「健康寿命」という言葉を聞いたことがありますか?
健康寿命とは、生涯のうち健康に暮らせる期間のことです。
定年と、年金受給開始年齢が引き上げられることもあり、長く健康であることが「人生100年時代」において重要になってきます。
では、実際に寿命と健康寿命にはどれくらいの差があるのでしょうか?
健康寿命の実態を知り、「人生100年時代」における健康について考えてみましょう。
1. 健康寿命とは
健康寿命とはWHO(世界保健機関)が2000年に提唱した指標で、「平均寿命から、寝たきりや認知症など介護状態の期間を差し引いた期間」のことです。
私たちが普段目にする平均寿命には、寝たきりや認知症などの介護期間、病気などによる医療が必要な期間も含まれています。
一方で、健康寿命は日常的に医療・介護に依存することなく、自立した生活ができる期間を表しています。
そのため、平均寿命と健康寿命の差(以降、厚生労働省の表現にならい「不健康な期間」とします)が小さいほど人生の質が高いことになります。
私たちの人生において健康寿命の維持は重要です。
また、国としても健康寿命が長いことは、医療費や介護費の削減に結び付きます。
そのため、WHOをはじめ世界各国の政府や保健機関も、健康寿命を高め、生涯に対する健康寿命の割合を高めることを重要な政策目標にしています。
日本では、厚生労働省が「健康日本21」で「健康寿命の延伸」を目標に、様々な施策を検討・実行しています。
平均寿命と健康寿命の差(不健康な期間)
では、実際に平均寿命と健康寿命にはどれくらいの乖離があるのでしょうか?
厚生労働省の発表値では、男女ともに不健康な期間が10年前後あります。
- 男性は平均寿命81.0歳に対して、健康寿命は72.1歳、不健康な期間は8.9年
- 女性は平均寿命87.1歳に対して、健康寿命は74.8歳、不健康な期間は12.3年
男女ともに平均寿命・健康寿命は伸びています。
しかし、2001年から2016年までの寿命と不健康な期間を見てみると、あまり変化していないことが分かります。
また、不健康期間は男性で約9年、女性は約12.5歳と非常に長いように感じます。
世界と比較するとどうでしょうか?
先進諸国は多くの国が不健康期間の問題を抱えている
WHOの集計データによると、2016年に日本は世界の中で平均寿命は1位、健康寿命は2位になっています。
しかし、不健康期間は145位です。
この表は、WHOの同じデータから、健康寿命が1位〜5位の国のデータを抽出・編集したものです。
ここから、健康寿命が長い国は先進国が多いことが分かります。
そして、不健康な期間はシンガポールを除く国では、いずれも9年を超えています。
つまり、先進諸国と比べて、日本の不健康期間が突出して高いわけではありません。
しかし、平均して10年近くも医療・介護に依存した生活を送っている現状は改善する必要がありそうです。
ちなみに、シンガポールが不健康な期間が短い理由は、国と国民の健康意識の高さが要因ではないかと言われています。
(一部定性的な情報であるため、参考程度にご理解ください)
- アルコール・タバコの摂取量が少ない
- 高い税金が掛けられており、公共の場での摂取も制限されている
- 富裕層が多く、健康への意識が高い
- 国民皆保険制度がなく、病気や怪我になると高い医療費が掛かる
- そのため健康への意識が高い
ここまで、日本は世界でも平均寿命・健康寿命ともに最も長い分類に入る国であることを見てきました。
ここからは、老後に対する不安について見ていきましょう。
2. 老後の不安トップは「お金」と「健康」
内閣府の「国民生活に関する世論調査2019年」によると、老後に対して多くの人が「お金」と「健康」に不安を感じていることが分かります。
現在上位になっている不安と、1992年から2019年にかけての増加率は以下のようになっています。
-
老後の生活設計(+17.8%)
-
自分の健康(+12.3%)
-
家族の健康(+5.9%)
-
今後の収入や資産の見通し(+18.6%)
健康面の不安とともに、将来の生活・資産への不安が広がっていることが分かります。
「お金」と「健康」は互いに影響する要素であるため、合わせて考える必要があります
- 老後の医療・介護費を計算して、定年(何歳までを働くか)を考え、資産形成・資産運用を行っておく
- 定年を考えて、その歳まで健康を維持できるよう生活習慣を見直す
もちろん、定年後も長く健康を維持することは人生において大切なことです。
しかし、まず元気に定年まで働き、お金の面でも安心して老後を過ごせる状態を作っておくことが重要です。
「老後資金がいくら必要か知りたい」「資産形成・保険の相談をしたい」「定年と老後資金について相談したい」という方は、プロのアドバイザーに相談してみてましょう。
相談したからといって、必ず申し込みなどを行う必要はありません。
まずは気軽に相談してみましょう。
次に、定年と健康寿命の関係を見ていきましょう。
3. 定年延長と健康寿命の関係
当然ながら、健康でなければ働くことはできません。
日本は長寿化と少子高齢化の影響により、定年年齢と年金受給開始年齢が引き上げられています。
日本人の健康寿命は2016年時点で75歳でした。
では、定年年齢は何歳でしょうか?
