離婚による財産分与の種類と課税|税金的にはどのような財産を分与するべきなのか?

現在、日本においては、結婚した夫婦の2.5組に1組が離婚してしまうといわれています。

夫婦が二人で資金を貯めて買った家や車、毎月貯めてきた預貯金などについて、結婚生活中は「夫婦の共有の財産」という認識でいたとしても、問題が発生することは少ないかもしれません。

しかし、不幸にも離婚することになってしまった場合には、結婚生活中に二人で作り上げた財産をしっかりと分割しなければなりません。これが財産分与です。

財産分与をするときには、税金の問題が発生することがあります。税金についても、感情的にならずしっかりと確認することが大切です。

本稿では、離婚による財産分与の種類と課税関係、どのような財産を分与すれば税金の問題が発生しないのかについてご説明します。

 

1. 財産分与の性質と種類

離婚とは、夫婦の両方が生存中に、婚姻を解消することをいいます。

そして、財産分与は、「相手方に対して財産の分与を請求することができる」と定められている法律上の権利です。

財産分与と一口でいいますが、財産分与にはいくつかの種類がありますのでそれぞれを説明していきます。

 

1)共有財産の清算としての財産分与(清算的財産分与)

夫婦が結婚生活中に力を合わせて蓄積した財産を清算するという意味合いの財産分与であり、清算的財産分与といいます。

結婚生活中では、夫婦が二人で資金を貯めて購入した家や車などについて、夫婦の認識の上では「夫婦の共有」であるとことも多くあるでしょう。

しかし、例えば、資金は夫の口座から支払ったからという理由で、名義上は夫が単独で所有しているというケースもあります。

また、夫婦のどちらかの口座に、将来の子育て資金や老後資金を貯めていくこともあるでしょう。

これらのケースでは、「誰の名義になっているか」と「実体は誰のものか」にズレがある状態となっています。このようなズレを清算するという点から、清算的と呼称されています。

 

上記の性質から、清算的財産分与では離婚の原因を作った責任があるといった事情は一切関係がありません

例えば、不倫によって離婚の原因を作った側であったとしても、清算的財産分与の請求権は有することになります。

不倫により離婚を招いてしまった責任は、後述する慰謝料的財産分与などによって解決します。

 

なお、原則的には50%ずつ分配することが基準となります。たとえ、夫婦の一方が専業主婦(夫)であったとしても、家事労働の対価や専業主婦(夫)をしている期間のキャリア損失を考慮して、結果的には50%ずつの分配となることが多いようです。

その他の特殊な事情がなければ、清算的財産分与のみを行い、離婚をした後にはお互いの財産について侵害や請求をしないことになります。

 

2)扶養としての財産分与(扶養的財産分与)

扶養としての財産分与とは、夫婦の一方が経済的に苦しい状況となってしまう場合に、その支援を目的として、経済的に余裕のある側から分与されるものです。

例えば、病気のため働くことができないケースや、長年にわたって専業主婦(夫)をしていたためすぐに就職することが難しいケースが該当します。

扶養的財産分与の期間は、個別の事情によって様々ですが、6か月~3年くらいが相場とされています。

 

3)慰謝料としての財産分与(慰謝料的財産分与)

慰謝料としての財産分与とは、慰謝料の性質を持つ財産分与をいいます。

例えば、不倫やDVなどにより離婚の原因を作った側が、被害者側の苦痛を和らげることを目的として、財産を分与するものです。

 

 

財産分与の種類については、確認することができましたか?

次の章では、どのような資産が財産分与の対象となるかを説明していきます。

 

2. 財産分与の対象となる財産とは?

