上場株などの売買で損失が出てしまった場合、その損失を最長で3年間繰り越すことができます。
ただし、この制度を適用する場合、確定申告の手続きを行う必要があります。
制度の内容を把握して、損失を少しでもカバーできるようにしましょう。
1. 投資利益への課税と損益通算
まず、株式投資や投資信託によって得られた利益には税金がかかります。
税率は20.315%ですので、利益が100万円の場合は約20万円を納税する必要があります。
ただし、1年間を通しての取引で譲渡損失がある場合には、それらをまとめることができます。
例えば、ある年の取引が以下の場合は合計の損益が▲10万円ですので、納税を行う必要はありません。
- 株Aの譲渡益 : +100万円
- 株Bの譲渡損 : ▲50万円
- 株Cの譲渡損 : ▲60万円
このように、1年間の取引を合算することを損益通算と言います。
また実際の取引では、株の配当や売却を行なったときに、取引ごとに税額が自動で差し引かれます。
損益通算は、確定申告を行うことで後ほど還付されることになるため、きちんと確定申告を行うようにする必要があります。
ただし、証券会社の特定口座を利用している場合には、申告が不要の場合もあります。
損益通算の適用については、こちらの記事をご確認ください。
また、損益通算と次に説明する損失の繰越控除が適用できる商品は、上場株式などに限定されています。
損益通算の適用対象取引(上場株式など)
- 国内・海外の上場株式の売却損益・配当金(上場していない一般株式は対象外)
- 国内・海外のETFの売却損益など
- REITの売却損益など
- 公募型投資信託の売却損益・分配金
- 公社債(国債・地方債・外国国債など)の売却損益・利子など
外国為替証拠金取引(FX)、先物取引にも損益通算の制度はありますが、上記の上場株式などとの通算はできません。
次に、損益通算がマイナスになった場合に適用できる、損失の繰越控除について見ていきます。
2. 損失の繰越控除
また、先ほどの例のように、損益通算の結果1年間の取引がトータルで損失の場合は、翌年以降に損失を繰り越すことができます。
繰り越すことのできる期間は、繰り越しを行なった年の翌年から3年間です。
具体的な例をあげると、3年間の投資結果と税金額は次のようになります。
年 | 損益通算 の金額 |
控除金額 | 課税対象 の利益 |
税金額 | 翌年の 繰越損失額 |
基準年 | ▲100万円 | - | - | - | 100万円 |
1年後 | + 50万円 | 50万円 | 0円 | 0円 | 50万円 |
2年後 | + 40万円 | 40万円 | 0円 | 0円 | 10万円 |
3年後 | + 30万円 | 10万円 | 20万円 | 約4万円 | 0円 |
この例の場合、繰り越した後の3年間の合計利益は120万円ですので、税金の額は約24万円になります。
ですが、損失の繰越控除を適用することで利益が出ている年の税金を抑えることができ、3年間の税額を合計約4万円に抑えることができます。
また、損失の繰越控除は適用するには、必ず確定申告を行う必要があります。
仮に利益が出ていない年があった場合も、確定申告が必要です。
まとめ
1年間の取引がマイナスだった場合、損失の繰越控除はほとんどの人にとって必ず活用すべき制度です。
もちろん、損失がないに越したことはありませんが、損失が出てしまった場合には、確定申告で対応しましょう。
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