相続人がいない場合、財産は特別縁故者、国庫などに

日本では、未婚率が上昇し、生涯を独身で過ごす人も増えています。

そのため、相続が発生したときに相続人になる人がおらず、財産を相続する人がいないというケースも多くなっています。

財産を受け継ぐ人がいなかった場合、相続財産は全て国庫に納められてしまうのでしょうか?

必ずしもそういうわけではありません。

本稿では、相続人不存在とはどのような状態か、その場合には財産はどこへ行ってしまうのかについて確認していきましょう。

1.相続人不存在とは?

1)相続人不存在になる代表的なケース

相続人不存在とは、亡くなった人に法定相続人がいないことをいいます。

それではどのような場合に、相続人不存在となるのでしょうか?

代表的なケースには、以下の3つがあります。

  1. 家族構成によるケース
  2. 相続放棄によるケース
  3. 欠格・廃除によるケース

それぞれを確認していきましょう。

① 家族構成によるケース

まずは、家族構成により法定相続人がいないケースです。

法定相続人とは、民法に定められた相続権を有する人のことをいいます。

法定相続人は、以下のように定められています。

死亡した人の配偶者常に相続人となり、配偶者以外の人は、次の順序で配偶者と一緒に相続人になります。

第1順位
死亡した人の子供
その子供が既に死亡しているときは、その子供の直系卑属(子供や孫など)が相続人となります。子 供も孫もいるときは、死亡した人により近い世代である子供の方を優先します。

第2順位
死亡した人の直系尊属(父母や祖父母など)
父母も祖父母もいるときは、死亡した人により近い世代である父母の方を優先します。
第2順位の人は、第1順位の人がいないとき相続人になります。

第3順位
死亡した人の兄弟姉妹
その兄弟姉妹が既に死亡しているときは、その人の子供が相続人となります。
第3順位の人は、第1順位の人も第2順位の人もいないとき相続人になります。

国税庁・タックスアンサー「No.4132 相続人の範囲と法定相続分

まず、配偶者がいる場合には、常に配偶者は相続人になります。

次に、子など第1順位の人がいる場合には、その人が相続人になります。

そして、第1順位の者がいない場合には、父母など第2順位の人が相続人になります。

最後に、父母がいない場合には、兄弟姉妹など第3順位の人が相続人になります。

他の順位の人が同時に相続人になりことはありません。

例えば、子(第1順位)と父母(第2順位)が同時に相続人にはなりません。

なお、相続人となる子・兄弟姉妹がすでに死亡している場合には、その子である孫・甥姪に相続権が移ります。

これを代襲相続といいます。

それでは、家族関係による相続人不存在とはどういう状態でしょうか?

具体的には、下記のすべてに該当するケースが考えられます。

  • 配偶者、子供がいない
  • 両親と祖父母はすでに死亡している
  • 兄弟姉妹もいない

2)相続放棄によるケース

被相続人に相続人がいたとしても、相続人不存在になるケースがあります。

その一つが、相続人全員が相続放棄をした場合です。

被相続人に、資産がほとんどなく、銀行借入などの債務の方が多かった場合には、相続人はその債務の負担を避けるために、相続放棄を検討することになります。

なお、相続放棄をした場合には、はじめから相続人でなかったという扱いになります。

そのため、相続放棄をした相続人の子は、代襲相続をすることはできません。


3)廃除・欠格によるケース

相続人がいたとしても、相続人不存在になるもう一つのケースが、廃除・欠格によるものです。

廃除とは、相続人になるべき人が、被相続人に対して虐待や重大な侮辱をしたり、著しい非行があったときに相続権を失うことをいいます。

欠格とは、相続人になるべき人が、被相続人や他の相続人を故意に死亡させようとする場合などに相続権を失うことをいいます。

なお、欠格・廃除により相続権を失った場合には、その子に相続権は移ります。つまり、代襲相続が発生します。

2. 相続人不存在の場合、財産はどこへ行くのか?

生命保険で家や財産を保護

上記で相続人が不存在になるケースについて確認をしてきました。

それでは、相続人不存在になった場合、財産はどこへ行くのでしょうか?

相続人不存在の場合の相続財産は、下記の流れで分配されていきます。

1)被相続人に貸付をしていた債権者、遺言で指定された受遺者

まず、被相続人に貸付をしていた金融機関などの債権者や、遺言で指定された受遺者がいれば、その者に相続財産から支払われます。

この時点で財産がなくなれば、手続きは終了することになります。

そのため、相続人がおらず、死後の財産の行方が心配である場合には、お世話になった人への遺贈や、支援したい団体などに寄付することを遺言に書くことをお勧めします。

遺言には正しい要式に沿って記載し、保管する必要があります。

遺言については、こちらで詳しく解説しています。

孫に財産を引き継ぐ 思いを正しく遺言に残して、スムーズな相続を

2)特別縁故者

相続人が不存在の場合、被相続人の特別縁故者が財産分与を請求することができます。

特別縁故者とは、民法に以下のように定められています。

・被相続人と生計を同じくしていた者

・被相続人の療養看護に努めた者

・その他被相続人と特別の縁故があった者

民法「第九百五十八条の三(特別縁故者に対する相続財産の分与)」より抜粋

内縁の配偶者、事実上の養子・養親などが、特別縁故者に該当するケースが多いです。

なお、業務として被相続人の療養看護をしていた者は該当しません。


3)国庫

被相続人に貸付をしていた債権者、遺言で指定された受遺者、特別縁故者がいなかった場合や、それぞれの者に支払った後に財産が余っている場合には、国庫に帰属します。

まとめ

この記事では、相続人不存在とはどのような状態か、その場合には財産はどこへ行ってしまうのかについて確認してきました。

相続人がおらず、死後の財産がどうなってしまうか不安である場合には、公正証書遺言などで自分の財産をどのように処分するかを指定しておくことをお勧めします。

相続に関してお困りの場合には、相続・贈与に詳しいIFAや税理士等の専門家にご相談ください。


 

※本ページに記載されている内容は2021年4月15日時点のものです
※記載内容に誤りがある場合、ご意見がある方はこちらからお問い合わせください

アドバイザーを探す

この記事の執筆者

SNSでシェアする

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
  • Pocket