定年年齢は2020年時点では60歳です。
これが、2025年までに65歳に引き上げられます。
また、2021年には企業に対し定年年齢70歳が努力目標になります。
2020年時点では定年と健康寿命には15年の差があります。
しかし、定年が70歳になると健康寿命との差は5年にまで縮まります。
(健康寿命も伸びていくと思われるため、実際にはもう少し長くなると考えられます)
定年70歳はすぐに義務化されるわけではありませんが、より健康寿命が大切になってくることは間違いなさそうです。
では、私たちが健康を維持するためには何が大切でしょうか?
4. 健康寿命を伸ばすためにできること
では、健康寿命を伸ばすためには何ができるでしょうか?
そのためには、まず病気になる要因を知る必要があります。
病気は以下の要因が複合的に積み重なることで発症すると考えられています。
- 外部環境要因:病原体、有害物質、事故、ストレスなど
- 遺伝要因:遺伝子異常、加齢など
- 生活習慣要因:食生活、運動、喫煙、飲酒、急用など
厚生労働省・人口動態統計2019によると、日本人の死亡要因は老衰を除くと、①がん(悪性新生物)27.3%、②心疾患15.0%、③脳血管疾患7.7%となっています。
これらの病気は、40歳前後から死亡率が高くなることから、以前は「成人病」と呼ばれていました。
その後の研究で、成人病は突然発症するものではなく、上記の要因が積み重なることで発症する可能性が高いことが分かってきました。
その結果、1996年の公衆衛生審議会において「食習慣、運動習慣、休養、 喫煙、飲酒等の生活習慣が、その発症・進行に関与する疾患群」が「生活習慣病」として定義されました。
現在、日本では厚生労働省が掲げる「健康日本21」が健康施策の基本方針になっており、その冒頭で生活習慣の改善が次のように取り上げられています。
この理念に基づいて、疾病による死亡、罹患、生活習慣上の危険因子などの健康に関わる具体的な目標を設定し、十分な情報提供を行い、自己選択に基づいた生活習慣の改善および健康づくりに必要な環境整備を進めることにより、一人ひとりが稔り豊かで満足できる人生を全うできるようにし、併せて持続可能な社会の実現を図るものである。
厚生労働省「健康日本21(総論)はじめに」より抜粋
やや古い調査データになりますが、リスク要因と死亡者数の関連を見ると、生活習慣に関する要因が上位に来ています。
つまり、健康寿命を伸ばすためには「1人1人が生活習慣を改善し、維持することが大切」だと考えられます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
この記事では以下のことをお伝えしてきました。
- 日本は健康寿命が長い国だが、それでも不健康期間が10年近くある
- 老後に向けて、お金と健康のことを考えておく必要がある
- 日本は定年延長が進んでいて、定年と健康寿命の歳が近づいている
- 健康寿命を維持するには生活習慣を改善し、維持する必要がある
「あなたらしい人生100年」にしていくために、ぜひ定年年齢・老後資金・健康寿命について考えてみましょう。