸付事業用の宅地等 貸付事業用宅地等 200㎡ 50%
被相続人等の貸付事業用の宅地等 貸付事業用宅地等 200㎡ 50%

(出典:国税庁「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」)

 

  • 相続税評価額のまとめ

上記の評価方法を踏まえて、相続税評価額を計算すると以下のようになります。

財産の種類 相続税評価額 左記金額の評価方法
土地 4,200万円 相続税路線価@400千円/㎡×地積105㎡
小規模宅地の評価減 △3,360万円 土地の評価額4,200万円×減額割合80%
建物 500万円 固定資産税評価額
現預金 1,000万円 相談日の残高
有価証券 1,500万円 相談日の時価
合計 3,840万円  

小規模宅地の評価減の特例のおかげで、かなり評価額が減少していることが分かります。

それではこのケースでは相続税額はいくらになるでしょうか?

相続税の対象となる課税遺産総額は、以下の計算式により求めます。

課税遺産総額 = 課税価格の合計額 - 基礎控除額

上記の計算式の中にある基礎控除額は、以下の計算式で算出します。

基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

本ケースでは相続人が3名(長男、次男、次女)であるため、基礎控除額は4,800万円(3,000万円+600万円×3名)となります。

遺産の相続税評価額の合計額が3,840万円であり、基礎控除額4,800万円を下回っていますので、本ケースでは相続税が課税されないこととなります。

あくまで現行税制の下ではという前提付きではありますが、相続税の面ではとりあえずは安心して良さそうですね。

ただ、税制改正によって大きく税制が変化する可能性はありますので、常に税制改正をウォッチすることは必要だといえます。

 

(2)円滑に分割することはできるか?

前述の通り、金額ベースでみたときには、遺産総額7,200万円に対して自宅(土地・建物)の合計で4,700万円ですので、その割合は半分以上になります。

自宅を長男に残し、その他を次男・長女で均等に分けようとすると以下のような分割のバランスとなります。

財産の種類 遺産金額 相続人
長男 次男 長女
土地 4,200万円 4,200万円    
建物 500万円 500万円    
現預金 1,000万円   500万円 500万円
有価証券 1,500万円   750万円 750万円
合計 7,200万円 4,700万円 1,250万円 1,250万円

金額だけをみると長男ばかりが相続して不平等のようにみえるかもしれませんが、例えば、長男は相談者の世話をよくみてくれたといった個別の事情がある場合には、その限りではありません。

(究極の平等を目指すのであれば、遺産を全て売却・現金化して金銭で均等に分割・・・となりますが、長男の住まいが無くなるという点で現実的ではありませんし、小規模宅地の評価減を適用できないため税金的にも不利になります)

どのような分割方法がベストなのか、については答えはありません。

一番大切なのは、家族ごとによく話し合って、相続によって家族が不仲になってしまうのを避けることです。

まとめ

本稿では、一般的な家庭での相続模様を確認してきました。

そもそも自分が相続税の対象になるのか、相続税対策を行った方がいいのか、という点も判断ができずモヤモヤしている方も多いと思います。

そういった方は、ぜひ一度、税理士や相続対応可能なIFAなどのアドバイザーに相談してみましょう。

※本ページに記載されている内容は2021年12月3日時点のものです
※記載内容に誤りがある場合、ご意見がある方はこちらからお問い合わせください

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