年収900万円と聞くと、どのようなイメージを持つでしょうか?
多くの人は生活に余裕がありそうと思うかもしれませんが、税金も高くなるため実態としてはそれほどゆとりはないかもしれません。
また、年収が上がったからといって、そのほとんどが支出に回っていては将来や老後資金の不安も出てきます。
年収が高くなったとしても、しっかりと貯蓄・資産運用を行なっていく必要があります。
この記事では、年収900万円の生活実態と節税・資産運用方法を見ていきます。
1. 平均年収と年収900万円の割合
日本人の平均年収はどのくらいで、年収900万円をもらっている人はどの程度いるでしょうか。
まず、給与所得者の平均年収は次のようになっています。
(以下、給与所得者を対象にした調査であるため、自営業者や投資による利益は含まれません。)
雇用形態 |
平均給与 | |
全体平均 | 436万円 | |
正規雇用 | 503万円 | |
非正規雇用 | 175万円 |
国税庁「民間給与実態統計調査(令和元年分)」を元に、Route100編集部作成
全体平均は436万円となっていますが、雇用形態によって大きな違いがあることが分かります。
また、年代によっても平均年収には大きな違いがあります。
年齢階級 |
平均給与 | |
全体平均 | 436万円 | |
20〜24歳 | 264万円 | |
25〜29歳 | 369万円 | |
30〜34歳 | 410万円 | |
35〜39歳 | 445万円 | |
40〜44歳 | 476万円 | |
45〜49歳 | 499万円 | |
50〜54歳 | 525万円 | |
55〜59歳 | 518万円 | |
60〜64歳 | 411万円 | |
65〜69歳 | 324万円 | |
70歳以上 | 282万円 |
国税庁「民間給与実態統計調査(令和元年分)」を元に、Route100編集部作成
年齢が上がるにつれて徐々に年収も増えていき、50〜54歳をピークにその後は減少していきます。
また、全体的に平均年収が高いと感じる人もいるかもしれませんが、それは平均年収が一部の高所得層によって引き上げられている可能性が考えられます。
実際に年収帯別の割合を見てみると、次のような分布になっています。
年収帯 |
割合 |
200万円以下 | 23% |
200万円〜300万円以下 | 15% |
300万円〜400万円以下 | 17% |
400万円〜500万円以下 | 15% |
500万円〜700万円以下 | 17% |
700万円〜900万円以下 | 5% |
900万円超 | 5% |
国税庁「民間給与実態統計調査(令和元年分)」を元に、Route100編集部作成
この分布を見ると、年収400万円以下の世帯が55%を占めているため、中央値は300万円から400万円の間になり、平均年収436万円よりも低いことが分かります。
また、年収900万円を超える人の割合は5%ですので、20人に1人が900万円より多くの給与をもらっていることが分かります。(この調査では、900万円ちょうどの人は700万円〜900万円以下に含まれるため、900万円以上もらっている人はもう少し多いと考えられます。)
では、年収900万円の場合、手取りはいくらになるでしょうか?
2. 年収900万円の手取りは?
手取りとは、税金などが差し引かれた後の可処分所得、つまり自由に使えるお金のことです。
会社員や公務員の場合は、会社などが給与計算を行った上で給与の支払いを行なっているため、概ね振り込み金額に相当します。
そして、年収900万円の手取りはおおよそ620〜680万円になると考えられます。
全額が毎月の給与で支払われる場合は、おおよそ月収52〜57万円になります。
手取り金額に幅があるのは、加入している保険や年金によって所得控除が受けられるためです。
会社員の方は、年に1度会社から年末調整の依頼があり、保険料の控除証明書などを提出している人も多いと思います。
そのような所得控除によって、税金の課税対象金額が年に1度見直され、支払っている税金額が多い場合は還付を受けることができます。
そのため、人によって手取り金額には多少の違いがあります。
3. 年収900万円の貯蓄と借入
では、実際に年収900万円の人は生活にゆとりがあるのでしょうか?
年収が高くなるほど、生活にゆとりがあると答える人の割合が増えることは事実ですが、その一方で年収1,000万円でも4人に1人は「家計は苦しかった」と回答しています。
それはなぜでしょうか?
