人生の3大支出は、住宅費・教育費・老後の生活費だと言われています。
住宅費や老後の生活費は計画的に貯めている人も多いと思いますが、教育費については漠然と捉えている人も多いのではないでしょうか。
しかし、教育費の中でも特に大学は、私立に進学する場合や学科によって大きく学費が異なってきます。
できるだけ子供が望む進路に進むことができるよう、親子で話をしてそのための準備をしておくことが望ましいと言えます。
この記事では、大学への進学状況と大学の学費を中心に必要となるお金を見ていきます。
※この記事で使用している大学の授業料などの金額は、個別に注釈がある場合を除き、文部科学省「国公私立大学の授業料等の推移」「令和元年度 私立大学等入学者に係る初年度学生納付金 平均額(定員1人当たり)の調査結果について」を元に、Route100編集部が表などを作成しています(採用している金額は、すべて平成29年度のものです。)
1. 大学への進学状況
まず、大学へはどのくらいの人が進学しているでしょうか?
大学などに進学する人の割合は年々高くなってきています。
高校卒業後の進路 | 進学率 |
大学(学部) | ★ 54.4% |
短期大学 | 4.2% |
専門学校 | ★ 24.0% |
高等専門学校4年 | 0.9% |
合計(高等教育機関) | ★ 83.5% |
文部科学省「学校基本調査(2020年度)」を元に、Route100編集部制作
★印を付けているものは、進学率が過去最高となった進路です。
これを見ると、全体的に高等教育への進学が高まっている傾向にあることが分かります。
- 大学(学部)への進学率は54.4%と過去最高
→ 2000年の大学進学率は40%弱であるため、 - 専門学校の進学率も過去最高
- 4つの進路を総合した、高等教育機関への進学率も83.5%と過去最高
特に大学への進学率は2000年時点では40%弱であったため、昔と比べて大学への進学者が増えていると感じる人も多いかもしれません。
(ただし、若年人口が減少の傾向にあるため、実際の大学在学者数はそれほど増えていません。)
2. 学費の内訳と初年度の納付金額
大学で必要となる学費は授業料が主な費用ですが、その他に入学時に納める入学料と、特に私立大学の場合には設備利用料が必要となります。
また、平均的には大学の区分によって次の学費が初年度に必要となります。
大学の区分 | 入学料 | 授業料 | 設備利用料 | 初年度合計 |
国立大学 | 28万円 | 54万円 | - * | 82万円 |
公立大学 | 39万円 | 54万円 | - * | 93万円 |
私立大学 | 25万円 | 90万円 | 18万円 | 133万円 |
※1,000円単位で四捨五入、* 国立大学・公立大学の設備利用料は学科や実習によって必要となるケースあり
学科によって実習費などが必要になることもありますが、大きな内訳はどのような大学の区分であっても同じです。
初年度の学費だけを見ると、国公立大学と私立大学にそこまで大きな違いがないように感じるかもしれませんが、4年間の合計金額では大きな違いが生じます。
3. 国公立大学と私立大学の学費の違い
先ほどの学費を元に、4年間で必要となる学費を国公立大学と私立大学で比較してみます。
ただし、大学・学科によっては年次が上がるにつれて学費が上がるケースもありますが、ここでは平均授業料を単純に4年間で計算しています。また、留年などを考慮した平均卒業年数も計算には含みません。
大学の区分 | 入学料 | 授業料 | 設備利用料 | 合計 |
国立大学 | 28万円 | 216万円 | - * | 244万円 |
公立大学 | 39万円 | 216万円 | - * | 255万円 |
私立大学 | 25万円 | 360万円 | 72万円 | 457万円 |
※1,000円単位で四捨五入、* 国立大学・公立大学の設備利用料は学科や実習によって必要となるケースあり
初年度だけでは、国公立大学と私立大学の間にそれほど大きな差は見られませんでしたが、4年間では200万円以上の差が生じます。
また、国立大学は法律によって学費が定められており、学部によらず授業料は同じです。(専攻によって一部異なる学科もあります。「国立大学等の授業料その他の費用に関する省令」より)
一方で、私立大学は学科によって大きく学費が異なるため、より注意が必要です。
4. 私立大学の学部による「学費」の違い
私立大学の学費を学部の系統別に見ると、次のような違いがあります。
※医科歯科系の学部は、一般的に卒業に6年間を要するため、授業料・設備利用料を6年間で計算しています。
学部の分類 | 入学料 | 授業料 | 設備利用料 | 合計 |
文科系学部 | 28万円 | 317万円 | 60万円 | 405万円 |
理科系学部 | 26万円 | 447万円 | 71万円 | 544万円 |
医科歯科系学部 | 107万円 | 1,721万円 | 517万円 | 2,345万円 |
「令和元年度 私立大学等入学者に係る初年度学生納付金 平均額(定員1人当たり)の調査結果について」を元に、令和元年度の数値を元にRoute100編集部が作成
全体的に理系の学部の学費が高い傾向にありますが、医学部・歯学部は授業料が他の学部よりも高いことに加え、6年制であることが一般的であるため、学費も突出して高くなっています。
文科系の学部は約400万円ですが、医科歯科系の学部では4倍以上、実に2,000万円以上の学費が必要になることが想定されます。
このように、国公立大学か私立大学かによっても必要となる学費は変わってきますし、さらに私立大学の場合は学部によって大きく学費が変わってくるため、事前に進路について親子で話し合った上で準備を行なっていくことが重要だと言えます。
