銀行や証券会社で証券口座を開設するときに、必ず決めなければいけないのが口座の種類です。
ただ、特にこれから投資を始める人にとって、口座の種類が何に影響するかはなかなか理解ができないことだと思います。
また、あまり意識せずに開設して、そのままにしている人も多いと思います。
この記事では、口座の種類とその特徴を確認していきます。
1. 口座の種類と特徴まとめ
まず、口座の種類と特徴を大まかに把握してみましょう。
口座の種類 |
利益への課税 | 確定申告 | 取引金額・期間の制限 | 対象商品の制限 | |
非課税口座(NISA) | なし | 不要 | あり | あり (上場株式、投資信託など) |
|
特定口座 | 源泉徴収あり | あり | 不要 | なし | |
源泉徴収なし | あり | 必要(簡易) | |||
一般口座 | あり | 必要 | なし | なし |
どの口座を選択するかは、投資経験によって変わってきます。
表の下に行くほど、投資の自由度は増えますが、その分税務上の手続きの手間などが増えます。
そのため、投資経験が少ない方は表の上から順番に口座開設を検討するのが良いと思います。
それぞれの口座について、その特徴を見ていきます。
2. 非課税口座・NISAの特徴(メリット・デメリット)
非課税口座とは、いわゆるNISA口座のことです。
NISAには、一般NISA・つみたてNISA・ジュニアNISAの3つがあり、それぞれ特徴が異なりますが、共通する特徴をまとめると次のようになります。
NISA口座の特徴
- 投資で得た利益に税金が掛からない(そのため、確定申告が必要ありません)
- 取引可能な金額と期間に制限がある
- 投資可能な商品に制限がある
名称の通り、非課税・NISA口座の最大の特徴は、課税されないことです。
そのため、これから投資を始める人、NISA口座を持っていない人は、まずここから検討するべきだと考えられます。
投資で得た利益には、約20%の税金が課税されます。
例えば、100万円の利益に掛かる税金約20万円を節税できる点は、非常に大きなメリットです。
ただし、NISA口座での取引には、投資できる金額や期間に制限があります。
- 一般NISAは、年間120万円が上限金額、投資可能な期間は5年間(最大600万円)
- つみたてNISAは、年間40万円が上限金額、投資可能な期間は20年間(最大800万円)
- ジュニアNISAは、年間80万円が上限金額、投資可能な期間は5年間(最大400万円)
※ジュニアNISAは2023年12月末で制度が終了します。
NISAについて詳しく知りたい方は、こちらの記事を合わせてどうぞ。
3. 特定口座の特徴(メリット・デメリット)
次に、検討するのが特定口座です。
NISA口座で投資可能な金額・期間を超えて取引を行いたい場合、特定口座での運用を検討します。
特定口座の特徴
- 利益に対して税金が掛かる
- 確定申告が不要、または簡易に申告ができる
- 取引可能な金額と期間に制限がない
- 投資可能な商品に制限がある
特定口座では、源泉徴収のあり・なしを選択する必要があります。
源泉徴収あり・なしによって変わることは、確定申告が必要かどうかです。
- 源泉徴収ありの場合 : 確定申告が必要ない
- 源泉徴収なしの場合 : 確定申告が必要
源泉徴収とは、投資家が投資によって得た利益に対する税金を、金融機関が代わりに納税する制度です。
会社員の方であれば、給与所得に対する税金を払っている意識が普段はあまりないと思いますが、それは所属している企業が給与から天引きして支払っているからです。
それと同じで、配当や譲渡所得にかかる税金を、金融機関が天引きして税金を納めるのが源泉徴収です。
源泉徴収あり・なしの特徴を、掘り下げて見てみます。
1)源泉徴収あり
まず、源泉徴収ありの最大のメリットは、確定申告が必要ないことです。
そのため、手続きなどの手間がなく、少ない負担で運用することができます。
特定口座の特徴(源泉徴収あり)
- 確定申告が不要 ※確定申告を行うことも可能(損益通算・損失の繰越を適用したい場合)
- 扶養に入っている人にとって有利
- 20万円以下の利益にも税金が掛かる
ただし、3つの注意点があります。