1つには、年収が高くなると支出も増えることが考えられます。
次の表は、世帯年収別に保有している金融資産額と住宅の購入比率、および平均の借入残高を並べたものです。
世帯年収 |
金融資産保有額 (中央値) |
住宅購入比率 | 平均借入残高 |
300万円未満 | 100万円 | 47% | 702万円 |
300〜500万円未満 | 449万円 | 60% | 1,288万円 |
500〜750万円未満 | 500万円 | 65% | 1,613万円 |
750〜1,000万円未満 | 990万円 | 67% | 2,278万円 |
金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査(2019年)」を元に、Route100編集部制作
この表を見ると、世帯年収が高くなるにつれて、保有資産も増える一方で借入残高、つまり借金も多くなっていることが分かります。
それどころか、借入残高から保有資産額を差し引くと、年収が高い世帯ほど借金が多い結果になっています。
経済的に豊かになると、より良い暮らしを求めることは当然のこととも言えますが、お金に振り回されず、精神的なゆとりを持って、お金をコントロールすることが大切だと言えそうです。
4. 投資・老後資金に対する意識
では、投資や老後資金に対する意識についてはどうでしょうか?
日本証券業協会の調査によると、世帯年収が高くなるほど、投資が必要だと考える人の割合は増えることが分かっています。
日本証券業協会「証券投資に関する全国調査(平成30年度)」を元に、Route100編集部作成
また、投資が必要だと考える理由は、多いものから順に次の回答になっています。
- 預貯金だけでは、利息が期待できない
- 将来の生活資金として準備ができる
- 現在の保有額では将来の生活が不安
実際、日本の銀行預金はほぼゼロ金利が続いている状態であるため、預貯金で資産を増やすことは現実的ではありません。
そして、年収が高い人ほど、将来や老後の資金への意識が高いことが先ほどのデータから分かります。
5. おすすめの節税方法と資産運用3つ
では、具体的に節税や資産運用にはどのような方法があるでしょうか。
ここでは、節税から資産運用まで3つの方法をご紹介します。
- 所得控除による節税
- iDeCoなど年金制度の活用
- NISAなど税制優遇のある制度の活用
それぞれ説明していきます。
1)所得控除による節税
まず、所得控除による節税です。
所得控除が受けられる制度には多くの種類がありますが、代表的な制度は次のようなものです。
- ふるさと納税(寄附金控除)
- 住宅ローン減税制度
- 生命保険料控除
既にご存知の制度も多いと思いますが、これらの制度を活用することで手取り金額を増やすことができます。
ただし、年末調整や確定申告の申請を忘れると、制度の適用を受けることができないため注意が必要です。
また、これらの制度は一定額の支払いを行うこととセットで、所得の控除を受けることができる制度です。
控除目的で、高いローンを組んだり、必要以上の保険に加入することは本末転倒ですので、あくまで適切な範囲での活用を意識するようにしましょう。
2)iDeCoなど年金制度の活用
次にiDeCoなどの年金制度の活用です。
年金制度にはいくつかの種類がありますが、加入できる年金はご自身の就業・雇用状況によって異なります。
年金制度には共通して、税制優遇の面で2つのメリットがあります。
- 拠出金額が所得控除の対象となる
- 運用した資産の値上がり益に税金が掛からない
そのため、老後資金を作る目的においても活用を考えるべき制度だと言えます。
ただし、あくまで年金制度であるため、60歳以上にならないと原則お金を引き出すことができません。
そのため、生活費はもちろん、住宅購入や教育資金など将来的に使う予定のあるお金は年金の拠出には使わないようにしましょう。
3)NISAなど税制優遇のある制度の活用
最後に、少額投資非課税制度のNISAです。
NISAには、一般NISAとつみたてNISAがありますが、どちらも一定の金額までの投資で得られた利益に税金が掛からない制度です。
iDeCoと違って、所得控除を受けることはできませんが、年金制度ではないため、いつでも売却し引き出すことができるメリットがあります。
そのため、投資を行う場合には必ず利用を検討するべき制度だと言えます。
また、NISAは制度が終わると思っている人もいるかもしれませんが、一般NISAは2024年に新制度へ移行して、2028年12月末まで延長することが決まっています。
まだNISAやiDeCoを活用していない人は、改めて制度の利用を検討してみましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
年収が高くなると、生活にゆとりは出てきますが、その一方でローンや支出も多くなることで余裕を持った生活ができていない人もいることが分かりました。
年収900万円があっても、きちんと家計を管理し将来や老後に必要となる資金を計画的に作っていく必要があります。
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※この記事は、一般的な社会環境を説明することを目的としています。
※投資・資産運用を含め、投資の実行を推奨するものではありません。
※実際の投資にはリスクを伴い、思わぬ損害を被る場合もあります。個別商品のリスクや手数料については、ご自身でご確認ください。