5. 学費以外に必要な費用
また、大学生活を送る上では先ほどの学費以外にも必要となる費用が多くあります。
大きく必要となる経費は3つです。
- 交通費や教材費
- 住居・生活費(1人暮らしの費用)
- 娯楽費や部活・サークル活動に要する費用
1)交通費や教材費
交通費や教材費は、基本的に誰もが必要とする費用です。
交通費は大学が近くであれば抑えることができますし、教材費も大学の近くの古本屋やインターネットで中古の参考書を購入するなどしてある程度抑えることはできます。
しかし、いずれにしても学業のために必要となる経費であるため、一定程度は必ず必要となります。
特に教材費については、大学は履修する科目も多く、専門性も高まるため、一般的な書籍に比べると価格が高い傾向があります。
そのため、前期・後期の年2回のタイミングで数万円が必要となることも見込んでおくことが望ましいです。
2)住居・生活費(1人暮らしの費用)
また、最も大きな違いが出てくるのが、1人暮らしを行うかどうかです。
自宅から通学する場合、多くの人は高校生までと同様であるため、それほど費用は変わりません。
しかし、地域によっても大きく異なりますが、一般的にはアパート・マンションなどの賃貸費と、月々の生活費を合わせると10万円前後が必要となってきます。
毎月10万円を積み重ねると、年間で120万円、4年間では480万円が必要となります。
そのため、大学の区分に加えて、自宅から通える大学に進学するかもお金の観点では重要になります。
3)娯楽費や部活・サークル活動に要する費用
最後に、部活動やサークル活動に必要となる費用です。
大学生になると、行動範囲が広がることで、学校内の部活動やサークル活動、または学校外での活動に参加する機会も増えてきます。
どのような活動を行うかによって、必要となる費用も大きく変わってきますが、そのような費用も必要となること、その費用をどこから捻出するかも頭に入れておく必要があります。
このように、大学では学費だけでも数百万円のお金が必要になることに加え、特に1人暮らしの場合は大きな資金が必要となります。
そのため、子供と一緒に進路のことを話した上で、お金の準備もしっかりと行なっていく必要があります。
6. 教育資金の準備方法
では、その教育資金はどのように準備を行えばよいでしょうか?
教育資金の準備方法には、大きく2つの方法があります。
- 貯蓄や資産運用によって準備する
- 奨学金や教育ローンを利用する
1)貯蓄や資産運用による準備
まず、最初に考えるべきは、貯蓄や資産運用によって教育資金を用意することです。
奨学金や教育ローンは、種類によっては元本に利子を加えて返済するケースもあります。
そのため、できる限り自己資金で用意することが望ましいと言えます。
教育資金に限ったことではありませんが、現在日本の銀行金利はゼロ金利に近い状態であるため、資産運用には向いているとは言えません。
ご自身の状況に合わせて、投資・資産運用を行なっていくことが望ましいと言えます。
また、自己資金だけでは用意することが難しい場合、親から援助してもらうことも1つの手段です。
一般的に金銭の贈与を行うときには贈与税が課せられますが、教育資金の一括贈与の制度を使うことで最大1,500万円までを非課税で贈与することができます。
ただし、この制度は現在のところ、2023年3月末が期限となっているため注意が必要です。
このように、まずは自己資金で用意することを前提に、早めに準備を行うようにしましょう。
2)奨学金・教育ローンの利用
次に、自己資金で用意できない場合には、奨学金や教育ローンを活用することが考えられます。
奨学金には、給付型と貸与型があり、給付型の場合は返済義務はありませんが、適用の条件は厳しくなっています。
貸与型の場合は、無利息のパターンと利息がつくパターンがありますが、いずれにせよ元本は返済する義務があります。(詳しくは「日本学生支援機構」ホームページでご確認ください。)
また、教育ローンには国が提供する日本政策金融公庫の「教育一般貸付」と、金融機関が提供する教育ローンがあります。
これらは名前の通りローンですので、元本とは別に金利を返済する必要があります。
そのため、最終的に支払う金額は借りた金額よりも多くなりますので、できるだけ早く準備を行うことが望ましいと言えます。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
大学の学費は数100万円単位のお金が必要となり、学費以外の費用も含めると1,000万円を超える費用が必要になることもあります。
そのため、できるだけ早い段階で親子で将来の話をして、親としては事前に余裕をもって準備を行なっていくことが大切だと言えます。
一方で、考えるべきことは教育資金だけでなく、住宅費用や老後資金の準備も並行で行なっていく必要があり、そのようなライフイベントへの準備を同時に行なっていくことが難しいと感じる方や、どうしていくべきかわからないことも多いと思います。
そのような場合は、ライフプランや資産運用の知見を持ったアドバイザーに相談してみてはいかがでしょうか。
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アドバイザーも、困っている人の役に立ちたいと思っていますので、まずは気軽にご相談ください。
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※この記事は、一般的な社会環境を説明することを目的としています。
※投資・資産運用を含め、投資の実行を推奨するものではありません。
※実際の投資にはリスクを伴い、思わぬ損害を被る場合もあります。個別商品のリスクや手数料については、ご自身でご確認ください。