① 複数の証券口座で投資をしている場合
複数の証券口座で投資をしている場合、株や投資信託で生じた損失を利益と相殺することができます。
例えば、20万円の利益が得られた一方、30万円の損失がある場合、合計で10万円のマイナスになるため税金が免除される制度で、この制度を損益通算と呼びます。
また、さらにこのマイナス10万円は翌年以降に繰り越すことができ、翌年以降に得られた利益とも相殺することができます。
特定口座を選択している場合でも、複数の口座で損益通算を行う場合には、確定申告が必要です。
そのため、特定口座で運用している場合でも、複数の口座を保有していて、かつ損失がある場合には確定申告を行うようにしましょう。
損益通算、繰越控除についての詳細はこちらの記事をどうぞ。
② 扶養に入っている場合
学生や専業主婦・夫などの扶養に入っている人は、特定口座・源泉徴収ありを選択するべきだと言えます。
その理由は、確定申告が必要ないため、投資によっていくら利益を得たとしても、扶養から外れることがないからです。
確定申告を行なった場合、株や投資信託の配当や譲渡によって一定の所得がある場合、扶養の条件から外れてしまいます。
そのため、扶養に入っている人は、特定口座・源泉徴収ありでの運用が選択肢となります。
③ 会社員で投資金額が少ない場合
最後に、会社員で給与が2,000万円以下の場合、給与以外の収入が20万円以下の場合、その分の税金を支払う必要がありません。
※ただし、副業などで複数の収入がある場合には、当てはまらないケースがありますので、詳細は税理士などにご確認ください。
源泉徴収ありの特定口座では、金融機関が自動的に納税してしまうため、この条件に該当する場合でも税金を支払うことになってしまいます。
そのため、投資金額が少ない、または想定される利益が少ない場合には、税金を抑えるために源泉徴収なしの口座を考える必要があります。
2)源泉徴収なし
源泉徴収のない口座の特徴は、源泉徴収ありの裏返しです。
特定口座の特徴(源泉徴収なし)
- 確定申告が必要 ※ただし、簡易に申告が可能
- 投資収入が多い場合、扶養から外れる可能性がある
- 利益が20万円以下の場合は、税金を納める必要がない
最も大きなポイントは、確定申告が必要であることです。
ただし、金融機関が作成する「特定口座年間取引報告書」によって、簡易的に申告を行うことができます。
最後に、一般口座を確認してみましょう。
4. 一般口座(メリット・デメリット)
一般口座の特徴
- 利益に対して税金が掛かる
- 確定申告が必要
- 取引可能な金額と期間に制限がない
- 投資可能な商品に制限がない
一般口座が、特定口座と大きく異なる点は、確定申告が必要であることと、投資可能な商品に制限がないことです。
確定申告は、特定口座・源泉徴収なしの場合と異なり、金融機関からの報告書がないため、自分で計算して明細書を作成する必要があります。
ただし、金融機関によっては、一般口座利用者向けに確定申告のサポートを行なっているサービスもあります。
また、特定口座の対象となっている金融商品以外の取引を行う場合は、一般口座で取引を行う必要があります。
そのため、次のような商品で投資を行う場合は、一般口座を選択することになります。
- 非上場株式
- 先物・オプション取引
- FX(外国為替証拠金取引)など
まとめ
証券口座を選ぶ順番と、対象となる人をまとめると大まかに次のようになります。
- 非課税のNISA口座(これから投資を始める人、NISA口座を持っていない人)
- 特定口座の源泉徴収あり(NISAを超える金額・期間で投資を行いたい人)
- 特定口座の源泉徴収なし(会社員で利益が20万円以下の見込みの人)
- 一般口座(NISAや特定口座以外の商品への投資を行いたい人)
ただし、個別の状況によって選ぶべき口座は変わってきますので、「投資・資産形成を始めたい」「開設する証券会社・口座のアドバイスが欲しい」といった方は、1度アドバイザーに相談してみてはいかがでしょうか?
相談料は無料ですので、アドバイスを聞いた上で決めるのが良いと思います。
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