財産分与の種類財産分与について検討をするときには、まずどの財産が分与の対象になるのかを明らかにしなければなりません。

どのような財産が、財産分与の対象になるかを確認していきましょう。

 

1)財産分与の対象となる「共有財産」

夫婦の共有財産は、財産分与の対象となります。

前述の通り、実質的には夫婦二人の協働により作り上げてきた資産でも、名義上はどちらか一方の所有となっているケースがあります。

共有財産については、実質的にはどうかという観点で判断がなされます。

そのため、結婚期間中に夫婦が協力をして作り上げてきた財産といえるもの、例えば、家、預貯金、保険解約返戻金、有価証券などは、(夫婦のどちらか片方の名義になっていたとしても)共有財産に該当する余地があるといえます。

なお、夫婦のどちらが所有しているか明らかでない財産についても、夫婦の共有に属しているとみなされます

 

2)財産分与の対象とならない「特有財産」

上記に対して、特有財産は財産分与の対象にはなりません

特有財産とは、「夫婦のそれぞれが結婚する前から所有していた財産」と「結婚中であっても夫婦生活とは全く関係のないところで得た財産」をいいます。

後者については、例えば、夫の父が亡くなり、財産を相続したようなケースがあります。

この場合の相続財産は、夫婦生活とは関係ない特有財産であることから、財産分与の対象外となります。

 

3. 財産分与を受けた場合の税金

それでは財産分与を受けた場合にはどのような課税がなされるのでしょうか?

財産分与による財産の取得は、夫婦の一方から他方に対する財産分与請求権に基づいて、共有財産を分割して取得するものです。

贈与により一方から取得するものではないため、原則として贈与税は課税されません

 

1)財産分与を受ける側の税金

財産分与により財産を取得した側においては、原則として贈与税は課税されません。

しかし、財産分与により取得した財産の金額が、お互いの財産額や収入額などの一切の事情を考慮しても多すぎる場合には、その多すぎる部分についてた贈与税が課税されます

また、離婚による財産分与が原則として贈与税がかからないということを悪用して、贈与税や相続税を回避しようとした場合には、財産分与の全額に贈与税がかかります

区分 贈与税
財産分与請求権に基づく財産分与 共有財産の清算としての財産分与 なし
扶養としての財産分与
慰謝料としての財産分与
不当に多額である部分 贈与税の課税あり
財産分与を悪用して贈与税・相続税を回避しようとした場合

 

2)財産分与をする側の税金

財産分与により財産を渡す側においては、分与する財産によっては、課税が発生する可能性があります

現金や預貯金である場合には、税務上の問題が発生することはありません。

土地や建物など、時価と取得価額に乖離がある財産を分与する場合には、その財産を分与する際に時価で売却したとみなされて譲渡所得税が発生します。

なお、マイホームの土地・建物を財産分与することで譲渡所得税が発生する場合には、「居住用財産の3,000万円の特別控除の特例」を活用することができます。

居住用財産の3,000万円の特別控除の特例については、下記の記事でも触れていますので、併せてご確認ください。

贈与税を計算する 婚姻20年以上で活用できる贈与税の配偶者控除で賢く相続対策
分与する財産の種類 譲渡所得税等
金銭 なし
不動産 居住用 分与する人が居住している

時価で譲渡したものとして課税

(3,000万円控除の適用あり

分与する人が居住しなくなってから3年を経過する年の年末までの分与
上記以外

時価で譲渡したものとして課税

(3,000万円控除の適用なし

非居住用
上記以外の財産(譲渡所得の起因となるもの) 時価で譲渡したものとして課税

 

上記のような課税関係であるため、次のような財産を有している場合には、優先的に分与を検討することが望ましいと考えられます。

  • 現金や預金など時価と取得価額に乖離がない財産
  • 居住用財産(一定の要件を満たすことで居住用財産の3,000万円特別控除の特例の適用が可能です)

 

まとめ

この記事では、離婚による財産分与の種類、それぞれの課税関係、どのような財産を分与すれば良いのかについて確認してきました。

離婚は珍しいものではありません。人生における一大事ですが、感情的にならずに、一つ一つ冷静に対処していくことが必要です。

離婚に関するお困りごとがある場合には、ぜひ一度、税務に強いIFAや弁護士・税理士等の専門家にご相談ください。

※本ページに記載されている内容は2021年8月26日時点のものです
※記載内容に誤りがある場合、ご意見がある方はこちらからお問い合わせください

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