アメリカのIFAの価値3つ:顧客本位、地域密着、多様なアドバイス

この記事では、アメリカの独立系ファイナンシャル・アドバイザーの現状をご紹介します。

日本では、IFAはまだ知らない方も多いと思いますが、アメリカではIFAが一般的な存在になっています。

このことが、金融庁の金融審議会「市場ワーキング・グループ(第13回)」で取り上げられました。

IFA先進国とも言えるアメリカの現状を知ることで、日本における資産運用やIFAの今後について考えてみたいと思います。

 

1. アメリカの独立系ファイナンシャル・アドバイザーについて

アメリカの金融アドバイザーは、独立系の人数が大手証券会社より圧倒的に多くなっています。

2017年時点では、大手証券会社の外務員数47,470人に対し、独立系は127,681人です。

金融機関からの独立には、大きく「証券外務員型」と「投資顧問型」、この2つを兼務する方法があります。

証券外務員型

「証券外務員型」は、日本のIFA(金融商品仲介業者)に近い存在で、約半数の61,600人が登録されています。

証券外務員の資格が必要で、証券会社からの監督を受ける立場にある点も日本のIFAと同じです。

(証券外務員型、投資顧問型38,407人、両者の兼業型27,674人)

投資顧問型

もう1つの「投資顧問型」は、証券外務員の資格が必要がなく、資産残高に連動した手数料等を受け取る手数料体系になっています。

そのため、金融商品の売買(取引)によって手数料が発生しないことが特徴で、この点は日本の投資顧問業とは異なります。

投資顧問型の登録人数は38,407人で、独立系アドバイザーの約30%です。

独立系の残りの約20%、兼業型のアドバイザーが27,674人登録されています。

 

これらのアドバイザーに、証券会社が金融商品と取引を行なったり、口座を管理するITのツールなどを提供しています。

また、アドバイザーのための営業支援・経営支援ツールを提供する金融機関や協会もあり、アドバイザーをサポートする社会的な仕組みができていると言えます。

アドバイザーはそれらの中から、自分に必要なサポートを選択することでコストを抑えた業務運営が可能になっています。

 

2. アメリカでは、なぜ独立系金融アドバイザーがうまくいくのか

PCでグラフを作る

まず、顧客ニーズの変化があげられます。

多くの資産を持っていない資産形成層が、金融危機などを通してアドバイザーの必要性を感じ、身の丈にあったアドバイスを求めるようになった、つまりアドバイザーの需要が増えてきた背景があります。

次に、先ほどご紹介したように、独立系金融アドバイザーはコストを抑えて活動することができます。

そのため、大手証券会社よりも営業収入が少なくても、生活が成り立つと言われています。

 

また、多くのアドバイザーは証券会社などで経験を積んだ後に独立します。

そのため、信頼を得ているアドバイザーはある程度顧客がいる状態で独立することができます。

さらにIFAは転勤などが基本的にないため、その顧客と長期的に良い関係を築くことができるため、安定しているとも考えられます。

また、保険や会計士などとの兼業も行いやすいため、営業の自由度が高く、投資サービス以外でも生計を立てることができる点もアメリカのIFAがうまくいく理由だと考えられています。

 

3. アメリカの独立系金融アドバイザーの付加価値

では、独立系金融アドバイザーにはどのような価値があるでしょうか?

大きく3つ、「顧客本位」「地域密着」「多様なアドバイス」だとする考えがあります。

(1)顧客本位の業務運営を行いやすい

日本のIFAと同じく、取り扱うことのできる商品に制約がないため、中立的なアドバイスが提供できると考えられています。

また、基本的に転勤がありませんので、長期的な関係を築くことになります。

結果的に、地域に根差すことが必要になってくるため、周囲の評判が一種のモニタリング機能を果たしているとも考えられます。

また、兼業が行いやすいことから、顧客の資産全体を見通した上で、自分の得意分野に注力したアドバイスを行うことができます。

(2)地域密着型のアドバイスができる

アメリカでは大手証券会社が、富裕層や大手企業に特化する方針を打ち出しています。

そのため、地方の資産形成層や中小企業は独立系金融アドバイザーなどに移って行きました。

結果的に、独立系金融アドバイザーは大手証券会社が出店できないような場所にも出ていくことができ、地域を支える存在になってきました。

地域に根ざしていることで、そのエリアの税理士や弁護士など士業との繋がりも強くなり、よりサービスの幅と質が高まっています。

このように、投資サービスだけでなく、相続などのアドバイスも行うため、親の相談から子供世代への相談に繋がっていくこともアドバイザー・顧客双方のメリットになっています。

アドバイザーと握手

(3)商品提案に留まらない多様なアドバイスができる

1章で投資顧問型のアドバイザーは、資産残高に連動した手数料だとお話しました。

このことには、どのような意味があるでしょうか?

商品の売買ではなく、顧客の資産を増やすことがアドバイザーのがアドバイスの目的となったことで、商品取引に結びつかないアドバイスそのものの対価を得ることができるようになったと言えます。

例をあげて説明します。

アメリカには複数の税制優遇制度があります。

そのため、どの制度を活用して、どこの口座にいくら資産を持つか?何の金融資産に投資を行うか?といったことを考える必要があります。(アセットロケーションと言います。)

その逆で、ある程度の年齢になった場合など、今度は税制優遇口座に積みあがった資産を、どのように引き出していくかの戦略を考える必要があります。

また、金融危機や国際問題などで市場が大きく動いた際に起こる、パニック売りを留めるような投資行動のコーチングといったアドバイスもあります。

このように、単なる金融商品の提案に留まらないアドバイスへの価値が高まっています。

また、アメリカでは、このようなアドバイスが実際に投資のパフォーマンスを高めることも、見える化されてきています。

 

日本でもロボ・アドバイザーが徐々に広がりつつありますが、アメリカでも活用が進んでおり、ロボ・アドバイザーの存在によってアドバイザーの手数料は低下の圧力を受けています。

しかし、アメリカでは単純な運用だけなら、ロボ・アドバイザーで良いかもしれないが、先ほどのようなアドバイスに価値が認められているため、アドバイザーの対価は合理的だと考えられているようです。

 

4. コンプライアンス・監督体制は証券会社と同等

独立して営業しているアドバイザーは、大手証券会社と比べて監督が行き届いていないのでは?といった懸念もあるかもしれません。

ただ、実際にはアメリカでは独立系金融アドバイザーであっても、証券会社の監督を受けています。雇用形態が違うだけで、証券外務員としての位置付け・監督は変わらないとされていて、この点は日本も同じです。

また、アメリカでは証券外務員に対する検査も行われています。

まとめ

本レポートから、次のようなことが分かります。

  • 大手証券会社が富裕層・大企業特化にシフトしていく中で、資産形成層を中心に独立系金融アドバイザーの需要が増えてきた。
  • 独立系金融アドバイザーは地域に密着し、顧客本位の業務運営を行うことで、ITバブルの崩壊や金融危機を乗り越える中で、徐々に信頼を得てきた。
  • 多様なアドバイスの価値が認められてきて、単純な商品提案やロボ・アドバイザーとは差別化が進んでいる。

日本も老後資金2000万円や年金への不安を背景に、自助努力の必要性が高まっています。

今後、アメリカを追いかけるような形で、IFAによるアドバイスの需要が高まってくるのではないでしょうか。

 

※本ページに記載されている内容は2021年3月9日時点のものです
※記載内容に誤りがある場合、ご意見がある方はこちらからお問い合わせください

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